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パンクバンドとしてのプライドと自負に裏付けられた
堂々たる新作『Conscious+Practice』
TOTALFATだから成し遂げられた新作について4人が語る

インタビューの中でShun(vo&b)は、何度か「TOTALFATはパンクバンドなんで」と言った。パンクを愛して、ときにはパンクに救われ自身を奮い立たせて生きてきたことへの矜持が、ピンと伸びた姿勢とその短い一言から伝わる。70年代にも80年代にも歴史に残る名盤を発表したバンドや時代を変える力を持ったパンクバンドはいたけれど、そのほとんどは残念ながら短命。その中にあって、まもなく結成から20年を迎える今も「確実に成長しながら続けられている」(Bunta)と言い切るTOTALFATの存在は当たり前ではないし、バンドの精神性や哲学は想像以上にタフであるに違いない。前作『FAT』には、音楽を通して伝えたい想いをストレートに痛快に注ぎ込んだ。そこからさらに一歩も二歩も深く、近く、強く、マイナスをプラスに変え聴く人も自身をも能動的に覚醒させるだけの力を持った新作『Conscious+Practice』が完成。このアルバムに込めた想いを4人全員に語ってもらった。

誰かを救える曲、救えるライブ、救える存在になっていけたら
TOTALFATの意味がもう1つ新しく生まれるんじゃないか
 
 
――『Conscious+Practice』は、音も楽曲に込められたメッセージも重い手応えのあるアルバムでした。重い=濃い、深いという印象です。会心の一撃ともいえる前作『FAT』以降、どんなふうに今作にたどりつきましたか?
 
Shun「それぞれに感じ方は違うと思うけど、僕にとって『FAT』はその名の通りバンドの名前の一部を取った作品で、自分たちの内面に今まで以上にストレートに向き合ってめちゃくちゃフォーカスして、それを日本語で昇華した作品で。そのアルバムのツアーが終わったとき、自分たちの発展途上なところとか未熟さにプラスの意味で気付くことが出来たんですね。自分たちはパンクバンドなんで、もっと自分自身のエッジのきいた部分とか自分の中にある怒りや悲しみとかももっと曲に込めたい気持ちがあって。『FAT』はとてもハッピーなアルバムだったけど、それだけじゃなくもっと何かを変える力を込めたかったし、聴いた人の中で何かが変わる、覚醒するものを作れたら。そういう気持ちを持って今回の制作に臨みました。そういうアルバムを作りたいというよりは、そういうTOTALFATになりたいし、そういう自分になりたい。バンドは今19年目なんだけど、『FAT』の段階でそれまでのTOTALFATでやるべきことは全部やれたと思うし、その集大成として『FAT』で一度ケリをつけることができた。そこを経て、またバンドをはじめたときの気持ちを思い出したり、ツアーが終わった後にBuntaとアメリカへ行ったり、みんなで石巻へ行ったり。そういうときに話したことや感じたインスピレーションを、エッジのきいた方向で昇華したかった。俺の中で前作と今作で何が違うかと言ったらそこで、重みは増しているしメッセージも重い。それは俺自身が今持っているエッジなんだぜと言いたいですね」
 
Bunta「TOTALFATは2010年にメジャーデビューして、’15年に今のレーベルに変わって再出発してやってきて、いつのまにか無意識のうちにマス(=大衆)に向かっていたというか、たくさんの人に聴いてほしい、いろんな人に楽しんで欲しいという想いが強くなっていたんだと思う。それは悪いことじゃないんですけど、たとえば高校生のときとかバンドを始めたばかりの頃は、そんなことを考えるほどまだ世界が広がっていないですよね。だから10年前とか20代前半の頃のアルバムを聴くと、マスじゃなくもっと自分たちのドメスティックなことを歌っていたり、特定の誰かに向けて歌っているものが多くて。そういう気持ちがどんどんなくなってきていたのかなということに、今回のアルバムを作りながら気付いて。アメリカや石巻に行ったことは、結果的に、マスじゃなくそこにいる1人のためとか、“こいつらのために”というふうにメッセージを伝える相手が明確になった。特に今回Shunの書いている詞はそういう面が強くなったと思ったし、それが聴く人にとっては、重みとして感じられるのかもしれない。“楽しい”という感じとはもしかしたら違うのかもしれませんけど」
 
