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「苦手なことに挑戦できたアルバム。反骨精神なんです」     
3rdフルアルバム『Diamond』リリース
ウソツキ、メンバー全員インタビュー

引き込まれずにいられない“歌とメッセージ”を届ける、ウソツキ。この秋リリースされた最新3rdフルアルバム『Diamond』はラブソングを軸に、輝きを増したグッドメロディとキュンとさせるピュアな歌心、ファンキーで多彩な遊び心も加味し、聞き心地抜群の一枚となった。'16年の3rdミニアルバム『一生分のラブレター』がみんなの共感を得たことで、それまで苦手だったというラブソングにもより挑戦できるようになったという中心ソングライターの竹田昌和(vo&g)。こんな切り口や手法があったのか!と驚かされる独自の歌作りの秘密とは? さらに、洋楽ともリンクして進化させてきたサウンドプロダクションについて、デビュー5周年を迎える2019年に向けて構想中のショートフィルム製作など、メンバー全員に聞いた。

愛とは? 恋とは? 一個ずつ自分の扉を開けていき
他の人は描かないような歌ができ上がってきた
 
 
――今回のアルバム『Diamond』はラブソング色が濃厚ですね?
 
竹田昌和(vo&g)「そうですね、ラブソングを中心にしつつ、いろんな角度から書けたなと。実は自分自身、ラブソングって一番苦手でもあるんですよ(笑)。恋愛どころか、人間関係とかコミュニケーションもずっと苦手で、悩んでたし、そんな自分が恋愛の歌なんて…と思って、何書いていいのかわからなかったんですけど。そもそも愛とは、出会いとは、恋とは…と、一個ずつ自分の扉を開けていくことで、他の人ではあまり描かないような歌が出来上がってきたなと。『一生分のラブレター』というアルバムで、みんなの共感を得たのがきっかけなんですけど。一番苦手なもので評価を得たから、一番苦手なものほど挑戦したいなっていう反骨精神なんです。だから今回の『Diamond』は苦手なことに挑戦できたアルバムですね」
 

 
――ラブソングにも、いろんな描き方や切り口がありますね。
 
竹田「出会いの曲もあれば、愛とは何なのかって曲もあれば、浮気する曲される曲もあったり、相手を追いかけてる曲もあれば、追いかけられてる曲もあったりして…。通常、ラブソングって僕とあなただけど、一曲目の『夏の亡霊』は、僕とあなたと、さらにあの子がいて。一人称で三人称への思いを歌うことで、二人称への思いを歌うことができたんです。それは歌詞を書く人間として、いい曲ができたなと思っています。これは、いしわたり淳治さんが、“邦楽の歌詞で三人称を使うのは難しい”という話をしていたのを聞いて、それに挑戦したいというのもありました」
 

 
――それぞれの曲の中で、切なくてユーモラスな恋愛・人間ドラマが展開されていいますが、竹田さんの実体験がベースになっているんですか?
 
竹田「すべてに自分自身はいるんです。だから、ノンフィクションだけど、少し誇張していたりはしてるかもしれない。最後の『ラブソングは無力だ』で歌っているように、まだ自分自身はラブソングを完全に認めてるわけではないけど、ラブソングというものに僕自身が救われた経験もあるし…。ラブソングというものは無力なんだけど、その矛盾の中で歌っていますね」
 
――そんな今回のアルバムの中で、メンバーの皆さんが、グッときた曲を教えてほしいです。
 
藤井浩太(b)「僕は、『名もなき感情』(M-3)を聞いた時に、びっくりしまして。言葉になってないし、意味がわからないし、でもわかるし、伝わってくるし。ありえない歌詞なんだけど、これはある意味発明だなと思ったんです。だから逆にこれは老若男女問わず、全部の人に伝わるんだろうな、スゲーなと思いました」
 
吉田健二(g)「僕は、4曲目の『口内戦争』。曲調もそうなんですけど、キスを実況するような歌詞で(笑)」
 
――そうそう、このリアルかつポップな描写は凄いですね(笑)
 
