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「どこまででも行ける感覚に陥るんだよ」
この熱量、この純度、無敵の3ピースが生んだ
『Sugar』の構造と哲学をツアークライマックスにベンジーが語る!
浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSインタビュー&動画コメント

 生々しいビートに切り込んでくるギター、追随するようにドライヴするベースラインが導いた先にある、あの歌声…! 1曲目の『Vinegar』からオンリーワンのロックンロールをかき鳴らす、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSの最新作『Sugar』は、この3ピースが今、最高の状態にチューンナップされていることを如実に証明する1枚だ。’16年8月の初ライブ以来、中尾憲太郎(b)(ex. NUMBER GIRL/Crypt City)、海外で活動してきた小林瞳(ds)というメンバーと作り上げてきた幾つもの夜と音楽は、まるで麻薬の隠語である『Sugar』というタイトルさながらの中毒性で聴く者を虜にすることだろう。収録曲『Beautiful Death』にある強烈な一節、“真っすぐ生きて きれいに死ぬ”。そう、“死に方”とは同時に“生き方”でもある。現在はリリースツアー『Sugar Days Tour 2018』の真っ只中にいるベンジーこと浅井健一に、この3人で奏でる音楽への高鳴る想いと、『Sugar』に宿る哲学を語ってもらった。

 
 
新しいものを作るときは、まっさらなところから始めないとダメだよ
 
 
――前作『METEO』('17)をリリースしてから約1年の間に3本ものツアーをやっていく中で、バンドもみるみる変わっていったそうですね。
 
「演奏が今どエライことになっとって。本当にやっとって楽しいんだよね。いっつも必死になってやってるだけなんだけど…何かこのメンバーは…うん、すごくいいバンド。フフ(笑)」
 
――ベンジーさんのアウトプットはバンドにソロにと形態はいろいろと変わってきましたけど、THE INTERCHANGE KILLSには今までと違う刺激や面白さがある?
 
「やっぱりね、ドラマーの母親はコロンビアの方で、世界的にも有名なラテンの血が入ってるんでグルーヴが違うんだと思う。キューバだとかペルーだとかコロンビアとかメキシコとか、カナダとかヨーロッパとかずっと海外で暮らしてて、5年前ぐらいに初めて日本に帰ってきたみたいで。もちろん今までも大好きなドラマーとたくさんやってきたけど、(中尾)憲太郎(b)と(小林)瞳(ds)ちゃんのグルーヴというかそのリズムが、自分にとってすごい心地よくって。どこまででも行ける感覚に陥るんだよ」
 
――ここに来てそういうメンバーと出会えたのは巡り合わせですね。そのグルーヴにも引っ張られて、KILLSの音楽性が定まっていく感じも。
 
「うん、あるね。だから激しい曲、攻撃的な曲に関しては、ものすごくいいんじゃないかな」
 
――ベンジーさんがここまでキャリアを重ねてきても、“毎回、自分が納得できるものを出せるか不安だ”という発言に、作品を出すときにそれだけシビアに自分を見ている感覚に、新鮮な驚きを感じました。
 
「それはいつまで経ってもあるし、逆にどんどん歳を重ねていったら、そういうのはより強くなってくるよね。でも、新しいものを作るときは、まっさらなところから始めないとダメだよ。今までのことは切り離して、作らないととは思ってる。それは分かってるんだけど、どうしても“これによく似たフレーズがあるな”とか、そこら辺はやっぱ意識するけどね」

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あとは、どこまで行けるかだね。どこまでも行きたいけど
 
 
――前作の制作時には、“激しさ100%のアルバムを作ってやろう”とのことでしたが、今回の『Sugar』では何か思惑みたいなものはありました?
 
