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日本の伝統的なマジック、手妻の世界をたっぷりと!

伝統的な日本の奇術「手妻(てづま)」を披露する藤山新太郎の公演が大阪・YES THEATERで行われる。今回の目玉は、「一里四方取寄術(いちりしほうとりよせのじゅつ)」と「式神(しきがみ)」だ。

「『一里四方取寄術』は明治時代に行われていた超能力マジックです。舞台中央にみかん箱くらいの大きさの箱があるのですが、“この箱からお客さんが取り出してもらいたいものを何でも出す。ただし、距離は一里四方にあるもの”と言って、お客さんが思い思いに注文したものを読み上げて、出していく。昔は大丸の玄関にかかっている大きな暖簾も出したりしたそうです。明治15年に道頓堀の中座でこれをやった記録があるのですが、大いにウケてお客さんが入りきらず、お客さんの列が劇場の周囲を3周するほど当たったそうです。今回は、これを再現したいと思います」と藤山新太郎。

「一里四方取寄術」は戦後すぐまで大阪の奇術師、三代目帰天斎正一(きてんさいしょういち)が行っていた。晩年、帰天斎正一は使用していた箱を手放し、岡山の奇術研究家である山本慶一氏に譲った。新太郎は山本氏に実物を見せてもらい、箱の寸法を取り、今日舞台で披露しているという。その帰天斎正一、トリネタでは多額の現金(大よそ1億円程度)を箱から取り出し、芝居小屋は大いに沸いたという。「『一里四方取寄術』は人の手がかかりますし、いろんな道具が要る大変な奇術です。これを再現できるのはおそらく、うちの一座だけだろうと思います」と新太郎、満を持して贈る。

そして「式神」という奇術は、平安時代に陰陽師の安倍晴明が実際にやっていたという術だ。紙の人形に念を込めてまじないをすると、人形がひとりでに立ち上がり動いていくという、命のないものに命を込める奇術だ。

「この奇術の最後の名人が三井晃天坊(みついこうてんぼう)さんといって、大阪の方でした。私は三井晃天坊さんのお弟子さんである松旭斎滉洋(しょうきょくさいこうよう)さんに習いに行きました。今回はそれを、キタノ大地さんが出します」。

1000年以上続くこの奇術に興味を持ったキタノに新太郎が伝授。キタノは1年近く修練を積み、このたびいよいよお披露目する。「彼がやると実に鮮やかなんです。人には向き不向きがありますね(笑)。この奇術も私が聞いていたから、伝えられます。芸事は、誰かに残しておけば何とか生きる道がありますが、マジックの場合は特に種を抱えて亡くなっていく人がたくさんいるんです。そうすると、何千年の歴史がふっと切れてしまうんですね。そうやって一旦絶えてしまったものを出していかないと、本当にいいものが残らないんです」と新太郎。長い歴史を持つ奇術の妙技を今、この時代に見られるのも本公演の醍醐味だ。

ほかにも、おなじみの水芸はもちろん、YES THEATERという劇場を生かした様々なマジックをたっぷりと楽しませてくれる。

「大阪のお客さんは見巧者、見ることがうまい人たちです。お金払った以上は最後の最後まで全部見てやろう、藤山新太郎がロビーに出て来ようものなら、一言声をかけてやりたい、握手してやりたいと、そういうことが好きで、しみじみ楽しみたいと思って来ている方が多いですね。我々としてはとてもやりやすい土地です」と、一座も公演の幕開けを楽しみにしている。『藤山新太郎 手妻興業 水芸 一里四方取寄術』は7月8日(土)に昼夜2回公演で行われる。




(2017年7月 6日更新)


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澤田隆治プロデュース
「藤山新太郎 手妻興業
水芸 一里四方取寄術」

発売中

Pコード:459-137

▼7月8日(土) 14:00/18:00

YES THEATER

全席指定-4000円

[問]東京イリュージョン
[TEL]03-5378-2882

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