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「俺たちはまだ、バカげた夢を見続けている」
OKAMOTO’Sの少年期の終わりと続いていく夢――
デビュー10周年、初の日本武道館へと向かうツアーがついに開幕!
『BOY』全員インタビュー&動画コメント

 中学校の同級生で今でも会うヤツなんてひと握り。みんなそれぞれの人生を生きている。そんな世間によくある風景が、ことバンドおいては、OKAMOTO’Sにおいては、当てはまらない。人生の半分以上の時間を音楽家として共に過ごし、10代でメジャーデビューを果たして今年で10周年。そのアニバーサリーイヤーの幕開けを飾った8thアルバム『BOY』は、『Dreaming Man』で始まり『Dancing Boy』で終わる構成さながら、夢と現実の狭間で揺れ動いた10年と音楽が刻まれた、OKAMOTO’Sの新たな指針であり結晶のような1枚だ。ライブに関しても、3月12日なんばHatchにて行われた『OKAMOTO'S 10周年記念特別公演 ~ハマ・オカモト“に”大感謝祭!~』を皮切りに、4月6日(土)横浜ベイホールよりスタートするリリースツアー、そして、6月27日(木)にはキャリア初の日本武道館ワンマン『OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY LIVE “LAST BOY”』をついに開催。昨今、楽曲提供やサポート、レコ―ディングといった外仕事も活発な4人が、今年はバンドとしてより濃密な1年を駆け抜ける。移りゆくシーンの中で、変わった景色、変わらない衝動、続いていく夢。「俺たちのようなバンドが武道館を埋めることに意味がある」(レイジ・ds)とブチ上げた、OKAMOTO’Sの覚悟と10年を全員で語る。

 
 
“何だか分からないけど違うね”
“何だか分からないけどいいね”を頼りにしています
 
 
――10周年イヤーの幕開けを飾った『BOY』の制作にも大きく関わったと思いますが、それぞれ昨年は自分にとってどんな1年だったと思います?
 
レイジ(ds)「充実していました。個人的には『BOY』にたどり着くまでに結婚したり子供が生まれたりしたことも大きかったです。だからこそ、こういうタイトルにもなったというか、何か本当にBOYじゃいられない立場になったなと。すごく成長した1年だったと思います」
 
ショウ(vo)「自分たちのラジオ番組(『OKAMOTO'S SHOCK THE RADIO powered by G-SHOCK』)も始まったり、各々の別現場の仕事でも新しい展開が出てきたり…まずはもちろんこのアルバムのレコーディングでしたけど」
 
コウキ(g)「今年は10周年イヤーということもあり、ツアーを回って、武道館があって、派手に盛り上がっていこうという思惑があったので。去年はその準備というと語弊がありますが、力を溜める時期かなと思っていたら、意外にいろいろなことをやらないといけなくて。時間がどんどんなくなっていき、曲作りもしないといけないし、蓋を開いたらすごく大変な1年でした(笑)」
 
ハマ(b)「僕は去年、楽器をすごく弾いて…喋っていましたね、ずっと(笑)。それも活動の一環というか、自分たちのこのアルバムはもちろん、バンドではないところでの演奏もいろいろあったので。本当に演奏している時間が今までで一番長い1年でした。録音の現場にすごく携わった感じがしています」
 
――吉澤嘉代子ちゃんや関取花ちゃんにインタビューしていても、ハマくんの話は自ずと出てくるので、やっぱりそういう現場にいるんだなというのは。
 
ハマ「そこでの価値を高めるための1年というか、バンドに戻ってきたときはもちろん、きちんとした結果を残さないと、そういう仕事もあと数年ともたないなということをテーマに挙げていた年だったので。そういう意味では、嘉代子ちゃんの『女優姉妹』(‘18)もすごくよかったですし、(星野)源さんの『POP VIRUS』(‘18)もそうですが、自分たちのアルバムを形にしたのは去年の終盤だったので、そこに全てがぶつけられるような流れはよかったですね」
 
