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「確実にレアな作品が見られます!」
近藤良平率いるダンスカンパニー・コンドルズが
コンパクトな劇場で“超絶裏ベスト”を上演!

主宰の近藤良平を中心とした17人の学ラン姿の男たちがダンス、生演奏、人形劇、映像、コントなどを展開するダンスカンパニー、コンドルズ。これまでに世界30ヵ国以上で公演し、近藤がNHK 教育『からだであそぼ』の『こんどうさんちのたいそう』に振付出演するなど、国内外で人気を博す彼らが、今年は結成20周年の記念公演を開催。過去の約100作品から選んだ“スーパーベスト”『20th Century Boy』で全国ツアーを終えた後、12月24日(土)、25日(日)にはグランフロント大阪北館4階のナレッジシアターにて、東京大阪限定公演となる“超絶裏ベスト”『20 th Century Toy』を上演する。20周年の全国ツアーを経た現在の心境や、大阪公演の見どころなど、近藤に話を聞いた。

――最初は20周年に興味がなかったとお聞きしたのですが…。

そうなんですよ。そういうところで区切りをつけるのが嫌だなと思っていて。でもいざ20周年公演をやることになったら、みんなが祝ってくれるんですよ。その気持ちは大きいですよね。今までは“次の新作どうなの?大丈夫?”みたいな空気だったけど(笑)、本気で祝おうとしてくれている感じがあって。そうなると、気持ちよく20周年を迎えたいしそれに応えたいなと思ったんですよね。それで逆に強く“20周年”と出して、9月9日、10日の東京・NHKホール公演を目指してやって、本当の20周年にあたる10月10日には、内輪だけの公演もやったんです。そうする中で、改めて、今は若手もベテランもベストな関係で、完璧なメンバーでやれている感じがしましたね。

――NHKホールも大盛況だったとか。

NHKホールって思ったより広くて、3500人くらい入るんだったかな。うちらのダンス公演で考えるとあり得ないくらい大きいんですよ。舞台の中央から3階の一番奥の席まで50メートルあるようなところで、人形劇やりましたからね(笑)。見せ方もいろいろと工夫はしましたけど。人の圧はすごく感じましたね。20周年に対して祝ってくれる感じは、お客さんからもすごく伝わりました。

――全国ツアーに続いては、東京・大阪限定の“裏ベスト”です。

20周年に向けて、まず20年前からやってきたことを掘り起こしたんです。20年で100作品やってきたとすると、1作品に20シーンがあるとしたら、2000シーンはあるでしょ(笑)。それを全部掘り起こす作業は大変だったんですけど、その作業のおかげで、やりたいものとかやるべきものというのがたくさん出てきたんです。それで、全国ツアーでは収まりきらなかったものを今回の公演でやろう、と。ナレッジシアターはかなりコンパクトなので、いつもの広さではできないものができるんですよね。そういう意味で“超絶の裏ベスト”。確実にレアなものが見られます。

――コンパクトな劇場ならではの面白さがある。

距離感が近いからね。基本的にベスト盤だといいとこ取りをしすぎるから、それはどうかなと思って。ちょっとB級だったり外れているものを思いきり料理したいんです。その面白さは僕たちにもあるし、昔から知っている人も楽しんでくれるだろうし。初めて観る人もまともじゃないものを観ることになる。わざわざクリスマスに当てたんだから、僕らも覚悟するし、お客さんも覚悟して観に来てほしいですね(笑)。

――以前は、この時季に京都のアートコンプレックス1928でやられていましたよね。

そうそう。12月にやっていたんですけど、劇場が使えなくなったんですよね。あそこで14年くらいやっていたので、いつかまたやりたいなという思いもあって。その延長線上に今回の公演があるんです。以前は春に海外公演をして、夏に本公演、冬に人を蹴飛ばしちゃうくらいの劇場で関西公演という流れがあったので、それに近づけられたらなと思います。

――『20 th century toy』というタイトルはどこから発想されたのですか?

T.REXの曲の歌詞に、“20th century boy 20th century toy”というのがあって。裏の意味はないんですけど、夏のツアーはboyで、冬がtoy。うちらは20世紀に生まれた人間なんで、そういう意味も含めて。おもちゃみたいな人生だし(笑)。

――ところで、1996年の結成当時からの20年、ダンスシーンや観客層で変わったと感じることはありますか?

コンテンポラリーダンスって、自分と対話するような、考えがちな作品が多いんですよね。それはもちろんあっていいんですけど、僕たちはコミュニケーションをとったり、交流すること自体が作品をよくしていくと思っているんです。その思いは皆さんに伝わってきていて、誰かを誘って観に来ていただけることは前よりも増えたと思います。それに、僕たちが子ども番組をやっていたり、障がい者とのダンス公演もやっていて、幅広く人と接しているので、年代も職業も幅広い。確実に三世代は劇場にいると思います。僕たちは、これは大人が観るものだとか決めつけたくないし、できるだけいろんな世代の人に楽しんでもらいたいから、年齢制限もできるだけ下げたいんです。

――今ではコンドルズといえば、学ランのダンスカンパニーというイメージが根付いていると思うんですけど、最初はどんなカンパニーにしたいと思って立ち上げられたんですか?

