ホーム > インタビュー&レポート > 『上方落語若手噺家グランプリ 2016』 決勝進出者インタビュー:桂あおば
--去年は出場資格がなく、出られなかったそうで。
めちゃくちゃ出たかったんですよ、今年念願叶って。
--今年はどうでしたか?
楽屋の雰囲気が…(笑)。いつものように「兄さん、兄さん」って話しかけても「お…おう」みたいな感じやったから、そんな感じなんかって。楽屋の空気は異様でしたね。
--楽屋は緊張感がすごいと聞きますね。
すごかったです。雀太兄さんは普段から仲良くさせてもらってるんですけど、いつもとは違う、全然絡んでくれへんなと思って(笑)。
--あおばさん、中トリの1つ前の出番でしたけど、順番はいかがでしたか?
正直、順番はラッキーでしたね。トップ以外はどこでもよかったんですけど。
--実際、始まってどうでしたか?
緊張はあんまりしないんですけど、しゃべりながら「あれ? いつもと違う」って思ってましたね。コンテストってこんな感じなんやって思いながらしゃべってました。
--いつもはどんな感じなんですか?
しゃべりたいことをしゃべって、笑ってくれたらええなぁくらいの感覚でしゃべらせてもらってます。この予選は、なんか緊張しましたね。
--8分という時間は?
めっちゃ短いです。あっちゅう間でした。すぐ終わった。あ、もう終わるわ、もう終わるわ、終わった~っていう感じでした。
--時間内には?
ネタは、ぴったり収まりました。
--なぜ「動物園」を選ばれたんですか?
僕の中でまだ笑いの取れるネタで。「動物園」は桂南天師匠に稽古をつけてもらったんです。南天師匠の「動物園」がすっごく面白く仕上がってて、すっごい笑いが取れるネタやなと思って教えてもらったんで、笑いが取れやすいかなと思って。
--決勝では?
「ハンカチ」っていうネタをやりたいと思ってます。他に笑いが取れるネタはこれだけなので…(笑)。
--兄弟子のちょうばさんと決勝ですね。
僕が一番若手で、最年少やから、僕はほんま胸を借りるつもりですね。ダメでもしゃあない、一番下やし。下克上と思って胸を借りようと思います。
--師匠から何か労いのお言葉はありましたか?
何ももらってないです(笑)。でも、人伝いにあおばがグランプリ行ってめっちゃ喜んでたでって聞いたんですけど、前に会いに行ったらグランプリのことには触れてもらえず(笑)。自分から言うのもナンですから、普通に違うことをしゃべってましたけど。でも、師匠は弟子が売れたり、賞を獲ってくれたりしたら一番喜んでくれましたから。
--なぜ、ざこば師匠の下に入門されたんですか?
この人の弟子になったらおもろそうやなっていう感じで。僕、落語の「ら」の字も知らんで。いつもテレビで見るざこばさんってめちゃええ人やし、この人の弟子になったらおもろそうやな、何してる人なんかな~っていう感覚だったんです。僕、米朝師匠のことも知りませんでしたから。ざこばさんに師匠おるんや、誰!?って (笑)。で、米朝師匠の「百年目」を映像で見て、これはとんでもないなと。何やこれ、こんな芸能があんねやと思って。で、師匠の舞台も見に行って。それで師匠が「弟子に来いや」って空気を出してはると僕が勝手に感じて、弟子入りを志願させてもらいました。
--落語の「ら」の字も知らず。桂ざこば師匠という人間に弟子入りしようと。
そうです、そうです。で、落語を見たらめっちゃ面白かったんです。こんなおもろい芸があったんやって。
--芸事への興味は?
お笑いは好きやって、人を笑わせることは好きやったんですけど、落語とか芝居とか、歌舞伎、浄瑠璃、まったく興味ないというか。
--その世界に行こうというのは?
そんなになかったんですね。
--で、落語もはまって。
師匠のおかげでしたいこと、好きなことを見つけられたし、人間的にもだいぶマシになったというか。まだまですけど…。僕、ほんまに常識を知らんというか、例えば、師匠の奥さんのことを「おばちゃん」と呼んでしまったり…。僕、「奥さん」なんて単語、使ったことなかったですし、もう、そんなんばっかりです。掃除にしろ何にしろ。靴もそろえたことなかったから、実家に帰って靴そろえたら、おかんがすっごい喜んでくれたり。着物をたたんだら、「自分の服もようたたまん子が着物たたんで…」って涙ぐむぐらい(笑)。僕、おとんの言うことも、おかんの言うことも全く聞かへんかったから。人生で人の言うことまったく聞かへんかったし、気を遣うこともなかったし。だから師匠という存在があるのはすごくありがたい、ほんまにいろいろ教えてもらいました。いろんなことを全部教えてもらいました。教養、常識、全然ありませんでしたから。
--入門して、カルチャーショックもありませんでしたか?