――メンバーそれぞれが現場や生活で感じたこと、得た視野や経験が『BOY』にはぶち込まれたと。前作『NO MORE MUSIC』('17)はソウル/ファンク色豊かにチャレンジしたアルバムだったと思いますが、今作もその流れでいくのかなと思いきや、いざ作り始めてみると意外にもそうはいかなかったようですね。
 
ショウ「まさに。最初にテーマを立ててやり始めたことでも、4人で合わせたときの感覚で“ハマっていない感じがするからやめよう”と変わっていくことが多い。そこはあざとく時代を見てというより、もっと肌感覚で“何だか分からないけど違うね”、“何だか分からないけどいいね”を頼りにしています」
 
コウキ「OKAMOTO'Sは、2作連続で同じテイストでまとめたことがなくて、よく言えば、変わらないために変わっていく。やっぱり同じことをやっていても、だんだん縮小していくところもあると思うので、その時々で自分たちにとって新鮮で、より発展していくことをやっている意識はあって。でも、悪く言えば、すごくよかったのに変えてしまう(笑)。とは言っても、毎作の成果はきちんと引き継がれていますし、こういう仕上がりになってよかったなと」
 
――ここにきて『BOY』がロックバンド感のある作品になったのは、外野の声や先入観よりも、さっき言った“何か違うな、何かいいな”をちゃんと信じられているからで。
 
レイジ「常識的なやり方だったり、いわゆる“普通はこうだよね”ということって、もう何も当てはまらない時代に突入した感じがして。それは、俺らがデビューして10年やってきて、一番感じていることかもしれない。10年前、ちょうどCDが売れなくなり始めるぐらいから、今ではサブスクも始まって、インスタやYouTubeで何でも見られる。何でも見られる・何でも聴けるというスピード感がめちゃくちゃ上がっちゃったから、どこのエリアでも若い子の間で流行っているものが一緒になったり、急に垣根がなくなった気がしていて。流行り始めて浸透するスピードは、ここ10年で相当速くなったと思います。でも、自分らのことはもちろん信じているけど、俺はトレンドもきちんと取り入れたいなと思うタイプなので、“こういうストレートなロックって、やっぱりカッコいいな”といちリスナーとして改めて思ったタイミングで、バンドとしてもそういう状態にあったのが、『Dreaming Man』(M-1)なんかには表れていますし。いろいろなカラーの曲があるけど、なぜか統一感が取れてしまっているアルバムだなと思います」
 
――OKAMOTO'Sはずっと、“伝わらない、思ったより響かない、みたいなものとの戦いだった”と過去のインタビューでもよく言っていましたが、こんなオリジナルな音楽を作っているのに、売れ方は他の人と同じかどうか気にするのかと、少し思っていたというか(笑)。
 
ショウ「アハハ!(笑)」
 
――他と違うからこそ、売れ方も同じじゃないはずなので。
 
ショウ「それはまさにそうですね。それこそ4~5年前ぐらいまでは、まだ売れる方程式があったような気がするんです。それを一度は成功させた人だけが、ある程度生き残っている世界といった感覚もあったし。それが一気に崩れて、最近はまた全然違う要素が音楽を長く続けるカギになり出した気がして。その移り変わりの狭間にいるからこその、そういう伝わらない想いだったり、近年の開き直りだったりなんだろうな(笑)。作っている音楽自体は、この4人でやる以上OKAMOTO'Sらしさがあるのに、“そんなことを気にしなくてもいいのに”というところが気になるのは、何だったんでしょうね?(笑) やっぱり…自分が好きなものを盲信して、誰かにそれが伝わる快感を多少なりとも知っているからだろうなと。だからメジャーにはいまだに夢があると思うし、多くの人とそれを共有できると信じ切っていますし、夢は世界制覇から変わっていない(笑)。逆に、ここ2年ぐらいでメジャーに出てきた同世代の人たちには、そういう想いはあまりないのかもしれないなと感じる瞬間もあります。バカげた夢過ぎるというか(笑)。そうじゃない方がクールで現実的に人気が出るかもしれないけど、俺たちはまだ、そういうバカげた夢を見続けている感じが4人にある気がして」
 
――確かに。それで苦しめられたけど、だからこそここ=10周年まで来れたと。
 
 
ずっと好きなものは好きだし
変わろうと思っても変われない部分は誰もが持っていると思う
 
 
――アルバムタイトルの『BOY』というキーワードは、どのタイミングで生まれたんですか?
 
