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天才ギター少年から新時代のギターヒーローへ
音で言葉でメロディーで100%以上自分を表現した
初のミニアルバム『未来アジテーション』について語る
山岸竜之介インタビュー&動画コメント

山岸竜之介といえば、幼少の頃にテレビ番組で“なにわの天才ギター少年”として紹介された姿が記憶に深く刻まれている人も多いに違いない。その天才少年も今年の誕生日で20歳に。その記念すべき誕生日に、ソロとして初のミニアルバム『未来 アジテーション』をリリースした。思いのたけをぶつけるようにギターを弾きまくる姿を想像していたけれど、アルバムを聴いて見えてきたのは、等身大のメッセージを伝えるシンガーソングライターとしての姿。たとえば昨年発売されたシングルにも収録されている『雑草』(M-7)のミュージックビデオでは、前半部分ではギターを持たずに歌う姿が印象的。そして映像の冒頭には、「僕と同じように悩み、自分と戦う人に届きますように」というメッセージが映し出される。これまでソロはもちろんKenKenやムッシュかまやつとのバンド、LIFE IS GROOVEでの活動をはじめ、先頃はジャズピアニストである小曽根真のビッグバンド(NO NAME HORSES)公演にゲスト参加。ロックやジャズ、ブルースといったジャンルもカテゴリーも超えてのびのびと音楽を鳴らしてきた彼が、10代から20代へ、揺れ動く自分にじっくりと向き合って編んでいった言葉とメロディーは、どれもまっすぐに聴き手をとらえる。このアルバムを携えたツアーの大阪公演は7月13日(土)梅田ZEELA。「僕はライブで演奏して生きていく人間です」と語ったそのステージを心待ちにしながら、何度でもアルバムに耳を傾けたい。

ギター以外にも、自分自身を100%出せる表現があるんじゃないか
 
 
――山岸竜之介さんといえばギターヒーローへの道をひた走っている印象でしたが、20歳の誕生日にリリースされたソロ初のミニアルバム『未来アジテーション』では、メッセージを伝える歌い手としてのアプローチを強く感じました。資料に『ギター少年からシンガーソングライターへ』とありましたが、ギターと同じようにシンガーソングライターという夢も小さな頃から持っていた?
 
「そうですね。何か特別なことがあってそう思ったわけじゃなくて、僕が好きなジョン・メイヤーとかCharさんとか、カッコいいギターを弾く人って、そもそも曲がカッコいいなと思ったのがシンガーソングライターとギターを一緒にやっていきたいと思ったきっかけだったんだと思います。ギターのテクニックとかインスト音楽以外にも、歌詞で見せていく世界観やメロディーで持っていく感動というものも自分の音楽人生の中でやっていきたいということに思い当たったのも必然的なことで、バンドやユニットじゃなくソロでやっていく上ではギタリストでありシンガーソングライターでもあり、ちゃんと自分で曲を書くというところに照準を置きたい。’17年に初めてリリースした『1st CD』以降、これまでベース演奏やトラックメイクも自分でやっているんですね。それは、LIFE IS GROOVEや他の活動でいろんな人と一緒にやる素晴らしさも知りつつ、自分の名前を背負ってソロで活動する上では、自分自身を100%表現できることがギター以外にもあるんじゃないかなって考えて。それが歌だったり、ベースを自分で弾いてみることだったりするのかなと。ソロでやるとなったら打ち込みで作ってみるのもいいなと思ったし、それを生演奏で録り直さずにそのまま作品として出すことも自分の中では挑戦の一つでもあって」
 
――“こういうことをするのは山岸竜之介らしくない”という制約みたいなものはなかった?
 
「僕の年齢でこういうことを言うのも語弊があるんですけど、前まではめっちゃそういうことを考えてました(笑)。小さい頃から父親に連れて行ってもらっていたセッションの場とかでは、弾き語りでアドリブで演奏するみたいなことが多かったから、ナマじゃないとだめだとか、打ち込みはやらない、ポップなメロディーは書かないみたいに思っていたし、インストでギターを弾きまくるのが最高やと思っていて。もちろん今でもそれは大好きだし、そういう気持ちを持ちながらLIFE IS GROOVEでファンクとか古き良きロックをやっている。LIFE IS GROOVEは一発録りで、レコーディングでも特に何も決めずに、KenKenとブースに入ってその場で曲を作って録るみたいな感じなんですね。それはKenKenとムッシュかまやつさんと3人でやるからできることで、そこを離れてソロで何をするかとなったときは、良い意味でLIFE IS GROOVEと対になるぐらい正反対のことがしたいなと思って。たとえば僕は作り込んでみる美学を経験したことがなかったので10時間、20時間考えて1曲を作り出すこととか、100時間悩んで悩んでやっと書けた歌詞の一行を大事にするようなこともしてみたかった。その気持ちが今回のソロを作る上での主軸になりましたね」
 
