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神戸旧居留地を舞台に魅せた旅の集大成にして
今村モータースの過去最大の挑戦!
『この街の夕暮れと僕の散歩道~初めてのホールワンマン~』
神戸を舞台に情景を切り取るライブシリーズ第6弾をレポート

 神戸発のシンガーソングライターとして、『COMIN'KOBE』『トアロード・アコースティック・フェスティバル』など関西の様々なイベントでも、飄々とした佇まいを心地よく裏切る少年性を湛えた歌声と、いつかの情景を描き出すグッドメロディを礎に、その人を食った名前と存在感をじわじわ浸透させてきた今村モータースの“挑戦”。旧小学校となる北野工房のまち 講堂での『この街の夕暮れと僕の散歩道』、歴史的な異人館・北野サッスーン邸でのアコースティック/アンプラグドな昼夜2回公演『この街の異人館とふたつの灯り』、神戸の街を見下ろす山頂に佇む神戸布引ハーブ園 森のホールでの『この街のハーブ園と空中散歩』、世界一のつり橋を臨む映画のような風景のもと行われたシリーズ初のフリーライブ『この街に架かる橋と僕の帰り道』。さらには、“ホーム”とも言えるライブハウス神戸VARIT.に浜端ヨウヘイをゲストに迎え、この一連の歩みの結晶であるアルバム『この街の夕暮れと僕の散歩道』リリース記念ライブにもなった『この街のライブハウスと旅の始まり』と、シチュエーションの妙で魅せてきた彼のコンセプトライブ、“この街”シリーズ。その第6弾は、神戸旧居留地に位置する神戸朝日ホールにて、過去最大キャパの挑戦となった『この街の夕暮れと僕の散歩道~初めてのホールワンマン~』! シリーズの集大成となった運命の1日を、今改めて振り返るライブレポート。

imamuramotorsreport5_side.jpg いつも以上の大きな声援に迎えられた、“この街”シリーズの1つのフィナーレ。キヨシ(ds・CUma)、ケンヤ(acog&perc・CUma)に、イクロー(g・ワタナベフラワー/Keens)、堕天使かっきー(b・天使と悪魔)、ichi(key・サーカスフォーカス)の5人のバンドメンバー1人1人と拳を突き合わせていく中で、ケンヤだけはぐらかし早速場を沸かせつつ(笑)、ついに始まった1曲目は『メロディ』。天井の高いホールの空間に鼻にかかった甘い歌声とそれを支える力強いバンドサウンドが響き渡っていく。いつもよりちょっとオシャレしたマップちゃん(=今村モータース)は、気合も十分。この街シリーズの裏テーマソング、いや今村モータースのライフソングとも言える『点と点』が、まるでこれまでの2年間の街の風景をフラッシュバックさせるようにじんわりと胸に沁みる。

 

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 ドラムのビートに合わせて促すとも沸き立つ手拍子に乗せてドラマティックに駆け抜ける『踊るランドリー』といい、今村モータースが、バンドメンバーが、そして神戸朝日ホールに集まったお客さんが、この日に焦点を合わせてきたことが音で、笑顔で、手拍子で伝わるような絶景が目の前に広がる。
 

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 「どうも、今村モータースです! こんな素敵なところでできるとは思ってもいなかったので、ただただありがたいなと。今日はお席もございますので、各々のスタイルで楽しんでいただければ。“ライブに行くよ”って聞いてなかったのに来てくれてる人をたくさん見付けてしまって、僕は動揺してますけど(笑)」なんてMC中に客席からかけられた「泣かないでー」の声に、「いやいや早ない!?」と返すなど(笑)、お客さんとのコンビネーションもバッチリだ。
 

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 そんないいムードの中、奏でられた優しき名曲『プリン』。アコースティックギターの音色が切なさと儚さを増幅させたかと思えば、ichiのダイナミックなシンセソロの誘いから、『空想クラッシュ』へ。躍動感溢れるサウンドに観客の肩が思い思いに揺れる。さらには、「ちょっと神戸っぽい歌を、皆さんとスウィングできるような歌を届ける前に」と、個性豊かなバンドメンバーを紹介したそのままの流れで『ユニバース』と、アップテンポで瑞々しいポップソングを立て続けに聴かせていく。
 