レイジ「歌詞に夢のことが結構出てきて、最初はタイトルも『DREAM』でいいんじゃないかと思ったんですけど、言葉の意味を真に受けてもらえなさそうというか、“10周年、武道館、DREAM”だと、少し露骨過ぎるなと(笑)。そのとき、『Dancing Boy』(M-10)の“Boy”もそういうニュアンスを含んでいるなと思って。だから、『BOY』が指す意味は男の子ではなくて、一生好きなものだったり、普遍的なもの。そういうものは男女問わずあるものだし、女の子だって小っちゃい頃からおばあちゃんになっても、お花をもらったら嬉しいとか、そういう感覚なんです」
 
――原因不明のワクワク感のような。
 
レイジ「例えば、何歳になっても“ウンコ”とか言って笑っちゃう感じって、結構『BOY』な感覚だなと(笑)」

――分かるわ~。僕はOKAMOTO'Sより年上ですけど、今でもウンコ、チンコ、おっぱいでめちゃくちゃ盛り上がりますもん。どこまで続くねんこのエネルギー(笑)。

(一同爆笑)

レイジ「あと、最初にインディー盤が出たときは18歳とかで、今はもう28になるんですけど、これから本格的に『BOY』じゃなくなってくる年齢ですし、『BOY』であってはいけない立場になる気がするし、自分たちのことを『BOY』と言えるのはこのタイミングが最後なので、それを区切る意味でもあえてこのタイトルを付けました。かと言って、ずっと好きなものは好きだし、変わろうと思っても変われない部分は誰もが持っていると思うんです」
 
――オフィシャルインタビューでも、“最初から最後まで変わらないもの。それがOKAMOTO’Sっぽくもあるのかなって”と話していましたね。
 


レイジ「やっぱり、『Dreaming Man』のような8ビートで、コード進行で、みたいな感じって、もう絶対好きじゃんというか(笑)。『BOY』にはそういう気持ちを総称した新しい言葉という感覚もあります」
 
――武道館で『Dreaming Man』から始まったらアガるな~とイメージが湧きます。今作は10周年、武道館、みたいなことが頭にありながら、アレンジにしっかり時間をかけられたのも、今までのレコーディングとは違ったと。
 
ハマ「そうですね。“次回作を作るときは、そういう時間をきちんと捻出してほしい”と前もってスタッフに伝えていたレベルだったので。とは言え、今までも決して突貫で作ってきたわけではないのですが、特に初期はリリースのペースが早かったり、どうしてもバンドだけやっているバンドじゃないと言うと語弊がありますけど、結局、いざレコーディングが始まるとスケジュールの合間をぬってだったり、意外と焦ることも多くて。それは若干もったいないなと思っていたので、今回はプリプロダクションの時間を多めにとって事前に完成のイメージに近付ける、何ならレコーディングもする、といった感じで、割と前もっての作業に時間を割けたのはよかったです」
 
――その結果、“OKAMOTO'Sはやっぱりロックバンドだった”みたいな色が、ここにきてまた出てきたのが面白いですね。あと、歌詞を見ていて他のバンドと何が違うかと言うと、今でも音楽のことばかり歌っているなと。もうデビューして10年も経っているのに、まだ音楽が楽しいだの苦しいだの歌っている。
 
ショウ「本当に音楽のことばっかり歌っていますよね。何なんでしょう?(笑) 個人的には、漫画家が描く漫画家の話だったり、映画監督が撮る映画監督の映画が結構好きで。一番知っていることを表現しているじゃないですか」
 