Shun「最初に言ってくれたみたいに、前作に続いて今作を聴いてくれた人の中には“重みが増した”と感じる人がいるかもしれない。そうやって作品全体を重いととらえてもらえることはすごく嬉しいです。Buntaが言った通り曲を書き始めたときに、“この曲は、誰に向けてこういう気持ちを歌いたい”とか、“こういう人に歌いたい”というのをみんなに話したんです。そうすると“じゃあ自分はその人にどういう音を浴びせよう?”、“どうやって音で攻撃しよう?”みたいに、それぞれがどういう気持ちで向き合ったらいいのかをイメージを持って臨むことが出来て、その結果一番欲しいところへジャストで向かって行けた」
 
Jose「その想いが一貫しているアルバムだと思います。今までだったら、たとえばフロントの3人がデモを出しあって、“1人3曲ずつでまず9曲”みたいに作ることもあってそれだと価値観や考え方が3等分になる。そうやっていろんな方へ向かっていたことが、Buntaが言った誰か1人に向けてというよりマスに向かうものになっていたのかなとか考えたりして。今回はほとんどShunが詞を書いてKubotyが曲を書いてるんですけど、そうなるとシンプルにShunが言ったことが1つの道筋になってきて、“OK、じゃ俺はこういう曲を書いてみよう”みたいにその道に連なっていく感じで。すごくストレートに、1つの想いがこもっているアルバムになったんじゃないかなと思います」
 
――4人全員が曲作りに携われることはTOTALFATの強みでもありますが、今回はKubotyさんが大半の作曲を手掛けられていますね。
 
Kuboty「はい。ただ自分の中では、今までやってきていることとそんなに変わっていなくて。アルバムの方向性がそうなってきたのかなって」
 
Shun「今回の制作中にKubotyが“このアルバムは俺、ギターを弾き狂うわ”って言ったことがあって。その瞬間に“これ、絶対いいアルバムになるわ”って思いましたね」
 
Jose「言ってたね(笑)」
 
Shun「“やべー、スイッチ入れてきた”って(笑)。『FAT』は俺たち自身に向き合った分、全体も重視して“この4人の、このフォーメーションなんだぜ”ってところを打ち出せていたと思う。今回はそこをまずKubotyがギターでオーバーラップするように飛び出して。で、Kubotyが書いてきた曲がまた『Fear of Change』(M-3)とか『Visible』(M-10)とか、ギターがめちゃめちゃ派手でかっこいい曲で。そのモードが他のメンバーにも影響して、じゃあ俺はどう叩くか、俺は何を歌うかもっと突き詰めようって。自然とそうなっていきましたね」
 
――さっきも石巻の話が出ましたが、『Seeds of Awakening』(M-4)は東日本大震災後に誕生した石巻市のスケートパーク『ONEPARK』と、そこでスケートを楽しむ子供達への想いが込められた曲で、ミュージックビデオではTOTALFATが現地へ赴いて演奏するところやスケートを楽しむ子供達の姿や、代表の方の声も聞けました。自分もスケボーが好きで単純にカッコよさへの憧れもありますが、滑っている姿を見ていると自分の中にあるモヤモヤしたものが解放されていくのを感じる。それってライブに行って感じるものと似ているんですね。『Seeds of Awakening』は石巻の子供達へ向けられた曲ですが、聴くことで自分はスケボーを見たときのような解放感を覚える。これまで知らなかったスケートパークについて考えるきっかけももらえた。特定の相手に向けたものが、実は幅広く伝わるものになっているのを感じます。
 

 
Shun「『Seeds of Awakening』は『ONEPARK』とのつながりから生まれて、主宰している秀さん(ONEPARK代表 勝又秀樹さん)のことを書こうと思って。書いたものを持って行った先で秀さんの先生である荻堂盛貴さんに出会って、子供たちに出会って、書き終わる頃には届けたい相手がちょっとずつ増えていった。書き終わってからリリースされる間に西日本豪雨があって、そこで大変な思いをした人にもこの曲が響く瞬間があるかもしれないと思った。パンクバンドの自分たちが今歌うべきことって何だろう?体現していくべきものって何だろう?という想いもあるし、時代や国の背景によって今やるべきことは変わってくると思うんですけど、誰かを救える曲、救えるライブ、救える存在になっていけたら、もしかしたらTOTALFATの意味がもう1つ新しく生まれるんじゃないかなって。『Seeds of Awakening』を作り終えて少しずつ自分たちの中でも消化出来てきて、曲を聴いた人の気持ちを変えられたり、書いたことで自分自身も変えることが出来る。そういうパワーをもった曲を作ることが出来たなって」
 

