ホーム > インタビュー&レポート > 新たな新派の期待を担うイケメン市川月乃助の心意気!
市川猿翁のもとで約30年、歌舞伎の立役(男役)として活躍してきた市川月乃助。今年1月に劇団新派に入団、新橋演舞場と大阪松竹座の「九月新派特別公演」で新派の名優・喜多村緑郎の大名跡を襲名する。
新派とは、歌舞伎とは違う新しい演劇のジャンルとして明治時代に誕生。明治、大正、昭和の時代の世相や風俗などを題材にした現代劇で人気を博した。古き良き日本の美しさを伝えて128年の歴史を持つ。現在は劇団新派となり、二代目水谷八重子、波乃久里子(十八世中村勘三郎の姉)らを中心に活動、歌舞伎俳優の客演も多い。
月乃助は2011年に新派に初出演し、5年を経て入団。喜多村緑郎の名跡復活は55年ぶりとなる。
昨年、中村獅童主演の「あらしのよるに」では、オオカミのギロ役を演じて注目された月乃助。歌舞伎界では、その様式美が見直される中、新作での相次ぐ挑戦も話題となり、観客層を広げている。新派にとって伝統の継承と若い世代の取り込みが急務とされる今、まさに月乃助の襲名公演は、これを新派の節目とする重要な責務を負った一大イベントなのだ。「チャレンジャーにならざるを得ないチャレンジャー」と自らを評する月乃助。
「現存する新派の代表作を守り、なぞることも僕の仕事だし、新作の書き下ろしもやる。新派、新國劇、新喜劇。歌舞伎と並ぶ古典の3ジャンルの枠を取っ払って、ひとつの新しい演劇のジャンルができないか、と考えています。日本の古劇を後世に残し、現代に生きる古典にするために、若い世代の僕らがやっていかないと。埋もれさせるのはもったいない」。
歌舞伎の襲名は、名前と共に芸の継承も意味する。が、先代の緑郎は女方を中心とし活躍した。「先代は歌舞伎を敬愛し、歌舞伎の良いところを取り入れて新しいものを作って来た。その精神を受け継ぐことが名前を継ぐ意味であり、僕の務めだと思っています」。
今回の演目は、昼の部が華やかな人情劇『振袖纒(ふりそでまとい)』と喜劇『深川年増』。夜の部は月乃助が新派に入るきっかけとなった大悲劇の名作『婦系図(おんなけいず)-初代喜多村緑郎本に依る-』。どちらにも襲名の口上が付く。「昼夜で振り幅の大きい新派を楽しんでほしい」。出演者にも注目したい。歌舞伎俳優の尾上松也が新派初出演、さらに23歳の実妹・春本由香が初舞台で登場。「ルックスも声も良く、華がある。新派の希望です」。また同門であった市川春猿や猿弥も出演し、応援する。新たな新派の門出、ぜひ新派デビューを!
取材・文=高橋晴代
(2016年8月12日更新)