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中村勘九郎、中村七之助による舞踊を中心とした
『特別公演』が今年も大阪、兵庫で開催!

『中村勘九郎 中村七之助 特別公演2107』が11月21日(火)に大阪・森ノ宮ピロティホールで、22日 (水)に兵庫県立芸術文化センターで開催される。勘九郎、七之助を中心とした中村屋一門による巡業公演 。『錦秋特別公演』と題し2005年にスタートし、今年で13回目を迎える。2017年は江戸から明治に建てられ、今なお現存する古い芝居小屋での上演と並行に、全国各地のホールでも上演。ホール公演を『特別公演』と称している。

「弟の七之助とともに中村屋一同、切磋琢磨、精進を重ねて続けてきました。関西は大阪松竹座で歌舞伎を上演しているのでご覧になったことのあるお客様は多いですが、地方には『歌舞伎を観たことがない』というお客様がたくさんいます。それでも、この公演をきっかけに歌舞伎に足を運んでくださるようになったというお手紙をいただくこともあり、とても意味があるものだと思っています。また、七之助と二人で公演ができるのも宝物のようです」と話す勘九郎。

舞踊を演じるのも特徴的だ。今年はスタンダードで分かりやすいものをと、『棒しばり』『藤娘』を披露する。『棒しばり』は狂言の演目でも知られる。太郎冠者(たろうかじゃ)と次郎冠者(じろうかじゃ)という二人の召使いが、主人のいない間に酒を飲もうと奮闘する姿を面白おかしく描いている。今回は太郎冠者を中村鶴松が、次郎冠者を勘九郎が勤める。

「歌舞伎の舞踊は『難しい、芝居より分からない』という声をよく聞きますが、『棒しばり』は狂言から来ている演目なのでストーリー仕立てになっていますし、コミカルかつ躍動感がある踊りを楽しんでいただけると思います。『棒しばり』を歌舞伎で演じるようになったきっかけは、『六代目尾上菊五郎と七代目坂東三津五郎という踊りの名手の手を縛ったらどんなものができるのだろうか』という発想から生まれたものなので、本当に難しい。ですが、物語そのものは身近に感じられるような作品で、共感してくださる部分もたくさんあると思います。特に男性受けが良くて。主人の目を盗んで、そこまでして酒が飲みたいのかと(笑)。そんな太郎冠者、次郎冠者をできたらいいと思います」。

後ろ手に縛られるのが太郎冠者、両腕を1本の棒に縛り付けられるのが次郎冠者で、演じる上での肝は二人のコンビネーションだと言う。「今回、鶴松が初役で太郎冠者を演じるのですが、少しでも良いコンビネーションでできればと思います」。

1995年生まれの中村鶴松は、2000年5月に歌舞伎座で上演された『源氏物語』の茜の上弟竹麿で子役として本名出演。2005年5月に『菅原伝授手習鑑』車引きの杉王丸で二代目中村鶴松を名乗り、部屋子披露した。鶴松の印象を尋ねると「今年、大学を卒業して、歌舞伎、芸能一本になりました。子役の時代から、本当に天才だと思っていました。古典の子役ももちろんですが、『野田版 鼠小僧』で演じた孫のさん太なんて絶品でした!」と声を弾ませる。そして、「青年になって、いろんな役を経験していく中で、挫折なども共に乗り越えていっていますので、これからもどんどん一緒にやっていけたらいいと思いますし、期待しています」と語った。

舞台一面に藤の花房が咲き誇り、藤の精のように美しく艶やかな娘が時に可憐に、時にしっとりと恋心を舞う『藤娘』は七之助が披露する。

「『藤娘』は短い踊りですが、女形の踊りの基礎中の基礎がすべて詰まったような踊りで、今の七之助にもってこいの演目だと思います」と自信をのぞかせる。「今の七之助にもってこい」という発言の真意を訪ねると、「初心者にも踊りやすい演目ですが、積み重ねると“なんて難しい踊りなんだろう”と原点に戻るんです。本当に難しくて、父(十八代目 中村勘三郎)も『藤娘』に対しては『ちょっと…』とためらっていることがありました。七之助は今、その一歩を越えるか越えないかというところにいると思います。一人で踊る『藤娘』も、(坂東)玉三郎のおじさま と二人で踊った『藤娘』も経験しているので、この『特別公演』でまた新しい一面が見られると思います」と明かした。

歌舞伎の舞踊を一層楽しむコツは「歌詞を聞いてみてほしい」とアドバイス。「歌舞伎の舞踊は『あてぶり』といって、歌詞に合わせた踊りの型がついています。足を運んでくださる方には音にも注目してほしいです」。勘九郎自身は「とにかく型を極めていくこと。美しい形、いい格好を目指していきたいですね。あとは、今まで積み重ねてきたものが自ずと出てくると思うので、それを信じてやるだけです」と意気込む。

舞踊の前には、大阪では『芸談』を、兵庫では『歌舞伎塾』行う。『芸談』では七之助と2017年の舞台の裏話や近況報告を話したいと言う。また、「歌舞伎がより分かりやすくなった」と好評を博している『歌舞伎塾』では、楽屋風景や女形ができるまでの一部始終を舞台上で披露する。「男性が女形になるという過程は、僕たちもお客様の反応を聞きながらやっていて、とても楽しかったですね。また、『棒しばり』や『藤娘』につながるような効果音や装置の説明なども取り入れていこうと思います」。

勘九郎にとって『錦秋特別公演』は出会いの場所だという。「『歌舞伎は難しくて、分からない』とか、『料金が高い』というご意見を聞きます。でも、一度経験していただくと『こういう分かりやすいものがあるんだ!』という発見もあると思うので、食わず嫌いはやめてほしいなと思います。そうやって歌舞伎を体験してくださる方が年々増えているので、次につなげていきたいですし、これからもずっと続けていけたらと思っています」。

「『棒しばり』と『藤娘』を一度に観られるお手頃な公演だと思う」と勘九郎。年に一度の巡業公演、今年の秋も楽しみに待ちたい。
 



(2017年9月27日更新)


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中村勘九郎 中村七之助 特別公演 2017

発売中
Pコード:480-500

▼11月21日(火)11:00/15:00
森ノ宮ピロティホール
芸談/棒しばり/藤娘

S席-8500円
A席-7500円
立見-6000円(整理番号付)

▼11月22日(水)11:00/15:00
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
歌舞伎塾/棒しばり/藤娘

S席-8500円
A席-7500円

[出演]中村勘九郎/中村七之助/中村鶴松/他
[問]キョードーインフォメーション:0570-200-888

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