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大阪を拠点に活動する劇団伽羅倶梨が2011年春公演を間もなく上演!
劇団結成31年目にして新たなるチャレンジも…!?

―― @ぴあ関西です。今日はよろしくお願いします。この『ちゃらんぽらんな夜に…。』で、徳田さんの作品は14本目ですね。

徳田ナオミ(以下、徳田)「はい。間もなく54歳なるんですけど、40代の後半から脚本を書き始めまして。それまでは役者だけだったんですけど、こうやってプレス周りもさせていただいている間に、そういうこと(女性の脚本家)が珍しいということもわかって、ちょっとおばちゃん脚本家として売っていこうかなって(笑)」

―― 女優一本から、脚本も書かれるようになりまして、最初の頃の手応えはどうだったんですか?

徳田「書く作業がおもしろかったので…。自然にできた感じですね。まあ、必要に迫られてっていうのもあったんですが、こうしてできたのも周りのお陰だなって思いますし…。今でも書いていて苦しくなることがありますが、それでも好きな作業ですね」

―― では、今回のストーリーを書かれるにあたって、何かきっかけになったことがあれば教えてください。

徳田「男ふたりの作品を書きたいなって思ったんです。で、偶然、いつも客演で出てもらっている劇団五期会の牛丸裕司さんが、『僕、まだ、おじいちゃんの役をやったことない』って言いはったんですよ。それで、うちの主役の、一応看板の岩本正治は体型が細いんですよ。そして牛丸くんは横に大きい。このふたりのコンビだったら絶対面白いのができるなって思ったのがきっかけで。岩本も割りとお年寄りの役、おじいちゃんの役が好きなんですよ。だから、おじいちゃん同士の話がおもしろいなって思いました。あと、私、演劇のワークショップ、『ナオミのドラマティックワークショップ』っていうのをやっていて、10代から70代の方までがいらっしゃって。その中でお年寄りの方がものすごく精力的なんですね。あと、タレント養成所に講師で行かせてもらってるんですけど、シルバークラスとか栄えてるんですよ。50歳、60歳からタレントを目指す方がたくさんいて。そこに集まっているおじさんたちが本当に天才的な面白さというか、いわゆる天然で。それと明るく、ユーモアたっぷりで、健康で。本当に面白味があるというか、興味深くて。そんな方々からの影響もありますね。あと、電車、大阪環状線が出てくるんですけど、私は電車とか駅とかがすごく好きなんです」

―― どういうところがお好きなんですか?

徳田「ただただ乗って、知らない駅とか行ったりするのが…」

―― 目的地を決めずに?

徳田「はい。暇やからやと思うんですけど(笑)。知らない駅で降りて、お茶飲んで帰ってくるとか。鉄道の雑誌を買って見たりとか。それがすごい好きなんですよ。山の中に電車が走ってるのを見てそそられたり、夜の電車の風景とか。電車の中には明かりがついていて、あの景色がものすごく、別世界につれて行ってくれるような気になるんですよね…。夜の電車の中にドラマがいっぱいある感じで。あと、夜の電車に乗っていて、窓の向こうに違う世界があって、そこにすっと行くような気がしたり…。こういう話をして、みんなも同じように思ってると思ってたんですけど、意外と違ったので、『私は本当にそういうのが好きなんだな』って思いました。以前にも、田舎を舞台にした廃駅の話を書いたんですけど、今回は環状線で。いろんな人が乗ってくるっていうのが面白いかなと思って」

―― “男ふたり”というシチュエーションですが、「男ふたり」というものに対してのイメージは何かおありなんですか?

徳田「まず、今までそういうものを書いたことがなくて、何か違うキャラクターが同時に動き出すような物語を書いてみたかったんです。今までは岩本一人が主役という感じで書いてたんですけど、そうじゃない、ふたりを主役にして。今までそういうことを書いたことがなかったので、チャレンジですね」

―― チャレンジされようと思ったきっかけは?