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 「楽しい~! 今日は全席自由なんで、席替えしながら観てもらってもいいですからね(笑)」と和ませつつ、「せっかくホールなので普段と違うことをしたいな」と、メンバーが広いステージの中央に集まっていく。ここでは全員が生楽器に持ち替え、歌声も含めて全てを1本のマイクで拾う、限りなくネイキッドなアコースティックコーナーへ。「常日頃皆さんに対して思ってるような歌を」と披露した『Thank you for the music』は、もう絶品。一筋の光に照らされた6人の奏でる人肌の音楽が、優しくもグッと胸に迫る。その光景はまるで星空のもとのようであり、まるで舞台のワンシーンのようでもあり、ホールの鳴りを活かしたこの試みは大成功で、大きな拍手が巻き起こる。
 

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 「この後、皆さんが帰るときにこの歌を思い出していただけると」と語ったノスタルジックな『帰り道』、ふくよかなベースラインと優しい手拍子とともに贈った『get back home』というアコースティック3連発は、この日のハイライトであると同時に、今村モータース新しいライブの表現手段としても極めて有効な出色の出来。
 

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 ここでメンバーが再び定位置に戻り、「実はもう終盤に近いんですよ」「えー!」「だからあんなに楽しんでって言ったやん」と煙に巻きつつ(笑)、「ちょっと懐かしい曲を」と『栄町通四丁目』を。ブルージーなエレキギターとシンセが、栄町の風景を目の前に浮かび上がらせるようなエモーショナルなサウンドを演出する。


imamuramotorsreport5_teiichi.jpg「今日は『この街の夕暮れと僕の散歩道』のツアーと“この街”シリーズのファイナルということになってますが、ファイナルとなると最後になってしまうので、『かなしたのしEP』のレコ発としてやらせてもらってます。僕は歌が好きで、音楽が好きで。いつもにこにこ笑えるような場所にいたくて今でもやってるんですけど、楽しいこと=楽なことじゃないから。周りの人からみて楽しいかどうかなんか、自分さえよければいいと思うこともありますが、それって時に悲しく映ることもあるんじゃないかなって。今は、みんなから見ても楽しいと思えるようなことをやっていかなあかんと思ってる次第でございます。だから、みんなにそう思ってもらえる曲を書いていきたい。悲しいで終わらないで、楽しいで終われればいいのかなぁと。『幸せになっていく』という歌を聴いていただきたいと思います」
 

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 色とりどりの照明に照らされ、今村モータースの決意にも似た目線を宿した新曲が、神戸朝日ホールの隅々にまで広がっていく。そのままビートが溶け込む『アコガレ』の冴え渡るポップセンスには、今村モータースのメロディメーカーとしての資質を改めて感じさせる。
 

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「何で“この街”シリーズをやろうかと思ったかというと、大きな地震を経験して少なからず人生が変わったことがあると思うんです。今日は運よく生きてますけど、明日はなくなるかもしれないなって。僕は散歩が好きなんですけど、学校も行くのと帰るのだけが好きで。そんな景色が全部グシャッとなくなったときに、それをあんまり見たくないから県外に就職したんですけど、一歩外に出てみると、やっぱり神戸がキラキラして見えるんですね。何かしら理由を作って神戸に帰ってきたくなって音楽を始めたんですけど。帰ってきたからには何かしないととずっと思ってて、僕の好きな神戸を、他の人たちにも見てもらいたいと思って始めたのが“この街”シリーズなんです。だから、この次に歌う歌を書きました。できればいろんな景色を観て、自分で再確認していただければいいなと。今日は本当にありがとうございました! 散歩してる感じで聴いてください」
 

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 北野工房のまち 講堂、北野サッスーン邸、神戸布引ハーブ園 森のホール、旧武藤邸、神戸VARIT.。そして、自身初のホールワンマンの地となった、神戸朝日ホール。今村モータースが見せてきたあの日の光景が、『この街の夕暮れと僕の散歩道』とともに一気にフラッシュバックしていく…。
 

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 「すごく楽しかったです! ずっと観に来てくれてる人、新しい人も観に来てくれてて、すごく、すごく嬉しいです。だから歌にしました」と、会場総立ちとなった最後の曲は、『ラララ』。ここで、ギターを置いてハンドマイクで大きなステージを駆け巡る今村モータース! ichi & かっきーのエエ声コーラス指南を経て、客席にいるバンドマンたちをちょいちょい指名して歌わせ(笑)、お客さんの歌声にマップちゃん本人が誰よりグッときてるであろう、この日の、そして“この街”シリーズのクライマックスにふさわしい、ハッピーでグッドヴァイブなエンディング!! 
 