吉田「まー、本当に切羽詰まってる感じが表現されていて、かつリズムがイイ!  歌のリズムが曲のリズムを増して、Bメロとかめちゃくちゃ気持ちいいですね。ちょっとラップのような雰囲気もありつつ。結構今までのウソツキには無い歌詞とリズムだなと思いまして。やっぱり歌のリズム感って大事だなと思った歌詞ですね」
 
林山拓斗(ds)「『名もなき感情』はすごく早く上がってきて、その時に方向性として、これはリード曲に仕上げたいと思ったんです。歌詞も今までに無いタイプで、曲のダイナミクスもあったので。一方で、『超ひも理論』(M-10)という曲は、すごく苦労して結構最後の方でできたんですよ。ラブソングってベタになりがちだけど、竹田の場合、何かを表現するのがあまり上手く無いから、グッとくるものを書ける人だなと。特に、『超ひも理論』は、相手への気持ちをいろいろと歌った後、“…なんて言えないな”って終わるんですよ。そこまで4分間で語ったことを最後に全部チャラにするという。そういうところにグッと来る。そんな大恋愛みたいなことはしたこと無いけど、恋愛というものは理性とかけ離れたところに存在するんだなと、本能的に感じてしまう表現が『名もなき感情』とこの『超ひも理論』には入っていて。本当に最後の一節だけで、“恋愛ってそういうもんなのかな”って思っちゃうような説得力があるなって思ました。特に『超ひも理論』はミックスが上がってきた時にすごくそう感じて。そこからみんなで一生懸命考えたアレンジが耳にすっと入ってくる凄いケミストリーがあって。本当に、ウソツキやったな!って感じましたね。で、その後に、『ラブソングは無力だ』(M-11)というオチみたいな曲があって(笑)、これでアルバムが完成してるわって感じました」
 


 
4人とも洋楽聴いてるけど
J-POP大好きな根っこはあるんで
バランス良くやりたかったことが実現できた
 
 
――プレイヤーとしての意識やサウンドプロダクションのこだわりについてもお聞きしたいです。
 
林山「ドラムとベースのリズムの作り方というのはずっとウソツキがこだわってきたことだったんですけど、そこにギターのリフが一体化して、リフとしてのリズムが曲の中に作れるようになったというのは大きな成果ですね。ただ単純に曲を聴いて体が動くっていうことが成功している。特に『夏の亡霊』がそう。前はそこに繰り返されるメロディーが乗っていたけど、そういうのも一切なくて、切ない雰囲気や季節感が出せてるし。この曲は緻密にアレンジをしてるけど、大きなグルーヴがたくさんあるので。そういうところを聴いてほしいなと思ってます。俺らがこの2年間ぐらいずっと取り組んできたものが、初めて完璧にできたかなと。これまでは、海外の最先端のサウンドを取り入れてるねって言ってもらえることに嬉しさを感じてたけど、今はそうじゃなくて、単純に自分たちがやってきたことと、J-POPとしてプライドを持ってやってるところが一つになって、サウンドとしてのウソツキらしさを初めて提示できてる気がする。今後も曲を作っていく中で、ここがある意味ターニングポイントになっていくんじゃないかな」
 
吉田「『夏の亡霊』のリズムはトロピカルハウスと言われたりするんですけど、シーケンスではなく、あれをギターでやりたくて。バンドサウンドの範疇であのリズムを再現したかったんです。ピチカート奏法っていうバイオリンの奏法をギターでやってみました。『偽善者』『超ひも理論』『ラブソングは無力だ』もそうですね。同世代のバンドって、結構二分化してると思ってて。J-POPを聴いて育ってきたバンドがどんどんJ-POPさが濃くなっていって、ロックバンドって言わないようなポップなサウンドになる一方で、洋楽聴いてきた人たちが“シティポップ”とか“アシッドジャズ”“ソウル”というスタイルでやっていたり…。そういう二極化してる状況下で、俺たちはその真ん中を初めて行ったんじゃないかなと。だから新しい音楽を探してる人もぜひ手にとってほしい。4人とも洋楽聴いてるけど、J-POP大好きな根っこはあるんで、バランス良くやりたかったことが実現できたと思います」
 
