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7年分の思いと出会いを詰め込んだアルバムを引っ提げ
BIGCATで勝負に出る
はせがわかおりインタビュー

兵庫県出身のシンガーソングライター・はせがわかおりが、1stアルバム『はせがわかおり ZERO』から実に7年ぶりとなる2ndアルバム『COLOR』を5月にリリース。そしてこれを記念したライブを9月19日(木)に大阪・BIGCATにて開催する。タイトルどおりカラフルな13曲が収められた今作について、さらにBIGCATでのライブについて話を聞いた。

――今作はなんと7年ぶりのアルバムですね。
 
「前作以降、先輩の本夛マキさんとヨモギというユニットを結成したり、大西ユカリさんとヨモギで、ロックかしまし三人娘でも活動したりしていて、気がついたら“あ、7年経ってた”みたいな……(笑)。もちろんソロの活動もやっていたんですけど、作品を形にするまでにエネルギーを持っていくのには7年近くかかってしまったって感じです。曲は作っていたのでアルバムも作ろうと考えてはいたんですけど、それよりインプットの時期というか…」
 
――曲はたくさんできたのでは?
 
「今回、プロデューサーの三宅(伸治)さんに素材を含め40曲ぐらい提出して、そのなかから一緒に13曲を厳選しました。一番古いと20歳ぐらいの時の曲で、やっと世に出す形にできて、アルバムに入れられたなってところです。昔の曲は歌わなくなるのもたくさんあるんですけど、執着ぐらいにずっとなんとか出したいって思って残った曲も数曲あって……(笑)。それが『ゆがんだ絵』と『ひまわりにお酒を』。もがきながらやっとみんなに聴いてもらえるようになりました」
 
――この2曲に執着した理由とは?
 
「音楽を始めた時……悶々としている19~20歳の頃、できないなりになんとか作ろうとしてたっていう、そういう思い出とか思い入れがあるからかな」
 
――ほかの選曲基準はありますか?
 
「正直、自分で作っているから全部入れたいくらいでした(笑)。でも、そこを三宅さんに客観的に選んでもらったんです。例えば『I was born』とかは、三宅さんがいなかったら入ってないし…。あと『ちっぽけな願い』と『悪者のうた』は(本夛)マキさんのリクエストですね」
 
――三宅さんはなぜ『I was born』を?
 
「世の中のこと(を映し出した曲)を…って。(生まれた国のことをテーマにした)『I was born』はもうすぐオリンピックもあるし、『オオカミ少年』も三宅さんの選曲なんですけど、これはウソを歌った歌で、最近フェイクニュースも多いし、そういう(世の中とリンクした)曲がラジオとかで流れてたらいいんじゃない?ってなったんですよね。私は作る時にそこまで考えられないから、“あ~!”って思いましたね(笑)」
 
――確かに『I was born』と『オオカミ少年』は“今”聴きたい曲ですね。
 
「その辺とか『ひまわりにお酒を』とかは“かおりには、あんまりない曲やね”ってうちのお母さんが言ってました(笑)」
 
――ちなみに、はせがわさんのブログに時々登場する、おばあちゃんの感想は?
 
「(介護)施設にCD置いてもらって“氷川きよしか、はせがわかおりか”…ってなってます(笑)。おばあちゃんは『負けるなbeat』という曲がかかると、ニコニコしてのってくれますね」
 
――お元気なおばあちゃんらしい選曲(笑)。そう言えばYouTubeにあげていた動画で三宅さんが『オオカミ少年」について話していて、曲を元の4拍子から3拍子に変えることについて、はせがわさんともめたと(笑)。脱線ついでにこれについて聞いていいですか?
 
「三宅さん、ずっとそれ言うんですよ(笑)。最後の最後までもめて、私は“もう(アルバムに)入れたくない”な感じまで引っ張りました。でも、結果3拍子ですごくバンドサウンドとして素敵になりましたね。ただ、自分一人で演奏する時は4拍子でやってます(笑)」
 
――さすが(笑)。
 
「それに対しても三宅さんは“え~”みたいな感じで、(もめごとは)現在進行中ですね(笑)。でももうネタみたいになってます。たぶん、ず~っと言われ続けるのかな(笑)」
 
――意外と三宅さんも、反対意見を言われて楽しかったのかも…(笑)!?
 