 
日本語詞で歌うTOTALFATが好きな人には
英語詞のTOTALFATも好きになってもらいたい
“こっちもかっけーだろ?”って(笑)
 
 
――今回は全編ほぼ英語詞ですね。
 
Shun「そうですね。今回は早い段階で英語詞多めでいきたいと話していたし、メンバーからもそういう声があって。ここ数年で海外でライブをやる機会も増えてきて、自分たちのやっている音楽が海を越えられる音楽だという自負もあるし、海を越えた先にこれだけの人がTOTALFATを待ってくれているんだという実感。俺らの音楽が彼らの人生を支えることが出来ているんだという自覚。そういうものが芽生えてきて、そこへリアルタイムで説明なしで聴いた瞬間に伝わるものを作りたかった。そのための英語の歌詞のハマリ具合とか、クオリティに関しても妥協しないで求めて仕上げていきました」
 
――日本のファンもTOTALFATと英語詞のなじみやすさをわかっているリスナーは多いですよね。
 
Bunta「そもそも結成から’12年までの12年間はずっと英語しかやってなかったんで、昔から聴いている人はそっちのほうがなじみがあるでしょうね。今は日本語で歌っているメロコアパンクもいっぱいいるけど、俺らが10代、20代前半の頃は、パンクは英語詞というイメージがあって。バンドによっては、今でも日本語では歌わないというこだわりを持ってやっている人達もいると思うんですけど、俺らの場合はもっとわかりやすくいろんな人に伝えたいという想いがあって日本語を取り入れていって。けど、しっくりくるという意味では英語のほうが強いかな(笑)」
 
Shun「日本語詞のTOTALFATが好きな人には、英語詞のTOTALFATも好きになってもらいたい。“こっちもかっけーだろ?”って(笑)。実際、ライブではどっちもやっているわけですし」
 
――さっきも話に出ましたが『Visible』(M-10)の迫力は凄いですね。息つく間も与えないようなギターと、畳みかけるような歌の応酬。訳詞を読むとテロを入り口にかなり率直に意思表示をされています。これほど濃いものを叩きつけても伝わるという聴き手への信頼みたいなものを感じますし、そういう想いも含めて弾き狂う感じだったんでしょうか。
 
Kuboty「その曲に関しては、とにかく好き勝手ぶつけてやろうと思って。僕の場合、歌詞のことを考える前の段階で曲を先に仕上げるんですけど、この曲はこのアルバムの制作期間の中で自分の中でもいちばんメロディとオケの感じも気に入ったものが出来て。しかもテンポも結構速くて、ここに今の自分が出せるものを全部乗せようと思ったのがこの曲です」
 

 
――次の曲『Better Yet, Better Off』(M-11)もKubotyさんが作曲されたものですが、この2曲のギャップがまた凄くて。
 
Kuboty「そうですね。同じぐらいのタイミングに作った曲なんですけど、一番メロウな曲(『Better Yet, Better Off』)と一番激しい曲がちょうど並んだのでこれはいい具合だなって」
 
――『Better Yet, Better Off』はレゲエの心地よさもあって。ただ、訳詞を読んでぶっ飛びました。まさかこういうストーリーを歌われているとは。
 
Shun「しかもまさかのBuntaがその詞を書いてるっていう(笑)」
 
Bunta「(笑)そう。英語だから一聴しただけはわからないと思うけど、内容をよく見てみると実は尖ってるっていう。こういうのって洋楽の曲では結構多いんじゃないかな。コンセプトは特に決めずに書いていったんだけど、面白いかなって」
 
Shun「俺じゃ書けない」
 
Jose「同じく」
 
Bunta「作詞のクレジットに載ってるImani Jessica Dawsonという黒人の女性シンガーが歌詞のサポートをしてくれたんですけど、女の子目線で書いても面白いかもって提案して一緒に作っていった感じで。いろんな視点があった方が面白いと思うし、耳で聴くのと歌詞を目で読むのとで印象がガラッと変わるのは英語ならではかなって。日本にしかないことわざがあるように、英語圏でも一部の人しか使わないようなスラングが入っていたりもするので、歌詞を目で追いながら聴いてもらっても楽しめるんじゃないかな。ただ大変だったのは和訳で、“その表現に合う日本語がないわ”っていうところもあって、英語の表現とすり合わせながら作っていきました」
 