――藤井さんは前回、ジャミロクワイなんかを聴いてベースを進化させてきたという話をされていましたね。
 
藤井「僕はジャミロクワイみたいな16ビートとかファンクって言われるものがすごく苦手だったんですけど、だんだんそれができるようになってきて、曲のグルーヴとして十分成立させられるぐらいになったと思います。それもウソツキのバンドサウンドをより進化させるきっかけになったなと。楽器をいっぱい重ねなくても、少ない音でグルーヴを出せるようになってきた。その一番極端な例が『口内戦争』ですね。この曲はサビではギターが一本だけの弦を弾いて、ベースも一本の弦だけ。楽器は二本の弦しか鳴っていないんですよ。なのにサビとして成立している。それが全部の曲に共通していて、各々の技術の向上のおかげでより、シンプルに洗練されながら音圧はしっかり残っているものができた。それが今回一番自慢できるところですね。個人的な一番のお気に入りは、『知ってる』(M-9)です!“これが弾きてーんだ!”っていう、自分のエゴと曲が求めているものがすごく一致した。もちろん今までもそういう曲はあったんですけど、この曲はそれがすごい融合したなと。ぼく自身もやってやったぜっ!ていうのと曲としてもいいっていうのが実現して、これはすごい自信になりました」
 
 
 
ウソツキはまた新しいことやってるなって
思うかもしれないけど、本質は何も変わっていない
 
 
――ところで、先行配信された『恋はハードモード』(M-7)のMVに驚いた人もいると思います。ファンキーでダンサブルな曲調に乗ってバッドボーイズ風のメンバーが一斉に踊り出すという(笑)
 
竹田「あの曲は元々、『俺たちバッドボーイズ』っていうタイトルだったんです。それは(林)拓斗くんが思いついて(笑)。青春を取り戻したかったとか、バンドマンっていう固定概念を覆したかったとか、いろいろ理由はあるけど。ちょっと悪くなって踊ってみたらどうだろう?っていうアイデアが出てきて(笑)。次のライブはそういうのを見せてみたいっていうのから曲を書いていったという凄く珍しいパターン。他の曲もちょっとノレる感じになったのは、この曲が引っ張ってくれた気がするんですよね。そういう挑戦をして、結果的に新たな一面が出せたのかな(笑)」
 
林山「いつもやりたいことがいっぱいあるから。その前はエイリアンになってるし(笑)、見てる人からしたらウソツキはまた新しいこと思いついてやってるなって思うかもしれないけど。僕らの本質は何も変わっていないので。ただやりたいものに向かって突き進んだ形がこうであって」
 
――それは自分たちの楽曲をより多くの人に届けるために?
 
竹田「それもあるんですけど。ただ作品を作っていくことやライブを作っていくっていうのが好きなんだろうな。一個のライブという作品作りのために、全部がつながっていってるっていう曲もあるし。ただ、『Diamond Tour』は新しいことは何もしない、自分自身が作品になるというか。自分自身を表現するライブをしたいという話をしてるんです。今まで、例えば、『惑星TOKYO』と名付けて、(ライブする場所を)“ここを惑星○○だよ”って言って、そこはもう違う世界を作りあげて。自分らも惑星○○の一員になって、エイリアンとして自分が出てきて、ライブするっていう風にものを作ってきたんですけど。今回のツアーでは、今まで服を着てたとしたら、その服を脱いで、本当にただ、曲に対してその歌を歌ってみたいというか。普通って思われるかもしれないけど、僕らにとっては、それが挑戦なんですよ」
 
――今回のツアーはもっと生身の自分自身を出していこうと?
 