徳田「劇団を30年やってきた中で、何か違うことをしようと思って。それで今回は台詞もすべて大阪弁にしました。大阪弁のお芝居も書いたことなかったですから」

―― ご出身は大阪ですよね?

徳田「そうなんです、劇団員もみんな大阪なんですけど、今まで書いたお芝居は全部、標準語で。逆に大阪弁のお芝居をしようと思ったらよっぽど役者がうまくないと芝居として成立しないような気がするんです。松竹新喜劇も吉本新喜劇も面白いのは、やっぱり役者さんが達者だからで。うちはみんな不器用な役者が多くて、私も含めてなんですけど、器用な人があんまりいないんですね。それを持ち味としていいのかなとも思ったりして、そこに足を踏み入れなかったんですけど、今回は『ちゃらんぽらん』という題名でもありますし、おじいさんがふたりだし、ここはもう大阪弁だろうなと」

―― 漫才の掛け合いみたいな感じでしょうか?

徳田「そういう感じですね。そういうことを書いてみようと思ったんです」

―― ずっと伽羅倶梨のお芝居を観ていらっしゃるお客さんなんかは、また違う印象を抱かれそうですね。

徳田「と、思います。ただいつも人情喜劇を書いてるつもりなんですけど、そういう意味では変わってないので、お客さんは意外と『あれ? いつも大阪弁ちゃうかったっけ?』って思われるかもしれないですね。多分、作品のテイストが笑って泣いてって感じなので、自然には観てくださるんじゃないかとも思います」

―― なるほど。今回は「家族」もひとつのテーマになっていると思うんですが、徳田さんの家族というものに対するイメージやお考えを教えてください。

徳田「私は家族に支えられてると思ってます。お互いですね、支えてもらってるし、私も…。いや、私は主人と息子二人を支えている感はあんまりないんですね…(笑)。本当はお母さんとして合格じゃないのに、『母さん』って呼んでもらうことによって『母さん』にしてもらってるような感じです。家族がいなかったら、多分、何もしていないと思います。ぐうたらで」

―― お芝居もですか?

徳田「そうですね。劇団もそうですよね、仲間がいるからやってるけど、ただ台本を書くだけだったら、私一人だし、絶対に書かないと思います」

―― 待ってる人がいるから。

徳田「そうそう、そうですね。待ってる人がいるからですね。私の性格やったら、住む家もどこでもええわってなってるんちゃうかな。家族がいるから家に帰るみたいな。それがなかったらスタジオでずっと寝泊りしてるかもしれません(笑)」

―― なるほど(笑)。今、世の中の転換期といいますか、東日本大震災もあって、いろんなことを考えなくちゃいけない時代になったと思うんですね。そういう中で、演劇の持つ力って、徳田さんは何だと思いますか?

徳田「私も今回、思ったんですね。震災の約1ヶ月後に本番なので、『本当にできるのかな』って考えてたんです。でも、お客さんがチケットを予約してくれるときに、メールの最後の方に『大変なときですね、こんなときだからこそ元気が出る伽羅倶梨さんのお芝居を楽しみにしています』ってメッセージを書いてくれはるんです。私は、『こういうときに演劇はどんな力を持ってるんだろう』とか、そういうことをあんまり考えずに今までやってきたんです。好きだからという、その気持ちだけで30年やってきたので、『今、何ができるんだろう』ってはっきりとお答えすることは正直、明確なことがないんですね。でも、『そういうことも考えないと』って思ってるときに、お客さんからああいったメッセージをいただいて。それで、『そういうことをあんまり言わなくても、お客さんが求めていらっしゃるものに応えていくのがいいんだな』って思いましたね。いろいろ考えているときにそのメッセージをいただいたので、胸が熱くなりましたね」

―― 伽羅倶梨のお芝居をそのままを求めていらっしゃるんですね。

徳田「そうですね。カラーとしてはハートウォーミング。元気を与えるっていうことをひとつの指針として出しているので、ひと時でも日常を忘れてもらえたら。忘れる作業も息抜きですし、気分転換になりますよね。関西では実際の被害はありませんでしたけど、ご家族や親類の方が現地にいらっしゃる方がいることは確かでしょうし…。そんな中で、普通に生活されている方が少しでもいい時間を過ごしてもらえたらいいなって思ってます」

―― ありがとうございます。では、今年から31年目になりますが、2011年からの伽羅倶梨はどうなりますでしょうか?

