ホーム > インタビュー&レポート > 新たなるスタイルで落語に新風を吹き込む柳家花緑に その手法や舞台で披露する“新作落語”について、 そして巨星・立川談志への思いを聞いた!
柳家花緑(以下、花緑)「洋服での高座は2010年からやっていて、今回大阪でお見せするものも昨年9月に東京でやって、お客様に一番評価をいただいたもので、満を持して大阪でチャレンジ
--このスタイルを始めるきっかけは、情報番組『とくダネ!』(フジテレビ系列)でのコーナー「温故知人」を担当したことによる。
花緑「『温故知人』で、VTRとVTRの間で落語を3分間、スタジオでやることになったんです。そのときスーツ姿で、腰掛けてその物語を語るという提案をしました。それを2年半やりましたら、僕自身が変わっちゃったんですね。以前は『落語こそ着物に座布団だ』と言っていたんです。あれは『とくダネ!』で工夫としてやるだけであって、普通の高座ではやりませんよと。が、2年半やった結果、骨の髄まで変わって、『いいんじゃないですか、その方がより自然じゃないですか』と変化が生じました。そして、このスタイルでは、やる側の人間の生理があるということがわかったんです。ほかの落語家さんがやらない理由は、まず気持ち悪いんでしょうね。不快、不愉快。すべてをぶっ壊して洋服に椅子でやるのは、やっぱりプレイヤーの気持ちがそれを許さないのだろうと。僕はそれを2年半やったら、そのスタイルが大げさでない、大したことではない。つまりマイナス材料が自分の中になかったんです。そばを食べたり、手紙を書く仕草も、マルセル・マルソーの域になるんですね。パントマイムとしてどうかという、その辺のリアリティがお客様に伝われば、扇子も手ぬぐいもいらないんじゃないかと」
--そして、実際に舞台でやってみての発見も多いという。
花緑「やりながらわかることがいろいろあって、この1年間で大体、わかってきました。白い箱に腰掛けてやっていたときに、自分が箱のどの位置に座っているかわからなくなって、箱の縁を触りながらやったんです。そしたらお客さんに、『あのシーンの主人公は、立ってしゃべってたの? 座ってしゃべってたの?』と言われて。それは立っているシーンだったんですが、手で触っていると座っているように見えるんですね。以前、古今亭志ん朝師匠に『愛宕山』を習ったとき、山の中腹で待っている旦那のところにたいこもちが後から追いついてくるという場面で、僕は最初、手をついて『お待たせしました』と言ったんです。それを志ん朝師匠に『あそこ、手をつけちゃいけないよ』と言われて。つまり、手をつけると座ってお辞儀していることになるからと。これは洋服も着物も一緒ですよね。逆に“今、椅子に腰掛けた”という演技をしたいときは、意図的に触ればいいことがわかったんです。そうすると、『今、椅子に座ったな』という動きをお客さんに想像してもらえる。これはやりながら出た発見です。着物も椅子もルールは一緒。ほかにも歩くときには足踏みをして音を鳴らすとか、新しい工夫も生まれました」
--そして気になる演目はというと…。
花緑「1つは決まっていて、小惑星探査機はやぶさを擬人化した『はじめてのおつかい』という噺をやります。人間で言うと小学校低学年ぐらいのはやぶさ君が、イトカワさんちにおつかいに行くという話です。はやぶさは映画化もされていますが、映画を見た人が聴いても(内容が)かぶっているからつまらないということはないと思うんですね。映画を 観た方は、より感動が大きいというか、物語としてストレートに届いたと言ってくれて。僕は、はやぶさ関連の作品は、日本には4つの映画と1つの落語があるということを全面的にアピールしたいですね。長さは30分くらいです。先日、東京でやらせていただきましたが、一番評判がよかったです」
--この『はじめてのおつかい』の作者が、放送作家としても知られる藤井青銅だ。次ページでは、今、藤井青銅と手がけた作品について聞いた。
(2012年1月18日更新)
発売中
Pコード:416-347(1/26(木)まで販売)
▼1月29日(日) 14:00
梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
指定席-3800円
[出演]柳家花緑
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション[TEL]06-7732-8888
柳家花緑公式サイト
http://www.me-her.co.jp/index.html
やなぎやかろく/1971年生まれ、東京都出身。1987年、中学卒業後に祖父でもある柳家小さんに入門。1989年、二ツ目に昇進。そして1994年、戦後最年少の22歳で真打昇進、柳家花緑に改名した。落語のみならず、テレビのコメンテーターや舞台役者など、幅広いジャンルで活動中。2月13日(月)にはサンケイホールブリーゼで開かれる東西の“若旦那”が集結しての落語会『東西激突落語会-俺たち若旦那』(Pコード:416-977)にも出演する。