インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > 「僕らの曲が周りのミュージシャンの目にどう映っているのか  どんなアレンジをするか、自分たち自身が知りたかった」 10周年を記念したトリビュートアルバムを発表した fox capture plan×参加アーティストでもある盟友・jizueによる 対談インタビュー

「僕らの曲が周りのミュージシャンの目にどう映っているのか
 どんなアレンジをするか、自分たち自身が知りたかった」
10周年を記念したトリビュートアルバムを発表した
fox capture plan×参加アーティストでもある盟友・jizueによる
対談インタビュー

バンド結成10周年――――――文字にしてみれば、よく見かけるものではある。だけど、事実同じメンバーでひとつのことを10年続ける難しさは、外野にいては本当に理解することはできない、と思う。現代版ジャズ・ロックをコンセプトに掲げ、三者三様の圧倒的な演奏スキルとテクニックを武器に唯一無二のジャズ・ピアノ・トリオとして突き進んできたfox capture plan。アニバーサリーを盛大に祝おう! と2020年末から2021年明けにかけて企画されていた『10th Anniversary Year Kick Off Live』ツアーは、時勢の変化によって公演延期も発生する事態に。それから約半年が経ち、ついに『10th Anniversary Year Kick Off Live』の京都・磔磔公演が開催となった。さらにこの夏は活動10周年を機に初のトリビュートアルバム『ESCAPE -Tribute to fox capture plan-』もリリースといよいよ祝祭ムードが高まる中、磔磔公演も客席から見守っていた盟友・jizueの井上典政・片木希依を交えたスペシャル対談が実現。同じインストゥルメンタルバンドとして共演も多く、jizueは今回のトリビュートアルバムにも参加アーティストとして名を連ねる。ぜひ今回の対談では2組の互いを見つめる目線に注目してみて欲しい。

自分たちの結成前から活動していたjizueを
実はずっと意識してチェックしていた
 
 
――今年の1月に開催を予定していた『10th Anniversary Year Kick off Live』が半年間の延期を経てようやく開催となったわけですが、手応えはどうでしたか?
 
fox capture plan・岸本(以下、岸本)「まずお客さんが集まってくれたことがうれしかったです。制作期間に入っていてリハーサルできる時間は限られましたけど、そういう中でこの1年以内に作品を2枚出してそこから選曲をして、自分たちの最善の方法でのライブはできたかな」
 
――ライブができない期間があってまた少しできるようになってきて、気持ちのうえでライブに対する変化はありましたか?
 
fox capture plan・カワイ(以下、カワイ)「久しぶりにやる曲ばかりで新鮮な感じはしましたね」
 
fox capture plan・井上(以下、f・井上)「でも、始まったら結局変わらないんですけど」
 
カワイ「そういえばこんな感じだったよなって。ちなみに磔磔での岸本のMCはかなり手応えを感じていたみたいですけど」
 
岸本「それ、周りからすごく言われました」
 
――ステージ上でもメンバーから突っ込まれていましたね。
 
岸本「ねぇ?」
 
jizue・片木(以下、片木)「彼、MCには定評がありますからね」
 
岸本「でもいつもと違うかって言われるとそうでもなかったんですけどねぇ」
 
全員「わははははは!」
 
――自分的にはいつも通り?
 
岸本「いつも通りですね。でも磔磔のMCは妙に評価が高かったです」
 
片木「いつも通りに輝いてたってことやんな?」
 
岸本「そうそう」
 
――jizueのおふたりも磔磔には…。
 
jizue・井上(以下、j・井上)「行きました。ライブはもちろん素晴らしかったですし、いつもfoxはライブに向けてあまりリハをしないらしいんですよね。でも僕らjizueは逆で、結構ガチガチにリハをしたがるので、だからこそfoxのライブは演奏にもすごく余裕を感じるんですよ」
 
