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70年代に生まれたスタンダードが豪華アーティストの競演で楽しめる
年に一度のスペシャルなコンサート『LIVE 君と歩いた青春 2018』
今年で10回目を迎える同公演について
伊勢正三、太田裕美にインタビュー

今年で第10回目を迎える『LIVE 君と歩いた青春 2018』コンサートが今年も9月22日(土)に大阪城ホールで開催される。記念すべき10回目の今回も伊勢正三をはじめイルカ、太田裕美、尾崎亜美、杉田次郎、堀内孝雄、南こうせつという豪華アーティストが勢ぞろい。『22才の別れ』や『木綿のハンカチーフ』、『神田川』などこの日聴ける曲の数々は、昭和40~50年代に青春時代を過ごしたリスナーにとっては、懐かしさやかけがえのない日々の思い出とともに色あせることなく輝き続け、10代、20代のリスナーにとっては、今を生きる心情や切ない想いに寄り添ってくれる楽曲として愛され続けている。今回は記念すべき節目の10回目ならではのスペシャルゲストも登場するとのこと。インタビューに応じてくれた伊勢正三と太田裕美に、ゲストアーティストは誰なのか聞き出そうと試みたけれど、「それは当日のお楽しみ(笑)」(伊勢)とのこと。時代を超えたスタンダードナンバーの数々を生み出してきたお2人に、このコンサートへの想いや音楽に託す想いなどを聞くことができた。

――『君と歩いた青春』コンサートは今年で記念すべき第10回目を迎えます。もともとこのコンサートがスタートしたきっかけは?
 
伊勢「オファーをいただいたのが始まりなんですが、あの時代の音楽が今この時代に、この年齢になってこんなにもオファーがあるんだという驚きがありました。たとえばバブルの時代は、もうちょっと違う音楽が求められていたと思うんですね。それが落ち着いて、思いもよらないところからコンサートをやってほしいと呼ばれるようになって。行ってみると、歌詞がなくてもお客さんは一緒に歌っていたり、ギターでイントロを弾いただけで拍手が起きたりして。このライブに出演しているメンバーは、みんなそれぞれいろんなところでライブをやっているけど、こういう形で気の置けない仲間たちとひとつのものを作れたら素敵だなって。それを受け入れてくれた大阪という街との相性の良さもあって、10回もやれたんでしょうね」
 
太田「歴史的には、大阪には関西フォークの土壌もあったしね」
 
伊勢「そうそう。こってりした土壌がね(笑)」
 
――コンサートに行った方のお話を聞くと、お客さんも見ているだけじゃなく一緒に歌ったりコンサートに参加して楽しんでいる雰囲気があるそうですね。
 
太田「そう。ホール会場(大阪城ホール)なんですけど、お客さんたちもお祭り気分で楽しんでくれているんですよね」
 
伊勢「裕美ちゃんの『木綿のハンカチーフ』にしても僕の『22才の別れ』にしても、僕たちが20代の時に歌っていた歌だから、聴く人によっては懐メロに感じる曲なのかもしれない。けど、それを今いちばんパフォーマンスしやすい状況でやることができて、それを求めているお客さんたちが1万人以上駆けつけてくれる。こんなにやりがいのあることはないですよね」
 
太田「学生時代に仲が良かった人たちが集まってコンサートに来てくれて、終わった後にご飯を食べてカラオケに行って、“また来年の『君と歩いた青春』で会おうね”って別れる。そうやって同窓会みたいな感じで楽しんでくれているお話はよく聞きますね」

――親子で来ているお客さんも多いでしょうね。
 
伊勢「“小さい頃から親に聴かされて、よく知ってます”って声も聞きますよ(笑)。今はYouTubeでいつの時代の音楽も聴けるし、特に裕美ちゃんの『木綿のハンカチーフ』は、若いお客さんの中にも好きな方がたくさんいますよね」
 
太田「私Twitterをやっているんですけど、昭和好きな若いフォロワーさんもたくさんいるんですよ。20歳前後の方が多いんですけど、そういう人たちがTwitterを通じて情報交換しながら、“今の時代の音楽とは一味違った、私たちの心にいちばん響く音楽がこの時代にあったよ”とか、“身近には、なかなか趣味の合う人がいなかったけどここで出会えた”とかやり取りしているのを見ると、年齢って関係ないんだなって思いますね。志向は人それぞれだし、若くても歳を重ねていても、男も女も関係なく、それぞれの心にピタッとはまった時が一番楽しくて、一番そのものの良さを味わえるんだなと思いますね」
 
