インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「悪役が主役の吉本新喜劇があってもいいのでは…?」 そんな思いで挑んだ『太田芳伸の吉本新喜劇2026』 初めての座長公演で掴んだものとは?

「悪役が主役の吉本新喜劇があってもいいのでは…?」
そんな思いで挑んだ『太田芳伸の吉本新喜劇2026』
初めての座長公演で掴んだものとは?

今年1月より、なんばグランド花月では月2回、若手座員が座長を勤め、オリジナルの物語を上演する『吉本新喜劇2026』が始まっている。1月の後半回では、「おじゃま死にます!」のギャグでも人気上昇中、若手1の強面座員・太田芳伸が座長となって、うどん屋を舞台に悪役が主役の新喜劇を繰り広げた。吉本新喜劇で悪役がメインになるのは珍しいこと。新たなる世界を切り開かんと挑んだ太田の、座長公演直後の心境を聞いた。

--まず、座長公演を終えてみていかがですか?

ほっとしてます。ちょっと肩の荷が下りて…脱力感しかないです(笑)。

--決まってから公演までの期間は?

1ヶ月もなかったんじゃないですかね?

--その間は?

もうプレッシャーでしたね。去年までやってた『吉本新喜劇2025』(若手座員中心の公演)もリーダーでやっていたわけじゃなくて。今年から(『吉本新喜劇2026』)は座長1人で。やったことないからどんな感覚でやったらいいのか分からないし、しかも一人やし。どこから手をつけていいのか分からなかったので、作家さんと話し合うことから始めようってことで、15回くらいは打ち合わせしたと思います。年末年始からずっと。皆さん忙しいのに協力していただいて。

--ではやっと新年を迎えられたような心境?

本当、それくらいの気持ちです。お正月も、お正月どころじゃないという感じでした。

--なぜ座長公演をやってみようと思われたんですか?

自分のステップアップとしてやってみてもええかなと思って立候補させていただきました。すごい勉強にもなりますし、何か掴めたらさらに見えない自分が見えてくるんじゃないかと。新たな自分が発見できたらなと思って。

--何か見えましたか?

やっていて思ったのは、座長さんのすごさ、作家さんのすごさですね。45分から1時間のお芝居を1から作ったことがなかったので、こんなに難しいものなんやと改めて思いました。普段は『吉本新喜劇』の1座員として、もらった台本を覚えて演技をするだけやったんですけど、人のことを考えて配役を決めて、常に1つ1つ決めていかなあかんことがこんなに難しいことやったんかと痛感したというか。

--舞台の幕が閉まって、どんな心境になりましたか?

脱力感と、ほっとしたのと、面白かったなっていうのと、あと感謝ですね。こんな言い方は変ですけど、幸せでした(笑)。僕と作家さんが作った台本をこんなにみんなが丁寧にやってくれて、こんなに一生懸命覚えてくれて、こんなに一生懸命演じてくれたという達成感があったんですよ。だからめちゃめちゃ幸せでした。「ああ、ありがとうございます!」みたいな。吉本新喜劇ってめっちゃええとこなんやなって思いました。元々漫才とかやってましたけど、そういうところでは味わえないものを味わえたなと思いました。

--太田さんの新喜劇は、うどん屋さんに実は組長の息子という青年が働いていて、組長の舎弟である太田さんは彼の見張り番として一緒に働くようになる…というお話でしたが、この案は太田さんが考えられたんですか?

僕は吉本新喜劇に入って10年なんですけども、ほぼ9割、ヤクザ、チンピラ役なんです。ほぼ悪役しかやってきてない。なので、悪役を主役にしたらどういうお話ができんねやろっていうところから入ったんです。今まで培ったものをどうやって広げていったら面白いんやろうとか、今までやってきた悪役でも新しいものができるんちゃうかな、こういうものもあるのかもしれと何か発見できるお芝居にしたかったんです。悪役でもこういうのがウケるんやとか、そういったことが見つけられたら…。悪役でも主役になれる新喜劇を作りたかったんです。それが大きかったですね。

--新喜劇で悪役が主役というのは珍しいですよね。

珍しいです。悪役が主役を張っているのはなかなかないので。自分は悪役をずっとやり続けてきたので、“僕にしかできない芝居はこんなんやで”というものが見せられたらと思って。お客さんもめちゃめちゃ面白かった、めちゃ笑わせてもらったって言ってくれる方が多くて、僕の中では成功の方やと思います(笑)!

--1時間、ほぼ出ずっぱりでしたが、いかがでしたか?

