ホーム > インタビュー&レポート > 中村七之助、「戦友」市川猿之助との絆を語る
今回は、大阪松竹座の新築開場二十周年を記念した公演。
「松竹座に立たせていただくのは、2年前の歌舞伎NEXT『阿弖流為』以来。大阪は父(十八世中村勘三郎)が大好きな街でもあるので、いい思い出ばかりですし、今回もたのしみです」と笑顔を見せる七之助。
夜の部で上演される『怪談乳房榎』は中村屋が得意とする演目。勘三郎から教えを受けて、七之助も幾度も演じてきたもの。
「『乳房榎』はこれまでいろんなところで上演してきて、皆様に楽しんでもらえる、自信を持ってお届けできる作品だと思っています。今回、大阪で上演させていただけるのは本当にうれしいですね」
同じく夜の部の『野崎村』は、七之助演じるお光が主人公の物語。2014年の歌舞伎座以来、二度目の挑戦となるお光役について、「これまで数多の名優の方が演じてきた作品であり、お役。しっかりと演じて、お光の心情を深く伝えられたら」と語る。
一方、昼の部で上演される『金幣猿島郡』は七之助にとって初めて挑む演目。こちらは三代猿之助四十八撰のうちのひとつ、つまり澤瀉屋のお家芸だ。
「猿之助さんのおうちのお芝居を演じさせていただく機会はなかなかないので、とっても楽しみですね。宙乗りなどスペクタクルにあふれた作品で、筋も見応えがある。僕が演じる七綾姫は、猿之助さん演じる忠文に横恋慕され、これまた猿之助さんが演じる清姫に嫉妬されるお役です(笑)。初めての役柄を、しっかり勤めたいと思います」
猿之助、勘九郎、七之助の3人が大阪松竹座に揃うのは、2009年2月に上演された「花形歌舞伎」以来、じつに8年ぶり。猿之助について聞いてみると、「もう、戦友ですよ」と一言。一緒に過ごした「浅草花形歌舞伎」での思い出を語ってくれた。
「初めて僕らが中心となって『浅草花形歌舞伎』をやった年、全然お客様が入らなかった。2階席にお客様が5人くらいしかいらっしゃらなかった日もあったのをよく覚えています。それで、兄と僕、猿之助(当時亀治郎)さんと(中村)獅童さんの4人で松竹の会長の自宅にアポなしで押しかけました。『来年もやらせてください!』ってお願いしたんです」
その熱意に押され、会長は翌年も彼らを起用。七之助らも、歌舞伎に詳しくない観客にも興味を持ってもらえるよう、洋服で現代的なポスターを作るなど、さまざまな工夫をこらした。やがて、「浅草花形歌舞伎」は連日記録的な大入りが続くまでになった。
「まだ未熟で若い頃に、それでも役に一生懸命向かう、お客様のことを考える、みんなで一緒に作品を盛り上げる……。別に毎日飲みに行ったわけでもない、プライベートでべったり一緒にいたわけでもない。でも、そうやって熱をもって作品に取り組んだことで築き上げられた絶対に消えない絆が、猿之助さんとの間にはあるんです」
※澤瀉屋の「瀉」のつくりは正しくは“わかんむり”です。
取材・文/釣木文恵
撮影/福井麻衣子
(2017年4月18日更新)
▼5月2日(火)~26日(金)11:00/16:00
<昼の部11:00>
『戻駕色相肩』『金幣猿島郡』
<夜の部16:00>
『野崎村』『怪談乳房榎』
大阪松竹座
1等席-16000円
2等席-8000円
3等席-5000円
※日時・席種により取り扱いのない場合あり。4歳以上は有料。
[出演]市川猿之助/中村勘九郎/中村七之助/他
[問]松竹座[TEL]06-6214-2211
大阪松竹座
http://www.shochiku.co.jp/play/shochikuza/