岸本「でも本当はリハやりたいんですけどね」
 
j・井上「そんなことないでしょ〜(笑)!」

f-j2.jpg
岸本「メンバーで集まる機会は多いけど、製作とか別の作業をやっちゃいます」
 
j・井上「それであれだけのライブを見せるっていうのはやっぱりねぇ…」
 
f・井上「磔磔では久々にやる曲もあって始まる時はハラハラしたけど、やったら意外といけました」
 
岸本「前回、jizueと一緒に横浜と大阪のビルボードで『BACK TO BACK LIVE』(対バン形式ではなく、同じステージ上で交互に2バンドが交互に演奏をするというスタイルを採用したライブ)やったやんか」
 
片木「うん、やりましたね」
 
岸本「お互いのライブを1曲ごとにステージの上で見てたやろ? 今回はステージの外から見てみて違いとかあった?」
 
j・井上「磔磔は生音っぽい独特の響きがあるからかもしれないけど、熱量は同じステージにいた時と変わらず伝わってくるなと思いました。あと、なんでそんな難しいことを簡単に演奏できるんやろ? って」
 
岸本「いやいや〜」
 
――その『BACK TO BACK LIVE』の時にお互い同じステージにいるからこその気付きもありましたか?
 
カワイ「山田(jizue・ベース/この日の取材は欠席)はやっぱりデカイなと」
 
片木「あのベースはデカイ(笑)」
 
f・井上「あの時どっちのバンドもドラムは僕だったので(井上は現在jizueのサポートドラマーとしても活動中)ずーっと叩いていて、自分的にはずっと曲が続いているみたいな感覚だったんです。でもあとから映像で見たら、無意識でバンドごとにちゃんと音を変えてましたね」
 
岸本「すげぇよな」
 
カワイ「同じセットだったから、スネアとかも変えてないのにね」
 
f・井上「あのライブでは2バンドの曲がDJみたいにつながったりしているところもあったから、永遠にずっと叩いている感覚だったんですけど、叩き分けていたことに関しては発見でしたね」
 
カワイ「1ステージに2バンドがいてドラマーも2人いてみたいなのはたまにありますけど、ドラマーがひとりは面白ですよね」
 
岸本「そのステージ上でjizueのライブを見ると、しっかりやり込んできているなっていう感じがすごくしました」
 
――やり込んできているというのは仕上がってる!というような?
 
岸本「ですね。それは対バンした時から思っていましたけど、同じステージの上だとより明確になるというか」

f-j3.jpg
――jizue的にはどうでしたか。
 
片木「jizueは本当にリハをいっぱいするんです。うちはギターとベース、ピアノとドラムの4人なんですけど、その点の合わさりでエネルギーが出るというイメージです。でもfoxは決め事が少ない分、自由にたくさん演奏している間にブワーっとエネルギーが出ている感じがするというか。音のエネルギーの出し方が違うのが面白いとも思いますね」
 
岸本「はいはい」
 
片木「同じステージにいると手元も足元もめっちゃ見えるんで、今それ踏むんや! とかそういうのも見られたしね」
 
――ビルボードは客席からも手元や足元が見えるのは面白いポイントですもんね。そもそも2組の出会いは?
 
カワイ「初めて対バンしたのはいつだろうね?」
 
f・井上「初めましては2マンツアーかな。ロフトとMETROと」
 
――初対面はライブだった。
 
岸本「でも前から知り合いではあったというか」
 
片木「彼(岸本)は京都出身ですし。あとお互いにインストバンドなので同じコンピに入ったり一緒になることも自然にあったんですよね」
 
カワイ「僕らが結成する前からjizueは活動していたから、僕らはチェックもしていましたし」
 
岸本「結構jizueのことは意識していましたね」
 
片木「ホンマかいな!」
 
岸本「コンテンポラリージャズの要素もあるし、ピアノとギターのコンビネーションがポリフォニックでポストロック的で。うちらもギターはいないし、コンテンポラリージャズとポストロックの融合みたいなことが当初のバンドコンセプトだったんです。そういう意味ではjizueとSchroeder-Headz、mouse on the keysは先にそういったことに取り組んでいたので、カラーが被らないようにっていうのは心がけていましたね」
 
