ネタ元は『日本書紀』や『古事記』!
日本の神話をベースにした新ネタで贈る
日本エレキテル連合の単独ライブ
日本の神話をベースにした新ネタで贈る日本エレキテル連合の単独ライブ「電氣ノ社 ~掛けまくも畏き電荷の大前~」(デンキノヤシロ~カケマクモカシコキデンカノオオマエ)。原作から着想を得てネタを作ることは初めてというふたり、きっかけはファンの一言だったという。「いろんなキャラクターを生み出して、まるで創造主のようだ」という言葉に「ならば神様になってやろう」と挑んだのが今作だ。果たしてどんな企てか、日本エレキテル連合のふたりに話を聞いた。
--ファンの方からのお言葉があって、それから『日本書紀』や『古事記』を参考にされたそうですね。
中野 キャラクターを生むし、せっかく生んだキャラクターを舞台中に殺めてしまって二度と舞台に立てなくなったキャラクターもいたりして。生むも殺すもどっちもやっているから、エレキテルの世界ではエレキテル連合の二人が創造主でもあるし、破戒もするしというファンの方からのご指摘があってタイトル決めて。神話をベースにしたのは後からです。毎回、舞台美術にも力を入れているので、今回もぜひ、舞台美術をぜひ観てほしいです。
--チラシに写っているキャラクターは出てくるんですか?
中野 出てくるかもしれないし、こないかもしれない。チラシは今まで私達が創造してきた人物で、主にテレビに出たことがある、私達の中では売れっ子を並べました。
--チラシのイラストにモデルはあるんですか?
中野 天照大神です。天の岩戸に隠れるシーンがあるんですけど、岩戸に隠れているところを朱美ちゃんと細貝さんが必死にこじ開けているところを表現しました。
--新ネタを作る際の肝は何でしょう?
中野 紙に書いたのとキャラクターに台詞を入れながら魂を入れる作業が一番大事です。
--キャラクターに魂を入れる作業は、キャラをご自身の中に入れるということですよね?
中野 自然と言葉が口をついて出るようになったら魂が入ったという感じです。朱美ちゃんと細貝さんは台詞がなくても勝手に喋れちゃうので。楽屋とかでもキャラクターの声色になって、自然な会話ができるようになったら魂が入った状態です。
--それはメイクとか、衣裳とか着なくても素の状態でもそうなるんですか?
中野 はい。
橋本 遊びみたいな感じです。今からそれをやるぞ!という感じじゃないです。
中野 マネージャーもそのキャラとして接してくれます。私が細貝さんをやっているときは、マネージャーが私のことを「先生」って呼ぶんです(笑)。大ベテランのマネージャーさんなんですけど。「先生、時間です!」「あいっ!」って。マネージャーも先生として接してくれます。周りも巻き込んでます(笑)。
橋本 お年寄りとしていたわってくれています。
--インスタグラムの朱美ちゃんも、世界観がすごいですよね。
橋本 趣味程度にやっている感じで、編集も撮影も衣裳もメイクも中野が担当していて。
中野 リカちゃん人形の延長というか。それでやっていたらお笑いファンではない、私達のことをそんなに知らないという人も見てくれて。得意分野でいろんな方向にアンテナ張っておけば、お笑いに興味ないけどインスタが好きだから(ライブを)観に行こうかという人もいてくれて。
--大人の遊びですよね。人形を人間でやるという。
中野 このときばかりはマネキンなんですよ。朱美ちゃんは基本、笑わないのでポーズだけで。変な遊びだよね……気持ち悪いよね(笑)。
--江戸川乱歩の世界みたいな印象がありますよね。
中野 確かに、世の中に発表してなかったらただの変態で終わりますね。
--単独ではいろんなキャラが出てくると思うんですけど、ライブ中はどのようにキャラの切り替えをしているんですか?
