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今年もこの季節がやってきた…単独公演『漫才攻めⅦ』!
この恒例イベントを前にして、その手の内を語る!

真冬の恒例、年1単独イベント『漫才攻めⅦ』を前にしたティーアップに某月某日、インタビューをしてきました。お笑いについて、漫才について、そして「続けること」の意味とは?など、ひとつのお笑いイベントにかけるふたりの真摯な気持ちが伝わってくるものとなりました!

―― さて、今年も間もなく『漫才攻め』となりますね。今年のことをお伺いする前に、去年のイベントの手ごたえをお伺いします。

長谷川「去年は報告ごとがすべて終わって、一区切りついた『漫才攻め』やったんと違うかなと思います。ひとつの階段を上がって、次の階段に上がる用意をこの『漫才攻めⅦ』から始めていかなあかんのやろうなって感じですね。まだまだ長い階段があるんで。5年後、10年後はおるかおらへんかわからない世界なんで、この1、2年はすごい勝負やなと思ってます。ほんまにこの世界で生きていけるかどうかっていう一番大事な時期やと思ってるんで、その次の段階に入ったかなってところですね」

―― その階段の高さってどのくらいと思われますか?

長谷川「う~ん。上ってから気づくことじゃないですかね」

前田「『漫才攻め』をやり続けてきて思ってるんですけど、1年間に漫才番組って何回かありますよね。その中で、同じネタを見せへん、“またちゃうネタをやってるな”っていうのを見せるには、『漫才攻め』というイベントがいるんですね。『漫才攻め』で過去にどんなネタをやったかを見直して、そこから2、3年前のネタをちょっと掘り出してこようかとか、“これは最近、見てないやろう”っていうのを毎年出していきますので、そういう邪魔臭さとか、新しいものをすることの邪魔臭さとか、そういうのはありますね。面倒臭くって、すぐに見返りもないんですけど、結局身についていくためのことを自分らでしないといけないんで」

―― なるほど。目の前に差し迫りましたが、この時期はつめている感じですか?

長谷川「そうですね。新ネタなんですけど、新しければ良いんかっていうとそういうわけでもなくて。それ以上のクオリティをお客さんが求めてくるわけですから、新しいネタやったな~ってだけやったらダメなんで、そこはお客さんとの戦いになるわけです。うーん。だから、最低でもキープっていうのを心がけなあかんので、この仕事って大変やな~って思いますね。漫才師っていう仕事は」

―― お客さん自身も、この1年間で変わり続けてますよね。

長谷川「そうです、そうです」

前田「ウケてるのに、人によったら“その前は面白かったけど、今回はもうひとつやった”っていう人もいてるんですよ。必ず笑いをとるのが漫才じゃないですか。ああ、こういう捉え方もあんねやなって、そういう発見もありますね」

―― 笑のツボも千差万別ですもんね。全員が笑うのは難しいですね。

前田「(笑福亭)鶴瓶さんがおっしゃってたんですけど、“客を育てる”っていう言い方をされていたんですよ。それでね、僕はどんなもんかピンと来なかったんですよ。でも最近は、他のイベントを観た時は首を傾げたくなるけど、うちのイベントを観たときは“やっぱり面白いな”って言ってもらえることが、鶴瓶さんがおっしゃっていた“客を育てる”ことなんかな?って思いますね」

―― よく聞きますよね。「客が芸人を育て、芸人が客を育てる」。

長谷川「鶴瓶さんのその一言はすごい残ってますね。その前に、まず、僕らが育たんと。まだお客さんを育てる立場にはないんかなっていうのがあったりして。難しいですけどね。漫才でどうしていったらいいんかなって。笑うところも違うでしょうし……。うーん…勉強中です(笑)」

―― 漫才という形自体は普遍的なことだと思うんですけど、ずっとスタンダードっていうわけにもいかないですよね。

長谷川「そうなんですよ。スタンダードなものを「スジネタ」って言って。僕らはスジネタなんで。漫才っていうものに関しては、普遍的なものに毎回、新しいものを足していかなあかん、常に前よりも良いものを出していかないと。でも漫才じゃないとダメなんですよ。基本から外れると漫才じゃなくなりますから」

―― そういうふうに奥の深さを感じるのは、前からですか?