「いやいや。やっぱり怒られましたどね(笑)。例えば“ん?”って思ったことを伝えないと、変なことになるじゃないですか? でもそれを言うのにも勇気がいるし、言うタイミングが遅くなったりとかして怒られたりとか…。でも、三宅さんはちゃんと話を聞いてくださるし、本当に勉強になりました」
 
――ほかに今回、勉強になったことは?
 
「Jr.(高橋“Jr.”知治)さん(b)や茜さん(ds)らのバンドメンバーで一緒にやったんですけど、ちょっとしたことでグルーヴ感が変わることがあって……。私はバンドマンじゃないから、“なるほど”って思いましたね。ほんのちょっとした工夫で(リズムやグルーヴ感が)合わせられるってすごいなって」
 
――さて話を曲戻し、今度は詞について。はせがわさんの詞は言葉数が少ないと思いますが、これは意図的にそうしていますか?
 
「絵本が好きなんですけど、絵本のようにパッと入ってくるものが好きやし、そういう曲を作りたいなっていうのがあります。あと、言葉が多くなればなるほど、実際に自分で歌ってても理屈っぽいなって思うんで、どんどん削っていきますね」
 
――そしてインパクトの強い詞もありますね。『ちっぽけな願い』の内容は端的に言うと“幸せを感じながら死にたい”ということだと思うのですが、そのシチュエーションが悲劇的。
 
「この曲は23歳ぐらいの時に作ったんですけど、今より周りのこととか、もっと何も考えてなかったから作れた曲のような気がしますね。ほんまにその時にパッと思ったことを、ボキャブラリーがない中で書いたんで、ああいう例えをしたんかな?って思います。でも、その時はそう思ったんですよね。本当に(詞のように)上から植木鉢が落ちてきたら……って思いながら毎日歩いていた」
 
――病んでました(笑)?
 
「そうかも……(笑)。だから今の方がずっと明るいですね。あと昔は、(事故や事件が)自分じゃなくてよかったとか、自分の家族じゃなくてよかったとか。で、結局自分のことばっかりやなって思って、自分って最悪やなって思ったり……そういうのをグルグル考えてしまう時期でしたね」
 
――そこから成長したのかも?ですが、『悪者のうた』は果たして悪とは?という問いかけがあります。
 
「これは割りと最近の曲なんですよ。2年ぐらい前。『スター・ウォーズ』を見てできたんです。『スター・ウォーズ』ってせつない話じゃないですか。最初はかわいい子どもだったのに……とか。あとディズニーの『美女と野獣』でも結局最後は死んでしまう……とか。その視点になって作ったかな。ちょっと悪者の気持ちになってみたって感じですね」
 
――逆に、ご本人の“素”のままなのかな?と思ったのが『シンガーソングライターのうた』と『ひまわりにお酒を』ですが。
 
「『シンガーソングライターのうた』に関しては自分のことを歌っていますが、実は『ひまわりにお酒を』は友達のことを歌っているんです。専門学校の寮で一緒だった友達がちょっと複雑な家庭の子だったんですけど、お酒を飲みながらしゃべってたら、その子が泣いて家のことを話し出したんですよね。その時にJUDY AND MARYのYUKIちゃんのDVDが流れてて……で、いろいろな思いが相まって“うわ~っ”てなって、自分の部屋に戻って作った曲なんです。友達の気持ちになって作った歌ですね」
 
――でもなぜ“ひまわりにお酒”なんですか?
 
「実はほかにも思い出があるんです。それは偶然であり必然で…。当時、大阪に住んでいて天王寺辺りを散歩してたら、おじさんが花にお酒をあげていて、でも花は元気に生きててっていう……。そんなのがあった時期で、そういう記憶に残った場面が全部曲に詰め込まれていますね」
 
――そうだったんですね。では7曲目の『トラック街道、どこまでも』はどうですか? 愛妻弁当を食べて頑張るドライバーさんが主人公の曲ですが、これこそモデルがいそうです。
 
「うちのおじいちゃんとおばあちゃんがトラックの運転手さんなんですよ」
 
――おばあちゃんも!?
 