――アルバムに収録されている8曲は、これまでの10代の日々の記録ともいえるでしょうか。
 
「1曲目の『人生映画』はもともと僕が小さい頃に書いていた『人生ドラマ』という曲が元になっているんですね。いつものように父親の車でライブに連れて行ってもらったときに“人生はドラマだから今日のライブもその1シーンだよ”みたいな歌詞を書いていて、それがなんとなくずっと頭の片隅にあって。それを19歳になった僕が書き直したら、これまでの10年の経験がどういう物語になるんやろうって、自分を見つめ直すというか、改めて自分に向き合いたくて書いたのが『人生映画』なんですね。めっちゃ暗くなるようなことがあっても下を向いていじけるんじゃなく、泣きながらでも頑張って前に進んで行く気持ちを持っていたい――というのが常に僕の中にはあって。それを自分と同じ年齢ぐらいの人とか、年は違っても今悩んでいる人が聴いて共感できるものにできたらいいなって。サビで“幸せとは何ですか”と歌っているんですけど、最後の歌詞で“それは何処にも売っていないから自分で書き続ける”と書いていて、僕自身がそうありたいという思いがその曲の始まりでした」
 
――今から10年以上前に“人生はドラマだ”という歌詞を書いていた…、素晴らしい人生ですね。
 
「ありがとうございます(笑)」
 
――『人生映画』ですごくいいなと思ったのが“希望と絶望が 背中合わせのように”と歌われているところの、“痛みを忘れないように”の一節です。良いことがあって幸せを感じているときは、辛かったときのことを忘れてしまいがちですが、忘れないでいることってとても大事なんだと思います。
 
「歌詞にもあるんですが、彷徨って戸惑って失敗を繰り返す中でも自分が悔しかった痛みを忘れないからこそ、この先も自分の人生映画を撮り続けていけるんじゃないか。そうすることに意味があるんじゃないかなって。痛みを忘れないことですごく後ろ向きになってしまって、“あの痛さを知っているからもう俺はやらへんねん”となるんじゃなく、痛みを忘れないからこそ踏み出せる一歩があるんじゃないかと思っていて。それがこの曲で一番言いたかったことですね。今回のアルバムに向けて3、40曲ぐらい書いたんですけど、途中で“これはアカンな”って諦めたものもあるし(笑)、もともと歌詞を書くことも得意なわけじゃないけど、歌詞を書く瞬間が自分にとって良い意味ですごく考えるきっかけになっていて。自分と向き合って、空想だったり現実だったり、自分が普段考えているところの先みたいなのに想いを馳せることができて。『雑草』(M-7)だったら、強くなりたいと思っているのになかなかそうなれない自分と向き合った瞬間だったと思うし、歌詞はそういうふうに書くことが多いです。歩いている時に思いついたらスマホのメモに書いたり、録音したり、それを何回も消して書いて、消して書いての繰り返しですね」
 

 
 
 
人生の第1章である10代の日々は終わり、僕は大人になった
 
 
――『雑草』のミュージックビデオの冒頭に山岸さんからのメッセージが流れますが、その中で“強くなりたいと思い続ける少年の物語”であるとつづられ、“僕と同じように悩み、自分と戦う人に届きますように”とありますね。さっきもお話に出ましたが、『未来アジテーション』を作る上で、自分と同世代の聴き手に響くものをということを意識しましたか?
 
「はい。『人生映画』もそうですし、2曲目の『指先』は女性目線の歌詞を書こうと思った曲で、それも初めての経験でした。『誰になりたい訳じゃない』(M-4)もそうですけど、“夢”とか“希望”というものに重点を置きつつ同世代の人や、世代は違っても何か響くものをという気持ちは書いているときにもありました。僕自身も落ち込んだときに下ばかり向いていじけているんじゃなく外に目を向けるきっかけになるような曲を書きたいと思ったし、聴いた人にもそう思ってもらえる作品にしたい。曲は、『人生映画』ができてからそれを主軸に他の曲を作っていったんですね。『言葉以上に』(M-3)もそうですけど、『人生映画』で言いたかったことをこの曲ではどう噛み砕いてメッセージにしていこうか。そういう気持ちはどの曲を作っているときでもどこかにあったと思います」
 

 
――あと、歌詞でもう一つ面白いなと思ったのが、『日常』(M-5)で“これでも僕は君を愛してる 大好きだよ 今日だけは言うよ”と歌われていて、次の『綺麗な嘘はバラさないでね』(M-6)では“愛しているとは言わない 薄っぺらくなるでしょ”と。これはあえて対の表現にしたんでしょうか?
 