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 もちろん、こんな光景を観せられたらそりゃお客さんも黙っていません。すぐさまアンコールの声に呼び戻される今村モータース。「僕、ホントを言えばこれが終わったらちょっと休もうかと最初は思ってたんですけど、今後もガッツリライブ入ってますんで。こうやって僕をミュージシャンに、歌い手にしてくれるのは皆さんなんですよ。今日は本当にありがとうございました! もうちょっとだけ手拍子と声をください!!」と、最後の最後は満場の想いを1つに束ねた『feel』! いきなり合格点の客席からの“ラララ”には、「普通はもうちょっといけるやろ~!とか言うのに、もっと小さく歌ってもらっていい?(笑)」というまさかの逆オファー(笑)。最高の予定調和で“ラララ”の歌声に包まれたフィナーレは、シリーズ最高の内容と景色を今村モータースのみならずお客さんとともに作り上げ、忘れられない1日となったのだった。
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by ハヤシマコ(maco-j)

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(2017年11月 3日更新)


Check

Set List

バンドで奏でた初ホールのプレミアム
“この街”シリーズ第6弾!

 
『この街の夕暮れと散歩道
〜初めてのホールワンマン〜』
5月28日(日) at 神戸朝日ホール

01. メロディ
02. 点と点
03. 踊るランドリー
04. プリン
05. 空想クラッシュ
06. ユニバース
07. thank you for the musicfan
08. 帰り道
09. get back home
10. 栄町通四丁目
11. 幸せになっていく
12. アコガレ
13. この街の夕暮れと僕の散歩道
14. ラララ
~ENCORE~
15. feel

Release

“この街”シリーズの1年半が歌となった
待望の3rdアルバムが遂にリリース!

Album
『この街の夕暮れと僕の散歩道』
発売中 2000円(税別)
アームテックパブリシャーズ /
スペースシャワーミュージック
DDCZ-2128

<収録曲>
01. 踊るランドリー
02. プリン
03. ユニバース
04. 空想クラッシュ
05. home waltz
06. 帰り道
07. アコガレ
08. この街の夕暮れと僕の散歩道

Profile

いまむら・モータース…地元神戸を中心に活動。ライブハウス、カフェ等、幅広い場所で歌いつつ、『COMIN'KOBE』等関西主要イベントにも毎年出演。’13年にリリースした1st アルバム『夢見gachi商店街』が、各地CDショップにてオススメアーティストとして展開され好調なセールスを記録。翌’14年9月には2ndアルバム『おかわりのかわり』を発売。収録曲の『点と点』が、地元Kiss FM KOBEの同月の推薦曲“HOTRAXX ”に選ばれ、さらには9月26日付ウィークリーチャートでは1位を獲得。そして、'15年3月には北野工房のまち 講堂にて『この街の夕暮れと僕の散歩道』、同年7月には神戸北野サッスーン邸にて『この街の異人館とふたつの灯り』、同年12月には神戸布引ハーブ園 森のホールにて『この街のハーブ園と空中散歩』と“この街”ワンマンシリーズを重ね、 '16年11月には3rdアルバム『この街の夕暮れと僕の散歩道』を発売、神戸VARIT.に浜端ヨウヘイを迎えたレコ発ツーマン『この街のライブハウスと旅の始まり』を開催。そして、'17年5月28日には神戸朝日ホールにてシリーズの集大成となる『この街の夕暮れと僕の散歩道~初めてのホールワンマン~』に挑戦、見事に成功を収めた。

今村モータース オフィシャルサイト
http://i-motors.info/
 

Live

神戸のこの街からとなりまちへ!?
D.W.ニコルズをゲストに迎え新展開へ

 
今村モータースpresents
『となりまちの公会堂とオムライス』
チケット発売中 Pコード341-363
▼11月5日(日)14:30
神戸市立御影公会堂
自由席3500円
[ゲスト]D.W.ニコルズ
アームテックパブリシャーズ■078(335)8877

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら


Column1

原点の風景に浜端ヨウヘイを招いた
極上のレコ発ツーマン!
“この街”シリーズ第5弾
『この街のライブハウスと
 旅の始まり』ライブレポート

Column2

頬をなでる爽風と世界一のつり橋
を臨む映画のような風景
“この街”シリーズ第4弾
『この街に架かる橋と僕の帰り道』
ライブレポート

Column3

森のホールが誘う
山頂の絶景と木のぬくもり
“この街”シリーズ第3弾
『この街のハーブ園と空中散歩』
ライブレポート

Column4

北野サッスーン邸が
昼夜で劇的に景色を変えた
“この街”シリーズ第2弾
『この街の異人館とふたつの灯り』
ライブレポート

Column5

変わらないでいるために、
変わり続ける。ルーツ、震災
ギター職人の道、dozens
そして神戸――ひらめきという
羅針盤を手に点と点を線にする
今村モータースの流浪の音楽人生
を語る撮り下ろしインタビュー