――想像じゃないというか。
 
ショウ「そうです! 一番実体験だから」
 
レイジ「確かに。映画監督は元殺し屋とかじゃないからね(笑)」
 
ショウ「そういう、監督が一生に一本撮るか撮らないかぐらいの作品がすごく胸に響いてしまうんです。あとは、ヒロト&マーシー(ザ・クロマニヨンズ)もよく音楽のことを歌っている気がするし、結局そういうものが好きなんですよ。それに何の仕事をしていても、何かに熱くなったり、凝ったり、狂ったりしたことがある人は(笑)、職業が違っても話が合いますよね。だから、やっている内容ではなくて本質というか、そこと向き合ったときの心の動き方は、みんな通じるものがあるんだろうなと思っていますね」
 
 
10周年ってイヤらしい気持ちなしで
こういう曲が出てくるものなんだなと(笑)
 
 
――クラブミュージックをバンドで体現した『Higher』(M-4)だったり、ポストプロダクションも含めて、『BOY』のサウンドは相変わらず練られていますね。
 
レイジ「でも、あまり苦しみはなくて、楽しく練った感じでした。何回もトライ&エラーはしましたけど、先が見えなくて、もがき苦しむのではなくて、見えているところにたどり着くために繰り返し挑戦したので」
 
ショウ「そうだね。最初は、これまでの自分たちのやり方からすると、結構ストイックなアルバムになりそうで。ふと、“やっぱりもう少し派手な要素があった方がいいのかな?”ということを思ってしまって、“いやいや、今回はこれでいいはずだ”という自問自答はよくしました。曲順という面でも、このアルバムの顔付きをどうするかは悩みました。それこそ『偶然』(M-6)や『Higher』から始まったら、シャレた印象にもなるだろうし。結果としてこれで最高だと思っていますし、4人でそういうところを信じられるようになってよかったなと思います」
 
――今作では、『NOTHING』(M-7)のレゲエなテイストもそうですが、まんまそっちの人じゃない感じというか、ロック畑の人がやるレゲエ、ロック畑の人がやるニューウェイヴのように、ロックバンドとして腰が据わっているからこそ遊べるし、ヘンにモノマネにならないところはありますよね。
 
レイジ「まさにそうですね。『NOTHING』なんかは“偽レゲエをやろう”って(笑)」
 
ショウ「ちょっとエセな感じというか。そこは面白かったですね。『NOTHING』もだいぶ細かいところまで掘ったよね? できるだけ足し算をしないで凝るにはどうしたらいいんだろうって」
 
――あと、CHOKKAKUさんやNAOKI(LOVE PSYCHEDELICO)さんがアレンジャーとして参加してくれているのは、今作のハイライトでもあると思いますが。
 
コウキ「今までは“新たに頼んでみよう”という姿勢でいろいろな方とやってきましたが、今回は以前一緒にやった人の中から、その曲を増強させるために改めて来てもらった感じで。NAOKIさんと一緒にやった『BROTHER』('16)がすごくいい仕上がりになって、自分たちが思い付かないアイデアだったり、アレンジの気配りや最後の詰めまで、本当にすごいなと思わされました。『Dancing Boy』(M-10)は大事な曲になりそうな予感が最初からあったので、また一緒にやれたらいいなと思って」
 
――『Dancing Boy』の、10年目にして謎の青春感がすごいなって(笑)。U2の『ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー』('87)を彷彿とさせるような…。
 
レイジ「そうなんですよ! 個人的にはU2をすごく聴いていたわけではないんですけど(笑)」
 
ショウ「俺も全然」
 
レイジ「でも、何故か“U2みたいにしたい”って言っちゃう感じでした。あとはスケール感をデカくしたい、というか。元のアレンジは佐野元春さんのような感じだったんですけど、そこからNAOKIさんに相談してU2方面に」
 
