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「作り続けようという気はみんなある。
11年休んで再び始めて、ここでもう一回休むわけにはいかない。
元気なうちにやっていかないと」     
“レジェンド”や“権威”を嫌い、新たな創作に挑み続ける!
moonridersインタビュー&動画コメント

1976年のデビューから昨年45周年を迎えたmoonriders。既成の枠には決して収まらない作品世界はロック、パンク、ニューウェイブ、オルタナティブ…などと安易に形容することはできないように思う。その奥深さと得体の知れなさこそが時代を超えてファンを惹きつけてやまない理由かもしれない。4月20日は11年振りとなるニューアルバム『It's the moooonriders』がリリースされたばかり。今回は鈴木慶一と鈴木博文に、新作に関する裏話や現在の心境について語ってもらった。「文句を言いたい人もいるでしょう(笑)」(博文)、「聴くたびに印象が変わると思う」(慶一)と話す変幻自在な傑作が生まれた経緯やその背景とは? まだまだ訊きたりない部分もあるが、ひとつひとつの言葉の中に含蓄があり、ご兄弟らしい会話のやりとりも聞けた貴重な時間となった。

ライブをやりながらだんだん感触がもどってきた
これはできそうだなと確認してレコーディングに突入!
 
 
――moonriders(以下、ムーンライダイーズ)は昨年デビュー45周年を迎えて、今年4月20日には11年振りとなるニューアルバム『It's the moooonriders』がリリースされました。このアルバムの制作はどのように行われたのですか。
 
鈴木慶一(以下、慶一)「また、(バンド活動を)始めようと提案して、デモテープを作り出したのは2020年頃からですが、録音を始めたのは2021年の秋からです。45周年のアニバーサリーに向けて、このアルバムを作る計画があったんですが、コロナ禍でいろんなことが遅れましてね…」
 
――新作のリリースは11年振りですが、その間もライブ活動はされてきたんですね。
 
慶一「そうです。(バンド活動を)11年間休んでたとはいえ、ライブはやってたんですよ。ドラムのかしぶち哲郎が亡くなった一周忌(2014年)とか、デビュー40周年の2016年にはライブハウスツアーをしたりして。ただ、ライブっていうのは新作を出さなければ新曲がない事になるわけで、気楽だったんですが(笑)。1980年に出した、ニューウェーヴ時期のアルバム『カメラ=万年筆』を再現してみようじゃないかと2020年の8月25日に、渋谷のクラブクアトロで無観客をライブを配信のみで行ったんです。あのアルバムの曲は我々が30歳前後のときのスピード感なので、それを今、70歳前後の我々がやれるかどうかっていうのもあったんですが。それをやってみて、やれるなと。その後も、2020年の10月に中野サンプラザで、2021年の6月にはEX THEATER ROPPONGIで、12月に恵比寿ガーデンホールで2DAYSをやったんです。そうやってライブをやりながらレコーディングをしてました。新しい曲もちょっとずつ(ライブで)発表していったりして。そうやって、リハビリじゃないけど…」
 
鈴木博文(以下、博文)「リハビリに近いですね(笑)。ライブをやりながら、だんだん感触がもどってきて…」
 
慶一「そうやってメンバーと一緒にやってみて、これはできそうだなというのを確認して、(新作の)レコーディングに突入しました」
 
――そうなんですね。やっぱりそれぐらいライブを数多くやりながらバンドの感覚を取り戻していったというのは大きいでしょうね。
 
博文「大きいですね」
 
慶一「20代の頃はそうでしたけどね、40、50になってからはそういうことはあんまりなかったからね…。でも、バンドって、ライブをやりながら曲を完成させていくっていうことが本来のあり方だと思いますね」
 
――確かに、今作は曲によってガラッと印象が変わったりもしますが、『駄々こね桜、覚醒』(M-4)や『親より偉い子供はいない』(M-7)とか、ライブ感を端々で感じました。
 
博文「大いに、そこを目指しましたね。やっぱり、最低フォーリズム(ドラム、ベース、ギターorキーボード)でまずはやってみようと」
 
慶一「最初に4、5人で一斉に録って。その基本となる骨格みたいなものに、いろんな楽器をダビングしていくんだけど。それは久しぶりの作り方でしたね。1970年代頃は一斉に録っていたけど。80年代以降はバラバラに録るようになったので」
 
――レコーディングの現場ではどんな雰囲気でしたか。
 
博文「普通はレコーディングの用事が無いとスタジオに行かなかったりするんだけど、今回は用事が無い人もきてましたね。やる気満々って感じで(笑)」
 
慶一「ライブはもちろん好きなんですけど、スタジオで音楽を作っていくことがとても好きなんです。今はコンピューターで音を作ることや、楽器のダビングも自宅でできるので併用してやってますが。それと、みんなで生で一回やってみようと。生でやると何の意義があるかというと、その人が個人的に作ったデモテープを破壊できるんですよ」
 
――え、破壊するんですか?
 