――翻訳文学を読んでいるようでした。歌詞のストーリーがアメリカの短編小説にあるような世界で。
 
Bunta「ありがとうございます。それを歌うJoseが実は一番大変だったんじゃないかな(笑)」
 
Jose「(笑) うん。どういう気持ちで歌うかというところでは結構、苦労しましたね。歌詞に関しては“ここの意味がわかりにくいんだけど”と聞くと(Imaniが)全部英語で説明してくれて、レコーディングのときにも彼女が来てくれて“もっとこうしてみたら良いんじゃない?”とかアドバイスもくれて。書いてもらった歌詞をハイって渡されただけだったらなかなか歌えなかったんじゃないかな。黒人のリズム感で歌詞をはめてくれていて、それがすごく難しいなって」
 
――Joseさんは自分でも歌詞を書くから、自分が書くものとはまったく違う感触もあったのでは。
 
Jose「そうなんですよね。今回、他にも英語のサポートをしてくれた友人が何人かいるんですけど、それぞれに特徴があって。たとえば、“こういうことを歌いたいんだ”って文章にして送ると、“それはこうだよ”って返ってきた表現や単語が全員違っていたりして。言葉のはめ方やリズムのとり方も全然違ってくるんだけど、それがすごく面白かったですね」
 
――Joseさんが詞を書かれた『Your Goddamn Song』(M-5)は痛快な曲で、タイトルからすでにインパクトがありますね。
 
Jose「それも手伝ってくれた友達とタイトルをどうしようって考えていて、“goddamn=ガッデム”をタイトルに付けるのはちょっとダサいらしいんですよ。完全にバカにされているわけじゃないけど、“コイツはまだまだ考えが若いんだな”という印象を与える感じのダサさ、青さがあるよと言われて。ラッパーの人たちやメタルバンドがその言葉を使う場合とはまた違って、パンクバンドが使うとちょっとふざけてるように思われる表現らしくて “ちょっとふざけてた頃のBLINK182みたいになっちゃうけど大丈夫?”って聞かれて。けどそれが俺ららしくていいなって。この堅いアルバムの中に1曲そういうのが入っていることで、“こいつら本気だけどちょっとバカなところもあるんじゃない?”みたいなのも伝わって、ポップな感じが出せているんじゃないかなって」
 
――歌詞を書く上でも、そうやってちょっと気が抜ける部分はありました?
 
Jose「どうだろう?自分に対して、“お前もっと行けるだろ”って歌いたかったんだけど、その“もっと”の言い方にはどんなのがあるんだろうって相談したら、“ガッデム+○○”と付けるとイケてるよ!って。ガッデムって表現はこれまで歌詞で使ったことなかったなって」
 
Shun「俺が思うのは、Joseが作る曲って歌詞もすごく大事で、実際この歌詞が仕上がるまでにもみんなに聴かせて、“もっと行けるんじゃね?”ってなって、また何回も書き直したりしていて。それも分かった上でJoseの曲の持ち味はバイブレーションというか、他のバンドには真似できない突き抜ける高さ――それは音程とかじゃなくて、人の持つパワーの突き抜けた高さだと思ってるんですね。彼は、『PARTY PARTY』とか『夏のトカゲ』とかTOTALFAT史に残るハイバイブスの曲を叩きつけるセンターで、『Your Goddamn Song』にはそのパワーがあるなって。リリース前にフェスで披露したときも、曲を知らないはずなのにこれをやったらみんながハネて跳んでるんですよ。やっぱJoseのバイブスはすげぇなぁと思いましたね」

 
 
今回のアルバムをきっかけに楽器を始めてくれる子供がいたら超最高
 
 
――『Sneaker Gang Blues』(M-9)もパワーのある曲ですね。しかもめちゃめちゃ速い(笑)。
 
Shun「最高ですよね。ブルースの塊ですから(笑)。ただし曲の作り方は悲惨過ぎて、Kubotyが歌以外は全部入っているオケを作ってきて、彼に呼ばれてマイク渡されて、“今から音流すから、歌って”って。“え?曲知らないんだけど”って言ってる間に“はい、録りまーす”ってピッと押したらドカドカッて曲が始まって。初めて聴いたその場で俺が歌を吐くっていう。キメの位置とか展開とか何も知らない状態ですよ?(笑)。それを2回やって、それがたたき台になりました」
 
