インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > “バランス”がキーワードのニューEPをリリース! 電波少女インタビュー&動画コメント


“バランス”がキーワードのニューEPをリリース!
電波少女インタビュー&動画コメント

“ネット発”のヒップホップグループ・電波少女(でんぱがーる)が、3月27日にEP『Q』を発表した。今作は昨年春にNIHA-Cが加入し、3人体制になってから初となるパッケージとしてのリリースだ。そこで同作のこと、そして6月に控える結成10周年記念のイベントについて話を聞いた。リアルな制作時の様子が明らかになるトークは、“今だから”の笑いがいっぱい!

――『Q』は約1年半ぶりのパッケージでのリリース。今は配信が多いですが、CDと配信の違いはありますか? 電波少女さんは“ネット出身”だから差は感じないですか?
 
ハシシ「完全にCD世代なんでうれしいですね。今の時代的には(配信と)差がないというか、むしろ不便なんでしょうけど、CDを出すのはいまだに憧れというか……“モノ”で出すのには思い入れがあります」
 
――では、今作は思い入れ大?
 
ハシシ「なんかプロトタイプというか、新体制としての1stアルバムを出すまでの肩慣らしじゃないですけど、距離感を測ろうと思って…。いいバランスを作ろうって感じで作りました」
 
――NIHA-Cさんが加入して約1年が経ちますね。今どんな感じですか?
 
ハシシ「チームワーク的なものがこの1年でできてきたかなって思います」
 
nicecream「1年前に比べるとバランスが取れてきたというか、役割みたいなものがちょっとずつ見えてきてだいぶ落ち着きました」
 
NIHA-C「自分がどういう役割をどういう風にグループのなかで果たすのかっていうのがだんだんわかってきて、それができるようになってきたかなって思いますね」
 
ハシシ「ライブでの見せ方とか立ち位置とか、そういうのも最初の頃は結構ちぐはぐで…。NIHA-C君がずっと真ん中でサビを歌ってることもあったし(笑)」
 
 
NIHA-C「2人で歌ってることを忘れちゃうという(笑)。最初は、誰かと歌う時はバランスよく見えるようにっていうのを意識しないとできなかったんで……」
 
――3人のバランスもよくなってきたんですね。そして“バランス作り”を意識した『Q』には、前回取材時に話をした配信曲『忌々 -yuyu-』も収録。1枚としてもこの曲のポップな路線を行っている気がしましたが…。
 
ハシシ「今回はワーッてラップをするような曲はなくて…。聴きやすいものを入れたいなって思ったんですよね。集めたビートのなかで、これを使いたいな!って思うのが、そっち(ポップ)寄りのが多かったんです」
 
――トラックに関しては、4人の作家さんが担当されていますね。
 
ハシシ「DYES IWASAKIさんと Hiroaki Yokoyamaさんは既に電波少女で何度かやっていただいている方で、RIKEさんと TABTABSさんはNIHA-C君の前回のソロアルバムからのつながりで今回もやってもらったって感じです。こちらのイメージを伝えて、数曲いろんなパターンをもらって…っていう作り方ですね。今回イメージを伝える時に、激しくて派手なヤツを!っていうお願いは一個もなかったと思います。実際に『Q』に入らなかったパターンも、割りとおとなしいというか落ち着いたトラックが多かったですね」
 
――そうなった理由とは?
 
nicecream「……歳っすかね(笑)」
 
――またまた(笑)!
 
ハシシ「でもなんか、少しシンセの音に疲れるようになってきて…。だからもらったトラックも、シンセじゃなくてピアノの音にしてくださいってお願いしたりしました。やっぱりアコースティックの音とかが好きになってきているんですよね」
 
――それは3人共通ですか?
 
ハシシ「いや、完全に俺が!ですね(笑)」
 
――では、ハシシさん次第で今後路線は変わるかも(笑)?
 