博文「破壊しないとバンドの音にならないんです」
 
――それがバンドマジックというか…。
 
慶一「そうですね。たまたま弾いてもらったのが、“それいいな”っていうことになって。それじゃなきゃバンドをやってる意味がないんです。自分が弾いてると予想がついちゃいますからね」
 
――それが、バンド活動のモチベーションにもなっているのでしょうか。
 
博文「うん。自分の個性をメンバーに投げる、そして、変えてほしい!っていうのがありますね」
 
慶一「そう、変わったほうが面白いんですよ。自分だけで考えてると自分のサウンドになっちゃうんで。それはソロでやったほうがいいんじゃないのっていうことですよね」
 

 
みんな前に出てくる、みんな自我を出す
年寄りを若いミュージシャンが手伝っている
 
 
――ニューアルバムの『It's the moooonriders』は、今のムーンライダーズというものをすごく表明している作品だなと感じました。
 
慶一「ありがとうございます! 今の(ムーンライダーズの)サウンドが出なきゃまずいな…というのがあって。それがプレッシャーになる…」
 
――何かテーマにしたことはあったのでしょうか?
 
博文「今までは毎回この人が、鈴木慶一がテーマみたいなものを打ち出すということが多かったんですが…」
 
慶一「今回のテーマは無いんですよ。まず(メンバーから)デモテープを集める、そして、積極的にライブの選曲とか演出とかにみんなが参加する。(今までは)だいたい私一人でやってきたんですけど…」
 
博文「それはおかしいんじゃないかと(笑)。こんなに長いことやってきて…、(鈴木慶一)一人に任せちゃ、悪いなっていうのが出てきて…」
 
慶一「いや、みんなめんどくさいからやらなかっただけなんだけど(笑)。それが、(今回は)急にみんな出てきて、これは面白くなってきたぞと(笑)」
 
――ではそこが今までの作品とは一番違う点ですか。
 
博文「ぜんぜん違いますね」
 
慶一「アルバムを作って音楽をやってるんだという意識が今までとはちょっと違うね。要するに、みんな前に出てくる、みんな自我を出す。それは年寄りだからだと思いますよ(笑)。それを取りまとめるためには他人の意見が必要だなと思って、このアルバムには若いミュージシャンが何人か手伝ってくれています。佐藤優介くんと澤部 渡くんの二人は、ライブに参加してもらってすごく助かったし、彼ら二人は我々よりムーンライダーズのことをよく知ってるんで(笑)。こちらも信頼してる。それがあって、レコーディングにも参加してもらってます。ふたりとも昔から知ってるけど、ムーンライダーズというバンドの演奏に加わるというのは今作が初めてなんです」
 
――佐藤さんと澤部さんは、今作のレコーディングに参加されるより先にライブで共演されているんですね。
 
慶一「去年の6月の『THE SUPER MOON』というライブはメンバー6人に(外部から)6人加えて、12人でやったんです。その時が初めてですね。バイオリンの武川が大病をして高い声がでなくなって低い声になっちゃったんで。ムーンライダーズにとって、(武川の声が)コーラスのスタイルを作る基本だったんだけど、澤部くんは声が高いんで、それに助けられるんです」
 
――今作には、『再開発がやってくる、いやいや』(M-8)にDaokoさんが、『S.A.D』(M-3)にはxiangyuさんという女性ボーカルも参加していますね。
 
慶一「Daokoさんはマネージャーからの提案で、xiangyuさんは私の知り合いでした。バイオリンの武川の声が低くなったところに、女性の声を足すと非常に面白い効果が生まれるんじゃないかと。時々、アニバーサリーでゲストをいっぱい呼んで、女性の声も入ったりしてるので。(『再開発がやってくる、いやいや』と『S.A.D』は)女性の声が入ったらもっと面白くなると思ってお願いしました」
 
――ミュージシャン以外では、『親より偉い子供はいない』(M-7)に語りの声で春風亭昇太師匠も参加されています。
 
慶一「これ、なんとなく江戸っ子っぽい歌詞なんで、噺家さんがいいんじゃないかということになって。昇太さんは今までいろんなところで出会ったりしてたので。お願いしたら快諾していただきました」
 