Kuboty「最初のインスピレーションでパッと出たものが良かったりするし、最短で行くならその方法がいいなって。遊びの要素もあるけど、絶対に良いクオリティのものが出来ると確信を持った上でやりました」
 
――この上ない瞬発力と初期衝動というんでしょうか。最後に“ツラい”って声が聴こえてきて“わかる!”と思いました。あまりの速さに聴いているこちらも息が上がりそうなリアルさがあって(笑)。
 
Jose「歌い終わった後にゼェゼェして思わずポロリと(笑)。それも録られていて“採用です!”って。このままだとちょっとツアーが心配ですね」
 
Shun「何か、そういうノリやアイディアがいいと思える作品というか、リアルであればパッと出てきたものでいいなと思えたんですね。Kubotyは俺がハードコアを聴いて育っていることを分かっているし、俺のハードコアに対する知識やフィーリングを信頼してくれているんだなって。同じように俺もKubotyのギターを信頼してるし、BuntaもJoseもそう。『Seeds of Awakening』は石巻に行って出来た。『Sneaker Gang Blues』は、その場で思ったこと、感じたこと、怒っていることを吐き出した。2つとも一緒なんですよね。この4人が肌で触れているものに対して音とビートで言葉を投げかけてゆく。それが全曲で出来て、結果すごいリアリティの塊みたいなアルバムになったなって」
 
――『Phoenix』(M-12)は聴く人を強くしてくれる力があるように思います。自分の中にある怒りや疑問、負けたくないと思う気持ちがただの愚痴に終わるんじゃなく、そういうものもパワーに代えていこうぜと言われているように感じて。
 

 
Shun「俺らはポジティブなんですよね。そこだけは絶対に変わらない。『Visible』も問題提起しているともいえるんだけど、あれはライブでインドネシアのジャカルタに行ったときにテロがあって、教会で13人が亡くなったんですね。その日の夜にライブがあったんだけど、ムスリムの女の子たちと話が出来て彼女たちに“テロが怖くないのか?”って聞いたんです。そしたら“私たちは怖がらない”と言ってて。それは自分たちの信仰に対する意識も含めた強さでもあると思うし、その人自身の強さ、ムスリムとして持っているアイデンティティや誇りも含めたものなんだと思う。そういうことをイスラム教徒の人達と初めてフェイストゥフェイスで話せて、それが『Visible』につながっていった。曲を書くきっかけになったテロ自体はとてもネガティブなことだけど、そのネガティブなことが起きたことによって、自分は誰に会いに行くか。誰とどういうことを話すか。何を感じてそれを持って帰って、次に会うときまでに自分がどういうことをしようか。どう生きようか。そう考えることはすごくポジティブだと思うんですね」
 
――なるほど。
 
Shun「震災が起きました。石巻にスケートパークが出来ました。でも今、いろいろな事情で閉鎖せざるを得ない状況になってる。それはネガティブなことだけど俺たちが石巻へ会いに行ったら、“こんなこと出来るの?すごい!”と思う子達がたくさんいて、本当に“オリンピックに出られるんじゃない?”ってレベル。だったらこの子達がもっと“頑張ろう”と思える、それこそ今は閉じちゃってるスケートパークのドアが開いちゃうかもしれないぐらいの曲を書きたい。それってポジティブなことですよね。そうやってマイナスをプラスに変えることがしたい。ただマイナスの感情をぶら下げて帰るんじゃなく、俺ら自身が能動的に動いて、行ってひっくり返して、いろんな人に目を覚ましてもらって自分も目を覚ます。俺らはツアーを回っていてまた絶対そこへ戻ってくるし、そのときに“来たよ。お前どうだった?俺はさ……”ってやりとりするような、そのサイクル。そういう生き方になってきているし、その覚醒と日々の繰り返し。それこそが『Conscious + Practice』だなって」
 
――11月からアルバムのツアーが始まりますが、ステージを重ねることでこのアルバムの曲に改めて命が吹き込まれるのをリスナーの1人として体感したいです。最後に、ツアーを楽しみにしている読者にメッセージをお願いします。
 