「今回も激しい曲で埋め尽くそうと思ってたら、途中でちょっと停滞した時期があったんだよ。ツアーは毎回いいんだけど、アルバムができるまでは8ヵ月以上かかったから。だから考えを途中で変えたんだよ。『Ginger Shaker』(M-3)だとか『水滴』(M-10)だとか、ああいう曲がいい感じでできたから、アルバムがまとまったんじゃないかな」
 
――1曲目の『Vinegar』からそうですが、今作では瞳さんのコーラスも印象的に耳に残りますね。
 


「今回のレコーディングで、瞳ちゃんのコーラスはすごい発見で。あれはみんな驚いたね。不思議な人だよ。面白いし、珍しいよ、あそこまで才能がある人は。憲太郎は憲太郎であれだけ攻撃的なベースを弾けるのもすごい才能だし。だから2人ともそれぞれ、すごい才能があるわ。だから面白いことが今起きてるんだと思う。あとは、どこまで行けるかだね。どこまでも行きたいけど」
 
――アルバムに先んじて『Beautiful Death』(M-2)が配信リリースされましたけど、MVを観て“ベンジーさん、スケボーできるんだ!”と思いました(笑)。
 


「ね(笑)。サーファーが波のない日に乗ってたような時代だからスタイルが今と全然違うんだけど、俺が中1ぐらいのとき、めちゃめちゃ練習してたんだわ。30年以上経った今でも、身体は覚えてたね(笑)」
 
――パリの街並みと、KILLSの音楽と、ベンジーさんがスケボーをしてる姿のパラレルワールド感がもう(笑)。
 
「あれは偶然の産物だね。何でパリなんだろう? とか俺も思っとったけど、面白かったよ(笑)」
 
――ジャケットを含めた今回のビジュアルワークにも、いい感じでそれが出ましたよね。あと、この曲の“真っすぐ生きて きれいに死ぬ”というフレーズがすごく突き刺さって…。やっぱり歳を重ねると、20代や30代の頃には考えもしなかった“死”が、リアリティを持ってくる。
 
「俺も50を過ぎると、やっぱりちょっと考えるというか、想像しちゃうよね」
 
――そして、死に方=生き方ですよね。そういう感覚が書かせるものってやっぱりありますか?
 
「そうだね。ただ…その言葉が浮かんではきたけど、実際に詳しく説明を求められると、うまく説明したくないし、できない部分があって。今でもそういう説明できない感情を抱えながら歌ってるんで、それを聴いて何か感じる人は感じるだろうし、それぐらいでいいかなって思ってる」

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心が挫ける場面って人間誰しもあるけど
奮い立ってやっていくしかないし、やっていこうよっていう
 
 
――『Ginger Shaker』は3〜4年前には原曲があったとのことですが、それが今回のタイミングで形に?
 


「実は、自分1人で全部打ち込みで作ったパターンもあって。それはそれでいいんだけど、何かちょっと寂しいんだよね。だからこれを今のKILLSのメンバーでやったらどうかなって。やったらすごいよかったし、それが結構このアルバムを救ってるかな」
 
――なるほど。激しさだけじゃないKILLS。
 
「そう。激しさだけじゃなくて、深みが増したんだよ」
 
――この曲の“強くなくちゃ 生きてゆけぬ”っていうのも、すごく印象的な1行でした。
 
「人間の基本的なところだよね。心が挫ける場面って人間誰しもあるけど…“よし!”って奮い立ってやっていくしかないし、やっていこうよっていう」
 
――あと“センス良すぎて 服がわからない”っていう一節もツボでしたね(笑)。
 
「センスがいいはずなんだけど、鏡の前に立つとダメだこりゃっていうことが何度かあって。大好きな女の娘に会いに行くときは、やっぱカッコよくいたいじゃん? だから実際のことだよ、“何を着て行こうかな?”とか迷うのは」
 
――そう思える相手がいて、そう思う感覚はいいですよね。
 
「そういうお茶目さが伝わってくれたら、俺は嬉しいけどね」

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俺たちは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を目指してるからさ(笑)
 
 
――レコーディング中に何か印象的なエピソードや事件はありました?(笑)
 
「SHERBETSの場合はよくあるんだけど(笑)、このバンドはあんまりないんだよね。みんなすごいまっすぐで一生懸命。『Ginger Shaker』は憲太郎が“このテイクはいいですね”って、すごい言ってたのは覚えてるけどね」
 
――憲太郎さんのベースラインはやっぱりカッコいいですね~シビれます。『Beautiful Death』とかは特に。
 
「そう。あんまり瞳ちゃんばっか褒めると、憲太郎が拗ねるから(笑)。いやいや、憲太郎は最高だよ。俺たちは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(‘15)を目指してるからさ(笑)。始めの頃、それで意気投合した記憶があるよ」
 