めっちゃいっぱいありました。掃除の仕方とか、こういうところでこんなこと言うたらあかんねやんなとか(笑)。いまだに治ってないんですけど、だいぶマシになりましたね。人の気持ちを考えるとか、嫌われたら損やでとか。
--じゃあ、落語も身につき、社会常識も身につき。
落語のネタ帳のおかげで漢字も書けるようになりました。日本語も全然知らんかったから。落語にもよう教えてもらいましたわ。めっちゃ勉強になります。
--古典落語なんか特に。
そうですね、礼儀作法もそうですし、挨拶の仕方とか、人間関係も入ってますし、めっちゃ勉強になります。
--そうやって勉強していくうちに、新たに興味を持ったものはありますか?
歌舞伎とか文楽とか、ちゃんと見なあかんなって思うようになりました。芝居噺もやりたいなと思います。あと、若い子にウケるようにもっとしたいですし。
--今、イケメン落語家というスポットも当たっていますが。
めっちゃうれしいですけどね、純粋に。これで一人のファンが増えて、一人でも落語を知ってくれたらいいなと思います。僕も師匠がテレビに出てはったから落語を知れたし。「イケメン落語家」って一つに括って世間に出してくれるのはめちゃめちゃ嬉しいですね。落語を若い世代にも伝えていきたいです。みんな楽しめる芸だと思いますので。
--落語に最も惹かれる部分は?
何と言っていいのか、師匠の落語とか滑稽噺もハートフルというか…。やっぱりハートフルな人が落語をやると、おもろいのに涙が出るというか、心がほっこりするというか。師匠の「笠碁」がめちゃ好きなんですけど、何気ない会話とか、人間模様を描いているだけやのにすっごいおもろいし、すっごい泣けてくるし…。笑いだけじゃない感情を生むのがすごく奥深い、味わい深いというか、いろんな感情を芽生えさせてくれますね。
--それも落語を始めて気づいたんですか?
そうですね、気づきました。
--将来、やりたいネタはありますか?
近い将来では「立ち切れ線香」をやりたいなと思ってます。いや、今年中にやろうと思ってます。あとは師匠がやっている「子は鎹」、「笠碁」。師匠がやっているネタは全部やってみたいです。師匠が1回でもやったというネタは、1度辿ってみたいですね。
--演じると言う意味では、落語の手ごたえは?
めっちゃ難しいですわ。師匠の通りにやってると思っても、師匠はウケるのに、僕は全然伝わってないなとかもありますし。手ごたえも何もないですね(笑)。やっぱり難しいですね。これをやっとったら大丈夫やっていうネタが1、2本しかないから。これやったらお客さんが満足してくれるんちゃうかっていうネタをもっと増やさなあかんから、頑張らなあかんなと思います。1つネタを仕上げて、商品にするっていうのは難しいですね。
--予選で口演された「動物園」も仕上げるのに時間かかりましたか?
「動物園」なんかは100回くらい、お客さんの前でやらせてもらってるんちゃいますかね。覚えてから事あるごとにずっとやってるから、もうかっちり固まってるというか。決勝でやろうと思う「ハンカチ」なんかも、いたるところでやらせてもらってるから、もうかっちりしたものに。やっぱりお客様の前でかけるとなると…。
--「動物園」を何回もかけて、これはベストだっていう日はありましたか?
ありました。これや!っていうのは。でも“気”で全然、変わりますね。
--落語家としてさらに邁進するにあたって、ここを克服したい、乗り越えたいというのはありますか?
活躍されている先輩ってどこに行っても笑わせますし、どんな状況でも笑わせますし、どこでも、どんなお客さんでも笑わせてるから。僕なんか、くすりともされないときがまだまだありますから、どこに行っても100%ウケるようになりたいですね。先輩方は100%ウケてますもん。絶対笑いとってはる。そんなふうになりたいですね。もうスベリ知らずになりたい。いつ聞いても、どこでも、どんなネタでも笑いを取る噺家になりたですね。
--“あおばさんが来るんやったらおもろいやろ”というような。
そうなりたいですね。そうです。
--では最後に、決勝への意気込みを改めて教えてください。
一番若手で最年少ですから、胸を借りるつもりで。下克上を狙って、ばっと優勝して、このままがっと行く! 師匠ぐらいの位置までボーンと!
--それ、時空超えますね(笑)。
(笑)超えますね。もうバーン!と行って獲ったってなると、何か変わると思いますので、若さと勢いでバーンと、ビビらず行きたいです!
(2016年6月20日更新)
▼6月21日(火) 18:30
天満天神繁昌亭
[出演]
笑福亭たま
林家笑丸
桂雀五郎
桂ちょうば
桂雀太
桂三四郎
笑福亭喬介
露の眞
桂三語
桂あおば
※未就学児童は入場不可。
[問]天満天神繁昌亭
[TEL]06-6352-4874
※前売券完売
<第一夜>
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2016-04/1604-006.html
<第二夜>
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2016-04/1604-011.html
<第三夜>
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2016-05/1605-001.html
<第四夜>
https://kansai.pia.co.jp/interview/stage/2016-06/1606-005.html