ハシシ「そうですね。実際に年齢とともに変化する部分はあります。ま、もともと好きだったんですけど、聴く音楽もそういう風(アコースティック寄り)になってきていて、純粋に好きになってきているし……なんかこれから老いてくだけじゃないですか? バッキバキの音に若干疲れたのもあるし。シンセとかそっち系のものってフレッシュさが大事な気がしてて、そのフレッシュっていう部分で戦えなくなった時にどうしよう?って考えた時、自然と今のうちからちょっと(ポップでアコースティックなものもいい)……っていう」
 
――なるほど。さて、今作は全6曲のうち2曲がフィーチャリングナンバーというのも特徴かなと思います。参加したのは、韓国を拠点に活動するSKOLORさんと、日本の新世代アーティストと言われる4s4ki(アサキ)さん。
 
ハシシ「SKOLOR君にはソロでフィーチャリングを依頼されていたんですけど、ちょっとスケジュールの兼ね合いでできなくて。それで(こちらから)“呼ぶわ!”ってなってたんで呼びました(笑)。SKOLOR君が兵役に入るんで、2年弱一緒にできないから、今しかないなってなって」
 
――そんな経緯が。SKOLORさんの韓国語ラップ、新鮮でした。ちなみに言語によってラップに違いってありますか?
 
ハシシ「アタックが強いというか、純粋に韓国語はラップ向きですね。ラップってリズムじゃないですか。タカタカタカタカッてやる部分で、日本語だとちょっと柔らかいんですよね。でも韓国語だとパンパンパンパンッて気持ちいいというか…。日本語はもちろんすばらしいけど、ラップとか歌唱向きじゃないなっていつも思うんですよね。ラップに限らずポップでもロックでも、崩してちょっと英語っぽく歌ってる人が多いのは、そういう理由なのかなって思います。詳しくはわからないけど…」
 
NIHA-C「ラップに向かないっていう点だと、母音と子音がつながらないという…。例えば英語だと単語の最後に“n”があったとして、次の単語の頭と“n”をつなげたりできるんですけど、日本語はそれができないのが致命的だなって思った時期もありましたね。だから日本語でも、そこをわざとつなげて歌ってる人も結構いると思うし、そうするとスムーズに聴こえると思います」
 
ハシシ「みんな発音は研究しているっぽいですね」
 
――そうなんですね。そして4s4kiさんとの曲『ポイ feat. 4s4ki』は4s4kiさんの女性ボーカルが電波少女さんのメロディアスな部分とよく合いますね。
 
ハシシ「最初は2人(ハシシ・NIHA-C)でのろうとしてたんですけど、この曲のビート自体がいなたくて、でも電波少女はキャッチーでありたいっていうのがグループとしてあって、(2人のラップだけだと)どうしても『ポイ feat. 4s4ki』だけ沈んじゃうなと思って、4s4kiちゃんに“サビを歌ってくんない?”って歌ってもらうことになったんです。ちょっと“くるり感”というかを出したいなと…」
 
――くるりさんの曲が時折感じさせるノスタルジックな雰囲気ですか?
 
ハシシ「そういうのがたまにあるじゃないですか。それを目指してやりました」
 
――そんなトラックにのる言葉は、内省的かつ前向きな部分もありますね。
 
ハシシ「今回はちゃんとリリックに意味を持たせよう……意味ない部分をできるだけ減らそうっていうのをNIHA-C君とチェックし合って書いたんです。前回も言ったんですけど、言いっ放しにしないっていう……。だから、まずNIHA-C君からきたリリックにも全部揚げ足を取るようなことばっかり言ってました(笑)」
 
NIHA-C「(笑)」
 
ハシシ「“これ、つながってないじゃん”とか“ここのラインってどういう意味?”とか(笑)」
 
――ちょっとギスギスしそう(笑)。
 
ハシシ「めっちゃギスギスしました(笑)。そうやっていろいろ聞くと、たまにちゃんとロジックがある時があるんですよ。“これはここでこういうことになってます”って。でも、そう言われても“わかりづれ~わ”みたいな(笑)」
 
NIHA-Cnicecream「(笑)」
 
ハシシ「“これ自分以外に伝わんなくない?”って (笑)」
 
NIHA-C「でもそのとおりで、他人が読んで伝わらなかったら、伝わらないと思うんで…」
 
ハシシ「で、俺の方も自分的に言いたいことは言えてるんですけど、微妙だなとか伝わりづらそうだなとかって思うリリックの時は、NIHA-C君に投げて“意味わかる? (リリックの主語が)俺か対象の相手かどっちだと思う?”って聞いたりしましたね。……でも、(NIHA-Cは)絶対に(自分の想定と)逆のこと言うんですよ(笑)」
 
