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挑戦の先に確立した独自のスタイル。
7枚目のアルバム『Fantastic every single day』リリース
FRONTIER BACKYARDインタビュー

ギターやベースのリフやフレーズが特徴でもあるファンク・ミュージック。それを、その楽器メンバーがいない現体制であえて作り上げ、自由度の高い楽曲を生み出すという方法を確立したFRONTIER BACKYARD(以下FBY)。2016 年突如ギターが脱退し、ボーカルとドラムの2人になるという窮地に陥ったが、ギターレスを逆に活かし、サポートメンバーとともに彼らにしか成し得ない楽曲制作に挑戦、それを昨年『THE GARDEN』というアルバムで見事に昇華させた。それから1年。10月10日に7thアルバム『Fantastic every single day』をリリースした。今作ではフレンズのおかもとえみとNONA REEVESの西寺郷太をゲストボーカルに迎え、前作よりもさらにファンキーでソウルフル、そして前向きなメッセージを込めた1枚となっている。TGMX(vo)に今作の制作の裏側を聞いた。

 もう周りのメンバーがいなけりゃ成り立たないバンドなので
 
 
――『Fantastic every single day』聴かせていただきまして、 歌詞やメロディーの良さはもちろんですが、なんだか人生の指針を示されているような気持ちになりました。
 
「ありがとうございます」
 
――35曲のデモの中から12曲を選ばれたということですが、選曲に際してなにかテーマはあったんですか?
 
「基本的には曲貯金箱というのがあって、僕ら自分たちで作った曲はずっと持って昔から過ごしてきてて、今このタイミングにほしい曲を貯金箱から探して当てがう、というやり方が多くて。過去に作ってきて“出すのは今じゃないな”、“今のバンドの指針と違うからやめとこう”みたいな曲もあって、貯金してきて。で、前作はギターがいなくなって作った、ある種挑戦的なアルバムだったんですよ。“それがダメだったらもうダメだね”みたいな話をしてたんですけど、案外好評で。“よく突き抜けたな~”みたいなことを同僚のミュージシャンに言ってもらったので、“これ、良いんだ!?”と思って。今作は前作の体で、よりもっとブラッシュアップしたものを作るというおおまかなアイデアがあったんで、その貯金箱から見合った曲を選びました。それプラス、たまたま調子が良くて、僕の貯金が30曲くらいあったんですよ。なのでスタートから良い感じはしてたんですよね。曲ができるのは良いことだなと思ってて。自分たちの目標とか、やりたい音楽が決まってないと曲はできないと思うので。僕らはインディーだから年に何枚出さなきゃいけないという契約もないので、“できたら出すかな~”ぐらいのスタイルでずっとやってきてたんですけど、今回はもうガンガンに曲ができてたんで、前作から1年ですけど、“すぐ出しちゃおう!”みたいな感じで完成しました」
 
――今作の中では『TOO YOUNG TOO STOP』(M-3)が結構前からあった曲だと。
 
「あ、そうですそうです」
 
――これも“今入れるタイミングだ”となったわけですか。
 
「そうです。ギターが抜けて今はファンク寄りになったけど、パンク路線もやっていたので。もちろんアレンジも加えるし曲も詰めていくんですけど、そういう意味では昔からあった曲です。それぞれの曲に“今じゃない?、今だ!”っていう話がありますね」
 
――なるほど。定期的に曲貯金箱は見直されていると。
 
「僕とドラムのTDCくんお互いに、見せてくれたり聴かせてくれたものに関しては、どういう曲を持ってるかはなんとなくわかってます。なので、“TDCくんのああいう曲あったじゃん”、“TGMXのゆるいソウルみたいなやつなかったっけ?”“ああ、あるある”みたいな」
 
――お互いに。
 
「曲の口座を一緒にしてます(笑)」
 
――特設サイトのレコーディング日記がすごく面白かったです。終盤まで仮タイトルでレコーディングが進んでいってるのに驚きました。
 
「曲って、作ってる間の方が長いじゃないですか。歌詞ができるのは最後の工程なので、それまで呼び名が必要で。発売した今でもまだ仮タイトルと本タイトル間違ったりするんですけど(笑)」
 
