ホーム > インタビュー&レポート > 中川翔子がミュージカルで舞台初挑戦! 韓国発の傑作心理スリラー 『ブラック メリーポピンズ』が再演
――中川さんは歌手、タレント、声優、女優とマルチに活躍されていますが、意外にも初舞台なんですよね。
舞台やミュージカルはいろんなスキルが必要になるし、特にミュージカルは歌が歌えて、華があって、その役として生きる表現力と、作品を作り上げるための協調性も必要で、その全部がないとできない世界だと思っていて。今までは、元々好きだったことが仕事につながっていくような形で、ありがたいことに、比較的好きなことをたくさんやらせていただいてきたんです。映像の経験もあるのですが、やっぱり“しょこたん感”を必要とされるというか、自分とリンクする役を演じることが多かったんです。だから、今回の舞台でアンナというまったく違う人間を生きるのは、本当に覚悟して挑まないといけないと思っています。
――最初にオファーを受けてどう思いました?
ビックリですよね。“やれるのか、それは…!?”って思っているうちにポスター撮影があって(笑)。ミュージカルの歌は、役のほとばしった感情を表現するものだったり、苦悩したり心が張り裂けそうになりながら、物語の流れの中で自然と湧き上がってくるものを歌う。ライブのように歌うこととは全然違いますが、“舞台で歌を歌う”という意味では今までやってきたことも活かせるかなと思っています。プレッシャーに思ったのは、初演から変わるキャストがアンナ役の私だけということ。すごく好評だったこともありますし、舞台初挑戦なので、怖さはありました。でもそれを正直に演出の鈴木裕美さんにお話しすると、“前回とは切り離して考えて。ゼロからだから”って仰ってくださったので、覚悟を決めることができましたね。
――実際に、歌げいこで歌ってみていかがですか?
ここからチャレンジが始まるんだなって思いました(笑)。今まで、人に合わせてハモることがあまりなかったので、男の人の声が重なったときのハーモニーがすごく新鮮で面白いですね。ひとりで練習しているときとはまた違う、揃ったときにしか出ない重なりの美しさがあるんだなって。これも生の面白さですよね。
――今まで歌ってこられてきたものとは全然違うんですね。
発声方法も、喉を壊さない歌い方をいろんな角度で教えてくださって。目から鱗でした(笑)。ライブでは2日で4回公演のときだと、さすがに4公演目では喉がガラガラになりだすこともあって、勢いとか気合で乗り切っていたんですが、ミュージカルはそういうわけにはいかないですよね。ライブもそうですが、お金を払って、寿命という命を削ってきてくれたお客さんに、アンナという人間はこうなんだって毎回ちゃんと見せられるように、体調も喉も完璧じゃないといけない。プロとしてちゃんとするぞ!って、意識しています(笑)。
――歌げいこをする中で課題だと思われたところはありますか?
きれいに音符を追うだけではなくて、アンナとしての心情をどう入れていくかですね。それに、いつも4分の新曲を覚えるだけでも精一杯なのに、セリフをどうやって覚えるのかなって(笑)。今、年齢的にはRPGでいうとレベル30を超えてドラマティックな辺り。今までの積み重ねがどう影響してくるかという佳境に差し掛かっている瞬間なんです。だから、自分自身、変わりたいと思って髪も切りましたし、人生で初めて一人暮らしを始めて…。それくらい覚悟して挑んでいるんです!
――初演を観られて、どんな印象を受けましたか?
大人になって再会した兄弟たちにすごく距離感があって、何を背負っているからこんなになっちゃったんだろうって。観ている側としてもその謎を知りたいけど、知るのは怖いし、知ってしまうとどうなるんだろうっていうアンナたちの痛みも伝わってきました。それと、タイムジャンプがあるのが面白くて、子どもの頃の姿もそのまま演じるんです。大人のアンナは人間不信で心を閉ざしているけど、子どもの頃は無邪気で男勝りで、“だからお兄ちゃんはダメなのよ!”ってグイグイいくギャップ感が面白いなと思います。初演の音月さんは元宝塚の男役さんなので、すごくカッコよくて(笑)。でも大人のアンナは繊細で品もあって、折れそうな美しいアンナで、その演じ分けが本当に素敵でしたね。私は見た目も声質も違うので、また全然違うアンナ像が出来上がると思います。
――中川さんならではのアンナ像を作り上げるために、意識したいことはありますか?