20年前は暇だったので、志も何もなかったんですけど、この方法に辿りついたのは2000年に海外に行くことになったのがきっかけかな。海外で表現をするうえで、仲間とやりたいということと、海外でも通用する表現をしようという思いがあったんですよね。海外でも人形劇をやっているし、ボディランゲージとしてダンスで見せるし。ダンスカンパニーが作りたかったというよりは、表現のひとつの方法としてダンスや人形劇がある。しかもうちらはチーム力が高くて、外発注をしないんです。映像も自分らで作っているし、オリジナルで何かを作っていきたいという意識はあると思います。

――メンバーの方もいろんな職業をされていて、個性あふれる方ばかりですよね。

最近は、スズキ拓朗とか平原慎太郎とかダンス業界の正しい道を通ってきている人間もいるんですよ(笑)。結構いいメンツがそろっていると思います。宮崎の「えぷろん亭」っていう民宿をしている田中たつろうという男もいて。ものすごい観光地の中にあって、伊勢海老が解禁になってめちゃくちゃ忙しいんですよ(笑)。それなのに往復しながら全国ツアーまわってますからね。

――それぞれに忙しいのに(笑)。

ひとりはIT企業の人間で、ずっとフランス語で喋ってるし(笑)。よくこれで成り立ってるなって思いますね。

――メンバーを選ばれるときの基準はあるんですか?

ちょっと一本ネジが抜けている人かな(笑)。すごく段取りがよすぎたり、相手の気持ちをお伺いしすぎる人が僕らの中にいると疲れると思うんですよ。不思議な人ばかりだから、パッと入って馴染めるひとじゃないと。度胸があるというよりは、抜けている人(笑)。

――しっかりしすぎてない。

それは重要だと思いますね。僕も前よりよくなったけど、散らかし放題なタイプで、おまけに作ったものをどんどん忘れちゃう(笑)。だからいつもすごく新鮮なんですよね。下手するとメンバーの名前すら間違えますからね(笑)。スズキ拓朗なんて小学校2年生くらいまでの漢字しか書けないんですよ。慎太郎の“慎”とか、見たことないような不思議な慎を書きますよ(笑)。才能なんじゃないかなって思います。

――ダンス公演というと少し構えてしまう人もいますけど、そういうメンバーの面白い個性も含めて、気軽に観に行けるのがコンドルズの魅力ですよね。

そうですね。楽しいものをちゃんと楽しいと捉えて、動けるうちは動こうという基本的なことをやっているつもり。そこは作品を作る上でも大事にしていて、みんなに伝えたいことの大きな部分でもあります。年とってきたけど、まだ疲れたなんて言ってられないですから。時々、若者が前に出ていると僕以外のおじさんたちが無理して怪我したりするんですけどね。はしゃぎすぎると危ない(笑)。

――では、最後に見どころを絡めてメッセージをお願いします。

今回の公演は、ベスト盤ではお見せできなかったシーンがたくさん詰まっています。それはめったに観られるものではないと思いますよ。20年を越えて、1本目の作品でもあるので、この作品がこれからの方向付けにもなると思う。“またくだらないものを作って…”と思われるかもしれないけど、そういうものを見せたいと思います(笑)。クリスマスや年末で忙しいと思いますが、楽しいものを用意して待っているので、来ていただけるとうれしいです。
 

取材・文/黒石悦子




(2016年12月13日更新)


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コンドルズ「20th Century Toy~OSAKA~」

発売中

Pコード:454-434

▼12月24日(土)14:00・25日(日)13:00
指定席-5500円
U-25-4500円

▼12月24日(土) 18:00
指定席-5500円
U-25-4500円

グランフロント大阪 北館4F ナレッジシアター

[構成・振付・映像]近藤良平
[出演]青田潤一/石渕聡/オクダサトシ/勝山康晴/香取直登/鎌倉道彦/ぎたろー/古賀剛/小林顕作(声の出演)/スズキ拓朗/田中たつろう/橋爪利博/平原慎太郎/藤田善宏/安田有吾/山本光二郎/近藤良平

※3歳以上有料。3歳未満は一般入場者1人につき1人膝上鑑賞無料。ただし、お席が必要な場合は有料。
※U-25とは公演当日に25歳以下の方を対象としたチケット。25歳以下、要身分証明書/整理番号付。公演当日、年齢明記の身分証明書提示が必要。開演1時間前より会場にて座席指定券と引換え。
※クリスマス・イヴ指定席は完売。公演当日、身分証明書提示が必要。お客様都合によりパーティーに不参加となりましても払い戻しはいたしかねます。参加メンバー変更の場合あり。

[問]サンライズプロモーション東京
[TEL]0570-00-3337

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プロフィール

近藤良平(こんどうりょうへい)●1968年8月20日生まれ、ペルー、チリ、アルゼンチン育ち。ダンサー・振付家で1996年にダンスカンパニー・コンドルズを旗揚げし、全作品の構成、映像、振付を手掛ける。2005年に朝日舞台芸術賞寺山修司賞受賞。2007年にはNODA・MAP『THE BEE』で役者デビュー。映画『ブタがいた教室』などにも役者として出演。NHK連続テレビ小説『てっぱん』のオープニング振付を担当。NHK教育『からだであそぼ』内『こんどうさんちのたいそう』『かもしれないたいそう』、『あさだからだ!』内『こんどうさんとたいそう』、NHK総合『サラリーマンNEO』内『サラリーマン体操』などで振付出演するなど、幅広く活動している。