――あと個人的にTA-1(KONCOS /LEARNERS)さんや松田“CHABE”岳二(LEARNERS/NEIL AND IRAIZA/ CUBISMO GRAFICO FIVE)さんの機材を使うとライブ感が出るというくだりが興味深くて。
 
「宅録に関してはPCの中にある音源があるんですよ。それである程度は形をとって曲を作って、TDCくんやレーベルと共有してるんですけど、最終的には本人の楽器を借りて音を差し替えるみたいな感じなんです。直接CHABEくんやTA-1に弾いてもらってはないんですけど、MIDIという信号を送って、それを介して楽曲を通すと、そういう音がするんですよ」
 
――へえー。
 
「仮スケッチみたいなものなんですよ。それを本スケッチに変えるみたいな。やっぱり本人たちが使ってる楽器を通して音を出すと、CHABEくんやTA-1が弾いてるような感じになるんですよね」
 
――ご本人が弾いてるわけではなくても。
 
「本人に来て弾いてもらえれば1番なんですけど、お手間はかけたくないというのはあって、音だけ差し替えさせていただきますと楽器だけ借りて。よくライブとかに来てくださってる方も、そういうふうに感じると思います。“あ、CHABEくんの得意なあの音だ~”って。これも僕たちが何年もかけて生み出したやり方なんですよ」
 
――そうなんですか。
 
「そうそう。どうしたら皆で一緒にやってる感じが出るんだろうと考えて。楽器借りて弾いてもらわないでも、信号変えて音出せばいいんだみたいな」
 
――へえ~!
 
「普通のベース、ドラム、ギターとかのバンドではあまりない悩みというか。僕らドラムとボーカルしかいないので、どうやってライブ感出すかをすーごい考えてきてたので」
 
――発想がすごいですね。曲単位のことをお聞きすると、『Paper plane』(M-5)はコイチさんのことを歌った歌だとか。
 
「そうそう。現場手伝ってくれてるSawagiのコイチ。関西出身のバンドで、コイチはこの夏に神戸の実家に戻られたんですよ。なので“FBYできなくなっちゃうのかな”みたいな話をしてたら、“いやむしろやらせてくださいと言ってくれて。 コイチにはアレンジャーとして助けてもらった部分も非常にあって、ギターが抜けてからの危機を救ってくれた1人でもあるので、“帰っちゃうの寂しいな〜”って言ってたんですけど、“Paper plane(=紙飛行機)に乗っかってでもいいから、また軽くぷらっとおいでよ”みたいなことを歌いたかったんです。あんまり重めの“さよなら”みたいな感じにしたくないなと。Sawagiの本人たちもそんな重めに捉えてないから」
 
――TGMXさんは周りの方へのリスペクトがすごいなと思います。
 
「いや~、僕らもう周りのメンバーがいなけりゃ成り立たないバンドなんで。単純にパートがドラムだけじゃバンドできないから。助けてくれる人たちがいるので活動できてるんです。今回、歌詞カードにサポートメンバーの座談会が載っているんですけど、サポートメンバーと言いながらメンバー扱いというか。FBYに関しては、皆さんも多分そういう感じで臨んでくれてると思うんで。だからサポート扱いをしないと逆に決めてます。ステージに上がった人はみな平等」
 
――なるほど。
 
「“自分自身がカッコ良く見せるのも自分次第だよ”というのも言って。サポートがサポート顔でやってたら絶対良くない。バンドにもマイナスだし、その本人もカッコ良く見えないと思うから、“ステージ出たらもう、カッコつけましょう、皆でやりましょう”、みたいな感じでやってます」
 
 
 
嫌な時期が続いてても“まあ大丈夫でしょ”みたいな感じで思ってはいます
 
 
――以前のぴあ関西版WEBのインタビュータイトルが、“やるしかない、振り向かないって決めた”という記事でした。
 
「過去を思い出して“あのシーンは良かったな”とか、“あの頃は良かった”とか、たくさんあるんですけど、まだ余生もいっぱいあるので、あまり振り向かないようにしてます。我々人間はもっとこれより良い思い出を作っていかなきゃいけないじゃないですか。振り向くと進めなくなっちゃったりすると思うので」
 
――振り返らないと決めた結果の、前作『THE GARDEN』と今作ですか?
 