ショウ「いいですよね、やっぱり。10年やってきたなりのあたたかい気持ちを表現しようとして書いた曲が、結果こういう形になるのは一番健全だと思いましたし、10周年ってイヤらしい気持ちなしでこういう曲が出てくるものなんだなと(笑)。ミドルテンポでいいメロディの曲って、最初からそういう脳じゃないと書けないものだと思っていましたが、本当に自然と出てきた。逆にそうじゃないといい曲にならないんだろうなとも思わされましたし」
 
――意図的じゃないというか、邪念がないというか。
 
ショウ「そうです。やっぱり“あざとさ”があると、そういうのってどんどん難しくなってくると思うし、実際にすごくいい曲が書けたと思ったので、満足しています」
 
――何だか素直なアルバムだなと思いました。さっきのやっている内容じゃなくて本質の話じゃないですが、日々何をやっているかは人それぞれだけど、そこに向き合うスタンスや熱量が一緒だと分かり合える。OKAMOTO'Sはすごく音楽的なことをやっているけど、同時にそういう本質でつながれることを実証していくというか…。
 
ショウ「分かってくれて嬉しいです! 音楽オタなので、もちろんそこでも語れるバンドだと思いますが、芯の部分でそういうよき心を持った4人だという(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
ショウ「そういう意味でも、音楽好きじゃない人にも伝わる音楽な気がしています」
 
 
同年代のバンドがたくさん出てきていますけど
こっちはもうアルバムを8枚作っていますからね(笑)
 
 
――『NHK みんなのうた』に書き下ろした『DOOR』(M-9)のような曲を聴いていると、OKAMOTO’Sの30代が楽しみになります。ライブもそうですけど、このバンドは年を重ねるほど有利になるなと。
 
レイジ「同年代のバンドがたくさん出てきていますけど、こっちはもうアルバムを8枚作っていますからね(笑)。レコーディングは全然うまいと思います」
 
――もうプロですもんね、単純に(笑)。
 
(一同笑)
 
ハマ「プロっていいですね、確かに(笑)。ただ、レコーディングに関する知識は、逆に僕らより若い世代の方が、いわゆるDTMに触れている世代で圧倒的に知識量が多いとも思っていて」
 
――確かに。デフォルトでDTMがある世代ですもんね。
 
ハマ「そうなんです。だからそこの差は未知数ではありつつも、やっぱり僕らもデビューして2〜3年の頃は、何にも分かっていなかったですし。そこにある機材が何のためにあるのかも分からない。とりあえずヘッドフォンをして演奏させられてやりづらいというか(笑)。でも今は、簡易とは言え中学生でも家でレコーディングできますからね。そういう世代がこの後どんどんデビューしてくるし、今いる世代も家で録るのが好きな人も多いので」
 
レイジ「長谷川白紙のアルバムなんか、超ヤバいですから」
 
ハマ「その辺りの差は面白いですよね。そういう意味で、僕らは現場で10年近くやってきたプロではありますが、我々としては普通にやっている中で、よく“4人の音がちゃんと聴こえる”、“バンドの立体感が”などと言ってもらえることが、少し不思議だなと思って。他の方々もきちんと演奏しているはずなのに、音が違うのはその道の専門家じゃない人でも分かってくれている。そこはやってきた年数だったり経験値が伴っているんだろうなと」
 
――実体験がもたらすあのエモさというか、説得力というか。今作が出来上がったときは、10周年みたいなところも含めて感慨深いものがありしました?
 
ハマ「何か無駄がなくていいなと思いました(笑)。アレンジにせよ演奏にせよどんどん削ぎ落とされて、その曲に合うことをきちんとやれるようになってきている。“こうすればよかった”といった振り返りはきっと一生なくなることはないと思いますが、今回はそういう雑味も割となかったのでよかった。いつもは悪い意味で後ろ髪が引かれることがあるんですよ。作ってから世に出るまでの間に考え過ぎてしまって」
 
レイジ「今回は、“やっぱり変えたい”と思ったらそのタイミングできちんと伝えることを意識して、ミックスも終わって後はマスタリングだけという状態でもやり直したり、曲の構成も変えたりして」
 
