ホーム > インタビュー&レポート > 熱い思いを抱き、朝海ひかるがイプセンの傑作に挑む!
「人形の家」など、日本で100年以上も前から繰り返し上演されてきたイプセンの作品。その傑作の中から、「幽霊」を上演する。主演は、宝塚歌劇団後も多くの舞台で活躍中の朝海ひかる。演出は、話題作を手掛け数々の演劇賞を受賞している鵜山仁が、今回初めて本格的にイプセン作品の演出に臨む。
物語の舞台は、ノルウェー西部のフィヨルドを臨む名士アルヴィング家の屋敷。アルヴィング夫人は、愛のない結婚を否定しつつも因襲的な観念に縛られ、家名を守るために放蕩三昧の夫の元で偽善の生活を続けてきた。今日は、10年前に死んだ夫の偽りの名誉を讃える記念式典の前日。愛する一人息子のオスヴァルが留学先から数年ぶりに帰省し、ご機嫌の夫人の前に、恐れていた因襲の幽霊が再び現れる…。
ミュージカル「シカゴ」大阪公演で来阪中だった朝海が会見、作品への思いを語った。
「以前から、このような戯曲のガッチリとしたお芝居をやりたい、そして鵜山さんのような演出家の方に演出していただきたいとずっと思っていました。夢がひとつ叶って、とてもうれしいですし興奮しています」と、今回のオファーを喜ぶ朝海。
歌もダンスもない、膨大なセリフ量のストレートプレイに初めて挑む。「セリフを自分の言葉でしゃべれるようになるまで、自分を追い詰めて頑張っていかないと。そして5人の人間模様が見どころになるように作ることができれば」と意気込む。
「小さな街の中で昔からの慣習に囚われて生活する女性には、苦しく辛いこともいっぱいあるでしょう。この作品には、まるで今のことを言っているようなセリフや、みなさんが『そうそう』って思う考え方がいっぱいあります。私はアルヴィング夫人に同調しましたが、女性も男性も様々な世代の登場人物がいるので、ご覧になる方の世代にマッチングするところが必ずあると思います」。
イプセンの作品は、問題劇、社会劇というイメージがあるが、鵜山は「イプセンは手練れのエンターテインメント作家で、お客様を楽しませることにかけて腕のある人。登場人物の喜怒哀楽が息を飲むほどダイナミックに描かれている」と語る。今回は観客によりわかりやすく届け、イプセンの傑作だからと構えずに観ることができる舞台になるだろう。
「自分の周りで起こっていることが、舞台の中で起こっていると感じていただけると思います。結局、人間は今も昔も変わらないんですよね」。また、今後も「このようなストレートプレイに取り組んでみたい」と言う朝海。「いろいろな作品に出会って、栄養を得て、役者として太っていきたいです」。
取材・文/高橋晴代
(2016年10月 3日更新)