Bunta「今回は昔の気持ちに立ち返ったアルバムを作れて、ツアーやライブも次のステップに入ったTOTALFATを表現出来ると思っていて。18年もバンドをやっているけど、中には飽きてしまったりもしかしたら成長しなくなるような人もいるのかもしれないけど、俺たちは周りの支えもあって確実にひとつひとつ成長しながら上を見ながら続けられているから、今現在のTOTALFATを観に来てほしい。アルバムを聴いて、ハードなライブも最後まで全力で楽しめるように日頃から鍛えてライブにいらしてください」
 
Shun「ちゃんとPracticeしてね(笑)」
 
Bunta「そう(笑)」
 
Shun「バンドも力が入っているし曲も聴いてライブに来てくれたら嬉しいけど、後は俺らに任せて欲しいんですね。ガンガン飛ばして曲でもMCでもあらゆるところを目覚めさせていきたいし、お互いに新しいものに気付けたりして、また次に会うのが楽しみになる。そんなポジティブなツアーにしたいのでぜひ遊びに来てもらいたいですね」
 
Jose「今回は9枚目のアルバムなんですけど、9枚とも色が違ってどんどん変わっていってるものを出せて、今こういうカッコいいパンクをやりたいってところに進化出来ている。ワンマンは新作以外にもいろいろな曲をやるし、これまでの僕らを今の僕らの状態で見せることが出来る。今回のツアーはもちろん来てもらえたら嬉しいけど、いつでもどこでもライブをやっている場所に来てもらえたら、カッコよくて楽しいものをお見せ出来ます!」
 
Kuboty「今回のアルバムは、これまでのTOTALFATの作品の中で一番、自分が思うエレキギターというものを表現できたと思うので、これをきっかけに楽器を始めてくれる子供がいたら超最高だなって。かつての自分がそうだったし、そういう衝動を自分に与えてくれたパンクとかメタルとか、そういうものに従順にアレンジしたり表現していった曲が多いので、そういう部分がみんなに伝わったらいいなと思います」
 
――ありがとうございます。4月まで続くツアーと、1月に東名阪で開催される自主企画『PUNISHER’S NIGHT 2019』も楽しみにしています。
 
Shun「年内はワンマンツアーで、その後2月から対バンツアーなんですけど、先にワンマンで回るのが結構重要で。ワンマンで11本回ると確実に仕上がっちゃうから、その一番仕上がった状態で一緒にやりたいバンドと対バンツアーを回る。そうなったらより面白くなるんじゃないかな。ワンマンはお客さんとの対バンみたいなものだし、俺らも楽しみにしています!」

text by 梶原有紀子



(2018年11月13日更新)


Check

Movie Comment

Release

『Conscious+Practice』
発売中

【初回限定生産】
(CD+ビックTシャツ(XLサイズ))
5000円(税抜)
RX-148

【通常盤】(CD)
2500円(税抜)
RX-149

《収録曲》
01. Title Holder
02. Broken Bones
03. Fear of Change
04. Seeds of Awakening
05. Your Goddamn Song
06. Hello Daphnia!!
07. Drop Like Water
08. Intermission
09. Sneaker Gang Blues
10. Visible
11. Better Yet, Better Off
12. Phoenix
13. Grown Kids feat. SUGA(dustbox), 笠原健太郎(Northern19)