――先人たちとは違う方向に行こうと。
 
岸本「そう。何かを模索して。そういう意味でジャズの要素はある程度残すことを考えたかもしれないです。僕とカワイはジャズシーン出身だし」
 
――ちなみにそんなfoxとjizueがお互い「ここが変態だな」って思うところを聞きたいと思っていたんですが…。いい意味での変態、と言いますか。
 
片木「foxは変態の集まりみたいなもんやん!」
 
岸本「変態の集まり…うん、そうですねぇ」
 
カワイ「お互い変拍子をよくやるんですけど、やっている側は意外と難しいことをしている意識はないのかなっていうのは思っていて…。レコーディングやリハで染み込んでいることなので、無理してやっているみたいなことではないんですよね。でもこの間の『BACK TO BACK LIVE』で何この難しいフレーズはとか、何拍子だよとか、めちゃくちゃキメがエグいところに入ってるなとかjizueの演奏を聞きながら思って」
 
片木「あはははは!」
 
岸本「jizueは変拍子がすごくポップな方に作用して気持ちいいなっていう曲もあるんですよ」
 
――そういうjizue的変態なことは、自分たちにはできないなと思いますか?
 
岸本「でもね、共通するところはあるかなと思います。まあjizueほどうまくやれてるかどうかはわからないですけど。逆にjizueはトガりすぎてるなって思うところもあるんですよ。なんでそんなことすんの!? みたいな曲も結構あるなぁと思います。そこはちょっと変態的だし好きな要素でもあります」

f-j6.jpg
――jizueのおふたりに「トガりすぎてるな」っていう意識はありますか?
 
j・井上「いや…何かひっかけたいなみたいな感じで、曲の中でひっかかる部分を残したいっていう意識はあります」
 
片木「うん、びっくりさせたいなっていうのはあるかな」
 
岸本「いいね〜」
 
片木「逆にfoxはアドリブで…その場でやっていくのがすごく得意な人たちで、jizueは難しいことをいっぱい練習して誰にもできひんことを苦じゃなくやるみたいな違いもあると思います」
 
――jizueは理論的にやるというか、しっかり組み立ててやる?
 
片木「組み立てたものをいっぱい練習しますね」
 
カワイ「フレーズとか全部指定なの?」
 
片木「リフは全部指定で、パソコンで作ってきたやつを楽譜にしてめっちゃ練習する感じかな」
 
岸本「へー!」
 
片木「foxはそれぞれが作家としても活動してはるから、どういうものが人に喜ばれて、どういうものがどういうところに響く音楽かわかってやってると思うんです。一般の人に伝わるとかウケるとかを全部わかったうえで音楽を作っているなっていう感じがめちゃくちゃ変態やし、もっと振り切ったこともやれるけど伝わるにはこういう表現がいいんやろうなあっていうのをわかって曲を作っているのもセンスやなぁって思います」
 
岸本「うん、結構そうですね」
 
片木「あ、よかった(笑)」
 
岸本「広くはウケないかもしれないけど、ある特定の人たちにはすごくめちゃくちゃ刺さるみたいな音楽かなと思います」
 
カワイ「狙って刺さるものを作ろうとすると、ちょっと既視感がある曲になりがちなので、そこをいかにそうじゃないように聞かせるかはアレンジのテクニックじゃないかなという気がしていて。メロディってそんなに…言い方雑だけどそんなに大差ないというか…調理の仕方で全然違って聞こえると思うんです。そのあたりが“流行っている”とか“よく聞かれる”っていうところにつながるのかなと思います」
 
 
 
トリビュートしてもらったことで
自分の引き出しにないものが出てくる面白さがあった

 
――今回のfox capture planのトリビュートアルバムのリリースに関して、どういう経緯でプロジェクトとしてスタートしたんですか?
 
岸本「僕らが結成10周年で…今回のリリースのヒントになったのは、去年9mm Parabellum Bulletのトリビュートアルバムに参加したことなんですよ。これ面白いよねっていう話になって、僕らも10周年でできたらいいなってアイデアレベルの話が膨らみました」
 
――9mmのトリビュートに参加して、どんなところに面白さを感じられたんでしょう?
 