中野 それは勝手になります。
橋本 意識してないですね。
中野 でも多分、メイクでしょうね。以前、しゃくれてるキャラクターをやったんですけど、次のネタでもそのままで出ちゃったとがあります。切り替わらなくて。お客さんがクスクス笑ってるんです。自分が笑わそうと思ったところ以外でクスクス笑いが起きると、集中できなくて。何で笑ってるんだろうってそっちが気になっちゃって、「何で笑ってるんだろう? これ何?」って目で合図してもお互い気づかず、最後までしゃくれたままで。で、出待ちのファンの方に「あれ何で笑ってたの?みんな」って聞いたら、「前のキャラ引きずってしゃくれてた」って。恥ずかしい!!(笑)。
橋本 細かいところまで、よく見てくれているので。
中野 ほとんどは、パッと切り替わります。
--人間観察とか、普段からそういうことをされているんですか?
中野 多分してると思うんですけど、意識したことはないです。ちょっと変わった人がいて、その人を大阪から京都まで追いかけていったことはあります。その人は歩いているんですけど、壁にぶつかるとピンポン玉のように弾ける感じで移動するんです。で、最後に後ろ向きでバスに乗っていって。それでもう断念しようって。
橋本 追いかけたよね。
中野 あれ、最終的にどこ行ったんだろうね。改札も後ろ向きで入って行って。
橋本 器用だな~って。あれ、ちゃんと後ろ向きで改札に入るように、計算して壁にぶつかっているはずなんです。ちょっとでも狂うと改札を通れないので、また壁にぶつかって向きを整えないといけないので。
中野 そういう人の癖を見るのは好きですね。その人なりのルールがあって、すごいなぁと思います。私達には絶対理解できない。でもその人の中では絶対大事な、譲れないことなので。
--何かをモチーフにしたネタ作りは、過去にもあったんですか?
中野 ないですね。
橋本 こういうのは初めてです。
中野 しばりがある分、すごく苦悩もあります。責任感があることですし、既にあるものをいじくるということは。そこを気をつけて作ってます。もちろん『古事記』をそのまま題材にしているわけではなくて、ヒントを得てやっているので、『古事記』をコントにしたわけではないですけど、やっぱり扱うものがデリケートですし、間違った解釈で全然違うと思われるのはとても恥ずかしいことなので、一応全部読んでおかなきゃいけないと思って読み込みました。もう忘れちゃったんですけど、ついこないだまで鳥居を見たらどこのお家かわかるところまで覚えたりして。(鳥居を見て)これは何年以降の神社とかだなとか。
橋本 色でも分かるという。
--エレキテル連合のお二人が創造主という神であり、創造した神にもなるという構造が面白いですね。ちなみに、霊感はありますか。
中野 ないです。でもやっていることはシャーマンみたいな感じかもしれないですね。この世が生きづらい人たちの声を代弁しているという部分ではシャーマンみたいな感じかもしれないです。もしかしたらこの人たち(キャラクター)の言葉が今後のルールになったりしてね。なんか変なこと言い出すかもしれない。お告げを言い出すかも。
--今回は東京、大阪の2都市での公演になりますが、大阪の千秋楽なんかでは東京の初日から比べると台詞も変わっているかもしれないですね。
中野 作っているうちにどんどん変わるかもしれないです。特に東京と大阪ってお客様の捉え方が全然違うんです。それで、去年のツアーでは、大阪では前説を入れるということをしました。
橋本 今まで前説を入れることはなかったんですけど。
中野 今までは舞台に上がった瞬間にまず、舞台の美しさを見てもらいたいという演出を入れていたんです。それは東京のときは成功して。上がった瞬間におお!って。ベトナムランタンを100個並べていたので。大阪以外の会場も舞台に上がった瞬間におお!って拍手があったんですけど、大阪に関しては上がっても何も反応がなかったんです。そこに笑いがなかったから。1日目はそれを引きずっちゃって重かったんです。上がったときに何も笑いがなかったから。そこで2公演目から前説を入れるようにして、今から舞台セットも楽しんで観てくださいという説明をして。そこから割と空気がゆるくなりました。今回の舞台セットは、一部を『ゴジラ』の人形を作った造形師さんが手がけてくださっているんです。これは絶対に見てもらいたい。それを見るだけでも価値があると思います。だからお笑いファン以外のお客様にも来てほしいなと思っています。
--その美術は見たら分かりますか?
