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次世代グランジスター、w.o.d.の等身大
セカンドフルアルバム『1994』完成!

歪んだギターリフが印象的な、神戸発3ピースロックバンドw.o.d.。サイトウタクヤ(Vo.&Gt.)とKen Mackay(Ba.)を中心に中学時代に結成。10代の頃からあらゆるオーディションで数々の賞を獲得し、注目を集める。2015年より現メンバーで活動をスタートし、2018年夏にはDr.の中島元良が加入。NIRVANA直系のグランジサウンドをかき鳴らし、Blurを彷彿とさせる捻れたポップサウンドに、ヘヴィでタイトなリズム隊。気だるさの中にも感情的な熱いシャウトを吐き出すボーカル。シンプルな音で、生々しい魅力を放つバンドである。2018年9月、1stフルアルバム『webbing off duckling』をリリース後は、圧倒的なライブパフォーマンスと音楽センスが口コミで広がり続け、今年6月に開催した初の東阪ワンマンライブはソールドアウト。2019年9月11日、待望の2ndフルアルバム『1994』がリリースされた。プロデューサー兼エンジニアには前作同様、The Strokesの2ndアルバム『ROOM ON FIRE』のメインエンジニアを務めたヨシオカトシカズ氏を迎え、全曲一発録りで収録。自身の生まれ年をタイトルに冠した本作は、前作と同じく初期衝動を詰め込んだものだが、邦楽的なポップさも感じられる1枚になっている。制作についての話を、ボーカル・サイトウに聞いた。ぴあ関西版WEB初登場!

 
ここ1年で、外に向けてライブや制作をするようになった
 
 
――中学3年でベースのKenさんとバンドを結成された時は、既にw.o.d.の形になっていたということですが、音楽性もその頃から固まっていたんですか?
 
「そうですね。1stアルバム『webbing off duckling』に入ってる曲には、中学の頃作った曲もまだあったりして。グランジもハードロックもパンクも邦楽も好きで、何やるべきとかわかってなくて、やりたい放題いろんな音楽作ってたんで、そこはあんまり変わらんとも言える。でも今のメンバーでやりだしてから、それまでは内輪で楽しいだけでやってて、それは大事なんですけど、どういうのをやればカッコ良いかなとか、外も意識するようになってきました」
 
――外に向けて制作するようになった。
 
「1stを作った頃は、何かしらバンドのアイデンティティが欲しかったんです。探しながら作ってた。もちろんまだ模索中なんですけど、ドラムの元良くんが入って、ここ1年ぐらいかな。一緒にツアー回ったりする中でどんどん外への意識が固まっていって、それで完成したのが今回のアルバムです。いい感じです(笑)」
 
――いい感じ(笑)。前作が出たのがちょうど1年前で、そこからの意識の変化だったと。
 
「1stは“良いの作った”っていう気持ちはあるけど、皆がどういうふうに聴くかはわからないじゃないですか。この1年でライブとかやりながら、お客さんの反応を見たりして、客観的に自分らのことを見れるようになった。そういうのもわかった上で今回は作れたかな」
 
――ライブではどういうことを考えながら演奏されてるんですか?
 
「当たり前のことなんですけど、曲に集中してしっかり演奏する。そもそも3人ともパフォーマンスができるようなタイプじゃないんです。煽ったりとか、気恥ずかしくなっちゃうんで(笑)」
 
――そうなんですか(笑)。
 
「何やってんねやろって(笑)。なので、曲をよりよく聴かせられることに集中して演奏する。それは前からやってたことなんですけど、最近はもっとオープンな気持ちでやるようにしてます。ライブはお客さんがいて成り立つもの。一方的に楽しませるんじゃなくて、自分が演奏に集中してる時の快感を一緒に共有できたらいいな、皆も楽しんでもらえたらなという気持ちにはなってます」
 
――ライブ中はMCもほとんどなく、とにかく曲に集中されてますね。
 
「MCで喋れることがあんまりないんですよね。何喋ったらいいかわからへん状態になってるバンドを見てるこっちの気持ち、結構そわそわするじゃないですか。あれもちょっと嫌やし(笑)」
 
――6月に東京と大阪で初のワンマンがありましたが、いかがでした?
 
「お酒がいっぱい届きましたね」
 
――差し入れで?
 
「そうです(笑)。致死量の酒が。持って帰るの大変やって(笑)」
 
――そんなに?! すごいですね!
 
