ホーム > インタビュー&レポート > 世界最高峰のミュージカルスター/ダンサーの ヒントン・バトルと夢の共演を果たす 日本が誇るタップダンサーHIDEBOHが語る 『ヒントンバトルズ アメリカン・バラエティ・バン!』
――間もなく『AVB!』が開幕となりますが、ヒントンさんとタップダンスをされたのは、9月に行われた製作発表会見のが初めてだったんですか?
あれが初共演ですね。タップダンスはジャズみたいなところもあって、知らない人とでも“この尺で行こう、こんな感じで入って”と口頭説明でできるところもあるんですね。振付というよりかは“何小節目でこうくるぞ”みたいな。あの時も口頭説明で“こう行こう”と話したのみでした。
――HIDEBOHさんにとって憧れのヒントンさんです。
そうですね~、やっぱり感慨深いですね。ヒントンさんのダンスを観ていた時から年数が経っているので、まじまじと思いますよね。“そうか、あの時のあの人がこの人なんだな”って。分かってはいるものの、感慨深すぎて同一人物かどうか一瞬分からなくなりましたね(笑)。そういう不思議な感覚はありました。
――実際にお会いして、ヒントンさんとお話されて、どうでしたか。
「曲をこういうふうに考えていて、いろんなジャンルのスペシャリストを呼んで、日本でやる以上、これまで観たことない、日本から発信されているショーを作るのが使命だと思うから」とおっしゃってましたね。
――『AVB!』をご覧になったことは?
ビデオでかろうじてで。当時は日本人のキャストも大分、入られていて。今回は恐らく日本人キャストは私一人だと思うので、どういうふうになるのか。『AVB!』とタイトルは一緒ですけど、当時とは全く違うものになると思いますね。あれから25、6年ですからね。
――四半世紀が過ぎて、タップダンスの世界も進化していますか?
進化してますね。ヒントンさんが作ったスウィングジャズとヒップヒップを合わせた“スウォップ”もしかり、当時はヒップホップ自体、存在していませんからね。どんなになるかな?ってわくわく感はありますね。
――先ほど、タップダンスはジャズのようなものだとおっしゃていまして、音楽的感覚であることを初めて知りました。
簡単に言うと、体が楽器なんですね。パーカッションやドラムが足に置き換えられていると思うんです。リズム楽器で、特に黒人さんのタップは音を重視されています。完全に体が楽器としての役割を果たしていることが魅力じゃないかと思いますね。
――同じタップダンスでも、お国柄の違いなどあるんですか?
ありますね。ステップ一つにしても日本人は生真面目なんでしょうね。自分も含めてですけど、がっちりやるんです。向こうはバラバラバラ~っやってもういいやと。だけど全体を通して大陸がでかいというか、そんな感覚は感じますね。綿密なことをやるとこちらの方が細かく考えるのかなって思うんですけど、全体像を通しての輪郭はやっぱりアメリカのものなんだなって思うことは多いですね。
――スケール感の違いですか。
まさにそうですね。アメリカに行った時「Who are you?」って友達に言われたんですね。君は日本のアイデンティティを持って来ているんだけど、どこにアイデンティティがあるんだ?と。色は日焼けして、頭はドレッドとかで、服はヒップホップの格好をして、タップをやってるけど、君の中のどこに日本があるんだい?って言われ続けて。それで、日本に帰ってきてもいろいろ探し続けて、“日本で何だろうな”ってなったんですね。それで、タップをやっている限りアメリカの恩恵を被っていることには変わりないんだけど、日本のタップって何かなってことで、和太鼓など日本の伝統音楽と掛け合わせてどんなことができるのかなってずっと研究していて。それが最終形にではないのですが、それが結局『座頭市』に至って。そうしたら初めて外国人が観てくれて。それまでは煌びやかな衣裳を着てスーッと踊っても、“日本人がよく真似とるな”っていうことに留まっていたのではないかなと。そういう気持ちはどこかにありましたね、今思えば。
――では、『座頭市』でのタップのシーンは、HIDEBOHさんのキャリアにおいて、一つ抜けた感じだったんですか?