――エンジニアさん、めっちゃ大変やん(笑)。アレンジは削ぎ落とし、でも、執着するところはちゃんと執着する。
 
レイジ「『Higher』なんかはまさしくそうやって作りました。今まではそこで止めるクリエイティビティに美徳を感じていたところもあって。“そこで終わったのがその曲の運命だ”とも思っていましたし、これはこれでいいと言う人もいるという受け取り方だったんですけど、今回は練る方向で作っていったので、やり直しもたくさんありました」
 
 
“OKAMOTO’Sってずーっといるよね”という立ち位置もいいなと
 
 
――そして、中学生時代からの友人でもあるこのメンバーと、デビュー10周年で初の武道館に立つと。ある意味、OKAMOTO'Sが武道館でやれるのはすごいと思います。
 
コウキ「いや、本当に。いわゆるメインストリームでみんなが分かってくれる音楽をやってこなかったので、その地道な積み重ねで武道館をやれるところまで来れたのはよかったなと思います。何か希望があるというか」
 
――10周年のご褒美じゃないですけど。
 
ハマ「そうなるといいですね、本当に」
 
――かつてSyrup16gを武道館に観に行ったとき、何に感動したかと言ったら、今日で解散だとか初武道館ということよりも、席に着いたときに目の前にビッシリお客さんがいて、“Syrup16gが好きな人が全国にこんなにもいてくれたんだ…”ということに本当に感動して。OKAMOTO'Sも“クラスの1人が好きになる音楽”みたいなことを言っていましたが、全国にいるその1人が集まったあの光景には、きっとものすごく感動できると思うので。
 
ハマ「だから開演までたっぷり時間を設けますよ、浸ってもらうために(笑)」
 
(一同笑)
 
ハマ「確かに本編というか演奏中はもちろん、そういう景色に思うところはありますね」
 
レイジ「客席から客席も観やすいからこそ、神聖なイメージもあるんですかね」
 
ハマ「この10年を振り返ると、イベントなんかで何度か武道館のステージには立っていて、本当にお客さんとものすごく近いので、どんな顔をしているのかもハッキリと分かるんです。そこを共有できるのがあそこの不思議というか。ただ、単独では初武道館ですが、武道館に初めて立つ緊張は多分もうないので…と言いながら、自分たちのことなのでそれなりに緊張するとは思いますが、同業者のみんなにも“何回も出ているのに初って不思議な感じだね”とよく言われます」
 
――『Dreaming Man』で始まって『Dancing Boy』で終わるアルバムを手に武道館に立つって、ロマンがあるなと思いますよ。いい10周年になりそうですね、その前に大阪ではハマ・オカモト生誕祭もありましたが(笑)。
 
ハマ「武道館と比較されると恥ずかしいですね(笑)。メンバーの誕生日にかこつける公演は過去に何度かやっていて。今年は10周年イヤーということもあり、『BOY』の発売日はレイジの誕生日だったり、それぞれの誕生日に何かしらのアクションをしようということで、選択の余地はなかったんです(笑)。でも、受け取り手側からしたら、あたかも自分からやってくれって言っているようなものだなと思ったので、だったらもう“祝ってくれ!”というタイトルにしようと開き直りました」
 
――それでは最後に、武道館に向けて1人ずつ今の気持ちを聞いて終わりたいなと!
 
コウキ「10年積み重ねてきたものがあるので自然にやって、1つの区切りになればいいなと思っています。だからこそ、『OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY LIVE "LAST BOY"』というのも、ちょうどいいタイトルだと思っていて。少年だった時期がここで終わって、またフレッシュな気持ちで新しいことを始めたいというか、その先を見ているワクワクした気持ちが大きいので。武道館で1つの到達点を迎えるというよりは、次のページをめくるようなイメージを今は持っていて。4人が次に向かうためにも、ぜひ武道館に来てほしいなという想いがまず第一にあります」
 