――なるほど! 合点がいきました。あの過剰さというか、イっちゃってる感じ。
 
「そうそう。あれを目指してるんだけど、ああいうふうにはならないんだよな(笑)。『Vinegar』とか『Beautiful Death』みたいな形になるんだよね。でも、目指してるのは突き抜けてるあの感じ。俺たち流の『マッドマックス』が『Sugar』なんだよ」
 
――そこに焦点を置きながら、どこか儚かったり憂いがあるのが、ベンジーさんの魅力ですよね。あのまんまムキムキのハイパーにはならないもんですね、やっぱり(笑)。
 
「アハハ!(笑) だから、次の3rdアルバムは“Mad Sugar”を目指して」
 
――さらに刺激的になっていく(笑)。これからの1年でまた新しい何が出てくるか。
 
「気持ちは毎秒変わってたりするからね、うん」

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俺は自分の気持ちを書く。そういうミュージシャン
 
 
――ベンジーさんの歌詞を紐解くとき、“少年性”みたいなことはよく言われると思うんですけど、ベンジーさん自身は素直に書いているだけという感覚なんですよね。
 
「もちろん。やっぱ20代のときにしか書けない詞もあるし、30代のときはそういう気持ちの詞だしさ。今の気持ちを書くのが当たり前だし、それしかできないよね。20代の子にウケるように、っていう仕事の人もいるけど、俺は自分の気持ちを書く。そういうミュージシャン」
 
――ベンジーさんの音楽に、それこそずっと『Sugar』な状態というか、取り憑かれてきたファンがいるし、何かのきっかけで新しく知ってくれる人もいるでしょうし。
 
「昔からずっと聴いてくれてる人も、もちろんすごい嬉しいし、最近知りましたっていう人も、ものすごい嬉しいしさ。ラジオに出たり、こういう記事によっても、それがきっかけでっていうのを考えて、日々頑張るしかないよね」
 
――ベンジーさんがかつて“音楽活動の原動力は?”という質問に対して、“カッコいい音楽を作ってみんなを驚かせたい”って言っていて。今、同じ質問をされたらどう答えます?
 
「いまだに同じじゃないかな。すげぇいい音楽を作って…これまでに大ヒットっていうものがないんで、次こそはと思って毎回出してるんだけどね。この曲を聴いたら多分、みんなすごい元気になると思うから気付いてくれんかな?って。ミュージシャンはみんな、それはあると思うよ」

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今やってる音楽がどれだけのもんかだから
 
 
――ちなみに、瞳さんはずっと海外にいた人なら、ベンジーさんのキャリアをどういうふうに見てるんですか?
 
「まぁ…あんま分かってない(笑)。でも、別にそんなことはどうでもいいんだよね。今やってる音楽がどれだけのもんかだから。勝手に瞳ちゃんが調べたりしてるかもしれないけど(笑)。でも、フェスとかで照ちゃん(=照井利幸)とか(中村)達也と会うとさ、瞳ちゃんには珍しく“紹介してもらえますか?”みたいに言うんだよ(笑)。達也のことが好きなんだ、意外だなぁとか思って。照ちゃんが今やってるSignalsを観たときは、“照井さんのベースすごいっすね”って言って、照ちゃんファンになってたけどね(笑)。やっぱそう感じるんだと思って。個性的に見えるんだね」
 
――それだけ海外に長くいたドラマー目線で見ても。
 
「そうそう。…こんなこと言うと、また憲太郎が拗ねるわ(笑)」
 
(一同笑)
 
――最後に、ツアーに向けて何かありますか?
 
「前回もよかったんだけど、そのときよりもまたバンドが成長というか、今はものすごいことになってるから、絶対にライブで同化しに来てほしいね」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by 河上良(bit Direction lab.)
 




(2018年5月 2日更新)


Check

Movie Comment

ベンジーの声とメッセージをコチラで
浅井健一からの動画コメント!

Release

ソリッドでクールな3ピースでぶっ放す
最高のロックンロールアルバム!