カワイ「やっぱり人の曲をやるのは面白いと。自分たちの曲ばかりやっていると、もっと新鮮に聞きたいとか自分たちにないエッセンスがどんなふうに入ってくるのかを聞いてみたくなったんです」
 
――ある種、実験というか。
 
カワイ「そうですね。ほんと趣味みたいな感じ」
 
f・井上「9mmの曲をやるのは面白かったですよ。同じ9mmの曲なのに、いろんなアーティストが各々全然違う雰囲気でしたから」
 
岸本「しかも2枚組の1枚が歌もので、もう1枚がインストでしたからね」

f-j7.jpg
f・井上「あとは僕たちも10年やってきていろんなつながりができたので、それを1回まとめたい気持ちもありました」
 
カワイ「そうそう、もうひとつ他のミュージシャンの目にどう映っているのかもわかるじゃないですか。どの曲を選んでどういうふうにアレンジするのかっていうのは、あぁこういうふうにやってくれるんだっていう気付きが欲しかったのもありましたよね」
 
――10周年を機に自分たちも再確認してみようと。
 
岸本「うん、そうですね。自分たちで『capture the Initial "F"』を再録したのもそういうところがあるかもしれないです」
 
――トリビュートアルバムの参加アーティストっていうのは、foxの3人からのご指名ですか?
 
f・井上「そうですね。楽曲を聞いてみたいと思ったアーティストを選んでいったかな。でも各々特色が出ましたよね」
 
カワイ「僕らの曲にギターが入ったらどうなるんだろうっていうのを聞いてみたいとか」
 
f・井上「大体希望通りすんなり決まりました。綺麗に曲も被らずで」
 
カワイ「綺麗だったね」
 
片木「そうなんや! 曲は取り合いにならず?」
 
f・井上「全然被らなかったね」
 
片木「うちらも早く返事しよう!って」
 
j・井上「一番に取ろう! って話になりました」
 
――曲のチョイスはアーティスト側に委ねた感じですか?
 
岸本「そうですね。ミュージックビデオを作った代表曲を選んでくれた人が多かったですね」
 
――ちなみにjizueは「疾走する閃光」決めうちで行ったのか、他にも候補があったのか…。
 
片木「決めうちですね」
 
j・井上「これがいい! って。僕らは結構初期に声をかけてもらっていたみたいで、今ならどの曲でもいけるよって」
 
カワイ「jizueは第一弾として声かけしました」
 
――『疾走する閃光』をやりたいっていうのはjizueメンバー全員一致で?
 
j・井上「全員がコレ!って。『BACK TO BACK LIVE』の時に僕がこの曲にギターで参加させてもらった流れもありましたし」
 
片木「あとはfoxのお客さんも代表曲としてよく耳にしている曲を、私たちのアレンジで「そんな違いがあるんや」って思ってもらえたら面白いなっていうので。やっぱりfoxの中でも知られている曲をやりたいっていうのはありましたね」
 
岸本「『疾走する閃光』はYouTubeでも再生回数が多いですね」
 
片木「だから曲が決まった時はヨシヨシって」
 
――トリビュートする曲が決まって、そこからはどう作り上げていくんでしょうか。
 
片木「まず元々の曲がどんなふうに組み立っていてどこにどんなリフがあるっていうのを分析するんです。パソコンの音楽ソフトに打ち込んでメンバーで共有して、それからどんなパーツでできているからここを目立たせようとか、ここをjizueっぽくしようとか考えていくんです。で、最終的に彼(jizue井上)は歌ったんですけど」
 
j・井上「せっかくやし歌おうかと(笑)」
 
――聞いた時はびっくりしました。
 
カワイ「トリビュートする方法としては元の素材を使ってそのまま加工するタイプと、コピーはするけどイチから組み立て直すふたつがあると思うんですけど、jizueは後者でイチから演奏し直しているんですよね」
 