――最初に“LAST BOY”って聞いたとき、ちょっとドキドキしましたもんね、やっぱり。
 
ショウ「とにかくたくさんの人にお祝いしてもらえるように今年は派手に動いていきますよ(笑)。'19年を通していろいろやれたらなと思っているので、 “今年はよくOKAMOTO'S見かけたな”という1年にできたらと思っています!」
 
ハマ「キリのいい数字という意味ではめでたいことですが、10年やって終わりではないので。その“10年やってきた人たちが作ったものってどんなもんだろう?”と、興味本位で聴いてみてほしいなという想いはあります。 “OKAMOTO’Sってずーっといるよね”という立ち位置もいいなと思っているので。自分たちの音楽に直接触れたことがない方々が今でも絶対にいる中で、ずっと戦っているというか、ずっと楽しんでいるので。昔から異種格闘技のようなイベントに出演することが多いのですが、最近は実感として、観た人にショックを与えることが上手になってきている感じがするので、ここ数年気になっている人がいたら、ぜひこの10周年というタイミングで作った『BOY』を聴いてもらって、観たことがないならぜひ観に来てほしいなと。そういう意味でもいいタイミングだと思うので」
 
レイジ「俺たちのようなバンドが武道館を埋めることに意味があると思うんで、今は初めてそこに固執しています。せっかく武道館でやるなら満員の会場でという想いはあるので、そこを目掛けて精一杯頑張りますよ!」
 
 
Text by 奥“BOY”昌史



(2019年4月 5日更新)


Check

Movie

『BOY』に武道館に大阪グルメ(笑)
メンバー勢揃いの動画コメント!

Release

4人の幼少期の写真がコラージュされた
10周年の節目のロックアルバム!

Album
『BOY』
発売中 3300円(税別)
アリオラジャパン
BVCL-953

<収録曲>
01. Dreaming Man
02. Hole
03. FOOL
04. Higher
05. ART(FCO2811)
06. 偶然
07. NOTHING
08. Animals
09. DOOR
10. Dancing Boy

Profile

オカモトズ…写真左より、ハマ・オカモト(b)、オカモトレイジ(ds)、オカモトショウ(vo)、オカモトコウキ(g)。中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンド。‘10年、日本人男性としては最年少の若さでアメリカ・テキサス州の音楽フェス『SxSW2010』に出演。アメリカ7都市を廻るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを回ったアジアツアーなど、海外でのライブも積極的に行う。’15年9月には渾身のロックオペラアルバム『OPERA』をリリース。’16年にはキャリア初の47都道府県ツアー『OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016』を敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催。’17年8月には7thアルバム『NO MORE MUSIC』をリリース。キャリア初の東阪ホールワンマン『OKAMOTO’S 90’S TOKYO BOYS IN HALL "Studio"』や、全国23ヵ所を回る『OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC』も、大盛況のうちに終了した。’19年1月9日には8thアルバム『BOY』をリリース。4月より全国ツアー『OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2019 "BOY"』をスタート。ツアーファイナルの6月27日(木)には、初の日本武道館ワンマン『OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE 2019 "LAST BOY"』を開催する。

OKAMOTO'S オフィシャルサイト
http://www.okamotos.net/

Live

ハマ・オカモト生誕祭を経て
全国ツアーの果ては初の日本武道館!

 
『OKAMOTO'S 10周年記念特別公演
~ハマ・オカモト“に”大感謝祭!~』
Thank you, Sold Out!!
▼3月12日(火)なんばHatch



『OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY
 LIVE TOUR 2019 “BOY”』

【神奈川公演】
Thank you, Sold Out!!
▼4月6日(土)横浜ベイホール
【静岡公演】
Thank you, Sold Out!!
▼4月13日(土)Live House 浜松 窓枠
【三重公演】
Thank you, Sold Out!!
▼4月14日(日)松阪M'AXA
【長野公演】
▼4月20日(土)長野CLUB JUNK BOX
【石川公演】
▼4月21日(日)金沢EIGHT HALL
【青森公演】
▼5月16日(木)Quarter
【北海道公演】
▼5月18日(土)・19日(土)ペニーレーン24

Pick Up!!