――先ほど懐メロという言葉が出ましたが、初めて出会う音楽はその人にとって新曲でしょうし、自分は子供の頃にお二人の音楽に触れる機会がありましたが、カーペンターズの作品を今聴いても古く感じないのと同じ感覚で、今も聴かせてもらっています。
 
伊勢「このコンサートに出演されているみなさん、それぞれの持ち歌がそこまで来たんだなという感慨深さもありますね。自分で意識して“自分の曲を残そう”と思ってもできることじゃないし、歴史に淘汰されてここまで残ることができたのは、支持してくれるお客さんがいてくれたからこそ。だってね、聴く人の中で、今も曲のストーリーがすごい広がってるんですよ(笑)」
太田「みんなすごく深読みしてくれるんだよね。曲のシチュエーションも人それぞれで」
 
伊勢「僕の歌はよく“私小説ですか?”と聞かれるんですけど、どこかに自分自身の経験があり、それも踏まえてストーリーを作っていく。僕はいつもインタビューで、“1つの映画を作るように歌を作っている”と答えているんですが、その映画を作る上でいちばんこだわるのはカメラマンの視点。自分自身がカメラマンになって、どこにズームして、主人公の2人にどこではけてもらうか。2人がはけた後にはどんな景色が残るか。そこでシーンが変わって、編集して2番の最初に行く。そういうのを思い浮かべたり、“このフレーズを書いたらみんなの頭の中にどんな景色が浮かぶだろう”と考えながら歌を書いている。それはきっと、その頃自分が20代でリアルに恋したり、傷ついたりしていたからできたんだと思いますね」
 
――そうなんですね。
 
伊勢「さっき裕美ちゃんが言ってくれた昭和の好きな若い子たちの話も全然不思議じゃなくて、今いちばん胸に切ないものを持っているのはその世代の子達なんですよね。僕らも含めて、昔から知ってくれているお客さんも切なさを噛みしめつつ聴いてくれているけど、その切なさは今では温かいものになっていて、その温かさは僕らにとってもライブをやる原動力になってる。僕の歌は別れの歌が多くて、『22才の別れ』とか『なごり雪』みたいな切ない曲が多いんだけど、みんなすごく拍手してくれるし“いい歌ですね”と言ってくれる。なんか申し訳なくてね(笑)」
 
太田「悲しい歌だよね~(笑)」
 
伊勢「僕自身が20代の頃、リアルに恋愛する中やいろんなシーンの中で傷つくことを恐れてなかったから、そういう歌が書けたんだと思う。そういうことをいちばんリアルに感じているのは、僕があの歌を作ったのと同じ年頃の子たちですよね。だから今の若い子達に響くのは納得がいきます。僕もたまに“伊勢正三の歌詞はヤバい”とか“なんでこんなにリアリティがあるんだ”という声をもらったりするんですけど(笑)、聴く人を限定して書いていないからそうなるんでしょうね。歌を作る時は普遍性を意識していますから。今はその頃とは違って音楽的なテクニックがついた分、1つの楽曲を仕上げる力は昔よりうんとついたと思う。自分のスタジオがあって、エンジニアリングからマイクを立てるところから自分でやって、自分の力で完成まで持って行ける。けど、歌っていうものは実は、いちばん芯の部分の“なにが切ないのか”というところに立ち戻らなきゃできないんだなってことを最近痛感してます。残された音楽人生で最終的には、誰かの役に立つ音楽を作りたい。でもそれは、僕が“役に立ちたい”と思ってもそうなれるわけじゃないからね(笑)。このコンサートで歌っている70年代の曲も、みんながいいと思ってくれて、自分が生きてきた青春の日々の中で必要だったと思ってくれたから今も残っているんでしょうしね」

――太田さんは以前と今とで、歌う時の気持ちはどんなふうに変わってきていますか?
 