岸本「参加アーティストの何組かは僕らの元々のレコーディングテープの素材を使って再構築してくれていて。それ以外はみんな音をゼロの状態から作ってくれているんですよ」
 
――今回井上さんが歌うところに着地したのはどうしてだったんですか?
 
j・井上「出来上がって…これでもいいけどせっかくインストバンドのトリビュートやし、歌ったらみんなもっと驚いてくれるかなっていうのがあって、歌ってみたらメロディが演奏に対してうまくハマった結果ですかね。フタ開けたら…僕、結構歌ってました(笑)」
 
――仕上がってみたら想像より歌の部分が多かった?
 
j・井上「うん、でもなんかそれがよかったんです」
 
岸本「うん、よかった。歌がなくても十分jizueっぽかったけど、曲をより進化させてもらったっていう印象はありますね」
 
j・井上「曲自体がかっこいいので、歌なしだと原曲と同じ感じになるなと。やっぱりfoxがやっているのとはちょっと違った感じに見せたいって考えた時に、jizueは今ドラムがサポートメンバーなので生音で作ることはできなくて、どうしても打ち込みになっちゃうんです」
 
岸本「なるほど!」
 
片木「(fox cputre planの井上を)誘おうと思ったけど、それは違うなって」
 
岸本「確かに! あえて打ち込み!」
 
――でもそもそも歌詞のない曲に歌詞をつける作業って難しいですよね。
 
岸本「歌詞の内容ってご存知ないですか?」
 
――この時点でいただいた資料には歌詞の詳細がなくて…。
 
j・井上「『疾走する閃光』のMVを何度も見ていて、頭の中で勝手できたストーリーを歌っているみたいな感じです」
 
――内容は?
 
j・井上「それは言えないんですけど(笑)、一応ひとつの物語になっています。でも英語が下手なん伝わらないかなぁと思っています」
 
片木「ふふふ」
 
――仕上がったjizue版の『疾走する閃光』を聞いてのfoxのみなさんの感想は?
 
f・井上「がっつりjizueだなと。最近jizueは歌を入れているし「あ、やっぱり歌入れてきたな」って」
 
――私、ある意味トリビュートするという行為自体にラブレターを手渡すような印象があるんです。この曲を、アーティストをこういうふうに愛していますっていう差し出しというか…。
 
j・井上「うーん…僕的にはラブレターという感じではなく、尊敬を表したイメージですかね」
 
片木「うんうん」
 
j・井上「foxってインスト界でバンって出て来て至る所でライブをして駆け抜けていっているイメージで、すげぇなあっていう思いが常にあるんです。『疾走する閃光』は曲的にもそういう感じなので、駆け抜けていっている彼らをストーリーにしてみました」
 
――どんな考え方でトリビュートしたみたいな話は、foxのみなさんは聞く機会はあるんですか。
 
岸本「最近対談で聞きましたね」
 
カワイ「Yasei(Collective)のマサナオくんとか」
 
岸本「面白かったよね。ゼロから何かを生み出すのではなくて、モチーフがあるから楽しかったって言っていただきましたね」
 
――ちなみにjizueのおふたりは他のアーティストが手がけた曲を聞いて「やられた!」っていうものはありました?
 
片木「正直、みんなすごかったです。それこそリミックスタイプの人と、全部弾き直すタイプの人と。私は原曲がどういうニュアンスでピアノを弾いているのかなっていうことに耳をすませて、音のタッチの強さは割と再現めに置いておきたかったんです。そういうふうに置いておく部分とガッチリ作り直す部分のバランスを取ろうと思っていたんですけど、原型なしっていうYasei Collectiveみたい曲もあって、全部革新的に作る!みたいなパターンもあれば、素材は全部あるけど全部生まれ変わらせるみたいなパターンもあったり、再現するのと新しいことをバンドでバランス取っていたりそれは新しいことだなって思いました」
 
岸本「めっちゃ聞いてるやん(笑)」
 
片木「もちろんやん!」

f-j4.jpg
――foxのみなさん自身も新しい発見があるかもっていうことでしたけど、新発見ありました?
 
