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吉本新喜劇の若手メンバーだけで贈る
『しみけんの新喜劇でGOGO!~Vol.3~』
3回目を迎えるこのイベントを前に、主宰・清水けんじにインタビュー!

4月13日(水)にヨシモト∞ホール大阪にて、『しみけんの新喜劇でGOGO!~Vol.3~』が開催される。このイベントは、清水けんじを中心に、若手座員たちだけで繰り広げる吉本新喜劇。台本も、このために書き起こされており、若手目線で物語を展開してゆくのだ。今回は主宰・清水けんじに、イベント立ち上げの経緯やその内容、そして清水自身の変遷などを聞いた。

―― @ぴあ関西です。今日はよろしくお願いします。この『しみけんの新喜劇でGOGO!~Vol.3~』ですが、まず、どんなイベントか教えてもらえますか?

清水けんじ(以下、しみけん)「単純に若手メンバーだけで『吉本新喜劇』をやって、ちょっとおこがましいですけど、未来の島木譲二さんや桑原和男さんを生み出したいと思ってます」

―― では、純粋に、新喜劇のみをされるんですね。

しみけん「そうですね。どう言うたらええんですかね、『古き良きものを大事にする』やないですけど、オーソドックスな設定の中で自分たちの好きなボケをしていくというスタンスを取ってますね」

―― トークコーナーとかもなく?

しみけん「あえては設けてないですね。みんなでしゃべるのはエンディングトークですね。それが30分以上ありますね」

―― それはもうコーナーですね。

しみけん「そうですね。もうトークコーナーですね。でもトークコーナーって言うと、ちょっと構えて、椅子出して~ってなるので、ラフな感じで、ふんだんにしゃべってますね。新喜劇の若手メンバーが出るイベントでは、すっちーが主宰の『ごめんSKY! ~羽ばたけ!若手新喜劇~』というイベントをやってまして、そっちがトークとかゲームを主体でやるんですよね。なので、こっちでは特に必要ないかなと思って、新喜劇をメインにやってます」

―― なるほど。では、このイベントを始めようと思ったきっかけを教えてください。

しみけん「(よしもとの)社員さんに僕とランディーズの高井くんとすっちーと烏川耕一さんが声をかけてもらったんです。『それぞれ1つずつイベントをしたら』って。で、烏川さんは1月に京橋花月でシンクタンクのタンクさんたちと『デブサミット~2011冬~』をやらはって、高井くんは漫才師の方と新喜劇的なことをやって。すっちゃんがその『ごめんスカイ』。で、僕が『新喜劇でGOGO!』を始めて。以前、『金の卵ライブ』っていうのを若手だけでやっていて、それみたいな感じですかね」

―― 『新喜劇でGOGO!』の出演者は、清水さんより先に新喜劇に入られている方が多いですが、その方たちをまとめるっていうのはどうですか?

しみけん「どう言うたらええんですかね、芸暦で言うと僕が上なんですよ。だから、ちょっと偉そうにできるんですよ(笑)。まあ、それもあって絶対に逆らえない、清水政権でやってますね(笑)」

―― 清水政権…。怖そうですね…。

しみけん「全然ですよ! 一生懸命やっててミスっても、何の失敗でもない。ただ、稽古のときとか、みんなで一生懸命してるときに、隅の方でだらだらしゃべってたりすると、まあ、ちょっと、一喝します(笑)」

―― おお。気合が入りそうですね…。では、その中で、島木譲二さんや桑原和男さんのようなスターの片鱗を見せている方は、今の時点でどなたですか?

しみけん「みんな頑張ってますけど、異色という意味では今別府直之ですかね。だいぶん粗いですけどね。見たことない石ではあるんですよ、今別府直之って。でも、この見たことのない石にどのくらい価値があるのかはわかんないんですよね。何かの化学反応を起こして出来上がった鉱石で、頑張って磨いているつもりではおるんですけど、まあ、これがどうなるか…。ただ言えるのは、絶対ダイヤではない(笑)。あとは酒井藍ちゃんとか、松浦真也とかですかね」

―― その輝き具合もイベントの見どころのひとつですね。では、若手だけの新喜劇の面白さを教えてください。

しみけん「粗いのは粗いと思います。お芝居も下手ですし、師匠方と比べたら全然、まだまだですけども、若いから吸収も早いんです。イベントをやるごとに『あ、ようなってるやん』って、何回か見てもらうとそう思えると思いますので、そういう見方でも楽しめると思いますね」

