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「私の歌を、みんなが“自分事”にしてもらえたらいいなと思って
歌っています」
ReoNaインタビュー

※取材はツアー中止決定前に行われたものです。

“絶望系アニソンシンガー”と掲げ、鮮烈なインパクトを与える新時代の女性アーティスト、ReoNa。家庭や学校での辛い幼少時代の体験からアニメやゲームの世界に現実逃避した時、自分に寄り添い、救ってくれたアニメの歌を歌いたいとアニソンシンガーを志したという。また、洋楽にも精通し、YouTubeでアップされているエド・シーランやダニエル・パウター、ヴァネッサ・カールトンといった海外アーティストの代表曲をカバーした秀逸な歌唱にも注目が集まっている。希望を見出せなかった暗黒の日々を経て、負の感情を昇華してきた彼女は今、どんな思いで自らの“お歌”を届けてくれるのか? 『ReoNa ONE -MAN Concert Tour 2020“A Thousand Miles”』を前に、ぴあ関西版WEB初登場となるReoNaが自身のスタンスや信念をReoNa流の表現で明かしてくれた。

“がんばれ!”って、突き放す言葉のように感じられることもあるんです
 
 
――ReoNaさんの歌声は儚さとエモーショナルな要素が共存していて、一度耳にすれば決して聞き流せない力を感じます。歌う時はどんなことを意識していますか?
 
「私の歌をみんなが自分事にしてもらえたらいいなと思って歌っています。歌詞の中に、“きみ”とか“あなた”という言葉が出てくる時に、聴いてくれている一人ひとりに“あなたがきみなんだよ”とか、“あなたが私なんだよ”って。“わたし”とか“僕”という言葉も、(聴いたひとが)より自分を重ねてもらえるように届けられたらいいなと思っています」
 
――ReoNaさんの歌に共感してもらえるように?
 
「そうですね。共感してもらえることがやっぱり大事だなと思います。私、ツイッターに“こえにっき”というものをつけていて、寝る前にその時思ったことや、文字だけで言葉にできないこと、伝えたいことを残しているので、それもぜひ聴いていただきたいなと思います」
 
――ReoNaさんは“絶望系アニソンシンガー”と書かれていたりしますが、生きる希望を失っている人の代弁者として歌っているという意識が強いのですか。
 
「自分が傷ついているときや、差し伸べられる手や希望がないときに、“がんばれ!”って言われるのが苦しかったんです。“がんばれ!”って、突き放す言葉のように感じられることもあるんです。そういう時に、自分は何を一番求めていたのかなと考えてみると、自分と同じところに立って、“わかるよ”って言ってもらいたかったんだなと思って。苦しい時や悲しい時に、“それでもがんばれ”じゃなくて、一旦共感してもらうことで、安らぎを感じたり安心したりして、自分にとってそれがすごく癒しになったんです。そういう自分の体験を通して、ひとの絶望に寄り添えたらいいなと思っています」
 
――それは、ReoNaさんが当初からずっと大事にされていることなんですね。
 
「はい。デビュー当初からずっとです。誰にも会いたくない時や家に引きこもっていた時に、自分の辛い気持ちを重ねられるものを探していたんですけど、見つけられなくて…。傷ついても“がんばれ”だとか、“前を向いて進んでいこう”というようなものはあったのですが…。だから、自分に合うものをすごく探していました」
 
――そういう中で出会ったのがアニメやアーティストの作品だったと?
 
「そうですね。amazarashiさんや鬼束ちひろさんを聴いてました。(自分で)探してるうちにたどり着いたんです。洋楽も言葉はわからなくても、ギターの音色や声の良さだったり、洋楽独特の曲調みたいなのが好きになりました」
 
――海外のアーティストではエド・シーランやダニエル・パウターの曲などをカバーして、YouTubeにアップしていますね。
 
「はい。ダニエル・パウターさんは『Bad Day』が、歌詞に共感したので歌わせていただきました。そのカバー動画がきっかけで、去年の6月に開催された7年ぶりの来日公演にご招待いただいて、一緒にステージにも立たせていただきました。まさか、そんなことがあるんだなあと思って…。すごくやさしくて、あたたかい方でした」
 
――ダニエル・パウターさんと同じように、ReoNaさんにも人間の繊細な部分にやさしく触れる力があるから、きっと通じ合うものがあるんですね。
 
「ダニエル・パウターさんも“がんばれ”じゃない形で歌っていて、人の痛みや悲しみとか、ついてない日に寄り添ってくれる『Bad Day』のような歌にはすごく共感します」
 