「というより、僕の素直な部分と素直じゃない部分ですね(笑)。嘘をついてしまって、素直になれなくて疲れてしまう自分(『綺麗な嘘はバラさないでね』)と、うまくいかないこともあるけど結局素直に打ち明ける自分(『日常』)と、どっちも自分の中にある気持ちですね」
 
――ご本人はどうですか? 正面から「愛してる」と言えますか?
 
「僕は……、言われへん(笑)。だからたぶん、素直じゃないんでしょうね。言えるんでしょうけど、まっすぐに素直なわけじゃないから『綺麗な嘘はバラさないでね』みたいな曲を書きたくなったのかも。そういう自分と、でも素直になりたいし一歩踏み出したい、今日だけは言いたいって気持ちもあって。けど、言葉では言えなくて、でも歌だから言える――というのが『日常』なんでしょうね」
 
――最後の『It’s gonna be alright-2019ver.-』はタイトル通り新バージョンで収録されていますね。
 
「もともと2017年の『1st CD』の2曲目に入っている曲です。今回は曲順も僕の中でちょっとこだわりがあって、繰り返し聴くときのことを考えてこの曲を8曲目にしたんですね。曲の最後で、“今日も僕は幸せだと思えてるよ”と歌っているんですけど、たとえば、“今日の僕、めっちゃ幸せや!”と思って夜寝ても、朝起きてすっごくイヤなことがあったら“うわ、最悪。……幸せって、何なん?”て思いますよね? それが1曲目の『人生映画』のテーマにつながるなって。繰り返し悩んで、恋をして、夢を追いかけて、幸せを感じるけど、また悩んで。そのルーティーンを自分の中でテーマにしたくて。めちゃめちゃイイことがあっても次の瞬間に“最悪や”と思うことがあると、“自分はなんで生きてんのやろ?”とかって思ったりしますよね。一日の中のほんのちょっとの時間でもそのループはあって」
 
――わかります。20歳の誕生日にこのアルバムがリリースされて、少し時間が経ってみて何か思うことはありますか?
 
「めっちゃ良い意味で20歳になった実感がないんですね。それこそ、20歳=酒が飲めるようになった、ぐらいでしかなくて、20歳になったから何かが変わったなんてことはなくて。小さいときからずっとギターを弾いて曲を作るのが楽しくて、それが好きで、この先もそれは変わらない。なんですけど、このアルバムを作ったことによって一つ自分の中で変わったのは、これまで子供だった僕の、自分の第1章に一区切りをつけることができた。これからは良い意味で普通の大人として、ギターも言葉も、これから作っていく曲も変わっていくんじゃないかなって。もう“10代の悩み”とかの言葉でくくれなくなるときが来たんだなって。それは、この作品のマスタリングが終わったときにそう思いましたね。子供として悩める時期はもう終わったんだなって」
 
――重みのある言葉ですね。山岸さんの子供時代は無邪気に過ごす日々でもありながら、たとえばCharさんと共演するなど一つ一つ夢を叶えてきた日々でもあったわけですよね。
 
「そうですね。僕の中ではずっと、16歳ぐらいで時が止まっている気がしていたんですね。高校生に上がる瞬間ぐらいの、独断と偏見にまみれて“アイツ嫌い!”とか思ったり、自我が芽生えてきたぐらいの時期というか。LIFE IS GROOVEを結成したのが中2の13歳の頃で、それから15歳、16歳ぐらいまでは、“楽しい”という気持ちだけで過ごせていたんですね。もちろん悩みもありましたけど、今ほど深くも考えていなかったし(笑)、当時は深く悩んでいたつもりだったけど、今思えば一晩寝たら忘れられる程度の悩みで(笑)。その頃のまま僕の中で時が止まっていたのが、20歳になって、それまでの自分とこの先の自分の間に線を引かなければならなくなったというか。良い意味で早く大人になりたいと思っていた15歳ぐらいの頃の僕が見たら、喜ぶ半面、何か悔しいなと思うこともあるやろうなって。20歳になって、そういう感じはありましたね」
 
