市川猿之助、中村勘九郎、中村七之助そろい踏み！
宙乗り、本水、早替り…と昼夜ともに盛り上がりを
見せる大阪松竹座の「五月花形歌舞伎」が開幕！

5月2日より大阪松竹座で「五月花形歌舞伎」が幕を開けた。話題の多い本公演。まず、市川猿之助、中村勘九郎、中村七之助が8年ぶりに大阪松竹座に揃った。そして見ごたえのある演目も目白押しだ。

昼の部の『戻駕色相肩』（もどりかごいろにあいかた）は、大阪での上演は実に70年ぶり。二人の駕籠かきと一人の禿が大坂、京都、江戸の廓の様子を語る姿などを描いた常盤津の舞踊劇だ。
 

『戻駕色相肩』

『金幣猿島郡』（きんのざいさるしまだいり）は鶴屋南北の絶筆で知られる作品で、1829年の初演以来上演が途絶えていたものを1964年に三代目市川猿之助（当代猿翁）が復活。以降、上演を重ね「三代猿之助四十八撰」の一つに選定された。このたび、大阪では23年ぶり、かつ大阪松竹座で初上演となる。恋ゆえに盲目となり、やがては激しい嫉妬の念を燃やした末に蛇体となる清姫を演じる猿之助は、5月16日(火)に宙乗り1000回を達成する。初日を終えた猿之助は、無事に終えられてよかったと胸をなでおろし、間もなく1000回達成を迎える宙乗りについても「よく飛んだと思います」と感慨深い表情で語った。その上で「宙乗りには高揚感がありますが、ただ飛べばいいというものではありません。宙乗りが溶け込むような作品をきっちり作っていかないといけない。その点でも『金幣猿島郡』はものすごく良くできた芝居です。現代に通じる部分もありますしね」と思い入れを込めた。
 

『金弊猿島郡 双面道成寺』

夜の部は『野崎村』と『怪談乳房榎』（かいだんちぶさのえのき）を上演する。『野崎村』で許嫁との結婚に破れるお光を演じる七之助は、明るくおちゃめな田舎娘が瞬く間に悲劇のヒロインへと変わりゆく様を演じ、ラストシーンでは放心状態から一気に感情があふれ出す姿を哀切たっぷりに見せ、涙を誘った。お光の心情とは裏腹に、あたりに漂ううららかな春の陽気も悲しみを増幅させる、悲恋の物語だ。
 

『野崎村』

勘九郎の三役早替りと本水を使った滝の場での立廻りに注目の『怪談乳房榎』は、平成3年の中座以来26年ぶりの大阪上演となる。三遊亭円朝の怪談噺が原作で、「平成中村座」のニューヨーク公演でも上演されるなど話題を呼んだ人気作。勘九郎は、絵師で元は侍の菱川重信とその下男である正助、そしてうわばみの三次という身分も性格も異なる三役を早替りで演じ、まるでイリュージョンのような仕掛けで楽しませた。
 

『怪談乳房榎』

文字通りあっという間に役が替るのでひと時も目が離せない。一番の見せ場である本水４トンを使用した滝の場では大阪松竹座の舞台に轟々と音を立てて勢いよく流れる滝が出現。それだけでも迫力十分なのだが、正助と三次が大立廻りを繰り広げる中に重信の亡霊まで現れ、めまぐるしく展開。さらに滝つぼに飛び込んだ勘九郎が大量の水を撒き散らすと、客席からは「キャー!!」という悲鳴が上がるほどの興奮の渦を巻き起こした。勘九郎も「大阪のお客様は反応がいいですね。やっていて楽しいです。今回、僕は贅沢な思いをさせてもらっていると思います。いつも猿之助さんが早替りをやっているのに、今回は僕がやらせてもらえるという。こんな贅沢なことはないですね！」と笑顔を見せた。
 

『怪談乳房榎』

他方、猿之助は悪役の磯貝浪江を色香もふりまきながら演じ、悪の限りを尽くした。『野崎村』でけなげな少女で魅せた七之助は、本作では凛とした佇まいも魅力的な重信の妻、お関を描いた。「いい初日を迎えられたと思います。猿之助さんと（大阪松竹座で）8年ぶりに一緒にできるのはすごくうれしいですし、お客様も“待ってました”というような空気を出してくださっていたので、とてもやりがいがありました」と七之助、初日を振り返った。

「五月花形歌舞伎」は5月26日(金)まで大阪松竹座まで上演。チケット発売中。

（2017年5月16日更新）