長谷川「僕は今回で特に思いますけど。漫才って難しいなぁっていうのは改めて思いますね」

―― 20年以上、されていても。

長谷川「もう、全然ペーペーです! 全然ペーペーです! 上にはもうほんまにお化けみたいな人らがいっぱいいてますから! 全然、ペーペーですし、僕らもどんどん育っていかなあかんなって思いますね」

前田「あのね、読み間違いするんですよ」

―― 読み間違い?

前田「ネタを作っている段階で、“ここはウケるやろ”っていうのを入れます。ふたりの間では盛り上がるんですよ。本にしても笑うであろうと。で、舞台で出すんですけど、アカンのがあるんですよね、やっぱり。いまだにそれがありますね」

―― 生のリアクションを感じてないと、お客さんの感覚も読みづらい。

前田「あとね、僕、勝手にワールドとかって言ってるんですけど、漫才の中でアドリブみたいなことをするとお客さんも一緒になって笑ってるところがあるんですね。一番近い例で言うと、『M-1』のときの笑い飯の「鳥人」。あのネタってワールドやなって同業者に言うとみんなも、“ああ、そうやな、ワールドやな”って言うてたんですよ。あそこやから面白い、アレを出してあげんと100点出ないんですよ。笑いの上が拍手って僕は思ってるんです。拍手を出せたらいいなって思うんですけど、じゃあ、どのネタも出せるんかっていったら無理なんでね。それが理想ですね」

―― じゃ、そこに近づいていけるように…。

前田「そうですね。でも、やりこなすと面白くなくなるんですよ。やってる僕らが。僕らが淡々とやってることは、笑えても伝播はしていかないんですよね。こっちが遊んでるん、そういうのが出せたらいいなって思うんですけど。あんまりカッチリしすぎると、ネタ、ネタってなる。ちょっと遊びがないとっていうのもだんだん勉強してきましたね」

―― なるほど。聞けば聞くほど難しいですね。そのバランスというか。

長谷川「間とかっていうのは、すごく今勉強になってて。今、相方と作家さんがネタを書いているので、僕はツッコミだけに集中すればいいんです。“このボケを、このツッコミではちょっとやから、ちょっと間を変えてこの言葉で突っ込んでみたら”っていうのが今の僕らの作業なんですね。で、これ、すごい楽しい作業で。このボケに対してこのツッコミでどんだけ笑いが取れるか、どんだけ変わっていくのかっていうのが日に日に違うんですね。自分で成長していってるなっていうのがあって。『漫才攻めⅣ』から一緒にネタを作らなくなって、相方と作家さんに任せたんで。で、その作業をやっていて、だんだんだんだん面白い作業になってるんですね。大分、育ってんのちゃうかなって自分では思ってるんですけどね」

―― 4回目以降からは違ってきているんですね。

長谷川「僕の中では。漫才に対する向かい方、角度が違ってるんで、これはすごい新鮮ですね」

―― では、前田さんにお聞きします。去年のインタビューで、「『漫才攻め』は5回目くらいのときに、もうええんちゃうかな?って思ったけど、6回目をやって…」とおっしゃってましたが、「もうええんちゃうかな?」って思った時と今との、心境の違いを教えてください。