中野 見たら分かります。セットの一部としてその方が作られたものが使われるので。
--セットも含めて、全部楽しんでほしい。
中野 エンターテイメントが好きで。私たちは歌舞伎がすごく好きなんですけど、歌舞伎って楽しませることしかしていないというか。視覚的にも、聴覚的にも。香りまであるときもあって。私達も言葉だけで笑わさずに、舞台のセットにも大きな役割を与えています。
橋本 その世界に入ってほしい、浸かってほしいです。
--ちなみに歌舞伎はどういったものがお好きなんですか?
中野 本当に初心者で、ミーハーなんですけど「勧進帳」に感動しまして。市川海老蔵さんの飛び六法に感動しちゃって。
橋本 すごかった。
中野 私は普段、おとなしく観る方なのですが、その時は「フ~!」って言っちゃったんです(笑)。あと『平成中村座』とか。七之助さんの早着替えを見たときに、こういうことしたい!と思ったり。
--歌舞伎もエンターテイメントですもんね。
中野 はい。こんな楽しいものないなって。
橋本 それがずっと続いているということは、みんな好きなものなんだなって。
中野 とっつきにくいと思っている人も多いと思うんですけど、何の予備知識もなく行ってもわーっと楽しめたので。歌舞伎と比べると怒られるかもしれないですけど、今回の私達の単独ライブも難しそうなタイトルですけど、難しいと思わずに来てもらって。
橋本 そんな堅苦しいものと思わず。
--エンターテイメント性を意識したのは芸人さんを志す前からですか?
中野 途中からです。「最初は顔に絵を描くなんて!」と言うような痛い芸人だったんですけど、コンビを組んで演出とかしていくうちにどんどん、あれやりたい、これやりたいっていうのが増えてきて。衣裳にこだわり始めると衣裳を照らすライトにもこだわりたくなって、そこまでやったら今度はセットもとか、どんどん…。私なんて最初はもう、スーツとめがねでやってましたから。(この世界に)入ってからだいぶん、変わりましたね。
--そういうふうにこだわればこだわれるほど楽しいですか?
中野 楽しいです。
橋本 でも、そもそもあんまり変わってないと思うんです。そのときはネタ作りに生かされてなかったかもしれないですけど、元々(相方は)人を驚かせることが好きで、それはぶれてはないと思います。
中野 仕掛けとか好きで、相方が帰ってきたら上から巫女さんの格好をしたおかめの面を落としたりして…。
橋本 小道具が家にいっぱいあるので、全部揃うんですよ。夜中ですよ、夜中。うぎゃーーーー!って。
中野 2階に上がって部屋を開けたらもう1体、それが落ちてきて。これで終わりかなと寝ようと思って布団めくったら、今度は石がいっぱい敷き詰めてあって(笑)。
橋本 最後は石ってなんだよって思いましたけど。
中野 あと、毎日1個ずつ石をかばんに入れていって。いつ気づくかなって。なかなか気づかない。
橋本 お客様や人を喜ばせたり、驚かせたりするのが好きだから。そのサービス精神はそもそも持っているものだと思います。
--それが今、ネタになっているんですね。橋本さんはされる側でいいんですか?
橋本 やり返したらそれ以上のものが返ってくるので(笑)。
中野 今、新たなターゲットがいて。若手の子で、よく私達のライブに来るんですけど、「この劇場、お化けで出るから気をつけてね」っていう振りだけしといて。その子の横に立って気づかれないように肩をとんとんって叩くのを毎回、やってます。
--では、最後に大阪のお客様に一言お願いします。
中野 見てくださる皆さんが私達を創造主と言ってくださったことが嬉しくて、今回、恐れ多くも自分達が神さまという存在になって、また新しいキャラをたくさん生み出すので、ぜひその様子を観に来てください。
橋本 お笑いのライブに初めて来られる方にも楽しんでもらえるように、セットもすごい方が手がけてくださるので、ぜひそちらだけでもぜひ! ちょっとでも興味あるなと思った方は楽しみに来ていただけたら嬉しいです。
(2016年8月19日更新)
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