「はい。だからこの2作は、僕らの中で大きな意味のあるアルバムなんですよね」
 
――歌詞の内容が“新しい環境を見よう”とか、“悲しい気持ちを乗り越えて”だったり、前向きなものが多いですね。あとレイ・マストロジョバンニさんの歌詞解説で、田上さんの哲学が“良いことと悪いことのバランスが同じだ”とおっしゃられていたのが印象的で。
 
「誰しも幸せだと思える時間と不幸せが一緒なんだろうなと。結果平均的になっていくというか。良いことがあれば必ず悪いこともあるし、落ちたりするし、悪いことばっか続いてるけど、だんだん良いことも起きるみたいなイメージかな。ずーっと調子良い人なんていないと思うんで。ずっと良いことあったけど大病患っちゃったっていうのもあるかもしれないし、大病患ってても、ものすごいラッキーが転がってきたみたいな人もいると思いますし。だからあんまり自分はダメだとか悲しく思うのは違うかなと思いますね。皆変わんないよっていう」
 
――それはずっと持ってらっしゃる考え方ですか?
 
「基本的な考え方は変わってないんで、そうですね。だから嫌な時期が続いてても“まあ大丈夫でしょ”みたいな感じで思ってはいます。そういう意味では楽観的に“これどうせ続かないよ”みたいな感じでは思ってて。ただ良い時にも調子こかないようにはしてますね。“またどうせ嫌なことも起きるだろうなあ”みたいな」
 
――それは良い意味で、流されていくということですか。
 
「そうです。若い時はそれに一喜一憂して疲れちゃったんで、良いことあってもまた悪いことも起きるだろうなと思って、あんま喜ばないようにしようと(笑)。だからポジティブというか、ネガティブでもあるのかもしれないですけど(笑)。ただ、悪いことばっかも続かないってことで」
 
――なるほど。
 
「ギターが抜けた時はほんとにダメだと思ってたし、周りからも“もうダメじゃねえか?”みたいな噂も聞こえてきたから。3人組の1人が抜けたらそらダメだって思うよなって客観的に見ても思ったし、でも続けてたらまたいいことあんじゃねえかなってドラムのTDCくんと話して、今ちょっとずつ良くなってきてるから。もうRUSH BALLなんて出れないと思ってたけど、今年誘ってもらえたので、“ああ、良いことあったー!”と思って。でもまた来年も誘われると思うなよって自分らに言い聞かせてます。調子こかないのが大事(笑)」
 
――これだけのキャリアを積んでらっしゃる方が、その気持ちでずっと活動されてるのが素晴らしいです。
 
「逆に年とってきたから冷静に見れるようになったかもしれないですね」
 
――1曲目の『DIS SONG』の最後の“自然の流れを僕はしってるから素直にいるよ 憎むべきは君ではない、君の言動だ”というのは、因果応報ということですか?
 
「そうですね。深い意味はそんなにないんですけど、まあ“DIS SONG” というくらいなんで、僕にいくつか嫌なことが起きたんですよ。2曲目の『SO FAIR feat. 西寺郷太(NONA REEVES)』とつながるんですけど、結局良いことも悪いこともあるから、知らねえと思ってたんですよね。その事件に関してはもういいやと思ったし。ある人のことを嫌いになるというよりかは、こいつは好きなんだけど、馬鹿な部分が悪いんだな〜と思えばいいなと思って」
 
――ああ、なるほど。
 
「その人を全部否定しちゃうとね、今まで仲良かった人間を否定しちゃうということだから。これはほんと言えないけど、ある人に向けて作った曲なんで。本人も気づかないと思いますけど。DIS SONGと言ってますけど、自分への戒めです。自分もそうやって人に思われないようにしようという」
 
――“大切なのは優しさ・恩・感謝の気持ち”という言葉にハッとします。
 
「いや~でも世の中はどういうジャンルだろうとそれがすごい重要だと思うので。調子いい時はあの人にお世話になったな、とか忘れちゃう。特に僕も含め、バンドマンなんてお馬鹿でお調子者が多いから。どの職業でも、学校でもそうだと思うんですけど。1番そういうのが大切なのにな」
 
――それを冷静に歌詞に落とし込んで。
 
「そうですね。でもこれ、初めてぐらいに田上くん怒ってんですよ」
 
――え!
 