博文「この語りの部分の歌詞を書いたのは私なんですけど、“ヨシアキ!”(と、父親から息子に声をかけている)というのをどうしても入れたくて(笑)。もう親は亡くなっているので、天国から励ましてる感じですね」
 
――そもそもどういったきっかけからできた曲なんですか。
 
博文「先に彼が(白井)、“親より偉い子供はいない”という言葉を書いてたんで。そこから発展させて(語りの)歌詞を書いたんです。“親より偉い子供はいない”ということは、全ての人には当てはまらないかもしれないけど(笑)。この曲は明るいんで、ヒネる必要はないんじゃないかと思って」
 
――そういうところはムーンライダーズの曲の中では異色なタイプなのかなと。ヒネらずストレートな明るさがあって。
 
博文「そうでしょ(笑)。ストレート過ぎて恥ずかしいところもあるけどね」
 
――メンバーのみなさんがとても楽しそうに歌ってらっしゃいますね(笑)。この曲も今のムーンライダーズだからこそ生まれた一曲ですか?
 
慶一「そうですね。親はいなくなっちゃうもんね。この年齢になると。両親がいなくなると天井が無くなった感じで…。それは青空が見えてああスッキリしたなあというのもあるけど…、なんか寒々しいなあ…という感じもあってね」
 
 
 
意図的ではなかったことが別の意図を持ったように動き出す
今回、特にそういうことが多い
 
 
――メンバーの声を多重録音して加工したような1曲目の『monorail』からストレンジな雰囲気に引きこまれて、ラストの『私は愚民』(M-12)はインプロビゼーションで終わるという構成がなんとも後を引きます。
 
慶一「この構成は、曲順を決める時にいろいろ揉めて揉めて、結果こうなったんです。最初が『monorail』で最後はインプロビゼーションか…って、後で聴いて気がついたんです。偶然なんですよ。でも、偶然が曲を決めていくっていうこともあるんだろうけど…、一曲目に『monorail』を持ってくるっていうのは一番画期的なことです」
 
――ちなみに『monorail』の歌詞は博文さんが書かれていて、ラストの『愚民』は慶一さんの作詞で。『愚民』は『monorail』へのアンサーソングのようにも感じましたが。
 
博文「同時に(お互いが)“愚か”という言葉を使ってるんです(笑)」
 
慶一「それも昨日気づいた(笑)」
 
博文「いかに愚かかってことでしょ(笑)」
 
――『monorail』の中に“愚か者”という言葉が出てきて、『私は愚民』で終わっていきますが、聴いてる自分は何者なんだろ?って思ってしまいます…。
 
慶一「聴いた方の反応によって、こっちが逆に気づくんですよね。だから偶然というのは非常に面白くて。そこにはまるようにはまるように偶然が続くんだなあって感じかな…」
 
――その偶然は必然ではないんでしょうか?
 
博文「どうなんでしょうね?」
 
慶一「まー、偶然は必然というでしょ。なるほどねって、結果的に聴いた方がそう思って、作った方もそう思うということは必然なんだろうね。だから、そのプロセスは偶然だけど、結果は必然なんだろうね。ラッキーというか、恐ろしいというか…、あとで自分らも気づくということで。意図的ではなかったことが別の意図を持ったように動き出すというのはね。そこが物を作ってて楽しいところですね。自分じゃ、気づかないところを、(聴いた方が)この歌詞、こういう意味じゃないんですか?って言われると、あ、そう言えばそういう意味にも取れるな…とかね。そういうことはあるので…」
 
博文「今回、特にそういうことが多いですね」
 
――楽しさも怖さもあり、すごく考えさせられるし、想像力が膨らむし、こういう作品を聴いたのは初めてかもしれません。
 
慶一「ありがとうございます。私の歌詞の作り方はけっこう即興的で。イメージを羅列してるだけなんで…」
 
博文「オートマティズムでしょ?」
 
慶一「そう自動筆記に近いんで(笑)。そこから何か(聴いた人が)イメージしてくれればいいんで。聴いた方の反応によって、あ、そういう考え方があるんだ!と逆に気づかせてくれる時が多々あるんです。作ってる時の過程は本当に偶然の積み重ねなんですけどね」
 
――博文さんはどんなふうに歌詞を書いているんですか?
 