竹田「そうですね。ウソツキってずっと防御戦を張ってたというか、良く言えば、アイデアがあって、そういうことをしてきたんですけど。今回はそれを止めてみたいという気持ちなんですよ。今回は、心からマジで泣くと思います!」
 
林山「いつも曲に引っ張られてライブを作ってきてるんですよ。前回は『惑星TOKYO』っていう曲があったから、各地を“惑星○○”と呼んで地球ではない場所と見立ててライブをするとか、『恋はハードモード』っていう曲があるから、バッドにもなれたしっていうところでいうと。『Diamond』っていうアルバムを作って、今、俺らがやりたいのは、『Diamond』の曲をシンプルに演奏して、超イイライブをしたい!と。だから、今こそ新境地。今は常にそういう気持ちでライブをやっていて、すごく楽しい。単純に曲に引っ張られていって、ライブ一回一回に発見がある、そういう状況を過ごしてる中で迎えるワンマンなんで。本当に曲の本質みたいなものが一番見えるライブになると思います」
 
――来年はデビュー5周年ですね。その5周年企画として、ウソツキの世界観を堪能できるショートムービーの制作プロジェクトが始動しているようで、新たな挑戦が始まっていますね。
 
竹田「デビュー5周年というのがデカかったんです。この機会に、自分らだけじゃできないことをやりたいねって話になって。映画ってお金かかるし、僕らが今までやったことがないことで。もしかしたらやってきたことの延長戦上にあるかもしれないけど。でも僕自身、音楽で映像が見えるような曲を作りたいって思ってるし、メンバーも映像の作品にすごく情熱があるので。挑戦するなら、5周年を映画にしようぜ!っていうところからやってみようと。まだまだ構想段階なんです」
 
――今後の展開が楽しみですね。
 
竹田「ありがとうございます。『Diamond』という良い作品ができたからこそ、ここから先もちゃんと“イイ曲だね”って思ってもらえるものが伝えられるようにやっていきたいですね。もっともっとより多くの人に知ってもらいたいし、来年に向けて、さらにこのアルバムを広げていきたいと思っています」

text by エイミー野中



(2018年12月 3日更新)


Check

Release

3rd Full Album『Diamond』
発売中 2500円(税抜)
UKDZ-0194
DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT

《収録曲》
01. 夏の亡霊
02. 偽善者
03. 名もなき感情
04. 口内戦争
05. レトルトの彼
06. パン
07. 恋はハードモード(Album Mix)
08. M.N.E.
09. 知ってる
10. 超ひも理論
11. ラブソングは無力だ

Profile

決して嘘はつかないバンド、ウソツキ。メンバーは竹田昌和(g&vo)、 林山拓斗 (dr)、藤井浩太(b)、吉田健二(g)。2013年夏より東京を中心に活動している4ピースロックバンド。2014年6月、ミニアルバム『金星人に恋をした。』にてDAIZAWA RECORDS/UK.PROJECTからデビュー。2015年1月、2ndミニアルバム『新木場発、銀河鉄道は行く。』10月には1stフルアルバム『スーパーリアリズム』をリリース。2016年は大型フェスや全国のサーキットイベント出演等、精力的にライブ活動を行い、7月には3rdミニアルバム『一生分のラブレター』リリース。2017年4月1日にLIQUID ROOMでのワンマンライブ開催、4月12日に2ndフルアルバム『惑星TOKYO』をリリース。2018年3月、配信シングル『恋はハードモード』リリース。9月に先行配信『名もなき感情』を含む3rdフルアルバム『Diamond』をリリース。

ウソツキ オフィシャルサイト
http://usotsukida.com/


Live

発売中 Pコード:124-323
▼12月13日(木) 19:00
渋谷CLUB QUATTRO
オールスタンディング-3500円(ドリンク代別途必要)
※3歳以上はチケット必要。
[問]AIR FLAG■03-6276-496

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