―― 普段の新喜劇では、若手の方のご活躍ぶりは少ししか観られませんけど、このイベントではたっぷり観られそうですね。

しみけん「そうですね。今別府であったり、松浦であったり、この辺を軸に使ってるんで。このイベントでしか彼らを長時間、見ることができないですね」

―― そう聞くと何か、博物館の特別展みたいですね。

しみけん「いやもう、マンモスですよ、松浦くんなんかも」

―― では、吉本新喜劇そのものの魅力も教えてください。

しみけん「お昼ご飯を食べながら、構えずに見られるコメディってやっぱり新喜劇なんかなって思いますね。わかりやすい笑いを追及している劇団…。こう言うてええんかわかんないですけど。ただ、わかりやすくするため、先輩方が裏で並々ならぬ作業をされていて、そういう姿を見せていただいているんで、構えずに見る舞台を作るのも大変なんやなって思いますね。それで、今は、そういう作品に自分も携わっていられるのがすごい楽しいなって思いますね。テレビの前の皆さんのお顔は拝見できませんけど、劇場に来ているお客さんのお顔はすごく見えるんですよね。お客さんそれぞれ、生活に抱えるものはあると思うんですけど、顔をぐしゃぐしゃにして笑ってる顔を見たら…、『あ、俺、ここで生きてくんや』って感じることもできて。遠くから来てもらって、高いお金を払ってくれて、あんなに笑ってくれたら、ああ、よかったなって思いますね」

―― その、わかりやすい作品を作るための作業などは、先輩からも教わったりするんですか?

しみけん「ボケるにしても、いかにして演じるか、芝居をするかっていうことを川畑(泰史)さんに教えてもらったりしてますね。僕はまだ、その入り口の1ミリぐらいしかわかってないですけど、そういうことを教えてもらって、そうやって僕が教えてもらったことをまた後輩に教えているって感じですね。おこがましいですけど」

―― 清水さんは以前、baseよしもと(以下、base)に出られてましたが、baseに来られるお客さんと、なんばグランド花月に来られるお客さんに笑ってもらうのでは、やっぱり違いますか?

しみけん「ちゃいますねぇ。新喜劇ってみんなにボケとかツッコミをわかってもらって、それで笑ってもらうって感じなんですけど、僕はbaseにいたときは強引といいますか、自分が面白いと思ってることしかしたくなかったんですよね。『いやもう、これ以上お客さんに寄ることなんてできへん、そうすることによっておもんなくなんねん』っていう変な意地があって。でも、baseに来られるお客さんって、それでもその芸人をずっと観てたら、見る目が優しくなって、そのうち笑ってくれはるんですよ。そういう状態になってるのに、baseの外に出て、賞レースとかに出たら全然ウケへん。でも、それでええねんとも思ってたんですよね。それが新喜劇に入ってみて、なんばグランド花月というあれだけ広い劇場で、高いお金払ってくれるお客さんの前でやるようになって。それで、『自分のやりたいことをお客さんにわかってもらうためには』と考えると、ベタになるんですよ。ベタになってしまうんですけど、でもその面白いと思ってることをお客さんに伝わるまで砕いて出すのが自分の仕事なんやなって、新喜劇に入ってからそういう考え方になりましたね」

―― 180度、考え方が変わったんですね。

しみけん「そうですね。baseのときはウケへんでも、『これがわからへんかったらもうええよ、別に』って思ってましたね」

―― お客さんにあえて歩み寄ろうとはしなかった?

しみけん「しなかったですね。だからずっとバイトしてたんですよ、多分」

―― このタイミングでお聞きするのも時系列がおかしくなるんですけど、そもそも、なぜ新喜劇に行こうと思われたんですか?

しみけん「極論を言うたらなんですけど、僕、別に『面白い』と思われなくてもいいんですよ。極論ですけどね。僕はとにかくツッコミがしたい。昔からずっとツッコミがずっと好きで、子どものときもツッコミ役、漫才やってもツッコミ。で、コンビを解散しまして1年ぐらい、ピンでやってたんですけど、その間、軸となるものが何かわからなかったんですよね。ネタとかもいろいろやって、それが楽しくないことはないけど、めちゃ楽しいとも思われへんなみたいな。『芸人の仕事は好きやのに、何があんまり楽しくないねやろう』って考えていくうちに、『あ、ツッコミしてないからや』って思って。それで、人のボケにわーって突っ込んでいけるものはないかなって思ってたら、お世話になってた作家さんに『新喜劇があるけど、どうなん?』って言われて。僕自身、新喜劇は考えたことなかったんですよ。そう教えてもらったけど、自分で答えを出せなくて。そのときに、ずっと仲良くさせていただいてる先輩の一人であるたむらけんじさんに『新喜劇も考えてるんですけど、どうですかね』みたいに相談させてもらってたんです。そしたらたむらさんが、僕の知らんところで川畑さんに『清水けんじという芸人がいまして、ひょっとしたら新喜劇に入るかもしれません。その暁には川畑さん、すみませんが世話してあげてください』って、小籔さんにも同じように言いに行ってくれたんですよね。僕は知らなかったんですけど、川畑さんが『しみけん、たむけんがこうやって言いにきてくれたよ、お礼を言うとったほうがええで』って気を利かせてくれて。それでたむらさんにお礼を言いまして、『あ、もうここまでしてくれる先輩を僕は裏切ることはできへんし、この世界で頑張っていくことがたむらさんへの恩返しなんやろうな』って思って、新喜劇に入ることを決意しました」