全員「(笑)」
 
ハシシ「“こっち(反対の答え)っすね”って言うから、“ハ? なんでそうなる?”って……(笑)。でも、そうなのかって思って結局書き直しをしてました」
 
――絶対に逆っておもしろいですね(笑)。
 
ハシシ「絶対に違うんすよ(笑)」
 
NIHA-C「違いますね(笑)」
 
ハシシ「絶対に逆の方。もうセンスが真逆なんですよね(笑)。実は『ポイ feat. 4s4ki』も4s4kiちゃんが作ったメロディが先にあったんですけど、それをこっちの方がいいかな?と思って、俺的に少し改良というかアレンジをしたんです。で、もともと4s4kiちゃんが鍵盤を弾いて送ってきてくれたメロディと、俺が弾き直したメロディを“どっちがいい?”って両方(NIHA-Cに)送ったんですよ。そしたら“こっち(4s4kiのもの)がいい!”って言うから、もう“わかった”って言って (笑)」
 
――NIHA-Cさんは、どちらがハシシさんのものかを知っていて選んだんですか?
 
NIHA-C「知らないですね。2パターン送られてきたから“俺はこっちっす!”って…(笑)」
 
――でも、それは偏りがなくなっていいことかもしれないですね。
 
ハシシ「そうですね。ただ、それ(NIHA-Cの意見)どおりにし過ぎてもダメだなって……彼のセンスを信用してないんで(笑)」
 
全員「(笑)」
 
――そういう時に第3者としてnicecreamさんが意見を出すことは?
 
nicecream「ないですね。全然聴かないです。全部できてから聴きます」
 
ハシシ「(nicecream)だったら、マネージャーさんに聴かせます(笑)」
 
――nicecreamさんは、一緒に曲を作ったりしたいとは思わ……。
 
nicecream「……ないです(笑)!」
 
全員「(笑)」
 
nicecream「この距離感がいいのかなって思うので」
 
――絶妙な3人のバランスですね(笑)。で、詞の話に戻ると、詩的な表現と具体的な名詞が出てくるリアルさのバランスがいいなと思いました。
 
ハシシ「僕が電波少女を1MCでやってた時もNIHA-C君がソロでやっていた時も、固有名詞が結構少なかったなって思っていて……。やっぱり固有名詞がないとひっかかりが弱いから、昔よりは書くようにしてわかりやすくしてますね。そうすると一瞬で(曲の情景・物語が)浮かびますよね」
 
――確かに。ただ、固有名詞ばかりでも……。
 
ハシシ「そうなんですよ。最初NIHA-C君ともっとパキッとした(具体的な)言葉をお互い入れてこうって言って書いたんですけど、その後にNIHA-C君からきたヤツが“だらけ”だったんですよ。固有名詞だらけ(笑)。ま、いいワードもたくさんあるんですけど、それが全然引き立たない。もったいないなって…」
 
――そうなっちゃうんですね。
 
ハシシ「僕が個人的に崇拝している北野武さんの映画を撮る時のポリシー?教訓?みたいなのがあって、見せたいシーンを3つ作って、あとはそのシーンをつなげるためのシーンを撮るっていう…。それが曲にもしっくりくるなって思うんです。だからちゃんとここ!っていうところをいつもより作るようにしたんです」
 
――緩急が必要なんですね。NIHA-Cさんにもそういう視点が?
 