「怒ってるんです(笑)」
 
――曲にするぐらいには怒ってるんですね!?
 
「はははは(笑)」
 
――でも全体的には前向きですよね。アルバムタイトルも。
 
「普通、40いくつの人間が“fantastic”なんて使いますか?と思って。でもそういう方が夢があるし、僕らは極力、ハッピーな音を表現したいので。ライブ中にしても音源にしても、聴いて元気が出る存在になりたいので、メッセージはポジティブにしたいなと思ってますね」
 
――まさに。先日の服部緑地野外音楽堂で行われた『SMOOTH LIKE GREENSPIA』の時も、すごく多幸感のあるライブで、作品からもライブからもハッピーさが溢れています。前作で大きく挑戦をされて、今作ではそれがさらに固まったイメージがありますが、実際作っていく中で、気持ちの面ではどういうことを思っていましたか?
 
「うーん、なんだろう。歌詞の面ではポジティブなことを言いたいというのと、編成が変わってバンドの窮地から立ち直って、自らも再生してるよっていう姿を見せるのが何よりもポジティブに思ってもらえるのかなと。あとサポートメンバーも入れてアー写を撮ったんですけど、ほんと感謝してるし、自分たちだけではないバンドだとすごく思ってるので、ポジティブなことしか考えてないですね。性格はネガティブなところもたくさんあるんですけど、音楽活動に関してはなるたけ明るく考えてた方がいいかなと思って」
 


 
今良いスタイルが確立できたけど
これに甘んじないようにずっと挑戦していきたい
 
 
――今回ゲストボーカルにえみそんさんと西寺郷太さんを迎えておられます。えみそんさんは野音でも出られてましたね。
 
「可愛いし、ちっちゃくて妖精のようですけど、もう“男の中の男だ”ぐらい、レコーディングの工程もパンチあって。“私ちょっと一発でとりたいんですけどいいですか”とかって。そしたらほんとにほぼCDになったのも、1回歌ってちょっとだけ歌い直した部分があるくらいで」
 
――そうなんですか、すごい。
 
「もちろんそれまで声出ししたりはしてましたけど、“今から録ります”って言ってからは、ほんとにほぼ一発でしたね。センスもあるし、一発で録るって決めてる自分のメンタリティがすごいカッコ良いなと思って。“一発で録っていいですか”っていうのは、自分を課してハードルを上げてるのかもしれない。わかんないですけど。若いのにそういうところが素晴らしいなと。歌ももちろん上手ですし、さらにミュージシャンとして好きになりましたね」
 
――カッコ良いですね。
 
「僕なんて“もう1回歌わせてください”とか何回も言ってるのに(笑)。歌はフレンズもほぼ一発でとるって決めてるみたいです。そのミュージシャンシップたるや、すごいなと思って」
 
――MVの撮影はどうでしたか?
 
「もちろん一緒にやらせてもらって。監督さんのオーダーをそのままやってましたね。やっぱり“こういう動きしてください”みたいなのも、入り込むのが上手な方で。僕らは恥ずかしくて全然入り込めないタイプだから。真面目にはできるんですよ。真面目な顔してますけど、別に入り込んでるわけじゃなくて。彼女の場合は“はい、撮りまーす!”って言った時の集中力がすごい。女優になれる人なんだなと思って」
 
――パッと歌ってパッと帰っていかれたんですよね。
 
「そうです。レコーディングも1時間ぐらいで。本人言わないけど、すっげえ練習してくれてたかもしんない。だとしたらこれまた男だなっていう(笑)。英語の歌詞で歌うの初めてだったらしいので、すごく英語の発音は気にしてましたね」
 
――それで一発というのがすごいですね。
 
「そうです、だから多分練習してくれたんだと思いますね」
 
――野音のライブの時“get back!”で顔を見合わせて歌っておられたのが良かったです。
 
「ほんとですか。はたから見たら若い女の子つかまえてんだろうなと思われてんだろうなと」
 
――そんなことないですよ(笑)。ちなみに歌詞は?
 
