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言葉がないのに心動かされる
が~まるちょばのサイレントコメディー
傑作長編『街の灯』を7年ぶりに再演!

トレードマークは赤と黄のモヒカン。言葉を一切発さないパフォーマンスで、世代、性別、国籍問わず観客の心を動かすサイレントコメディー・デュオ、が~まるちょば。現在、全国を巡演中の『サイレントコメディー JAPAN TOUR 2016』では、チャップリンの名作をベースにした純愛物語『街の灯』を7年ぶりに上演。彼らの長編の中でも傑作との呼び声が高く、再演を求める声が多かったという本作について、その見どころや意気込みを、赤モヒカンのケッチ!と黄モヒカンのHIRO-PONに語ってもらった。

――7年ぶりに『街の灯』を再演することについて、その思いを教えてください。

ケッチ! 7年前のツアーでやったときに好評をいただいて、もう一度観たいという声がすごく多かったんですね。さらに、そのツアー以降ファンになってくれた方たちにも『街の灯』がいいという噂が広まり、“そんな名作があるんだったら観たい!”という声が多くなってきたので、いつかやりたいねって言っていたんです。

HIRO-PON この7年の間に僕らのことを知ってくださったお客さんが多いので、だったら観てもらいたいなという気持ちもありましたし、体力的に厳しい作品ではあるので、なるべく体力があるうちにやって、ベストなものをお見せしたいなという思いもありました。

――初演で作品ができたときから、おふたりにとっても自信作だったんですか?

HIRO-PON 作り始めたときは、実はチャレンジだったんです。チャップリンの『街の灯』というのは、映画の中では金字塔と言われるくらいのサイレント映画の名作。いつかはこの作品をベースにしたものを作りたいと思っていたのですが、僕らはお客さんの心に響く作品を作りたいし、観てもらうには僕らのことを知っていただかないといけない。それだけの自信がつくまではできないとも思っていたんです。それで、約1時間くらいの長編を5作品上演できたタイミングで、そろそろチャレンジしてみてもいいかなと思って作ったんです。それが意外とうまくできて、お客さんにも受け入れてもらうことができました。

――映画をベースにしながら、が~まるちょばのスタイルに作り変えていったんですか?

HIRO-PON 本当に、ベースのベースです。映画をご覧になった方は分かると思うんですが、盲目の花売りの娘は出てくるけれど、チャップリンが演じているような浮浪者が出てくるかどうかは分からない。そういう役はありますが、パントマイムなのでそれが浮浪者かどうかというのは観た人の感覚に委ねます。オリジナルの『街の灯』を模写する形ではなく、が~まるちょばなりに、あの作品をベースとしてパントマイムに仕上げた、が~まるちょばの『街の灯』になっていると思います。

――再演するにあたって、アレンジしたところはありますか?

ケッチ! 毎回、再演するときにはちょっとずつ変えていますね。今回は特に7年も経っていますし、自分たちがスキルアップした分、7年前のDVDを見ると、細かいところも含めてもっとこうした方がいいんじゃないかなっていうところが出てきたので手を加えました。あと、前回観た方が覚えているかどうか分からないですが、これ絶対なかったよなっていうシーンもいくつかありますね。初演と比べると、大きな変化としては2ヵ所あるかな。より豊かになったことは間違いないですね。オシャレになったところもあります。音楽も前回はチャップリンの映画のものを使っていたんですが、今回はオリジナルで作ってもらいました。

――さらに見応えのあるものになってそうですね。7年ぶりにやって、前回と違いを感じたことって何かありますか?

ケッチ! 僕たちとしてはそんなにはないんです。ただ、7年前にも観ていただいた方が、僕らのことを“スキルアップしたね”って言ってくださって。自分たちでは実感がないんですが、よくなったと捉えていただけることは嬉しいですよね。

HIRO-PON 7年前と比べて僕らも変わったのかもしれませんが、7年前に観た人もそれだけの歳月を経て観ることになるので、そういう意味では、僕らやお客さんの目に見えない年輪が出ているのかなと思いますね。パントマイムは言葉も使わないし、舞台セットも使わないので、観る人のイメージが強く浮き彫りにされるというか、そこが面白いところで。7年もあればそれぞれの人生で何かが起きているはずで、7年分の経験が感じ方にも反映されるんだろうなと思います。パントマイムは、体力が弱まったとしてもできると思うんです。フィジカルが衰えてもメンタルさえ強く持っていれば、より豊かな作品ができるだろうなと思っているので、今回の再演にあたっても、そういったところが見え隠れしていればいいなと思っています。