――16歳ぐらいのパッションのまま突き進めること、それを維持していることも素晴らしいですが、そこに自分の意思で線を引いて第2章に踏み出した。今作はその入り口でしょうか。
 
「そうですね。そういうアルバムになったなと思いました」
 
――タイトルの『未来アジテーション』はちょっとパンクの血を感じますが。
 
「うん、たしかにパンクですよね(笑)。最初は『人生映画』にしようかとも考えたんですけど、それだけがメインみたいになるのは違うなって。全部がメインなのでどれかの曲のタイトルではなく、自分自身が音楽で“先導していく”という意味でアジテーションにしました」
 
――まもなく、このアルバムを携えたツアーの大阪公演ですが、ライブはどんな感じになりそうですか?
 
「レコーディングにも参加してくれたThe Winking Owlのドラマー、KenTと2人でツアーに出ます。ステージの上は2人だけなのも面白いし、とはいえ2人だけで再現できるような曲じゃなくて、『人生映画』と『言葉以上に』は生ドラムが一切入っていないし、『綺麗な嘘はバラさないで』も半分ぐらいは僕のクラップとか紙をクシャっとした音を使っていたりするので、それを生ドラムでライブならではのアレンジでやるのも楽しみで。2人の化学反応にも期待しつつ、CDとかYouTubeで聴いたり観たりするのとはまた違った、ライブならではのグルーブ感やアレンジも楽しみにライブに来てもらえたら嬉しいですね」
 
――ライブはその場限りのものですからね。
 
「そう!僕は音源もめっちゃ作り込んで100%以上出し切りますけど、ライブのほうがさらに100倍良い自信があるので!やっぱりライブにしかないものがあるし、僕はライブがしたくて曲を書いているし、ライブで生きていこうと思っている人間なんですね。なので、CDを聴いてそこから一歩飛び越えたいと思ったり、MVを観て“カッコイイな”と思ってくれたら、ぜひライブに来て一緒に手を上げて楽しんでもらえたら嬉しいです!」

text by 梶原有紀子



(2019年7月 5日更新)


Check

Movie Comment

Release

1st Mini Album
『未来 アジテーション』
発売中 2500円(税別)

《収録曲》
01. 人生映画
02. 指先
03. 言葉以上に
04. 誰になりたいわけじゃない
05. 「日常」 (Remastering)
06. 綺麗な嘘はバラさないでね
07. 「雑草」 (Remastering)
08. It's gonna be alright (2019ver.)

Profile

やまぎしりゅうのすけ…父親の影響で幼い頃からギターやロックミュージックに触れ、幼稚園の年長時に『さんまのスーパーからくりTV』で天才ギター少年として紹介され、一躍注目の存在に。憧れのギタリストであるCharとセッションを繰り広げた。その後も音楽活動を続け、ムッシュかまやつ(g)、KenKen(b)とともに世代を超えたスーパーファンクバンド、LIFE IS GROOVEを結成。『RISING SU ROCK FES』や『SUMMER SONIC』をはじめ国内外のフェスやライブを経験。さらに、LIFE IS GROOVEとして10代にして音楽の聖地であるBlue NoteやBillboardでの単独ライブも開催。`’17年5月にソロ初作品となる3曲入りの『1st CD』をリリースし、翌年6月に2 nd『日常』を発売。同年11月にはソロとして東京、大阪で初のワンマンツアーを開催。`19年1月にはLAで開催された世界最大の楽器フェス『NAMM Show2019』に参加。現地で大絶賛を浴びた演奏の模様がYouTubeでも公開されている。自身の20歳の誕生日である`19年5月15日に初のミニアルバム『未来 アジテーション』をデジタルリリース(6月15日にCDリリース)。同作を携えたツアー『未来 アジテーション リリースツアー 2019』は6月27日(木)広島CAVE-BEよりスタート(対バンあり)。大阪公演は7月13日(土)梅田ZEELAにて。

山岸竜之介 オフィシャルサイト
https://www.ryunosuke-gt.com/


Live

「未来 アジテーション」Release TOUR 2019

【広島公演】
▼6月27日(木)Cave-be
【福岡公演】
▼6月28日(金)LIVE HOUSE Queblick
【愛知公演】
▼7月5日(金)RAD HALL

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:150-140
▼7月13日(土) 18:30
梅田Zeela
オールスタンディング-3000円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[問]GREENS■06-6882-1224

【東京公演】
▼7月15日(月・祝)Shibuya WWW

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