前田「えとね、もうええんちゃうかなって思ったのは、結局次がほしいんですよ。結果が。漫才大賞をもらうまでは(イベントを)しようっていうのが自分の中ではあったんですよ。で、漫才大賞をもらった。あと、芸人とか漫才師とかって一生懸命にすることちゃうやろう?っていうのが僕の中ではあるんですよね。別にいいやっていうのがその5回目までであって。でも、“やめとこうな”っていうのはやっぱり言い出しにくいんですよ(笑)。あと、続けるには理由がいるじゃないですか。もうええ年したおっさんが20年もやってんのに(笑)。自分で理由を探すと、金儲けとかじゃなくて、実はやり続けてることに意味があるんちゃうんかって思うようにしたんですよ。さっきの言葉にもなるんですけど、新ネタやったりするのは邪魔臭いけど、それが身になっていくもんやっていう考え方に変わったんです。継続することも力が要りますし、“来年はいつ頃にすんの?”とかって楽しみにしてはる方もいてはるし。ほんで、やめてもうたらそこまでなんですね。“まだしよんのかい!”とか、“まだネタ書いとんのかい!”って自分でも思いたいし、周りからもそう思われたいっていうふうに変わりましたね」

長谷川「それまではターゲットが漫才大賞って決まってましたしね。今年からは違いますし。去年は報告っていう意味もあってやりやすかったんですけど。もうね、いっぱいいてるんですよ。『88文珍デー』(※桂文珍が毎年、8月8日になんばグランド花月で開いている独演会)とかってね、10回とか、そんなもんじゃないんですよ。それとか、笑福亭仁鶴師匠の独演会。それらと比べたら全然、屁やなって。上を見たら何ぼでも出てくるんですよ、お化けの人たちが(笑)。まだまだ、まだまだやなって思います」

―― 師匠方は皆さん、お元気ですしね。

長谷川「今度もまた文珍師匠は東京の国立劇場で10日間連続独演会でしょ。そんなん考えたら全然、まだまだ僕らぬるいですね」

―― 上の人がいてはるっていうのはひとつの目標っていうか、見上げるものがあるっていうのはいいですよね。

長谷川「漫才大賞っていうひとつの大きなターゲットがなくなったんで、イベントをやり続ける意味をね。次からは何を?って聞かれたときに、自分たちのためにっていうのが絶対あるでしょうしね。前田も言ったように、やめてしまったらそこで終わりなんですよ。でもやっぱり続けていくことが大事でしょうし、“ティーアップってやってるよな”って言われる。何年後に出てくるかはわからないですけど、何らかの形で何かが出てくるでしょうね」

―― 『漫才攻め』が1年の締めくくりみたいなものだとおっしゃってましたけど、去年の『漫才攻め』からここまで、どんな一年でしたか? 前田さんはお子さんがお産まれにもなりましたが。

前田「そうです! 子どもができて、その子のためのネタを書いてあげようと思ったんですよ。家庭がどうやとか、今までは空想の話ばっかりやったんですけど、次は子どものためにネタを書いてあげようと思って。今回、それを出しますけど。振り返ると、年相応のネタをしなあかんなって思いますね。女を引っ掛けるネタっていうのもおかしいでしょ(笑)。だんだん年相応のネタに変えないと、今までのストックはこんだけあるわって思ってたんやけど、これはできへんわというのもありますしね。見直さなあかん、やっぱりチェンジしていかなダメなんやって。そう思ったのも、子どものネタを書いてあげようと思ったことがきっかけですね。それで、ちょっとスタンスが変わりましたね」

―― 長谷川さんは?

長谷川「そうですね…、これまでは1人の仕事のオファーを結構、断ってたんです。漫才師やっていうのがあって。でも、最近はある程度受けていくようにしてます。何でかっていうと、やすし・きよしさんもそうですけど、キャラをもっと前に出そうと。前田にも長谷川にもキャラがあって、それぞれがそのキャラでやってて、それで年に1回、『漫才攻め』でどーんとぶつかり合う。ふたりとも他で話題があって、それらをドーンと漫才に落とし込むっていうのがね、ほんまこれから凄い大事になってくるというか。僕らがこの世界で残っていくのに必要なことなんやろうなと思ってきて。漫才師になれました、漫才大賞もいただきました、けど、さあここからは?っていうところで、媒体にも出て行って、きっちり頑張っていこうと思いますね。変に「はせ兄」っていうキャラクターが出てるのが嫌やったんですけど、そうじゃないなと。これは植えつけていかなあかんねやなと。で、“はせ兄”と“前ちゃん”っていう、キャラクターがぶつかった漫才をやりあうっていうのが、これからの作業として要るなと思ったんで、そっち方面も頑張っていこうかなと思うところがありますね」