ギャップ感は大事にしたいですね。私もライブだと“お前ら行くぜ~!”とかスイッチが入るんですけど、普段はひとりでいるのが本当に好きなので(笑)。ちょっと近い部分はあるかもしれませんね。本当はアンナもこういう部分があったんだなっていうところも踏まえつつ、だからこそ、どうしてこうなってしまったのかというミステリアスな部分が物語のキーになっていると思います。
――今回、何もかも初めてのことだと思うのですが、レベル30を超えて、ご自身としても新しいことをしていこうという感覚があるのですか?
20代は怒涛の忙しさの中で、目の前のことを次々とやり遂げることに必死で。大変なことはもちろんあったけど、たくさん夢が叶ってすごく幸せだったし、いろんな出会いもあって、それはすべて人生というRPGの中での経験値になっていて。そしてさらにレベル30の扉が開いて、今回の初舞台のように目に見えて新しいことが起きていると、もうそれを楽しむしかないぞ!って思うんです。20代の私だったら、知らないものは知らない、興味ないことはできないって心の扉を閉ざしていたのが、最近は“新しいことを面白がった方がいいんじゃないの!?”っていう自分が出てきて。“面白そう!”って思うと同時に“怖い!”って思う自分がいる感じが面白いですね(笑)。嫌いだったお酒もトマトジュースも好きになりましたし、掃除洗濯なんて絶対しないと思っていたのに、すごく楽しんでいるんです。知らなかったことをやる面白さが分かってきた中で、このミュージカルも、“新しいご馳走がきたぞ!”と思って楽しみたいですね(笑)。
――20代でいろんな夢を叶えてきてこられて、今現在の夢はどんなものをお持ちですか?
32歳というのは父が亡くなった年で、ブルース・リーが亡くなった年でもあるので、32歳までにどんなことができているのかなって思いますね。今年は、私の人生で夢にも思わなかった新しい挑戦が続くので、生きた証として、“やれてよかった!”というカッコいいタワーを建てたいですね。それと、猫牧場を作りたいという壮大な夢は持ちつつ(笑)、今年は歌手デビュー10周年イヤーでもあるので、子どもたちにアニメソングを届けたいという思いはあります。
――まずは『ブラックメリーポピンズ』からですね!最後に改めて意気込みをお願いします。
今回はアンナが変わって、前回観られた方もまた新鮮に観ていただけると思います。4人の兄弟が心に負った深い傷の謎、その謎を知ることによって胸に迫る痛みがありますし、過去の鮮やかな場面もあるので、心理的な光と闇のふり幅の面白さが感じられると思います。今回、舞台初挑戦なので本当に気合いが入っています!ぜひ劇場で楽しんでください。
取材・文:黒石悦子
撮影:大崎俊典
衣装:Jane Marple
(2016年5月26日更新)
発売中
Pコード:448-117
▼6月3日(金)19:00
▼6月4日(土)13:00/17:00
▼6月5日(日)13:00
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
全席指定-9500円
[脚本][作詞][音楽]ソ・ユンミ
[演出]鈴木裕美
[上演台本]田村孝裕
[訳詩]高橋亜子
[出演]中川翔子/小西遼生/良知真次/上山竜治/一路真輝
※未就学児童は入場不可。
[問]芸術文化センターチケットオフィス
[TEL]0798-68-0255
6月3日(金)19時公演:握手会
6月4日(土)17時公演:出演者全員によるアフタートーク
中川翔子(なかがわしょうこ)●1985年5月5日生まれ、東京都出身。2002年「ミス週刊少年マガジン」に選ばれてデビュー。TBS『王様のブランチ』出演を皮切りに、バラエティ番組に出演。2006年にCDデビューを果たし、コンサートツアーも精力的に行い、2009年には初の武道館公演を敢行。“しょこたん”の愛称で国民的人気を誇り、ブルース・リー、ジャッキー・チェン好き、映画好き、アニメ好き、ゲーム好き、猫好きなどマニアックな一面も持つ。今年7~8月には『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』にアリーナ役で出演。