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ホーム > インタビュー&レポート > 「物語の力はますます強くなっている」 劇作・演出家鴻上尚史の代表作『天使は瞳を閉じて』が 虚構の劇団により13年ぶりに関西で再演!

「物語の力はますます強くなっている」
劇作・演出家鴻上尚史の代表作『天使は瞳を閉じて』が
虚構の劇団により13年ぶりに関西で再演!

劇作・演出家鴻上尚史の代表作のひとつ『天使は瞳を閉じて』が、鴻上が主宰する虚構の劇団により8月26日(金)~28日(日)、伊丹AI・HALLにて上演される。1988年に29歳であった鴻上が書き上げ、第三舞台で初演された作品で、今回が6度目の再演。関西へは2003年にミュージカルとして再演されて以来、13年ぶりの登場となる。

舞台は、放射能に汚染されて誰もいなくなった近未来の地球。そこでふたりの天使が透明な壁に囲まれた街を見つけるというSFファンタジーだ。「チェルノブイリにすごく刺激を受けたことと、ヴィム・ベンダースの『ベルリン天使の詩』という作品を観たことがきっかけで作ったんです。その作品では天使が人間になるまでの物語が描かれていてすごく面白かったんですけど、観ながら“天使が人間になってからのことが大切だろう”と思ったんですよね」と、鴻上。2011年の8月には、東日本大震災後の東京で再演された。「上演を決めたのは2010年なので震災をイメージしていたわけではなく、たまたま重なっちゃったんです。いろんな芝居が中止されたり自粛したりする中で、どうしてこの町が放射能の中で残ったんだろう、ということを設定に取り込みました。作品として非常に好評を受けましたし、強いインパクトを残したと思います。それから5年が経って、震災の記憶は日常の中で薄まってきていると思うんですけど、この物語の力はますます強くなっているんじゃないかなと思って、今回の再演を決めました」。

ドーム状の透明な壁に覆われた町の、ある一軒のお店に集う人たちが、愛し、憎み、傷つきながら生きる共同体の物語。そこには、長く劇団を続けてきた鴻上ならではの視点が重ねられた。「当時、劇団の人間関係の中でいろんな風景を見てきたことが、書きたくなった理由だと思うんです。それまでは劇団員と一緒に、どこかを目指して作品を作っていこうという想いがあったんですけど、ちょうどこの時期に、こんな濃密な人間関係の場所ってすごいなということを思って、その実感をお店に集う人たちに重ね合わせたんですよね。虚構の劇団も、5年が経ってお互いの関係性がハッキリと見えたところで“今ならできる”と思ったら東日本大震災の年だった。さらに5年が経って、劇団自体随分変わってきたので、今我々がやるとどうなるんだろうという楽しみもあります。自分で言うのもおこがましいですけど、よくこんな作品を29歳で書いたなって思います(笑)。再演のたびに気付かなかったことが出てくるし、まだまだ掘り下げて再演する価値がある作品だと思います」。

鴻上が「日本の演劇界にとって大切にされる俳優を、ひとりでも作りたい」という想いから立ち上げた虚構の劇団。今回は、劇団員はもとより、客演にも鴻上が注目する4人の若手俳優を迎えて贈る。「期待の若手イケメン君で、仮面ライダーチェイサー役で頑張っている上遠野太洸君に、舞台で見てきっと伸びるだろうと思った、ミステリーハンターの鉢嶺杏奈ちゃん。さらに、JAC改めJAE(ジャパンアクションエンタープライズ)に所属する佃井皆美ちゃんはアクションも演技もできる女優さんと、虚構の旅団という企画で、千葉哲也さんに虚構の劇団を演出してもらったときに上手いなと思った伊藤公一君という俳優さん。これからの演劇界を背負う存在になるであろうこの4人の客演と、劇団員のコラボが今回の見どころのひとつになるかなと思います。若手の役者たちと粘り強く向き合っていきたい」。

ベースはそのままに、時流を鑑みて“第一章”となる冒頭に変化をつけるという鴻上。現在の状況をどう投影させるのか、そして期待の若手俳優陣と劇団員がどんな輝きを見せるのか。13年ぶりの関西公演をお見逃しなく!

 

 

取材・文/黒石悦子




(2016年8月 2日更新)


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虚構の劇団
「天使は瞳を閉じて」

発売中

Pコード:451-872

▼8月26日(金)19:00
▼8月27日(土)14:00/19:00
▼8月28日(日))14:00

AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)

全席指定-4800円
学割チケット-3000円(当日指定、整理番号付)
※学割チケットとは学生の方を対象としたチケット。当日劇場受付にて開演30分前から指定席券とお引換え致します。引換え時に、学生証の提示が必要。お1人様1申込みにつき1公演1枚まで。

[作・演出]鴻上尚史
[出演]上遠野太洸/鉢嶺杏奈/伊藤公一/佃井皆美/小沢道成/杉浦一輝/三上陽永/渡辺芳博/森田ひかり/木村美月

※未就学児童は入場不可。

[問]キョードーインフォメーション
[TEL]0570-200-888

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