「お酒が好きなんです。それをどこからか聞きつけて皆さんが差し入れしてくれたり、知り合いが持ってきてくれたり。楽屋裏は大変なことになってました(笑)」
 
――ワンマンでも、ひたすら曲をやるんですか?
 
「そうですね、ほぼやって、一応ワンマンやし何かしようと思って、6月はベースとドラムが喋るっていうのをやったんですけど、あいつら恥ずかしがって全然喋らへん(笑)。3言くらい喋って、2度と喋らへんようになって。結局俺が普通に“やりまーす”って(笑)」
 
 
 
1stも2ndも、どちらも初期衝動的な作品
 
 
――今回も1stアルバムと同じく、ヨシオカトシカズさんがプロデュースですね。一緒に作ってみて、前作よりパワーアップしたり、変わったと思う部分はありました?
 
「まずドラマーが変わったので、違う感じにはなったんですけど、作り方としては変わらず一発録りで、シンプルにあんまり音重ねるでもなく。ずっと“どういう2枚目がいいんやろう”って皆で模索しながら、最終的に完成に持っていったんで、結構悩みに悩みましたね。ほんとにギリギリになって曲を完成させたりもしました」
 
――そうなんですね。
 
「最初はいっぱい曲作ろうと思ってたんですけど、1曲1曲のクオリティが下がるなら意味ないなって話になって、最終的に9曲におさまりました」
 
――基本的にはサイトウさんが作曲されるんですよね。
 
「そうです。1回完成させて持って行って、3人で合わせながらプロデューサーにも見てもらってアレンジするんで、最終的に全然違う感じになったりもします」
 
――一発録りの効果は、狙ってる部分があるんですか?
 
「ライブ感や生々しさは、どうしても一定のリズムだけやと出せない要素だし、ヒリヒリする感じとか焦りが見えた方が、聴いてる側としては結構興奮するじゃないですか」
 
――しますね。
 
「そういうのはやっぱり一発録りじゃないと出ないなと」
 
――タイトルのお話になりますが、1994年はサイトウさんの生まれ年ですよね。
 
「そうです。平成6年生まれなんで、最初はタイトル『平成』にしてたんですけど」
 
――前作もセルフタイトルでしたが、今作もそうと言えるのかなと思って。
 
「俺の中にうっすらあったアルバムのイメージとして、BOaTというバンドの『RORO』というポストロックの素晴らしいアルバムがあるんですけど、途中までめちゃくちゃ難解なんですよ。ほぼ歌わへんし、なっがーい曲いっぱい入ってるし。最後に『Circle Sound』っていう歌ありの曲が入ってて、その曲のおかげで全部がまとまって、すごく美しいアルバムになってるんです。そういうことができたらいいなと思っていて」
 
――『1994』が『Circle Sound』の役割を担っている、と?
 
「これは歌詞書いてるヤツの特権なんですけど、自分のそれまでの人生を美しく、いい感じに仕上げたい気持ちもあったんです。で、数字のタイトル、シンプルにカッコ良いなと思って、スタジオで思いついて皆に言ってみたら、“いいね!”ってなったんで、先に曲のタイトルが決まって。あと、前作も今作も、2つとも初期衝動的なアルバムやなと思って」
 
――ああ、確かに。
 
「バンドとしても俺個人としても、25年間の人生、四半世紀をまとめた2枚目になったと思ったし、こういう初期衝動的なテンションでやれるのも今ぐらいまでやろうな、と思う気持ちもなんとなくあって。多分これから先、3枚目出す時とかは、またちょっと違う、先の方を見ていく感じにもなるかなと。だから、1個の区切りという気持ちもあって、アルバムタイトルも『1994』にしました」
 
――なるほど。『0』から始まって『1994』で終わるのがすごくカッコ良いです。
 
「良かったー(笑)。ありがとうございます」
 
――ラストの“平成は空にとけた”という表現が印象的でした。サイトウさんにとって、平成はどんな時代でしたか。
 
「世間的な平成がどういうものかは全くわかんないんですけど、個人的には生まれてから今までなので、いわゆる青春時代じゃないですか。実家がすごい住宅地なんですけど、周りに家がいっぱいあって、空が小さめに見えるんです。思い返すと1枚目の『スコール』も『みみなり』も、今回の『サニー』もそうなんですけど、空に関する曲が多くて。いつも実家の前から見える、のっぺりした空を見ながら曲を書いてて。だから平成はその感じです(笑)」
 

