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「少しの希望を持ち帰ってもらえるような時間になれば」
クミコ、2年ぶりに単独コンサートで最新CDもプレゼント

8月28日(土)に大阪・サンケイホールブリーゼで開催される「クミコ コンサート2021」。2019年以来、2年ぶりとなるこの単独コンサートは、開催直前にリリースするクミコのシングルCD『十年/人生のメリーゴーランド』のプレゼント付きだ。誰も予期しなかったコロナ禍で、日常が非日常となってしまったこの2年。自身初の試みというCDシングル付きのコンサートには、だからこそ「目の前のお客様に改めて感謝の気持ちを伝えたい」という思いが込められている。東京と大阪を繋いでのリモート取材で、音楽のことやコンサートのこと、この日々のことを聞いた。

――2020年以降、クミコさんはどのようなライブ活動をされていたのでしょうか?
 
お客さんの人数を半分にするなどして、小さいライブをちょっと続けていました。
 
――無観客の配信ライブはされなかったんですね。
 
そう、それはやらなかったんです。私が機械に強くないというのもあって、周りのスタッフが私には向いてないのではと思ったというのもあって、やめておこうと。
 
――規模が小さくなったとはいえ、やっぱり目の前にお客様がいらして、一曲一曲に耳を傾けていらっしゃる姿を目の当たりにできるというのは、すごくありがたいことではないですか。
 
本当に。やっぱりギブ・アンド・テイクで、こちらもエネルギーとか、刺激をもらうので、リアクションなど何もないところで歌うというのは、生き物としてすごく難しいことなんだろうなということは分かりますね。
 
――サンケイホールブリーゼでのコンサートの直前、8月25日(水)には新録した『十年/人生のメリーゴーランド』のシングルをリリースされます。『十年』はブラジルのミュージシャンとリモートでレコーディングをされたそうですが、リモートでのレコーディングというのは、どんな感じだったのでしょうか?
 
プロデューサーが日本にお住いのレナード・イワイさんで、レナードさんが全部仕切ってくださって、「この楽器とこの楽器をリモートにしよう」とブラジルの方とお話をしながら、ああでもない、こうでもないと言いながら音源として取り込んでいきました。本当でしたら一緒にやりたかったんですけども、楽器の演奏中の映像を送ってくださったので、こんなふうに地球の裏側から届いているんだなって新鮮な気持ちで見ていました。パーカッションとか、いくつかの楽器を持ち替えては録音されていて。ビール瓶みたいな瓶でカシャカシャと演奏されているのもおもしろかったです。
 
――そうしてできあがった『十年』。どのようなサウンドになったのでしょうか?
 
クールサウンドになりました。私はサンバとかボサノバは聴くのは好きなのですが、歌うのは結構難しくて。リズム感が私の体の中にないものなので、今までほとんどやってこなかったんです。でも、こういう機会に恵まれて本当に勉強になりました。
 
――今は状況が状況だけに、いろんな制限がありますが、だからこそいろんなアイデアが生まれて、思いもよらなかったことにつながるということもあるのでしょうね。
 
本当ですね。こうしてリモート取材をしているのも、今だからこそできることですもんね。大阪に行っていないのに、お互いに顔が見られるってすごいですよね(笑)。本来ならば私はキョードー大阪さんのその応接室にいるはず。懐かしい…、なんか、そこに座ってる気になってきちゃった(笑)。

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――リモート取材もすっかり定着しましたね。そして、『人生のメリーゴーランド』もまた再アレンジされたということですが、どんなアレンジになったのでしょうか?
 
村松崇継さんにアレンジをしてもらったのですが、村松さんだったら「ハウルの動く城」の中で流れていた久石さんの雄大な感じを取り戻せるかも、再現できるかもと思ってお願いしました。前回はバンドテイストだったのですが、今回はオーケストラサウンドにしたいということで、最初に聴いた感覚がよみがえった感じで、すごく嬉しいです。ぜひ皆様にも聴いてもらいたいと思っています。
 
――2006年に『人生のメリーゴーランド』を、2007年に『十年』を発表されました。それから13、4年、経っていますが、改めてレコーディングされたことで新たな気づきや、歌に対するアプローチに変化などあったでしょうか?
 
