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『上方落語若手噺家グランプリ2017』
決勝進出者インタビュー、桂二乗編

今年も『上方落語若手噺家グランプリ』の季節がやってきた。4月に行われた予選を経て、決勝に駒を進めたのは、桂華紋、桂小鯛、桂三四郎、桂雀五郎、桂雀太、桂二乗、桂米輝、笑福亭喬介、林家染吉の9名だ。上方落語界から次世代スターを輩出しようと2015年に創設され、今年で3回目となる。そのうち、桂二乗は第1回のファイナリストでもある。2年ぶりにエントリーし、決勝へと進出した。第1回の決勝戦では、出番順を決める際に1番を引き、自身の中では思うものがあったという。今年の出番順は中入り後の7番目と好位置をゲットした。ネタは予選と同じく「癪の合薬」と、得意ネタで勝負をかける。

--2年ぶりのエントリーですが、予選はいかがでしたか?

前回より後輩が増えて、どちらかというと中盤から上の枠に入るとなるので、下に負けられないという気持ちがあって、1回目とはちょっと違う緊張感がありましたね。決勝はもう、振り切るだけです。みんな、(1位を)獲りたくて出ているとは思うんですけど。

--2015年の第1回で、出番順のくじ引きで1番を引かれたときのことや、決勝で高座に上がられたときのことは覚えてらっしゃいますか?

覚えてますね。最後に1列に並んで、誰かが名前を呼ばれて前に出る瞬間を後ろから眺めているというのは、なんともやりきれないものがありました。まあまあ、それは結果なのでしょうがないですけど…。あとは、トップを引いたときの方がコンテストとして冷静にできたような…。投げ出しているわけではないですが、トップというのは、できることは限られている気がして。だから後の方をすごくよく見れたというのはありました。普段でしたら自分のことでいっぱいいっぱいなんですけど、決勝に残っても開き直っている感じがありました。普通、コンテストでは周りの人を見たりしないのですが、ちょっとゆっくり見てみようという気になって。それでもやっぱり違う人の名前が呼ばれて、一歩前に出る姿を見ると悔しいというのはありました。

--コンテストの最中でしたが、ゆっくりご覧になっていて何か気づきや刺激はありましたか?

コンテストって痛い目に遭って、経験していくような気がして。最初に出て何も分からず振り切れてうまく入るというパターンもあるでしょうけど、何回かコンテストに出ていると、悔しい思いや、前の人の流れを変える余裕がなかったりとか、逆にうまく乗っかれたとか、そういう何かが…。コンテストは個人戦ですが、流れはあるので。そういうものをうまく作っていかないと残れないんじゃないかなというのは見ていてなんとなく思いましたね。それは今回の予選でも経験になっているなと思います。

--では、今年の予選での手ごたえは?

どうでしょうかね(笑)。「癪の合薬」という噺はコンテストでかけていて。『第52回なにわ芸術祭』(2015年)をいただいたり、NHKの決勝に残らせてもらったりしたので、何か合っているのかとは思います。ただ、そればっかりでは…。本来ならもっと違うネタを持ってこないとダメだと思うのですが、なんとなく研ごう、研ごうとしてきたので。ただ、おそらくこのネタで挑戦できるのは、コンテストとしては今年の『上方落語若手噺家グランプリ』が最後になると思います。そういう面では集大成になればと思っています。また「癪の合薬」をやっているのかと思われる方もいるかもしれませんけど(笑)。

--ネタ選びも人それぞれですよね。一つのネタを突き詰めていかれる方と、たくさんのネタをしたいという方がいらっしゃると思うので。

僕はどっちかというと一つのネタを固めてやってしまう方で、お客さんからしたら他のネタを聞きたいとか、他でチャレンジしろっていうのもあるんでしょうけど、違うネタをして「あれを出しといたらよかったわ」と後悔するぐらいでしたら、「これです」と自信を持って言えるものを出さないとって思いますね。「ベストを尽くします」も大事ですが、せっかく決勝に残してもらえたのなら、がむしゃらに行くべきところは行かないとっていう思いがあります。目の前で「そうか、その方法があるのか」というのを他の人たちから見せられるわけですから。普段やってきたことの結果を出すところなので、そのときだけ違うことをするというのはまたちょっと違うと思いますし、できないとも思うので…。