博文「私はオートマティズムではなくて、やっぱり考えて書きますね。何を書いてやろうか…って。やっぱ、突っ込まれるのが嫌だから(笑)」
 
慶一「メンバーそれぞれ書き方が違うんですよね。私は、脅かしてやろうと思ってますけどね、一行目から。タイトルとか一行目で脅かしてやろうと。何これ?って思わせてやろうとかね…。もちろん、(曲は)見聴きする人がいて、自分しか見ないものではなので。驚いてほしいなぁ…と思う(笑)」
 
 
 
一番嫌なのは、“レジェンド”と言われること(笑)
レジェンダリーなものを作ってる気はまったくない
 
 
――ちなみに、『Smile』(M-11)もすごく気になった一曲で。ここで歌われていることも、今の心境なのでしょうか。これは博文さんが書かれた一曲ですね。
 
博文「これは完全に今の心境でしょう。先が無いなっていう…(笑)。昔、30代でよく“死”の歌とか歌ってるんですけどね。それはすごく空虚な感じで、今思えば…。そんな現実的に“死”なんて感じてたら、ああは歌えないなっていうか…。今は、あと10年経ったら80歳近くなっちゃうんで…、10年ってすぐだなっていうのはありますよね。そうすると、“死”がすごく現実的な話になりますね。そうするとこういう歌詞になってしまう…」
 
慶一「(メンバーが)一人死んじゃったからね。そうなるとリアルに感じ始めますよね。40代とかの“死とは何か…”みたいなものとはまったく違う。目の前でそういうことが起きるんで…」
 
――そうなんですね…。
 
博文「…幡ヶ谷でホームレスの女性が撲殺された事件がありましてね。それを新聞で読んだ時に、その女性の昔の写真が出てたんですけど。若い頃に広島で演劇をやっていた時の写真で。それがすごくイイ笑顔で綺麗な方だったんですよ。この『Smile』という曲は(先にできていたけど)、それと偶然合致してしまったんですけどね」
 
慶一「その事件にショックを受けて歌詞を書いたのが、『彷徨う場所がないバス停』(M-10)という曲なんです。バス停のベンチが住処だったホームレスの女性が殺害されたんです。その事件は殺した人まで自殺しちゃったから、複雑な気持ちになりましたね…。殺害した男性はずっと家にひきこもってて、窓から見える景色だけが自分の世界だったような人だった。その男性が夜中に自転車で通りかかった時にバス停のベンチに女性が居るのを見てたんだね。そして、ある日、殺害してしまった。そういう悲惨なことを歌にしたくはないけど…、その事件はショックを受けましたね。コロナのような世界的なことでショックを受けることもあるけど、(もっと身近なところにある)バス停で起きたことでショックを受けることもあるわけで…。どちらも同じショックだし、こういうことはあっちゃいけないなと…思うね」
 
――そういう社会的な事件が背景となって生まれてきた曲なんですね。
 
慶一「そうなりますね。このアルバムの制作が始まったのはコロナ禍の真っ只中で。家から出れない状態になった時に、“来年45周年だからアルバム作ろう!”なんて、普通はあまり言わないかもしれないけど。そういうアンハッピーな時期を迎えたりすると音楽を作りたくなる。何か言いことがいっぱい出てくるんです」
 
――以前、慶一さんが「不安定さがクリエイティビィティに向かう」という発言をされていたインタビュー記事を読みました。その言葉がとても印象的で…。
 
慶一「安定とか成熟とか円熟とか、そういうことは伝統芸能の方にふさわしい言葉で。私たちがやっていることは伝統芸能と思っていないので、不安定こそ、未完成こそ、次を作る力になるんです」
 
博文「だから一番嫌なのは“レジェンド”だよね(笑)。俺は“レジェンド”って言われて嬉しかった時があったんだけどね(笑)。ぜんぜん違うんだけど(笑)」
 
慶一「“レジェンド”って、いつの間にか言われることが増えてきてね。ぜんぜんレジェンドなつもりはないんですけど。日本のロックミュージック界のレジェンドとか言われたりする時があるね」
 
――すみません…私もムーライダーズのことをそういうふうに言ってました!
 
博文「でも、そう言ってくれてる人は褒めてるんですよね(笑)」
 
慶一「それはありがたいですけど、言われてる方はちょっとこそばゆい感もあるし…。レジェンダリーなものを作ってる気はまったくないんでね…」
 
――それは何かの権威になりたくないということでしょうか?
 
慶一「うん。そうそう!」
 
 
 
新作の発売記念ライブは、また絶対にやります!
 