Album
『Sugar』
発売中 3000円(税別)
Ariola Japan
BVCL-864

<収録曲>
01. Vinegar
02. Beautiful Death
03. Ginger Shaker
04. ハノイの彫刻
05. どっかいっちゃった
06. Watching TV ~English Lesson~
07. Turkey
08. Fried Tomato
09. New Pirates
10. 水滴
11. すぐそば

Profile

あさい・けんいち…’64年生まれ、愛知県出身。’91年にBLANKEY JET CITYのボーカル&ギターとして、シングル『不良少年のうた』とアルバム『Red Guitar and the Truth』でメジャーデビューを飾る。数々の名作を残し、’00年7月に惜しまれつつ解散。その後、SHERBETSやJUDEなど様々な形でバンド活動を続け、’06年7月にソロ名義では初となるシングル『危険すぎる』、同年9月に初ソロアルバム『Johnny Hell』を発表した。繊細なタッチで描かれる絵画も高く評価されており、絵本や画集などを発表している。’16年8月に新たなソロプロジェクト・浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSを始動。メンバーは浅井健一、中尾憲太郎(b)(ex. NUMBER GIRL/Crypt City)と、カナダやアメリカなどで活動してきた小林瞳(ds)で、同年10月にシングル『Messenger Boy』、’17年1月にアルバム『METEO』を発表。同年11月には新曲『Beautiful Death』を配信リリース。'18年2月14日には最新アルバム『Sugar』を発表。

浅井健一 オフィシャルサイト
http://www.sexystones.com/

Live

手応えアリのリリースツアーも終盤
残すは熱狂の東名阪ワンマンライブ!

 
『浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS
 Sugar Days Tour 2018』

【千葉公演】
▼3月16日(金)千葉LOOK
【三重公演】
▼3月21日(水・祝)松阪M'AXA
【岡山公演】
▼3月23日(金)IMAGE
【京都公演】
▼3月24日(土)磔磔
【石川公演】
▼3月30日(金)金沢vanvanV4
【新潟公演】
▼3月31日(土)GOLDEN PIGS RED STAGE
【宮城公演】
▼4月6日(金)仙台MACANA
【岩手公演】
▼4月7日(土)the five morioka
【宮崎公演】
▼4月14日(土)宮崎SR BOX
【福岡公演】
▼4月15日(日)DRUM Be-1
【北海道公演】
▼4月22日(日)cube garden

Pick Up!!

【大阪公演】

Thank you, Sold Out!!
▼5月4日(金・祝)18:00
Shangri-La
オールスタンディング5000円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上有料、未就学児童は大人1名につき1名まで無料。

【愛知公演】
Thank you, Sold Out!!
▼5月5日(土・祝)18:00
名古屋クラブクアトロ
スタンディング5000円
ジェイルハウス■052(936)6041

【東京公演】
チケット発売中 Pコード100-167
▼5月12日(日)18:00
STUDIO COAST
オールスタンディング5000円
スマッシュ■03(3444)6751

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 

Column1

「2人が火をつけたというか
 スイッチが入った感じ」
新体制で挑んだ剥き出しの
ロックアルバム『METEO』!
'16年の撮り下ろしインタビュー

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クールなビートと平熱のグルーヴ
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'14年の撮り下ろしインタビュー

Comment!!

ライター奥“ボウイ”昌史さんからの
オススメコメントはコチラ!

「何を言うかも大事だけど、誰が言うかが大事で。インタビューしていて、そのことをすごく思いました。その“誰が言うか”の重さと説得力をビシビシ感じさせてくれたベンジーさんは、その音楽もそうですが、キャリアと年齢を重ねても、ここまでピュアでソリッドで刺激的なのが本当にすごい。THE INTERCHANGE KILLSという形態では2枚目のアルバム『Sugar』では、この3ピースの持ち味である攻撃力はそのままに、メロウでロマンチックな部分も垣間見えて、ますますその魅力が増しています。クールなバンドサウンドに“食器洗いをする時は まず水につけてから”なんて歌詞が飛び出したり(笑)、ロックにおける常套句である“Baby”も、文脈が変わればその対象は女性から若い世代にも変わる。詞世界にもベンジーさんのイズムとダンディズムと遊び心が散りばめられていて、いや~最高のロックアルバムですね。終盤にサラリとBLANKEY JET CITYのことにも触れてくれるなど、もう完璧!(涙) やっぱ今でもロックスターだわ。そりゃ『Sugar』さながら、みんなここにしかない音楽にずっと夢中になるわ。一度聴いたら、一度観たら最後。あなたもこのスウィートな中毒者になってください!」