「歌詞は僕が書いてるんですけど、えみそんに歌ってもらうと決めてから書いたので、英詞ですけどえみそんが歌っても恥ずかしくない方がいいかなと思って」
 
――都会感がありますね。
 
「東京も大阪もそうですけど、都会で野心を持っている人がたくさんいるじゃないですか。“私はこうなりたい”とか。そういう人がもがき苦しんでる感じ、“逃げ出したいけど、やっぱり私はこれをやりたい”みたいな人に、“頑張れよ”っていうメッセージを送りたくて。いろんな職業の人に向かって歌っています。そういう人がね、都会にはいっぱいいるから」
 
――そして先ほどお話にも出ましたが、郷太さんの『SO FAIR』は“良いことと悪いことは同じ”ということが込められているんですね。
 
「そうですね、“so fair= 平等ですよ”っていうこと。なんかオシャレにカッコつけてたり、言葉で自分を守ってる人でも、Xの放物線を描けば変わんねえじゃねえかっていう。Xの放物線っていうのは実は立ちションのことなんですけど(笑)」
 
――(笑)。
 
「おしっこ一緒にするとクロスしてXになるじゃないですか。どんなに偉い人でも一緒に立ちションしたら同じだよっていうイメージです(笑)」
 
――よくあるシチュエーションではない、ですよね?
 
「ないと思います(笑)」
 
――郷太さんと歌ってみていかがでしたか?
 
「やっぱ強いボーカリストなので、僕も気合を入れて歌わないと負けちゃうから、歌合戦みたいな感じですよね。俺はこう歌って、じゃあ俺はこう歌うみたいなのをやってみたくて。同世代の男性のボーカリストは郷太がいいなと思っていたので。僕らのサウンドもソウルとかファンクやってて、NONA REEVESに近いところも出てきたので、一緒に絡みたいとすごく思っていたので、良い組み合わせができたかなと。郷太はプロデューサーもするぐらいの人だけど、“今回歌手として参加しますね。どういうふうに歌ったらいいか指示ください”と言われたので、結構事細かに“こう歌ってくんない?" って指示させてもらいました」
 
――TGMXさんの中で12曲中、核となる曲はありますか?
 
「曲自体はどれもイーブンだと思ってるんですけど、ゲスト参加してもらった2曲は特別ですし、好きか嫌いかでいうと、僕は『last soul 』(M-7) という曲が気に入ってて。ものすごいメロウな曲なんですけど、レーベルの方は“その曲入れない方が……”みたいな感じだったんですよ。僕とTDCくんだけが、これはどうしても“今だ”って思ってたので、ゴリ押しで収録したという感じです。レーベルの人間はプラスの意味で言ってくれてるんだと思うので、お客さんが聴いたら“なんかこの曲だけ違うよね”、っていう人がいるかもしれないですね。まあそれはそれでいいかなと思うんですけど」
 
――『last soul』のどういうところが気に入っているんですか?
 
「曲調です。90年代のR&Bみたいなのを入れたくて作ったので。90年代っていってもだいぶ古い音楽だけど、なんとなく今やってもいいんじゃないかなみたいな。TLCっていうアーティストのイメージで作りました。結果的にはだいぶ違くなっちゃいましたけど」
 
――ラストと言いながらも始まりの歌ですよね。タイトルはどういう気持ちでつけられたんですか?
 
「“終わる=始まる”みたいなところがあるじゃないですか。わかりやすく言うとそういうことなのかもしれないです」
 
――なるほど。表題曲の『Fantastic every single day』(M-12)は、“14年ぶりの技術革命”というのが、 2004年にFBYが始まったことを言っているのかと。
 
「そうです。これは実は古い曲で、ほんとはベースやドラムも入っててもいいんですけど、鍵盤しか入ってないんですよ。それこそコイチくんが弾いてくれたんですけど、こういう鍵盤と歌だけしか入ってない変わった曲があってもいいかな、みたいな」
 
――この曲でこれからのFBYに期待が高まりました。
 
「前作ではケツに『We can ’ t end it』っていう曲があってロックバラードみたいな感じでしんみり終わっちゃったので、今回は最初からふざけて終わろうとTDCくんと話してて。この曲がノミネートされた時、この曲が最後っていうのは結構早い段階からもう決まってて。で、歌詞の中に“Fantastic every single day”という言葉があったので、これはもうタイトルだなと」
 
――なるほど、そこで決まったんですね。
 
「なんとなく良い言葉だなと思って。“ファンタスティック!”なんて朝起きて思わないですけどね」
 
――(笑)。
 
「何事もなく起きれることが“ファンタスティック”なのかなーとか。今のところ日本は平和ですし」
 
――FBYの歴史は今後も続いていくわけですが、今やってみたいことはありますか?
 