その当時に歌っていた私と今の私では、違う私になっているので、ここで歌っているものも自ずと変わっているだろうと思いますね。2021年の私が歌っているということですよね。2006年、2007年ぐらいから世界情勢も、日本も、全く変わってしまって、特に日本は今からちょうど10年前に東日本大震災があって、自然が制御できないものと分かったし、原発のこともあるし…。挙句はコロナ禍で世界中が揺れて、明日さえも分からなくなりました。この状況下、「明日のことは分からない」ということが分かりましたよね。いかに不安定の中で生きてきたかということですよね。
 
――確かに、明日のことが分かる気になっていましたが、本当に分からないのだなと日々実感します。
 
色んなことが過去から現在を通って、未来に何となく繋がっていて…と思っていましたが、そんなことないんだって、すごく分かりましたよね。ただ、戦争が起きたり、疫病がはやったり、昔からも思いもよらないことが起きてきたから、人類はそういう中で生きていくものなんだって、そう思えばいいわけなんですけど…。ちょっとビックリしちゃいますよね。今までこういうことがなかったですからね。
 
――それこそ、去年はたくさんのコンサートや舞台が中止になりました。本当に幕が開かないということがあるんだと、痛感しました。
 
まさか私達がやっていることが「不要不急」に分類されるとは思わなかったですから。ただ、2011年の震災の時にも同じようなことを思いました。私たちがやっていることは人助けにならない、お腹を満たせるものではないということが、ちょうど10年前に分かって。それから10年経って、またもや無力な職業なんだということを改めて突きつけられましたね。そういう中で生きてきたんだって。ただ、一方では、「やっぱり歌やお芝居があって良かった」と言われることのありがたさを改めて感じさせてもらっています。
 
――「不要不急」と判断されたとしても、目の前の方が歌を聴かれて笑顔になったり、涙されたりすると、決してそんなことはないと思います。
 
本当に、その姿に励まされながら生きています。いつもライブなどで言っていますが、皆様が来てくださらなければ私たちは生きていけないですから。そういうことをつくづく思います。
 
――8月28日も楽しみですね。『十年/人生のメリーゴーランド』を収録した最新シングルCDのプレゼントもあるそうですね。
 
そうなんです! 感謝の気持ちも込めてCDをプレゼントしたいと思います。お礼ですよね、感謝です。ぜひとも皆様に来ていただきたいと思っています。
 
――話は変わりますが、クミコさんのブログを拝読していますと、赤裸々に気持ちを綴っていらっしゃるのが印象的です。ダイレクトな言葉は、ファンの皆さんにとって励ましになっているのではないでしょうか。
 
ブログを始めた時に、プライベートのことを書くのが一番いいのだろうなと、自分で自分を見つめられるものにすれば長続きすると思ったんです。歌うことも仕事ですけど、一番大きな仕事とは、生きていくこと。まず、日々をなんとか生きていくことが私にとっては非常に大変なことで、それはおそらくいろんな職業の方、いろんな状況下の方もそうだと思います。それが共通点ですよね。今日1日を一生懸命生きていくことが何よりも大変なのは誰も同じです。そのことを書いていけば、いろんな方の心のどこかに引っかかったり、手を取り合ったりすることができるかもしれないという思いがあったので、プライベートなことを綴っております。このブログを読んでいただいて、様々な気持ちが交差することに意味があるんだろうなと思います。
 