最初はもちろん、ピンとは来なかったんです。「ちょんまげでタップをやる」と武さんに言われた時に、そういう演出なんだとしか思ってなくて。「草鞋でやる」と言われて、“わ、観にくいな”といろんなことを思うわけですが、日本人がタップをやることと、海外から日本を観ることが何なのか分かったような気がして。普通に生きていると分かっていなかったですよね。日舞までいかないですけど、三味線もそうですけでも、『ソーラン節』とかカッコいいなって思って。ある意味スウィングしてるなとか、グルーヴしてるなって改めて聴くようになりましたね。でも、海外に出ないと分からなかったですね、その意味が。
――下駄でタップというので、明治時代に日本にやってきた外国人が「日本人は下駄というものを履いて、カタカタという乾いた不思議な音を鳴らしながら歩いている」という記述を残していたのを読んだのですが、なんだかそれに近いものを感じましたね。日本にもあり得ない状況ではなかったのではと。
究極は地団駄だと思うんです、悔しいとか、怒りとか。アイルランドはアイリッシュダンスがタップの元だと言い張ってるし、アメリカはアフリカン・アメリカンのクロックダンスが元でだと。船の甲板の上で黒人が手を縛られて動けないから、みんなの意思の疎通として足でやった。それがクロックダンス。それが最初だと。日本にも歌舞伎に『高杯(たかつき)というのがあって、下駄を履いてカンカンカカンと鳴らすんですけど、先輩方もあれがタップの元だとおっしゃっていて。ということは、見栄を切る、張るじゃないですけど、リズムは細かくはないですけど、日本なりに確かにあるんでしょうね。こうなると歴史の話になるので、私なんかが分かるレベルじゃなくなるんですけどね。
――なるほど、面白いですね。世界共通ですね。
共通ですね。そこまでしないと世界中の方と共演するという領域まで至らないのだろうなと。まずは日本を知ることが大事だったなぁって、当時、考えたのを覚えてますね。
――では続いて、世界三大タップダンサーのお一人であるヒントン・バトルさんの魅力を聞かせてください。
当時から歌、それからダンス、バレエテクニック、どれをとってもすごかったですね。『ミス・サイゴン』とか『オズの魔法使い』とかありますが、総合的にミュージカルスターとしてすごかったです。しかも圧倒的な技術でしたね。歌ももちろんすごくうまい。何で僕がブロードウェイ・ミュージカルの『ソフィスティケイティッド・レディース』(ヒントン・バトル出演作)をバイブルにしていたかというと、このミュージカルの初代主役のグレゴリー・ハインズの師匠がヘンリー・ルタンという方で、私が弟子入りした人です。もともと、グレゴリー・ハインズがあまりにも好きで、この人は誰に習ったんだということで行き着いたのがヘンリーだったんですね。ヘンリーは、サニー・デイヴィスJr.など黒人のタップの一派で、『ソフィスティケイティッド・レディース』の振付も手がけたんです。それが、だんだんつながってという。グレゴリーもヘンリーも既に亡くなっていますが、その後にヒントンと会って。それが飯屋で会ったというのではなくて、一緒に何かをするという、これも一つの縁ですし、日本人として世界的に発信しなくちゃいけないことをやりたいなという思いです。
――いつかご一緒できると考えていらしたんですか?