 
――w.o.d.の楽曲からは日常のダーティさとポップさ、どちらも感じます。
 
「日常が嫌やなと思う気持ちと、普通の生活に憧れる気持ち、多分どっちもあって。どっちかに振り切るのも嫌やけど、……というか、どっちにもなれずにいるんですよね。普通の生活するのも嫌やし、むちゃくちゃな状態でいると、普通が愛おしくなるじゃないですか。ごちゃごちゃの状態で曲を作ってます」
 
――安定と刺激のバランスですか。基本的には日常で感じたことをそのまま曲にされてるんですね。
 
「基本はそうです。表現上何かしら別の言い方はするかもしれないですけど。あんまり思ってないことや、ちょっと背伸びしたことを言うと、ライブで歌うと恥ずかしくなるんで、素直なことだけ書こうという気持ちはありますね(笑)。ちゃんと歌えないと、嫌じゃないですか」
 
――誠実ですね。
 
「そうなんです(笑)」
 
――今作は、前作より少しポップになった感覚があります。
 
「最初は結構そこを意識して曲を作ってたんですけど、ポップすぎたんで(笑)。自分が想像してる“こう見せれたらいいな”と、周りからどう見られるかって、結構違ったりするじゃないですか。ここ1~2年で、そういう違いがあることに気づけたんです。あくまで自分らが良いと思うことをやった上で、すり合わせをしながら曲を作っていきました。もともと色のあるアルバムにしたいと思っていたんですけど、コンセプトアルバムでもないんで、“こういう曲作りたいな~”と思うものを作っていった中で良いのが集まって、結果できた感じですね」
 
――等身大のw.o.d.が出ているアルバムなんですね。
 
「そうだと思います」
 
 
 
“俺もBUMP OF CHICKEN側に立ってるんやな”って気づいた
 
 
――『セプテンバーシンガーズ』(M-8)が個人的には印象的で、情景が浮かぶといいますか、歌詞がロマンチックだなと思いました。
 
「中学生の時、国語の先生に“ロマンチストだね”と言われたのを今思い出しました」
 
――(笑)。
 
「絶対おちょくられてるやーんと思って、その時はめっちゃ嫌だったんですけど(笑)」
 
――褒めてます(笑)。
 
「ありがとうございます(笑)」
 
――すごく優しい曲だなと思ったんですよね。どういう気持ちで書かれたんですか?
 
「生きてると心が疲弊する日もあるじゃないですか。俺、BUMP OF CHICKENが大好きなんですけど、バンプの好きな曲は優しい曲が多くて。さっき言ったような普通や安心への憧れもあるし、俺がBUMP OF CHICKEN側に回れるようになったらいいなという気持ちは、バンドやりながらずっとあって。で、ふといろんなことを思い出しながら、するする書けたのがこの曲です」
 
――BUMP OF CHICKEN側になりたいというのは、どういうことですか?
 
「何て言うんやろう。聴いた人がホッとしてくれるような曲が作れたらいいなというか。この曲聴いたら安心できるとか、肩の力が抜けるみたいな、おこがましいですけど、誰かしらが救われたらいいなという気持ちがあって、この曲は特にそこを意識しました」
 
――そういう気持ちは当初から持ってらっしゃったんですか?
 
「あったけど、俺にできるかなっていう気持ちも結構あった(苦笑)。そういうことに対してあまり素直になれなかったのもあると思うんですけど、それよりいろいろ吐き出して、共感してくれる人が集まる方が、俺としては正直やなと思っていて。なんか上からくる音楽、嫌じゃないですか(笑)」
 
――上からくる音楽。
 
「救われるような曲を“作ろう”と思って作ったら、ちょっと厚かましいし、薄っぺらくなる。それは嫌だったんです。ずっと作ろうと思ってたんですけど、なかなかしっくりくるのが作れなくて、今のタイミングでやっと素直に作れた感じがします」
 
――それは、w.o.d.の音楽に共感してくれる人が増えてきたこともありますか。
 
「それも多分あると思う。1枚目を出してツアー回った時は、自分がどうすればバンドとしてカッコ良く見えるんやろうとか、そういうことを意識しすぎて、変にカッコつけてた。それがバンドをやっていく中で、そういうことじゃないんやなと感じて。カッコ良く見えるかどうかを意識するのは大事だけど、カッコつけてしまうのは、嘘をついてるのと同じ。あくまで素直にやる中で、どう見えるようにすればいいかと考えて、どんどん素直になれるようになってきたタイミングですね。あんなライブやってんのに、泣きながら聴いてくれる人もいて」
 
――へえ!
 