―― 年に1回、ふたりが舞台に立つっていうのも楽しみのひとつになりますもんね。

長谷川「やすし・きよしさんとかもそうですけど。そういうところもやっぱり必要になってくるんやろうなと思ってきて」

―― 普段はテレビとかでお笑いを見ているお客さんもいると思うと、そういうキャラが生の舞台で顔を合わすというのはうれしいことですよね。

長谷川「そういうお客さんが大半なんで、そこを意識しながら。でも、ずっと『漫才攻め』に来てくれているお客さんにも、もっと面白いことを提供しますよっていうイベントにできたらなと思いますね」

―― そんな『漫才攻め』ですが、今年も料金据え置きの2500円です! 不況ですし、これはうれしいお値段ではないかと。

長谷川「いや確かに、ほんまにそうですよ。でも、2500円っていうても高いお金やと思いますよ。4人で来ていただいたら1万円ですから。家族で来て、そこからご飯を食べに行ったりしたらすごいお金になるんやと思うんでね。でもここからデフレスパイラルにならないように、お前らが2500円でやってるからやって言われんようにはしたいですけどね(笑)」

前田「安いですよね」

―― 不況と言うわりには興行の値段は年々、上がっているような気がしますし、なおさらです。

長谷川「でもね、これ、自分らが安い安いって言ってるだけで(笑)。お客さんから“安いな~!”って言われるようになってくるとうれしいですね。“2500円でこんだけ楽しめる!”って言われるようになれば…」

―― では、今年のチラシのコンセプトを教えていただけますか。今回は飛行機とパイロットですが。

長谷川「なぜこういうデザインになったのかは、来てのお楽しみですね。今回はこのポスターにも関係あるような構成で、約2時間ぐらい楽しんでいただこうかなと思ってます」

前田「危険物を持ち込まないようにとかもありますからね。液体も持ち込み禁止(笑)。NGKで買ってくれっていう」

長谷川「このポスターを観て、いろいろ想像を膨らましていただきたいなと思います!」

―― では最後に、2010年の意気込みなどを教えていただけますか。

前田「去年は私生活が充実してましたので、今年は何ですかね、陣地がしっかりしたから出て行けるっていうふうに思いたいですね。子ども生まれましたし、仕事により一層励みが出たので、いろんな仕事で弾けていって。で、このイベントでもアドリブをたくさん出せるように。で、ちょっと練ってワールドを見せれるようにしたいですね」

長谷川「まあ、そうですね…、50代でこの仕事を続けていられるかどうかっていう一番大事な時期やと思ってるんで、50代になってもこの仕事を続けられるように、もう2歩ぐらい階段を上ってないと怖いなっていうのが自分の中であるので。すべての仕事に80点以上を出していかないと残っていけないって自分に言い聞かせているので。でも、80点以上を出していく仕事の内容は何になるのかなっていうのを見極めていく作業かな。まあ、選んでる立場でもないですからね。ただ、もう1回、ぎゅっと引き締まっている感じですね」

ティーアップのライフワークともいえる『漫才攻めⅦ』は間もなく、なんばグランド花月で開催されます!

 


@ぴあ関西インタビューはこちら!
2009年度版




(2010年2月 9日更新)


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プロフィール

ティーアップ

前田勝、長谷川宏が'88年コンビ結成。結成20年の節目の年である'08年には『第43回上方漫才大賞』で見事、大賞を受賞した。現在、『ごきげんライフスタイル よ~いドン!』(関西テレビ/月曜レギュラー)、『ラジオよしもと むっちゃ元気スーパー!』(ラジオ大阪/水曜レギュラー)に出演中。

公演情報

『漫才攻めⅦ』

▼2月20日(土)19:00
なんばグランド花月
[一般発売]全席指定-2500円
[出演]ティーアップ

※この公演は終了しました。