どこか鮮烈に残った人には会いたいなってずっと思ってますし、会うといってもサインをもらいに行くということではなく、人生でご一緒したいは考えますね。そういった意味では、グレゴリー・ハインズにお会いできたこともその一つだし、ずっと思っているとちょっと近づくみたいな。もちろん悔いのような思いもあります。グレッグ・バージというヒントンとともに「ブロードウェイズ・ベスト」と呼ばれていた方は亡くなったのでお仕事はご一緒できなかったし。お会いしたことはありましたけど、仕事という意味ではお会いできなかった、ご一緒できなかった。世代があるのでどうしようもないのですが、やっぱり会える方というのは、全員ではないですけど、強く鮮烈に残って、縁と縁がひゅ~っと一緒になるかなということは信じてますね。
――何年かかっても思っていたことが実現することは素晴らしいですね。そのために心がけていることをお伺いしようと思ったんですが、今、おっしゃっいましたね。信じることだと。
もう、完全に信じることですね。思い込むことです。勘違いでもいいからそう思い込んでいると、結構そこに近づくはずと僕は思っています。だから、思いが弱いと遠のいていきますよね。ずっと単細胞のようにそれを思っていると、確実に自分の生き方、歩き方がそこに近づいていくんじゃないかなという勝手な分析なんですけどね(笑)。まさか僕がよしもとに入って、ヒントンさんが来日してと、そうなるとは全く分かりませんでしたが、何か縁と縁がつながって、そうなっていくんじゃないかと思ってますね。
――思い続けること。
そうですね、その代わりかなり鮮烈じゃないとダメですね。ちょっとでも疑いがあったり、ほかに余地があるとそこには近づかないから。自分がどこに行くかと明確に思っていくことも重要かもしれないですね。それ以外は何か邪念のような気がしますね。
(2013年12月10日更新)
<プレビュー公演>
▼12月12日(木)・13日(金) 18:30
<本公演>
▼12月14日(土)~16日(月)・18日(水)~25日(水)・27日(金)~30日(月)
(月)16:00 (火)(水)(木)(金)18:30 (土)(日)19:00
※12/16(月)18:30。12/29(日)16:00。
▼1月5日(日)・6日(月)・8日(水)~13日(月・祝)・17日(金)~19日(日)・22日(水)・24日(金)~27日(月)・29日(水)~31日(金)
(月)(水)(木)(金)18:30 (土)(日)19:00
※1/13(月・祝)・19(日)・26(日)16:00。
<追加公演>
▼2月1日(土)~3日(月)・5日(水)~9日(日)・11日(火・祝)~14日(金)
(月)(水)(木)(金)18:30 (火)(日)16:00 (土)19:00
なんばグランド花月
S席-8000円 A席-6000円
[出演][演出][振付]ヒントン・バトル
[出演]HIDEBOH/他
※未就学児童は入場不可。ビデオ・カメラまたは携帯電話での撮影禁止。出演者は変更になる場合がありますので予めご了承下さい。尚、変更に伴う払戻しは行いません。最新の出演者情報はHINTON BATTLE’S AMERICAN VARIETY BANG!公式ホームページでご確認下さい。車椅子の方はチケット購入前にチケットよしもとコールセンター[TEL]0570(041)356まで要問合せ。公演中の飲食不可。
[問]キョードーインフォメーション■06-7732-8888/チケットよしもと予約問合せダイヤル■0570-550-100
『HINTON BATTLE’S
AMERICAN VARIETY BANG!』
公式サイト
http://www.americanvarietybang.com/
12月8日、『HINTON BATTLE’S AMERICAN VARIETY BANG!』のPRになんばグランド花月で行われている『吉本新喜劇』に出演したヒントン・バトルとHIDEBOH。HIDEBOHがタップを取り入れて公演概要を紹介すれば、ヒントンと4人のダンサーが本公演の1シーンを歌とダンスで披露した。そして川畑泰史のボケに全員でコケるなど、お笑いにも挑戦。その見事なコケっぷりに芸人たちから賞賛さんの声が上がっていた。
そして公演を終えた川畑、ヒントン、HIDEBOHが囲み会見に応じ、「101年も続いている吉本興業で、吉本新喜劇の中に加わり、すごい才能のある芸人の皆さんと一緒に舞台に立てたことを、本当に光栄に思います」と感想を語ったヒントン。「吉本新喜劇は日本の顔。そこにダンスで参加させてもらえるなんて…。ドキドキワクワクしながら、みんなで楽しむことができました」と、HIDEBOHもコメントを残した。川畑によればヒントンやHIDEBOHとの共演に、芸人たちは羨望の眼差しを送ったとか。「座員一同、本当に感動したし、一緒のシーンに出られなかった者は悔しがっていました。興奮しました!」とテンション高く語る川畑。
『HINTON BATTLE’S AMERICAN VARIETY BANG!』幕開けムードも盛り上がってきたなんばグランド花月。大阪から世界へ発信するエンタメショーをお見逃しなく!