カワイ「元の曲と違うコードをつけるとか、このメロにこういうコード合うんだとか発見はありましたね」
 
岸本「あったあった!」
 
カワイ「からあげにマヨネーズ合うよね、でも別の調味料も合うよねっていう」
 
片木「七味も合うやんって(笑)」
 
カワイ「意外とワサビもいいなみたいな発見はありましたね。自分の引き出しにないものが出てくる面白さ?」
 
岸本「まさにbohemianvoodooは、前からピアノの(木村)イオリが『other side』を好きって言ってくれていたんですけど、オリジナルはコードがシンプルなんですよ。それをそういう解釈でやっちゃうのか!? って最初思ったけど、2回目に聞いた時には…」
 
カワイ「「めっちゃボヘじゃん!」って思ったなぁ」
 
片木「みんなそれぞれイントロから「めっちゃそうやん!」ってわかる作り方をしてたかな」
 
f・井上「特徴とカラーがすごくあって一発でわかる感じです」
 
――トリビュートする側としては一発目で自分たちだとわかって欲しいみたいな願望は…。
 
j・井上「狙わなくても、結果そうなるのかなと思いますね」
 
片木「わかってもらえたらうれしいけど、狙ってやっていないことの方が多いよね」
 
j・井上「それよりももっと曲をよくしようっていう気持ちの方が強いかな」
 
――それって9mmのトリビュートに参加したfoxのみなさんも同じですか?
 
岸本「9mmの時…『ガラスの街のアリス』は、元の構成として完成度が高かったのもあるしそもそも歌ものだったっていうこともあるけど、流れをあまり変えたくないっていう思いがあったんです。その中でもリズムパターン変えたり、キーを変えたり、コード進行を2番は変えたり、そういうのを細かくやりった感じでした」
 
カワイ「僕らはできるだけ原曲のイメージをそこまで壊さずに作ることを意識したかったんです」
 
岸本「そもそも歌ものをインストにしている時点で、すごく変化があるので」
 
カワイ「さらに変えちゃうと、なんだろこれ?ってなっちゃいますしね」
 
岸本「今回僕らも『ESCAPE』を作ってみてインストバンドのカヴァーをやりたいなって思いました」
 
カワイ「思った思った」
 
片木「jizueのカヴァーやってよ〜!」
 
j・井上「僕ら15周年なんですよね。間に合うかな、今から」
 
片木「年内いけるな〜、やって欲しいな〜」
 
――今後一緒にやりたいこととしてはトリビュートし合いっこ(笑)。
 
片木「やってもらうという夢はできました」
 
――今後2組で何かやるご予定は?
 
岸本「何か、するでしょうね」
 
片木「でしょうね」
 
岸本「でも年1回ぐらい何かはやってるよね」
 
カワイ「対バンはね」
 
岸本「いつかの年に、毎年jizueとは何かあるから今年はやらなくていいかって話をたことがあるんですよ」
 
片木「登場しすぎてるところもあるから、今はいいわ〜みたいな?」
 
岸本「来年でいいんじゃない? って」
 
――でもちょっと距離あけようかって話をしていても、結果的にjizueを欲しているわけじゃないですか。
 
片木「欲しちゃってるよね?」
 
岸本「確かにそうですね」
 
――それって何なのか、言葉にできますか?
 
カワイ「縁があるんでしょうね」
 
岸本「まず人間性が合うんだと思います。気遣いしなくていいし。あれ? 音楽関係ないな」
 
片木「(笑)! あと聞いてくださるお客さんの層が近いのもあるし、単純に私たち自身仲がいいと」
 
f・井上「友達って感じ。気の合う友達として、これからも一緒に音楽をやっていけたら楽しいなと思いますね」

f-j5.jpg

撮影協力/GOOD NATURE STATION
取材・文/桃井麻依子
写真/山元裕人



(2021年8月12日更新)