「この編成でやっていきたいとも思うのと、ギターを入れてみてもいいかなってちょっと思ってて。KENZIほどセンスの良いギタリストいないから探すの大変だと思ってたんですけど、やっぱりギター欲しいかなと少し思ってますね。無理してギターを入れなくしてたわけじゃなくて、良いギタリストがいたら入れたいなと思ってたので。それはそれで変化していきたいなというのは毎年思っているので、今、良いスタイルが確立できたけど、これに甘んじないように、挑戦することをずっとしていこうかなと。なので編成も色々やってみたいです!」
 
――挑戦していく姿勢が素晴らしいです。
 
「年齢も年齢なので、やりたいことをどんどんやってっちゃおうというのが率直なところなんですけど。もしかしたら声が出なくなるかもしんないし、ドラムも叩けなくなるかもしんないじゃないですか。そこで悔いを残すのは嫌なので、今は思いついたことはなんでもやっちゃうっていうスタイルですね」
 
――リリースツアーもまもなく始まりますね。
 
「今年はRUSH BALLにもSMOOTH LIKE GREENSPIAにも出させてもらって、レコ発が3本ともうまくいったら、自分たち的には何の申し分もないかなと。レコ発は久々にワンマンでやるので、曲数もたくさんやれそうだし、出し惜しみすることなく全部出したいです。しばらく関西の予定は決まってないので、ワンマンでちゃんとやれたらなと思います」
 
――意気込みはいかがですか。
 
「単純にすごく楽しみにしてます。ワンマンでやれるなんて、一生の中でそうないから。自分たちだけを見に来てくれるってことなので、ほんとにありがたい話ですよね」

text by ERI KUBOTA



(2018年11月12日更新)


Check

Release

FBYだからこそ確立したスタイル

7th Album『Fantastic every single day』
発売中 3056円(税別)
NIW142

《収録曲》
01. DIS SONG
02. SO FAIR feat. 西寺郷太 (NONA REEVES)
03. TOO YOUNG TO STOP
04. change feat. おかもとえみ ( フレンズ )
05. Paper plane
06. Back to new life
07. last soul
08. My regulations
09. BURN
10. Broken clock’s moving
11. Houseplant
12. Fantastic every single day

Profile

フロンティア バックヤード…TGMX(vo)、TDC(ds)の2人がSCAFULLL KING休止中に2004年より組んだバンド。サポートメンバーを含めた編成でのライブを行っており、2016年からは7人編成で活動をスタート。2004年に1stアルバム『FRONTIER BACKYARD』発売以降、6枚のオリジナルアルバムをリリース。FUJI ROCK FESTIVAL、RUSH BALL、ROCK IN JAPAN、RISING SUN ROCK FESTIVEL、KESEN ROCK FESTIVAL、WALK IN FES!、Baycamp、AIR JAMなど多数の大型フェスにも出演。2014年には、CDデビュー10周年を記念したベストアルバム『BEST
SELECTIONS』とリミックスアルバム『gladness』をリリース。2015年には10周年の軌跡と新木場スタジオコーストで行われた周年ライブを収めたDVD『surroundings』をリリースしている。7人編成の新体制となってからは、タワーレコード限定ミニアルバム『FUN BOY’S YELL』そして、昨年待望のフルアルバム『THE GARDEN』をリリースし、16箇所の全国ツアーを敢行。2018年10月10日には『Fantastic every single day』をリリース。東名阪でのレコ発ライブが控えている。

FRONTIER BACKYARD
オフィシャルサイト

http://www.frontierbackyard.com


Live

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Shangri-La
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[問]GREENS■06-6882-1224

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チケット発売中 Pコード:126-468
▼11月17日(土) 18:30
RAD HALL
スタンディング-3800円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
[問]ジェイルハウス■052-936-6041

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