--もうとにかく、予選は突破するしかないでしょうね。

そうですね、何とかして(笑)。とにかく通らんことには。ゼロか100かじゃないですか、コンテストって。やっぱり獲らないと何もならない。経験にはなりますが、結果としては獲らないと何も残らない。結果の取り合いですね。今年は40人くらいの中から一人、誰か獲る。ただまあ、そういう場を作ってもらっているのはありがたいです。

--今回の決勝は中入り後ですね。

そうなんです。順番を決めるくじ引きのときに、最後、雀五郎兄さんと、雀太兄さんと、僕の3人が残って、ネタ順も1番、7番、9番が残っていて。もう絶対1番を引くと思ってました(笑)。だいたいそういう男で、僕は。間の悪い男なんです。だから「1番じゃなかったらどこでもええわ」と思ってました。今回の7番目は決して悪い場所ではないですし、また前回とは違うやり方ができるのかなと思います。自分の持ち時間内で一生懸命やるしかないんですけど、第1回の決勝とは違う空気ができるのかなと思いますね。

--決勝のネタ時間は、10分から12分の間と2分の余裕がありますが、この2分があるかないかは、違いますか?

これは人によって違うんですけど、(予選で一緒だった)染吉くんは「腕喰い」という渋いネタで。これは、そないに笑いどころがなくて、どちらかというと怪談をずーっと聞かせるようなお話で、前後の余裕がないんですよね。元々すごく長い噺なので、時間いっぱい使う。出番順によって前の噺家でお客さんの空気が変わったりするときに、僕はちょっとだけ(空気を)取り返す時間を残しておきたいなと思うんです。ネタだけで切り替えられたらいいのですが、そういう時間は自分にはあった方がいいなと。ある程度、空気をコントロールできないと順番によってえらい目にあったりするので…。全くマクラを振らずに、自分がいっぱいいっぱいの状態でチャレンジするとどうしても「これがもうちょっとできた」とか、「ここを省いてこうした方がよかった」と思うので…。やっぱりそこも、ライブである思いますね。

--『上方落語若手噺家グランプリ』は、他のコンテストとはどのような違いがあると思われますか?

このコンテストは、お客様から興行としてきちんとお金をいただいているので、そこは最低限、ちゃんとしないといけないと思います。まあ、1回目のときも思ったんですが、「これ、コンテストじゃなかったらすっごいええ若手の落語会やろうなぁ」と(笑)。コンテストではありますが、興行として楽しんでもらいたいというのが一番にありますね。お金をいただいて、時間をいただいているので、僕らが獲りたいだけのものを見せるというのではなくて。チケット買ってくれはったり、早くから押さえてくれはった方が見に来てくれはるので、そこが一番大事だと思います。

--普段の寄席とは違う空気もありますよね。それも見ていて面白いと思います。闘志むき出しでがちがちでぶつかって来られるので、それはこの会でしか見られないもう一つの魅力だと思います。

そういう面でも楽しんでもらえたらと思いますね。みんながちがちということもおそらくないでしょう。今年も結果はどうであれ、二乗と言う人間がいたんだということを、何か残したいと思います!




(2017年6月15日更新)


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繁昌亭夜席 第三回 上方落語若手噺家グランプリ2017 決勝戦

▼6月20日(火) 18:30

天満天神繁昌亭

当日-2500円

[出演]桂華紋/桂小鯛/桂三四郎/桂雀五郎/桂雀太/桂二乗/桂米輝/笑福亭喬介/林家染吉

※未就学児童は入場不可。

[問]天満天神繁昌亭
[TEL]06-6352-4874

※前売り券完売ため、当日券若干枚数あり。

天満天神繁昌亭
http://www.hanjotei.jp/

ファイナリストが意気込みを語る!
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2017-05/1705-whgp2017.html

桂二乗

1978年5月29日生まれ
三重県四日市市出身
2003年7月、桂米二に入門