――観る人のそれまでの経験、積み重ねてきたものによっても見え方が違う。

HIRO-PON 違うと思います。『街の灯』はラブロマンスなので、それぞれの恋愛経験を重ねたりしながら観ると思うんですよね。ケッチ!が女性役をやるんですけど、終わったときに“かわいい、かわいい”って言われるんですよ(笑)。その人の重ねてきた人生が、こんなオジサンも可愛く見せているんだろうなと思いますね。

――ケッチ!さんは、可愛いという言葉を受けていかがですか?(笑)

ケッチ! 汚いとか気持ち悪いって言われるよりいいですよね(笑)。でも僕の力というよりも、作品の持っている力や、パントマイムが持っている力なんじゃないかなと思います。僕がいつまでも不細工にしかできなかったら、もしかしたらせっかくの作品も台無しになっていたかもしれないですけどね。

HIRO-PON 表面的なことだけではなくて、見た目はオジサンでも、ちゃんとお客さんに想像していただくことができるかどうかが大事なんですよね。

――ツアーでは、長編の『街の灯』だけでなく、テレビなどでもやるような「が~まるSHOW」、短編の「ショートスケッチ」で構成されるんですよね。短編も含めて、新たにチャレンジしていることはありますか?

ケッチ! 短編が3本あって、そのうちの1本が新作。新作というだけでチャレンジですけど、僕らの中では今までやったことがない切り口の楽器ネタをやっています。その切り口も面白いと思いますし、お客さんも参加型で楽しめるような内容になっています。他の2本は再演なんですけど、それもかなり前にやって以来の上演なんです。なので、初めて来ていただく方や最近ファンになってくださった方は、逆に新しいと思って観ていただけるんじゃないかなと思います。そしてなぜかそのうちの1本は、お子さまに大人気なんです。未就学児は入れませんけど、小学生くらいの笑い声がやたら聞こえるシーンがありますね(笑)。

――では改めて、全体を通しての今回の見どころを教えてください。

ケッチ! 今回は、ベスト盤と言ってもいいようなものになっています。7年分の月日を経て上演する『街の灯』は、前回観た人もまた新鮮な気持ちで楽しめると思いますし、初めて観ていただく方は、分かりやすい“が~まるちょば入門”みたいな形になっているので、特にオススメですね。入りやすいと思います。

――ベスト盤みたいになったのは、たまたまですか?

ケッチ! そうですね。ネタを選んでみたらほとんどベスト盤だったという感じです。それと、音楽ネタも結構乗って観ていただけるものになっているので、ノリのいい関西の皆さんの反応を見るのが僕らも楽しみですね。

HIRO-PON 本当に、が~まるちょばを知っていただく上ではとてもいいラインナップになっているので、ぜひ観ていただきたいですね。まったく観たことがない人は、2時間まったく言葉を使わずにどんなことをやるんだろう、と思うかもしれませんが、観終わった後には、“言葉がなくてもこんなに楽しめるんだ!”と思っていただけると思います。あと、僕たちが海外でも評価をいただいているのは、実はテレビや映像配信よりも、舞台でやっているところなんです。だから、ぜひ舞台で僕たちの姿を観ていただきたいと思います。言葉がなくても、笑えたり、心を動かすことができるんだということを体感していただきたいと思います。僕らはパントマイムの力を信じているので、その素晴らしい世界を知ってもらえたらなと思います。今しか観られないものを、ぜひ劇場で観ていただきたいですね。

 

取材・文/黒石悦子






 

(2016年8月10日更新)


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が~まるちょば
サイレントコメディー
JAPAN TOUR 2016

発売中

Pコード:452-533

▼10月14日(金)19:00
▼10月15日(土)13:00/17:30
▼10月16日(日)13:00

森ノ宮ピロティホール

全席指定-5500円

[作・出演・演出]が~まるちょば

※未就学児童は入場不可。

[問]キョードーインフォメーション
[TEL]0570-200-888

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