徳田「実は、こうやって宣伝で回るのもやったことがなくて、去年の30周年のタイミングで始めたんですよ。劇団のことや自分の作品のことを、こんなに聞いていただくことがなくて。それが去年初めてで。これはやっていかなあかんなって思いました…」

―― 去年、初めてされてみて、どうでしたか?

徳田「身の引き締まる思い(笑)。自分のやっていることに責任を感じます。良くも悪くも。それを良い方だけで受け止めるなら、目の前で描いていることが明確になる、自分のやっていこうとすることが再確認される。自分の道がぼや~ってなってるのが、こういうところに来ておしゃべり……(笑)、おしゃべりじゃないんですけど(笑)、お話をすることで靄がかかっているものが明確に見えてきますね。あと、自分ひとりじゃないっていうことが余計に感じられます。さっきも支えられていると言いましたが、そういう意味では、周りと付き合うことで自分がある、その人間ができあがっていると思うんですね。徳田の周りの人間が、徳田を作り上げる。そういうことが見えてくる。自分の言いたいことがはっきりとわかるっていうことはもちろん、それ以上に人とのつながりといいますか、そういうものが見えてきましたね」

―― なるほど。では、お話を元に戻しまして、2011年の動きを教えてください。

徳田「台詞を大阪弁にしたっていうのもひとつのチャレンジですし、代表で宣伝活動に回るのもチャレンジ。さっき責任の話がありましたけど、ずっと役者でやっていたところから、またひとつ具体的に背負い込むという、これもチャレンジです…。何か、すごくアレなんですよ、わりと貪欲になってますね(笑)。近々、劇団のホームページでもいろいろ仕掛けたりしようと思ってます。あと、スピンオフをやってみようとか。今回のお芝居は、駅のホームから始まるんですけど、それまでに同窓会の2次会、3次会に行ってるんですね。その2次会、3次会の様子を撮って、それを見せようっていう企画とかを考えてます」

―― どんどん発信していくと。

徳田「そうですね。あと、まだ夢の段階ですけど、ロングランをやったりとか。自分たちのスタジオがあるので、2週間くらい公演をして動員1000人を目指したいなとか、いろいろ考えてます! 発信をちゃんとしないといけないなってことが、30年くらいたってやっとわかりました。すごい発信ベタで…。それでブログも始めたんです。やっぱ、発信をしていくってことは余計、自分がしっかりしないといけないので、身が引き締まる思いですね(笑)。そして、どんどん新しい企画ができればなって思ってます。他の劇団さんがされてることでも、伽羅倶梨には初めてのことが多いですし…。さっき言いましたように、みんな器用じゃないので。ただ、それもひとつの良さとして、気負うことなくできたらいいなって。お客さんに喜んでもらいたいっていう思いは変えずにやっていこうと思ってます」




(2011年4月 8日更新)


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公演情報

劇団伽羅倶梨スタジオ公演2011春『ちゃらんぽらんな夜に…。』

▼4月15日(金)~19日(火)
15日(金)19:00
16日(土)14:00/19:00
17日(日)14:00/8:00
18日(月)14:00/19:00
19日(火)14:00
KARAKURIスタジオ
[作・演出]徳田ナオミ
[出演]岩本正治/徳田尚美/橋本千枝子/石川かおり/沖島文子/井本幸子/黒岩良寛/内田圭祐/牛丸裕司(劇団五期会)/山本拓平(極東第四次産業)/辻野加奈恵(チャイカ)/朝寝坊月眠。(Deity)

※この公演は終了しました。

劇団伽羅倶梨
http://www.karakuri1980.com/