――ReoNaさんの歌声にも海外の人に訴えかける力を感じます。
 
「去年の3月末に初めてシンガポールにお歌を歌いに行かせていただきました。それが初めての海外のステージだったので、すごく緊張しました。みなさん言葉がわかるところだけでも、日本語で一緒に歌ってくださるんです。アニメを通して海外の方にもお歌が届いているんだなと感じました。YouTubeの動画には、英語で毎回コメントしてくださっている方もいらっしゃいますし、SNSでメッセージやコメントをくださる方もいるので、とても嬉しいです」
 
 
 
毎回、あなたに向けて届くようにお歌を紡いでいます
 
 
――2月9日には、『Till the End』が新たに配信されました。オーケストラサウンドが似合うような壮大な世界観の楽曲ですね。
 
「この楽曲自体は『ソードアート・オンライン』という作品の原作小説刊行10周年を記念したテーマソングで、去年からイベント限定で公開されていました。『ソードアート・オンライン』は、私自身も人生の節目になる機会をいただいている作品です。今まで会場限定のパンフレットに付属していたCDでしか受け取っていただけなかったんですけど、今回初めて配信することで、会場に足を運べなかった方にも届けられるようになりました」
 
――この曲の歌詞には、“消えない傷”“胸にしまった罪”といったワードが出てきますが、どういう思いで歌っていますか?
 
「『ソードアート・オンライン』という作品はゲームの中で剣を持って大きな敵と戦って、切り開いていくというイメージがすごく強い物語ではあるんですけど、その一方で、主人公のキリトには救いきれなかった命や守りきれなかったもの、傷つけてしまったものがあるんです。あんなにカッコよくて、全てを背負って戦っている主人公にも“消えない傷”や“残してきたもの”ってたくさんあるんです。それでも戦うことを辞めない彼の痛みだったり苦しみだったり、傷だったりっていうところに寄り添えたらなと。そうやって歩いてきた10周年というところにフォーカスして、さらにそこから物語を紐解いていっていただけたらいいなと思って歌っています」
 
――この曲のReoNaさんの歌声はとても勇ましくて圧倒されます。
 
「ありがとうございます。作品の疾走感やカッコよさも表現できている楽曲じゃないかなと思います」
 
――ちなみに、次の全国ツアー『ReoNa ONE-MAN Concert Tour 2020 “A Thousand Miles”』の“A Thousand Miles”というタイトルは何を表しているのですか?
 
「YouTubeにカバー動画をアップしているヴァネッサ・カールトンさんの曲名からインスピレーションを受けて付けました。“どんなに長いみちのりでも、あなたに会えるのなら自分の足で進んでいくよ”という、あの楽曲のメッセージを重ねさせていただいて。“あなたに会うために”、“あなたにお歌を届けるために”というメッセージを込めて、“長い長い道のり”=“A Thousand Miles”というタイトルにしました。ReoNaの世界を大切に届けに行きたいなと思います」
 
――では、今回はどのようなツアーになりますか?
 
「今回、初めて座って聴いていただけるツアーになります。今まではほとんどがスタンディングでのライブだったので、座って聴いていただけることでさらに、じっくりと浸ってもらって、耳を澄ませてもらえるところもあると思います。一人ひとりに椅子があることで守れる自分の世界というのがきっとあると思うので。そこが今までとちょっと違う形で楽しんでいただけたらいいなと思います。」
 
――最後にファンの皆さまにメッセージをお願いします。
 
「ライブは本当に一回きりしかない特別な空間なので、毎回、あなたに向けて届くようにお歌を紡いでいます。ぜひ、会場にお歌を受け取りにきていただけたら嬉しいなと思います」

text by  エイミー野中



(2020年4月28日更新)


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Profile

鹿児島県奄美市出身。陰のある少女らしいルックスながら、繊細で深い、少年の様な歌を歌うシンガー。2018年4月クールのTVアニメ『ソードアート・オンライン・オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』の劇中アーティスト「神崎エルザ starting ReoNa」として、7月4日にミニアルバム『ELZA』でプレデビュー。7月クールのTVアニメ『ハッピーシュガーライフ』のEDテーマ、『SWEET HURT』を担当。8月29日にSACRA MUSICよりソロデビュー。2019年2月から開催された初のワンマンライブツアー『ReoNa Live Tour 2019 “Wonder 1284”』を開催し、全会場ソールとアウトとなる。

ReoNa オフィシャルサイト
http://www.reona-reona.com/