Profile

トータルファット…Jose(vo&g)、Shun(vo&b)、Kuboty (g)、Bunta(ds)。'00年結成、ライブを開始。'03年に1stミニアルバム『End of Introduction』をインディーズレーベルよりリリース。'07年5月、グッド・シャーロットの来日公演のサポートアクトを務めたのをはじめ、マキシマム ザ ホルモンやELLEGARDEN、KEMURIのツアーに参加。'08年4月に『PUNKSPRING 2008』初出演。同年、バンドを組むきっかけとなったバンドであるオフスプリングのジャパンツアーに参加し、日本人最多の7公演をサポート。'09年には初のアメリカ西海岸ツアーを敢行。翌'10年6月にアルバム『OVER DRIVE』でメジャーデビュー。'13年には初のベストアルバム『THE BEST FAT COLLECTION』をリリース。インドネシアのジャカルタで開催されたフェスに出演し、初ライブにもかかわらず大トリを務め満場の観客を魅了。'15年7月、レーベルを移籍し7thアルバム『COME TOGETHER,SING WITH US』リリース。10月に発売したシングル『宴の合図』のカップリングで秦 基博の『ひまわりの約束』をカバーし話題を呼ぶ。'16年4月、『PUNKSPRING 2016』で日本人初のヘッドライナーを務め、それを記念して会場限定シングル『ONE FOR THE DREAMS』4000枚無料配布。'17年4月、約2年ぶりにフルアルバム『FAT』リリース。'18年1月、毎年1月に開催される自主企画『PUNISHER`S NIGHT』のゲストであるdustboxのSUGA、Northern19の笠原健太郎を迎えたシングル『Grown Kids feat. SUGA (dustbox),笠原健太郎(Northern19)』をリリース。同曲と4月に配信された『Phoenix』、7月に配信された『Seeds of Awakening』を含む待望のニューアルバム『Conscious+Practice』が10月3日発売。同作を携えたツアー『Conscious+Practice Tour 2018』が11月10日(土)高松を皮切りにスタート。関西公演は11月30日(金)BIGCAT、'19年2月28日(木)神戸KINGSX、3月2日(土)京都MUSE、3月3日(日)奈良NEVERLAND。

TOTALFAT オフィシャルサイト
http://totalfat.net/


Live

「Conscious+Practice Tour 2018」

【香川公演】
▼11月10日(土)高松DIME
【福岡公演】
▼11月11日(日)福岡DRUM Be-1
【宮城公演】
▼11月16日(金)仙台CLUB JUNK BOX
【北海道公演】
▼11月18日(日)BESSIE HALL
【石川公演】
▼11月23日(金・祝)金沢vanvanV4
【新潟公演】
▼11月24日(土)GOLDEN PIGS RED STAGE

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード:127-819
▼11月30日(金) 19:00
BIGCAT
オールスタンディング-3500円(整理番号付、ドリンク代別途要)
※未就学児童は入場不可。小学生以上は有料。
※販売期間中は1人4枚まで。
[問]GREENS■06-6882-1224

【愛知公演】
▼12月1日(土)ボトムライン
【広島公演】
▼12月7日(金)広島Cave-Be
【岡山公演】
▼12月8日(土)岡山ペパーランド
【東京公演】
▼12月15日(土)TSUTAYA O-EAST

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『PUNISHER’S NIGHT 2019』

【東京公演】
▼2019年01月23日(水)渋谷CLUB QUATTRO
【愛知公演】
▼2019年01月26日(土)名古屋CLUB QUATTRO
【大阪公演】
▼2019年01月27日(日)梅田CLUB QUATTRO

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「Conscious+Practice リリース対バンツアー『“Evolve+Infect” TOUR 2019』」

【千葉公演】
▼2019年2月1日(金)千葉LOOK
【茨城公演】
▼2019年2月3日(日)水戸ライトハウス
【神奈川公演】
▼2019年2月6日(水)F.A.D YOKOHAMA
【栃木公演】
▼2019年2月9日(土)HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
【埼玉公演】
▼2019年2月10日(日)HEAVEN’S ROCK Kumagaya VJ-1
【三重公演】
▼2019年2月16日(土)三重CLUB ROOTS
【愛知公演】
▼2019年2月17日(日)club KNOT
【宮城公演】
▼2019年2月21日(木)BLUE RESISTANCE
【岩手公演】
▼2019年2月23日(土)the five morioka
【秋田公演】
▼2019年2月24日(日)Club SWINDLE
【兵庫公演】
▼2019年2月28日(木)KINGSX
【京都公演】
▼2019年3月2日(土)KYOTO MUSE
【奈良公演】
▼2019年3月3日(日)NEVERLAND
【島根公演】
▼2019年3月9日(土)APOLLO
【山口公演】
▼2019年3月10日(日)周南LIVE rise
【山梨公演】
▼2019年3月16日(土)KAZOO HALL
【静岡公演】
▼2019年3月17日(日)静岡UMBER
【福井公演】
▼2019年3月23日(土)福井CHOP
【長野公演】
▼2019年3月24日(日)松本ALECX
【長崎公演】
▼2019年3月30日(土)DRUM Be-7
【熊本公演】
▼2019年3月31日(日)熊本B.9 V2

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