――毎日更新してらっしゃいますね。
 
なるべく毎日です。今日はだめでしたね(笑)。
 
――ご多忙な日々の中でも言葉を綴るということは、気持ちの切り替えにもなっているのでしょうか。
 
「整う」という言葉がありますよね。それに近いかもしれないですね。毎朝必ず、写経をして気持ちを整える方がいらっしゃいますが、私の場合は、朝、起きてブログを書くことで、その日を整えるという感じです。そうすることで、いろんなことがあっても自分自身に対して客観的になります。前の日にどんなことがあっても客観的に見たり、書いたりすることで、そんなに大したことではないとか、そんなふうに苦しかったんだとか、悔やんでいるんだ、悲しんでいるんだとか、色々なことが分かって。ブログを書くことは1日の出発の儀式みたいな面もあります。
 
――ブログにも歌に対して新たな発見や気づきがあったと書いていらっしゃいますが、歌というものは、まだまだ未知な部分がありますか?
 
歌って、人の人生の上に立っているもので、そこを歌うものではありますが、自分がどういうものか分からないですよね。人間のこともまだまだ分からない。おそらく死ぬまで分からない。だけど分かろうとして日々生きているので、歌に対しても日々、気持ちが変わっていると思うし、それでいいんじゃないかと思います。だからこそ、楽しく、ワクワクして歌えればいいなと思います。揺らいでいます。みんな揺らいで生きていますから、それでいいんだなと思います。
 
――コンサートにもいろんな思いを抱えて生きていらっしゃる方が集まって、ひと時を同じ時間を過ごします。そういう時間も大事ですね。
 
本当にそうだと思います。この頃思うのは、私のコンサートって、みんなで同じ方向を見て「イエーイ!」とか、そういうことはありませんが、皆さんそれぞれが思いを持って、お一人お一人が心の扉を開いてくださって、その扉から私の歌がちょっと入っていく感じです。そのことで、嬉しいとか、楽しいとか、そんな気持ちを抱えて帰ってもらえたらいいなって。扉の中に入る歌は、お客様それぞれでいいと思っています。
 
――サンケイホールブリーゼでの構成は、どのようなものをお考えでしょうか?
 
今まで歌ってきたものは大体総括して、シャンソンも多いし、もちろん『人生のメリーゴーランド』『十年』『広い河の岸辺』『愛の讃歌』もやりますし、『妻が願った最期の「七日間」』も歌います。この歌はコロナ禍の前にできた曲でしたから、それ以降なかなか歌うことができませんでしたが…。オリジナルの歌も含めていろんな心情を歌った歌、この時代だからこそ沁みるであろうと思う歌を歌いたいと思います。歌というものは、人が弱っている時に寄り添えるもの、励ませるものだと思うので、「不要不急」と言われていますが、本当は不要不急じゃないのかもしれないですね。こういう時にこそ必要かもしれない。今、苦しんでいる方も、憂いている方も、悲しんでいる方も、そのお気持ちのまま会場に来てくださればと思います。それでも最後に少しの希望を持ち帰ってもらえるような時間になればと思います。

Text by K.iwamoto



(2021年8月12日更新)


Check

Release

Single『十年/人生のメリーゴーランド』
2021年8月25日(水)発売
1350円(税込)
COCA-17909

《収録曲》
01. 十年
02. 人生のメリーゴーランド
03. 十年(Instrumental)
04. 人生のメリーゴーランド(Instrumental)

Live

「クミコ コンサート2021@大阪」

チケット発売中 Pコード:193-097
▼8月28日(土) 15:30
サンケイホールブリーゼ
全席指定-7800円(シングルCD付)
※10/3(土)の振替公演。未就学児童は入場不可。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ご来場の際はマスクをご持参いただき、入館の際に必ずマスクをご着用くださいますようお願い申し上げます。マスク着用にご協力いただけない場合は、ご入場をお断りいたします。・チケットお申込時にご入力いただく氏名・緊急連絡先等の情報は保管され、ご来場者様から感染者の発生が疑われた場合などに必要に応じて保健所などの公的機関へ提供させていただく可能性がございます。予めご了承ください。その他注意事項はキョードー大阪HPにてご確認をお願いいたします。
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