NIHA-C「そういうのもありつつ……俺、基本的に加減がわからない。何事もなんですけどね(笑)」
 
全員「(笑)」
 
ハシシ「指示を出すと、もう……(笑)」
 
NIHA-C「極端ですよね(笑)」
 
ハシシ「そう(笑)」
 
NIHA-C「で、それを送っちゃうと、だいたい(ハシシから)電話がかかってきて“わかんないかな?”って(笑)」
 
ハシシ「“1から10まで言わないとわかんねーかな? 5からで頼みたいんだよね~”って……(笑)」
 
全員「(笑)」
 
NIHA-C「結構、マジトーンで言ってました(笑)」
 
――今は爆笑で話していますが、ハシシさん、その時はイラッとしたんでしょうね(笑)。
 
ハシシ「めっちゃしました(笑)」
 
NIHA-C「俺は電話口で“はあ。はあ。じゃ、ちょっと(固有名詞を)減らしてみます”って言って、そうか……バランスを取らなきゃなって(笑)」
 
ハシシ「だから今は、例えば“これ入れて”って指示しても、すぐに“でも入れ過ぎないで”って言ってます。電話を切った後に“あ、これ(補足)、言わないと!”って思って、また電話かけ直して“ちなみに……だけど”って(笑)。ま、でも俺も悪くて、作業してると説明の言葉が短くなっていくんですよね。だから俺も気をつけつつって感じですね」
 
――NIHA-C さんは電波少女で1年やってきて、最初は1からの説明が必要だったのが、5からでよくはなってきていますか(笑)?
 
NIHA-C「同じことだったら3からくらいでわかるようになりましたね」
 
nicecream「過去問、解いてるからね(笑)」
 
NIHA-C「でもまた別ジャンル(問題)とかになってくると… (笑)。ただ、5から言われた時は、“あ、これ5から言ってるな”って思って1から5を聞くようにしてますね。“それって○○ってことですよね?って(笑)」
 
ハシシ「ま、俺も理不尽が多いんで……」
 
――じゃ、NIHA-Cの器が大きいんですかね?
 
ハシシ「器……穴、開いてます(笑)」
 
NIHA-C「こぼれてるのに気づいてないです(笑)」
 
ハシシ「一生入ります(笑)」
 
全員「(笑)」
 
――逆にすごい(笑)。
 
ハシシ「助かってます(笑)」
 
――今後が楽しみです(笑)。そしてもう一つ楽しみなのが6月9日(日)に大阪である10周年記念のイベント! 
 
ハシシ「今回は、いつも自分たちの周りにいたり縁があったりするアーティストを中心に呼びました。Jinmenusagi、トップハムハット狂、野崎りこんとかはもう10年以上の付き合いなんですけど、それぞれがいい感じにやってこれて、そういう面子と10年経っても一緒にイベントができるっていうのがうれしいですね」
 
nicecream「見る側としても出る側としても、おもしろい面子が集まったんで楽しみです」
 
ハシシ「だいたい出自がネットの面子なんですけど、みんな今はネットだけじゃなく、いろんな方面で活躍してます。でもネットがそんなに普及していない時代からネットを使ってやってきた人たちだから、その感性がみんなおもしろいというか新しいというか…。電波少女に興味がある方は、ぜひ僕らの“おもしろい周り”を見にきてほしいですね」

text by 服田昌子



(2019年4月 1日更新)


Check

Movie Comment

Release

電波少女1年6ヶ月ぶりの
パッケージ商品!

Album『Q』
発売中 2000円(税別)
BVCL-957

《収録曲》
01. GXXD MEDICINE
02. CUFFS feat. SKOLOR
03. ローリングストーン
04. NEWTON
05. ポイ feat. 4s4ki
06. 忌々 -yuyu-

Profile

でんぱがーる…2009年、インターネット動画投稿サイトに突如姿を現した個性派のMCとトラックメーカー数名で結成。メンバーチェンジを経て、現在はハシシとNIHA-Cの2MC、パフォーマンス&ボタンを押す係担当のnicecreamの3名で活動中。等身大でリアルなリリックとキャッチーなメロディで作り上げられる中毒性の高い楽曲、そしてnicecreamのダンスパフォーマンスが盛り上げる華やかで一体感あるライブが今熱い注目を集めている。

電波少女 オフィシャルサイト
http://denpagirl.com/


Live

「電波少女 10th Anniversary“+”」

4月27日(土)一般発売 Pコード:143-557
▼6月9日(日) 13:00
Creative Center OSAKA
オールスタンディング-4500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
[共演]有
※3歳以上は有料。出演者の変更・キャンセルに伴う払戻しは不可。
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]夢番地■06-6341-3525

4/13(土)23:59までオフィシャルHP先行
実施中!

チケット情報はこちら