「最前で泣かれたらなっていう気持ちはあるんですけど(笑)。でも、“俺もBUMP OF CHICKEN側に立ってるんやな”って気づいて、こういう曲が作れたと思います」
 
――改めて『1994』、どんな1枚になりましたか?
 
「めちゃくちゃカッコ良い作品になりました。いい具合に自分らしさも出て良かった。言い方がちょっとあれですけど、メロディーが今までより邦楽ぽくなって、俺の聴いてきた邦楽要素が出せて良かったです」
 
――今後のw.o.d.の広がり方も楽しみです。
 
「もっといろいろやりたいです。しばらくはこの3人でまだまだやれることいっぱいあると思うんで、質を上げていくようにしながら、挑戦していきたいです」
 
――11月からは初の全国ツアーも始まって、ファイナルは東名阪ワンマンです。
 
「そうです! いろいろ行かせてもらいましたけど、ちゃんと自分たちのツアーで全国回るのは初めてですね。九州のツアーが楽しいのは学びました」
 
――やはりツアー中は美味しいものを食べるのも、楽しみの1つですか?
 
「そうですね。俺も楽しみやけど、俺以外の皆も結構楽しみにしてる」
 
スタッフ「それぐらいしか楽しみが……」
 
全員「(笑)」
 
――ご当地のグルメは最高ですもんね!
 
「俺は結構連れられて行くんですけど、行きたいお店がない時は、俺が食べログの有料会員なんで、調べて行くっていう、完璧の布陣が出来上がってます(笑)」

text by ERI KUBOTA 



(2019年9月27日更新)


Check

Release

Album『1994』
発売中 2000円(税別)
MMNR-006

《収録曲》
01. 0
02. QUADROPHENIA
03. Mayday
04. ハロウ
05. サニー
06. THE CHAIR
07. HOAX
08. セプテンバーシンガーズ
09. 1994


Profile

神戸発3ピースバンドw.o.d.(ダブリューオーディー)。小洒落たロックで溢れかえる現代の邦楽バンドシーンを問答無用で掻き消すノイズ。日々を気怠く歌い、時に感情的なシャウトを吐き出すヴォーカル。それを支えるヘヴィーかつタイトな攻撃的リズム隊。NIRVANA 直系の退廃的でダーティなグランジサウンドを爆音で鳴らし、Blurを彷彿とさせる捻くれたポップセンスも有する、新型オルタナサウンド。「RO69JACK 2015」 入賞、「出れんの!? カミコベ!? 2016」グランプリ、「出れんの!? サマソニ!? 2016」クリエイティブマン賞など数々の賞を獲得。2019年9月11日、2ndフルアルバム『1994』をリリース。冬からは初の全国ツアー、年明けにはツアーファイナルを東名阪ワンマンで締めくくる。

w.o.d. オフィシャルサイト
http://www.wodband.com/


Live

w.o.d. presents “スペース・インベーダーズⅣ”(対バンライブ)

【千葉公演】
▼11月16日(土)千葉LOOK
【石川公演】
▼11月23日(土・祝)金沢GOLD CREEK

Pick Up!!

【京都公演】

9月28日(土)一般発売
Pコード:163-106
▼11月27日(水) 19:00
GROWLY
オールスタンディング-2800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]有
[問]GREENS■06-6882-1224

Pick Up!!

【兵庫公演】

9月28日(土)一般発売
Pコード:163-106
▼11月28日(木) 19:00
神戸 太陽と虎
オールスタンディング-2800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]有
[問]GREENS■06-6882-1224

【茨城公演】
▼12月1日(日)club SONIC mito
【北海道公演】
▼12月6日(金)SPIRITUAL LOUNGE
【福岡公演】
▼12月19日(木)福岡Queblick
【広島公演】
▼12月20日(金)HIROSHIMA BACK BEAT


w.o.d. presents “バック・トゥー・ザ・フューチャーⅡ”(ワンマンライブ)

Pick Up!!

【大阪公演】

10月26日(土)一般発売
Pコード:163-107
▼2020年1月17日(金) 19:00
Shangri-La
オールスタンディング-2800円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[問]GREENS■06-6882-1224

【愛知公演】
▼2020年1月18日(土)名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
【東京公演】
▼2020年2月1日(土)UNIT

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