―― 入ってみて、どうでしたか? 新喜劇の世界は。

しみけん「いや、もう、異世界過ぎて、もうほんまに…。今やからこそですけど、ほんま入って3日で辞めようと思いました(笑)。異世界過ぎて…! 何て言うんですかね、新喜劇って家族的なところがあるんですよ。ずっと一緒やから、家族的な仲の良さになっていくんですよね。それは素晴らしいことだと思うんですけど、それまでおったbaseという劇場が、人を蹴落として上がるというわかりやすいシステムのところだったんで、まあ、みんなライバルだったんですね。でも、新喜劇はむっちゃ仲いいんですよ。それにも戸惑いましたし、僕は新喜劇座員のオーディションである『金の卵』から入ったとはいえ、自分よりも10年くらい下の後輩の中に身を置かないといけない。先輩は先輩で、年齢が離れすぎて話が合いませんしね(笑)。病気の話しかしないから(笑)。そんな中でどうしたらいいのか全くわからなかったんですけど、たむらさんのが顔が脳裏に浮かんで、『ああ、もう、たむらさんを裏切ることは絶対できへんから頑張ろう』って思って、今に至る感じですかね。今はもうありがたいことに環境にも慣れましたし、楽しくさせてもらってます」

―― 最初は、いきなり外国にホームステイした感じですね。

しみけん「異国といいますか、何?ここって感じでしたね(笑)。こけるタイミングもわからんし、それを教えてくれる人もいない。稽古しても、「はい、ありました、やりました」だけでもう本番で。『いや、何があったんや!?』ってなったりして。もう、どうしてええかわからなかったですね。今は、そういうもんやって慣れてきましたけど」

―― そういう世界に身を置かれて、お笑いに対する考え方とか、変化しましたか?

しみけん「あ~、そうですね…。僕はピンでネタをするようにしてるんです。そっちもやっとかんとって思って。その中で、ネタとかすごい作りやすくなったというか、それは、新喜劇で学ばせてもらってることが多くて。やっぱりお笑いの基本的なことの宝庫なんですよね。こういうボケには、こういうフリがいるよとか、いろいろ教えてもらってます」

―― 吸収することがたくさんありそうですね。

しみけん「いろいろ教えてもらえて、ありがたいですね。ほんまに無知やったんで。あと、イベントなんかのエピソードトークの時でも、新喜劇の師匠の話をしたらみんな喜んでくれるんですよね。そういう意味でも新喜劇っていうのはすごいブランドやなって思いますね。ありがたいです」

―― では最後に、間もなく行われます『新喜劇でGOGO!』の見どころを教えてください。

しみけん「オーソドックスな新喜劇をやろうというのがモットーとしてあるんで、これから新喜劇を担っていくであろう若手だけでやることによって、こんな見え方になるんだなって思えると思います。新喜劇はすごく入りやすい舞台だと思うので、これを機に見に来ていただきたいです」

―― ちなみに、今回の注目人物はどなたですか?

しみけん「そうですね…、それぞれが目立つようにはなってるんですが…、やっぱり今別府ですかね。今回はすごい不親切なことをやりたくて、それを実現したくて台本も書きまして。それが伸るか反るかは、今回のキーマンである今別府にかかってますね。詳しくは言えませんが、あえて今別府に賭けて、挑戦してみようと思ってます!」

―― キーマンは今別府さんと。了解しました! 今日はありがとうございました。




(2011年4月 8日更新)


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プロフィール

しみずけんじ●'75年生まれ、京都府出身。NSC15期生。コンビやピンでの活動の後、'08年に金の卵オーディションを経て吉本新喜劇に加入した。バッファロー吾郎主宰イベント『ダイナマイト関西』では司会も務める。

公演情報

『ヨシモト∞ホール大阪〈しみけんの新喜劇でGOGO!~Vol.3~〉』

▼4月13日(水) 19:30
ヨシモト∞ホール大阪
自由席-1500円(整理番号付)
[劇作・脚本][構成][演出]村上太
[出演]清水けんじ/清水啓之/吉田裕/太田芳伸/見取慎太郎/佐藤太一郎/松浦真也/信濃岳夫/安井まさじ/今別府直之/井上安世/酒井藍/森田まりこ/大端絵里香/ともえ

※この公演は終了しました。