「おばあちゃんは、おじいちゃんより運転が上手やったみたい(笑)。その時代って(トラックドライバーは)男の人ばかりで女の人はいなかったみたいですけど、大きなトラックに乗ってたらしいです。それもあって、高速道路とかでトラックを見ると…(思いを馳せる)。実際のドライバーさんは、曲よりももっと大変やと思うんですけどね。お弁当じゃない人もいるやろうし。でも、(祖父母から)よくそういう話を聞いていたので作りたかったんです」
 
――いろんな人からのヒントでできたアルバムなんですね。
 
「そうですね。自分で作ってるって言いながらも人からもらった曲たちみたいな感じ。ほんまに」
 
――そして曲によって視点が違うから多彩に感じます。
 
「そういう意味でも『COLOR』っていうのはいいタイトルになったなって思います。まだ何色って決められない2枚目のアルバムっていう感じ。まだまだこの先、見えてくるものがあるやろうなって」
 
――7年の月日があったからこそできたんですね。
 
「そうやと思う。前作から1年とかだったらもっと視野が狭まったものになっていたかもしれないです」
 
――さて。リリース記念のライブが9月19日(木)にBIGCATであります。意気込みを教えてください。
 
「以前、ヨモギとしてBIGCATでライブをしたんですけど、BIGCATはすごく大きな会場で、今度ソロでCDを出したら、こういう所でやりたいって漠然と思ったんです。BIGCATに立つ方は会場を満員にできるってわかってやる方が多いと思うんですけど、自分はその逆でまだまだ身の丈に合ってない広さ。でも自分の可能性を信じてどれだけできるかな?って……。たくさん協力してもらって、どんどん伝えていって、一人でも多く会場に来てもらえればと思います」
 
――ただアルバムを出してライブをするだけでなく、ライブまでの過程も楽しんで頑張りたいと。
 
「そうです。今、全国、行ける所に歌いに行ってます。たぶんBIGCATを決めてなかったら行ってない会場もあるだろうし、BIGCATを決めたからこそ“歌を聴いてください。見に来てください”っていう気持ちもより強くなってますね。そしてそれをちゃんと当日につなげたいです」
 
――はせがわさんは兵庫県出身で、さっき話に出たように大阪に住んでいたこともあるから大阪はホームですね。
 
「大阪には昔から応援してくれる方もいますね。それに(メンバーが関西出身の)ヨモギやロックかしまし三人娘の活動のおかげで、はせがわかおりの名前を知ってもらえたり、歌を聴いてもらえたりする機会も増えました。だから大阪でのライブは最近いい感じ(笑)。なので、9月19日(木)、ぜひともBIGCATに来てほしいです。よろしくお願いします!」

text by 服田昌子



(2019年9月13日更新)


Check

Release

Album『COLOR』
発売中 3000円(税抜)
EDCE-1033
EDOYA

《収録曲》
01. 紙切れ
02. 名のない花
03. シンガーソングライターのうた
04. オオカミ少年
05. ちっぽけな願い
06. 負けるなbeat
07. トラック街道、どこまでも
08. I was born
09. ゆがんだ絵
10. いちにちいっこ
11. 悪者のうた
12. ひまわりにお酒を
13. 君はいつも

Profile

1986年7月22日、兵庫県生まれ。音楽専門学校在学中から地元の関西を中心にライブ活動を開始。2012年10月、故・石田長生プロデュースによる初の全国リリースアルバム「はせがわかおりZERO」を発売し、活動の拠点を東京へ移す。ソロ活動のかたわら、ハーモニーを提供するカバーユニット・ヨモギ(はせがわかおり×本夛マキ)も始動させ、2015年11月、「うた~以心伝音~」を発売。2017年からは大西ユカリ&ヨモギによる、笑いあり涙ありのパワフルなエンターテインメントショーを目指す、新ユニット・ロックかしまし三人娘としても各地で話題のライブを展開中。

はせがわかおり オフィシャルサイト
https://www.hasegawakaori.info/


Live

チケット発売中 Pコード:152-882
▼9月19日(木) 19:30
BIGCAT
自由席-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]三宅伸治(g)/高橋“Jr.”知治(b)/茜(ds)/伊東ミキオ(key)
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
[問]GREENS■06-6882-1224
[問]BIGCAT■06-6258-5008

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