太田「最近は、歌って人生と同じだなと思っているんですね。正やん(伊勢正三)が言っていたように、音楽を作るのに全部自分でできるだけの環境が整っているのと同じで、生きていると経験とかいろんなものが自分の中に増えていくけど必要のないものもあったり、時には経験が邪魔になって、もっとピュアにまっすぐに生きて、歌ってもいいんじゃないかと思う時もある。だからこそ、歌を歌う時には、まっさらな状態で歌える心でいたい。40年以上歌ってきて、自分にとって歌は天職だと思っているので、その天職を与えて頂いたことに対して自分のできることは何だろうと考えると、歌うことによって自分の魂を浄化して、まっさらな気持ちで歌う。そのほうが、自分の想いを相手に届けられるような気がするんですね。“相手にどんな想いを届けたいか”というのはその人の生き様になってくると思うんですけど、私の場合は自分自身が母親でもあるし、平和な世の中であってほしい、困った人がいたら助け合えて、争いごとはないように。そういう誰もが普通に願うことなんですね」
 
伊勢「うん」
 
太田「女の人は子供を産むことができるわけで、それって“壊す”ことではなく生み出す力があるわけだから、そういうプラスの思考を歌うことで、“みんなで仲良く生きていこうね”という優しい気持ちを生み出すことができたら。きれいごとに聞こえるかもしれないけど、そういう夢見がちなことを歌っていきたい。ジョン・レノンが『イマジン』で歌っているのはそういうことですよね。些細なことで構わないから、仲良くしていこう、ケンカするんじゃなく対話をしようって。そうやって自分の周りの小さな世界から、大きな世界へ広がっていけるんじゃないかなって。そういうことをひとりの女性として、言葉やメロディーを使って伝えられたらいいと思います」
 
伊勢「そうだよね。音楽の力って本当、不思議だから」
 
――素敵なお話をありがとうございます。今回初めて『君と歩いた青春』へ来る方、毎年のように来ている方、いろんな方がいらっしゃると思います。最後に9月22日のライブを楽しみにしているファンのみなさんへメッセージをお願いします。
 
太田「10回全部見ている方も、今年初めて見る人もまったく温度差はないと思うんですね。それはなぜかというと、私たち自身が一期一会の心で、“この一瞬がすべて”という想いで歌っているしステージに立っているので、そういう想いはみなさんに感じてもらえるんじゃないかなって」
 
伊勢「年々チケットが売れるスピードが速くなっていると聞いて、すごくありがたいなぁと思うし、僕ら自身が“今年もこの季節が来たな”と、このライブをすごく楽しみにしています。特に今回は第10回のスペシャルということもあって、素晴らしいゲストの方にお声をかけていますので、そのあたりも楽しみにしていてください。大阪城ホールで会いましょう!」

text by 梶原有紀子



(2018年9月12日更新)


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Profile

伊勢正三

南こうせつ、山田パンダとともに70年代フォークの代表であるかぐや姫のメンバーとして活躍。’75年に解散し同年、風を結成。『22才の別れ』や『なごり雪』、『君と歩いた青春』をはじめ多くの名曲を生み出し、イルカや太田裕美をはじめ数多くのアーティストによって楽曲がカバーされている。’80年よりソロに。ドラマ主題歌やCMソングも数多く手がけ、自身のライブ活動に加えチャリティコンサートにも精力的に出演。’13年より南こうせつとのユニット、ひめ風としてコンサートも行っている。

伊勢正三 オフィシャルサイト
http://www.ise-shozo.com


太田裕美

’74年にシングル『雨だれ』でデビュー。以後、『木綿のハンカチーフ』、『赤いハイヒール』、『九月の雨』、『さらばシベリア鉄道』、『君と歩いた青春』など数えきれない名曲を歌い、フォークと歌謡曲のジャンルを超えた新しいシンガーとして、現在のJ-POP女性ボーカリストの道を開く。遊佐未森をはじめ他アーティストへの楽曲提供も行っている。

太田裕美 オフィシャルサイト
http://www.sonymusic.co.jp/artist/HiromiOta/

’04年より伊勢正三、太田裕美、大野真澄との3人によるユニット、なごみーずとしてライブを行っており、これまでに『アコースティックナイト』『アコースティックナイト・2nd』『アコースティックナイト・3rd』の3枚をアルバムを発売。10月21日(日)富山 滑川市民会館、10月27日(土)オリンパスホール八王子、10月28日(日)鎌倉芸術館でコンサートを開催。

Live

『LIVE 君と歩いた青春 2018』

チケット発売中 Pコード:118-442
▼9月22日(土) 16:00
大阪城ホール
指定席-7500円 バック指定席-5500円
立見-4500円
[出演]伊勢正三/イルカ/太田裕美/尾崎亜美/杉田二郎/堀内孝雄/南こうせつ/他
※未就学児童は入場不可。
[問]キョードーインフォメーション
■0570-200-888

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