Check

Release

Tribute Album
『ESCAPE -Tribute to fox capture plan-』
発売中 2800円(税別)
Playwright
PWT87

《収録曲》
01. 衝動の粒子/remixed by Schroeder-Headz
02. other side/produced by bohemianvoodoo
03. 疾走する閃光/produced by jizue
04. the last story of the myth/remixed by Shingo Suzuki(Ovall)
05. Butterfly Effect feat.Tomoaki Baba/produced by Yasei Collective
06. エイジアン・ダンサー/remixed by 辻村有記
07. Cross View/produced by LITE
08. NEW ERA/produced by 同志社大学 The Third Herd Orchestra 2020
09. capture the Initial "F"(2021 NEW TAKE)/produced by fox capture plan

Profile

<fox capture plan>

フォックス キャプチャー プラン…現代版ジャズ・ロックをコンセプトに岸本亮(Pf)、カワイヒデヒロ(Ba)、井上司(Dr)が集い、2011年に結成。これまで7枚のフルアルバムを発表し『CDショップ大賞 ジャズ部門賞』を2度、『JAZZ JAPAN AWARD 2013 アルバム・オブ・ザ・イヤー・ニュー・スター部門』、『JAZZ JAPAN AWARD 2015 アルバム・オブ・ザ・イヤー・ニュー・ジャズ部門』などを受賞。『FUJI ROCK FESTIVAL’ 16』、や『SUMMER SONIC 2017』などフェスシーンはもちろん、2018年ブルーノート東京での単独2DAYS公演、2019年11 月・12月にはビルボードライブ東京・大阪、名古屋ブルーノートでの単独公演では10人編成のライブを開催し大成功を収めている。そのほかTBSドラマ『カルテット』や映画・フジテレビ系月9ドラマ『コンフィデンスマン JP』をはじめとした多くの映像作品で劇版を多数担当。CMやゲームなど多方面へも楽曲を提供している。

fox capture plan オフィシャルサイト
https://www.foxcaptureplan.com/


<jizue>

ジズー…2006年、井上典政(Gt)、山田剛(Ba)らを中心に結成、2007年に片木希依(Pf)が加入。2017年にメジャーデビューを果たす。これまでに7枚のフルアルバムを発表し、それぞれロングセラーを記録。ロックやハードコアに影響を受けた魂を揺さぶるような力強さ、ジャズの持つスウィング感、叙情的な旋律が絶妙なバランスで混ざり合ったサウンドで、地元京都を中心に人気を高め、『FUJI ROCKFESTIVAL』『GREENROOM FESTIVAL』などの大型フェスにも出演。国内に留まらず、カナダ、インドネシア、中国、台湾など、海外にも進出し、圧倒的な演奏力で高い評価を得ている。

jizue オフィシャルサイト
https://www.jizue.com/


Live

<fox capture plan>

『fox capture plan 10th Anniversary Tour』
【北海道公演】

▼10月24日(日) cube garden
【宮城公演】
▼11月2日(火) darwin
【愛知公演】
▼11月10日(水) JAMMIN'
【福岡公演】
▼12月19日(日) Gate's7
【東京公演】
▼12月22日(水)・23日(木) 日本橋三井ホール

Pick Up!!

【大阪公演】

▼11月11日(木) 18:00
Music Club JANUS
前売5000円(全自由/ドリンク代金別途要)
GREENS■06-6882-1224

<jizue>

『ONE MUSIC CAMP 2021』
▼8月28日(土)・29日(日) ※出演は29日(日)
兵庫・三田アスレチック野外ステージ
チケット、出演者など詳細はhttps://www.onemusiccamp.com/にて


<fox capture plan & jizue>

『MUSER FEST.2021-MUSIC AID-』
▼9月11日(土)・12日(日) ※出演は12日(日)
配信ライブ
各日早割チケット(販売は~8/20)6820円 ※アーカイブ(見逃し配信)視聴権付
各日一般チケット(販売は8/21~9/12)7200円 ※アーカイブ(見逃し配信)視聴権付
https://fest.muser.link/