 
――お話をお聞きしていると、次はどんな作品を作るんだろうと興味が尽きないのですが。
 
慶一「次の作品はまだ何も考えてないんです。できたばっかなんで。ただ、作り続けようという気はみんなある」
 
博文「個人的には、よりロックじゃないものを(笑)」
 
慶一「個人的にはいろいろあるでしょ。ま、いろいろアイデアはありますけど、11年休んで再び始めて、ここでもう一回休むわけにはいかない、時間無いし、(メンバー)みんな体調がさまざまだし、本当はツアーもしたいけど、チャーター便がいるかもしれないし(笑)。そういったこともあるんで。音楽を作るということは自宅でもできるし、まずは身近なことから。元気なうちにやっていかないとなって」
 
――今作の楽曲をライブでぜひ体感してみたいです!
 
慶一「今回の(アルバムの)再現はなかなか難しいね。一曲目の、あのずれた感じ…。バンドのメンバーが考えることはずれてるんでね。全会一致とか、全員賛成とかも無いんです。それを(一曲目が)見事に表してると思うけどね。あの語りは同時に録ったんだけど、お互いの声を聴かずに録ったんですよ。どこを誰が喋ってるか、一切聞かずに。終わって聴いてみたら、みんなズレてたんです(笑)。これはムーンライダーズというバンドを象徴してるかな…とも思いますが。あれは部分的にエコーとかリバーヴとかいろんなところにかかってるんで。これを再現するのは非常に難しいんですけど、違う再現の仕方ならできます。この方法でいろんなことができると思う。喋る喋る喋る、逆回転使う、エコーがかかるとかね。これは毎回違うセッションになるんじゃないですかね。もしステージでやるとしたら」
 
――ラストの『私の愚民』のアウトロのインプロビゼーションも面白そうですね。
 
博文「そうですね。あれも二度と同じことはできないしね」
 
――今後のライブの予定は?
 
慶一「ライブは、3月に日比谷野外音楽堂でやったのが、いちおうレコード発売記念ライブ予定だったんですが。メンバーが一人、病に倒れて二週間入院しちゃって、それが発売記念のライブにならなかったんで、また絶対にやります!」
 
――配信ライブなどは?
 
博文「配信は絶対に必要でしょうね」
 
慶一「配信をすることで、東京までライブを観に来れない方は喜んでくれているようなので」
 
――では最後に、ファンの皆さまにメッセージをお願いします!
 
博文「『It's the moooonriders』を聴いて、文句を言ってほしい…、文句を言いたい人もきっといるでしょう(笑)。だけど、それは聴かないとわからないから。とにかく聴いてください。音的な奥行きといろんなものの奥行きがあると思うんだよね」
 
慶一「すごくいろんな音が入ってるんで、聴くたびに印象が変わると思うんです。立体的なアルバムができたなと思ってます。そういう立体的な新しいサウンドが生まれるのかどうかというのが、途中で心配になってくる。それがプレッシャーだったんですよ。でも、出来上がってみて、それはクリアしたなと思います。だから、再び活動を開始して良かったなと思います」

moonriders4.jpg

Text by エイミー野中



(2022年5月27日更新)


Check

Movie

Release

Album『It's the moooonriders』
発売中

【CD】3300円(税込) COCB-54346

【LP】6600円(税込) COJA-9452-3

《収録曲》
01. monorail
02. 岸辺のダンス
03. S.A.D
04. 駄々こね桜、覚醒
05. 雲と群衆
06. 三叉路のふたり
07. 親より偉い子供はいない
08. 再開発がやってくる、いやいや
09. 世間にやな音がしないか
10. 彷徨う場所がないバス停
11. Smile
12. 私は愚民

Profile

ムーンライダーズ…鈴木慶一、岡田徹、武川雅寛、鈴木博文、白井良明、夏秋文尚。デビューから45年のキャリアを誇るロックバンド。70年代前半に活躍した「はちみつぱい」を母体に、1975年に結成される。1976年に鈴木慶一とムーンライダース名義でアルバム「火の玉ボーイ」でデビュー。 翌1977年にムーンライダーズ単独名義として初のアルバム「MOONRIDERS」を発表し、以降コンスタントにリリースを重ねる。1986年から約5年間にわたり活動を休止したが、 1991年にアルバム「最後の晩餐」で活動を再開。つねに新しい音楽性を追求するサウンドは、同年代だけでなく数多くの後輩アーティストにも影響を与えている。また、各メンバーが積極的にソロ活動も行い、それぞれプロデュースや楽曲提供など多方面で活躍中。

moonriders オフィシャルサイト
https://columbia.jp/moonriders/


Live

Sold out!!
▼7月16日(土) 16:30/19:30
ビルボードライブ東京
カジュアルエリア-8900円(1ドリンク付)
※未就学児童入店不可。18歳未満・高校生は成人の同伴にて入店可。
※チケットは1人6枚まで。
[問]ビルボードライブ東京■03-3405-1133