【京都公演】

Thank you, Sold Out!!
▼5月23日(木)19:00
磔磔
オールスタンディング4320円
清水音泉■06(6357)3666
※未就学児童は入場不可。

 
【香川公演】
▼5月25日(土)高松MONSTER

Pick Up!!

【滋賀公演】

チケット発売中 Pコード139-215
▼5月26日(日)18:00
U★STONE
オールスタンディング4320円
清水音泉■06(6357)3666
※未就学児童は入場不可。

チケット情報はこちら

 
【広島公演】
▼6月1日(日)広島クラブクアトロ
【鳥取公演】
▼6月2日(日)米子laughs
【群馬公演】
▼6月8日(土)高崎 club FLEEZ
【宮城公演】
▼6月9日(日)仙台Rensa
【鹿児島公演】
▼6月13日(木)鹿児島CAPARVOホール
【福岡公演】
▼6月15日(土)DRUM LOGOS
【熊本公演】
▼6月16日(日)熊本B.9 V1
【愛知公演】
▼6月22日(土)ダイアモンドホール

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード139-215
▼6月23日(日)18:00
なんばHatch
1Fスタンディング4320円
2F指定4620円
清水音泉■06(6357)3666
※1Fスタンディングは未就学児童は入場不可。2F指定は小学生以上は有料、未就学児童は大人1名につき1名まで膝上無料。お席が必要な場合は有料。

チケット情報はこちら


【東京公演】
『OKAMOTO'S 10th ANNIVERSARY
 LIVE “LAST BOY”』
一般発売4月6日(土)
Pコード134-708
▼6月27日(木)19:00
日本武道館
全席指定5400円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999
※4歳以上はチケット必要。3歳以下は保護者膝上に限り無料。席が必要な場合はチケット必要。

チケット情報はこちら


Column1

奥田民生、黒猫チェルシー、
スカパラ、RIP SLYME、
ROY(THE BAWDIES)…
OKAMOTO’Sだからこそ実現出来た
最強コラボアルバム『VXV』!
'14年の前回インタビュー

Column2

自信と確信に満ちた重要作
『OKAMOTO'S』に至る
バンドの内情から“あの話”まで
'13年の撮り下ろしインタビュー

Column3

壁にぶち当たり、乗り越えた
転機のシングル『マジメになったら
涙が出るぜ/青い天国』に迫る!
'12年の初登場インタビュー

Recommend!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんの
オススメコメントはコチラ!

「日本でも大ヒット中のアカデミー賞受賞映画『ボヘミアン・ラプソディ』(‘18)、観ました? あの最後のライブシーンを観るとね、“うわ、こんなことが万が一にも起こるなら、やっぱ夢あるな、音楽って素晴らしいな”と、思っちゃいましたよね、“子供”のように。今回、4人と話していて、何だかそんな想いが重なりました。10年という時間の中でいろいろな景色を観て、それこそ知りたくないことも知り、 “それでも…!”が、どんな仕事をしていてもあると思うんです。自ずと自分の原点= “好き”に立ち返るというか、開き直るというか、決意を新たにするというか、何を持ってこの先続けていくかを考える。彼らもまさにそんなタイミングだったでしょうし、その瞬間が『BOY』には詰まっていると思います。あと、OKAMOTO’Sは早過ぎたバンドだと内心思っていたのですが、ここにきてシーンとの親和性が増していく様は嬉しくもあり、それを引き寄せつつあるのは、同時に10年誇りをもって音楽をやってきたからでもあるなと。カッコ悪いことをしないって大事だわ。6月の武道館というある種の試金石で、4人はどんな景色を観るのか。MVが100万回再生されたって、そのとき隣に誰かいるわけじゃない。OKAMOTO'Sが好きなヤツが全国から集まったなら、その空間は希望でしかないです。ちなみに、ライブタイトルの“LAST BOY”ですが、LASTには“最新の”という意味もあるので、武道館でOKAMOTO’Sのそれ、観せてもらいましょう!」