最初は緊張でしたね。めちゃめちゃ緊張しました。けど、ちょっとしたらええ緊張で進められました。悪い緊張が走ると、僕、台詞が飛んだり、ネタかんだり、ぎこちなくなるんですけど、それがなくてできたのは、めちゃめちゃありがたかったです。

--シリアスなシーンでトーンを落として、太田さんの一言でガラッと空気を変える場面が印象的でした。

ああいうシーン、好きなんですよ。これまでも短い新喜劇ではやらせてもらっていたんです、ああいう緊迫感のあるシーン。あのシーンはガッとみんなを惹き付けて、最後にドッと落とさなあかんので、めちゃめちゃ集中してました。一番力を込めたシーンでしたね。

--エンディングのトークでも話題になっていましたが、最後のシーンの演出ですね。めでたしめでたしで幕が下がりかけているところで、清水啓之さんが舞台袖に出てきて「誰か忘れてないかー!」と出てくるという。あれも珍しいエンディングだなと。

珍しいですよね。新喜劇ではあんまりないと思います。幕が下りたら終わりなので、途中で幕が下りるのを止めるっていう。ああいうことをやって、もし成功したら、またひとつ新たな発見かなと思ったので。やってみて使えると思いました! 機会があればもう1回使ったろって(笑)。

--12月には『吉本新喜劇2026』のベスト公演が再演されますが、太田さんの新喜劇が選ばれたら…。

もちろん使います! 絶対使います!(笑)

--『吉本新喜劇2026』は10年後の吉本新喜劇の担い手を育成するという目的で始まっていますが、今後、吉本新喜劇の座員としてどうなりたいですか?

吉本新喜劇といえばこの人っていう看板役者ですかね。でも座長になるつもりはあんまりないんです。自分がリーダーの人格かと考えると、そうじゃないなと今は思っていて。だから僕は、池乃めだか師匠や島木譲二師匠、チャーリー浜師匠のような、座長ではないけど“新喜劇にこの人あり”と思われる人、そういう部分を担える人、座長とかいろんな人を支えられる座員でありたいと思っています。「待ってました!」じゃないけど、新喜劇で見たかったんやとか、そういうことをお客さんに少しでも思われる座員でありたいですね。


--今年、吉本新喜劇入団11年目ですが、これまでの10年も「新喜劇にこの人あり」というポジションを目指して来られた?

そうですね。先ほども言いましたが、僕、9割方怖い役だったんです。だから、そこでは絶対に誰にも負けたくないというか、“この役をやらせたら太田が一番”というつもりでめっちゃ頑張ってきました。たまに座長さんや先輩に「この役はお前しかおらん」って言ってもらえるんです。それがめっちゃうれしいんです。そういうことを求めてきたから、結果としてのその言葉をいただいて、めっちゃ感動してうれしくて。やってきたことは間違いじゃなかったんやなっていう思いもあります。この先も、そこを突き詰めるとともに、新しい願望が出てきたら、そこに向かって行きたいなと思います。

--では、太田さんが考える「吉本新喜劇での悪役の条件」を3つ、お願いします。

まず、絶対的な怖さ。あとは、怖さに緩急がつけられるか。緩める力もめっちゃ必要やと思うんです。キツイだけの、怒鳴りっぱなしでは勤まらないと思うんです。緩める部分を持っていたらより深みが出るというか。もう一つは、顔。絶対的に怖い顔。吉本新喜劇って結構優しい顔の子が多いんです、若手とか。僕、“怖い顔してるわ、殺し屋みたいな顔してるわ”ってよく言われるんですけど、そういう面では得していると思います(笑)。強面は誰もができるものじゃないと思うんです。やっぱり顔って大事なんやなっていう気がします。

--悪役に対してゆるぎない思いを抱かれたのは、大体どのくらいの時期からなんですか?

(吉本新喜劇に入って)2年目くらいですかね。“結構、強盗の役が来るな…”って思ってたんです。登竜門じゃないですけど、入って1年目、2年目の頃ってチョイ役というか、台詞のない下っ端のチンピラ役みたいなんが多くて。そのうち、“自分は上になっても(悪役が)できるんちゃうか”って思うようになって、いろいろ勉強して、引き出しを持つようになって。それを発揮したときにそういう役が来るようになって。“これで行けるんちゃうか?”って思うようになって。

--この先、悪役の頂点に?

君臨させてもらおうと思います(笑)。

--年齢を重ねるごとに凄味も出てくるんじゃないですか。

そうですね、出たらいいんですけど…(笑)。先輩の演技もめちゃうまいので、めちゃ勉強になるんですよ。先輩がヤクザ役やってたら、袖でめちゃ見るんですよ(笑)。“どうやってやってはんねやろう”とか、“なるほどな”って思ったり、“自分やったらどうするやろ”って感じで見たりもします。

--今後は、吉本新喜劇以外でも活躍の場を広げていこうとか、何か目標などありますか?

欲を言えば映画とかにも挑戦してみたいです。悪役で自分がどれくらいできるのか試したいです。出たいというより、試したい。自分が今、どんな位置にいるのか。全然あかんのか、通用するのか分からないので。今後、そういうお話が来たら挑戦したいと思います!




(2016年3月 7日更新)


Check

安井まさじの吉本新喜劇2026

▼3月9日(水) 19:00
なんばグランド花月
当日 全席指定
大人-1500円
小学生以下-1000円
[出演]安井まさじ/他


佐藤太一郎の吉本新喜劇2026

発売中
Pコード:449-547
▼3月16日(水) 19:00
なんばグランド花月
全席指定
大人-1500円
小学生以下-1000円
[出演]佐藤太一郎/他

チケット情報はこちら

※5歳以上または身長110cm以上の方はお席が必要となります。(膝上でのお子様の観劇は1名様のみ可能です。)ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので予めご了承下さい。変更・払戻不可。最新の出演者情報等詳細はなんばグランド花月ホームページでご確認下さい。
[問]チケットよしもと予約問合せダイヤル
[TEL]0570-550-100