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結成10周年を迎えた空きっ腹に酒
アルバム『粋る』のこと、バンドのこと、ツアーのこと…
田中幸輝(Vo)&西田竜大(Gt)が語る!

聴く者に強烈な一撃を与えるジャンルレスな音楽で常に爪痕を残し続ける4人組、空きっ腹に酒。彼らは今年ついに結成10周年を迎え、4月5日には6枚目となるフルアルバム『粋る』をリリースした。そこで今回、バンドのこと、ニューアルバムのこと、さらに開催中の対バンツアーのことを、田中幸輝(Vo)と西田竜大(Gt)の2人にインタビュー! キレッキレの“空きっ腹サウンド”が生まれた景色が垣間見える、歯に衣着せぬトークをお楽しみください。

――結成10周年おめでとうございます。まずは10年を振り返っていただけますか?
 
田中「アルバムをコンスタントに出して、それをただ10年っていう感じではあるんですよ。ま、キリがいい数字やからお祝いしてますけど(笑)」
 
西田「(10周年に)昨年気づきましたからね」
 
田中「でもそれは、10周年は別に祝わんでもいいやん! っていうネガティブな考えではなく、単純に“いぇ~い!”って感じ。だから10年の蓄積されたものが! みたいなんはないです」

skpprnsk3.jpg――とは言え、メンバーチェンジや昨年の事故など割と波乱万丈ですよね?
 
田中「グラフにするとそうですね。今は上向きのこの辺(※1)ですかね。始めた頃にこう(※2)上がってくじゃないですか? で、こう(※3)……」
 
西田「何かの拍子に下がり出して」
 
田中「今、ここ(※1)」
 
西田「今がスタートかもしれないです」
 
――今が最高かと思いきや。
 
田中「今が低いというんじゃなくて、やる気しかないという。で、ツアーで上がって行ってということになると思うんですよね。事故とかメンバー脱退とかもあったし。でも今、こうやってアルバムを出してみて前向きな気持ちになれてるなって。最初冗談だっただけだけど、このグラフあながち間違ってないですね(笑)」
 
西田「意外とリアルやな(笑)」
 
――そして新作『粋る』ですが、1曲目は10年のことが詞になった『どーも』から。全体も10周年を意識しましたか?
 
西田「せっかくなんで(10周年を)銘打ってはいるんですけど(笑)、それを意識して作ったわけではないですね」
 
田中「1曲目だけ意識して歌詞を書いてます。トラックに関してはそうではないと思うんですけど。ま、挨拶がてらに祝っとくかと(笑)。でもこれが入ったことで他の曲もつられてそういう風に聴こえるのかも」
 
――これまでもテーマを先に決めて作品を作るタイプではないと話していらっしゃいましたね。
 
西田「そう、10周年とかテーマを意識し過ぎると作れなくなっちゃう」
 
田中「10周年っていう曲ばっかりそろっちゃう。“まじめか!”っていう」
 
西田「テーマがあるとガチガチガチになるんですよ(笑)」
 
田中「で、バンド辞めたい~ってなる(笑)」
 
――それはそれで聴いてみたいです (笑)。
 
田中「じゃ何かテーマください。それでやってみたい(笑)。ぴあと協力してぴあが決めたテーマでアルバム作るとかおもろいな」
 
西田「人からもらったもの(テーマ)だといいかも。自分たちで決めた時は平気で1時間ぐらい無言がありますからね」
 
田中「俺殴られんのちゃう?みたいな。怖い(笑)」
 
西田「何この時間?みたいな(笑)。全員が微動だにせず真剣に考えてるけど何も出ないという」
 
田中「ま、バンドを始めた時もテーマとかなかったんで。好きなことやりたい奴らが集まって、それぞれ“俺はこうしたいねん!”っていう。他のバンドみたいに(目標とするバンドの)音源を聴かせて、“こういうバンドになりたいねん!”とか、“いつまでにこのステージ立とうぜ!”みたいなこともほぼ話さずに来たし」
 
――それは敢えて?
 
田中「敢えてでもないですね。たぶん他のバンドのモチベーションと俺たちのモチベーションの形が違うんやろうな。言い方はちょっとおかしいかもしんないけど、他のバンドってライブでステージに立つまですっごいやる気があるんですよ。それに向けてっていう。うちもあるけど、感じないっていうか(笑)。見えないんですよね、メンバー同士で、モチベーションが」
 
西田「フフ。確かに」
 
田中「バンド内で刺激し合わないというか、小っ恥ずかしいのもあるのかもしれないですね。でも、結果として制作が始まると急に燃え出すから、1時間の沈黙とかになる(笑)。普段から話してたらある程度のことをお互いわかっててってなるけど、うちはそれぞれが好きなもん放り込んで、それをどうにか編集して作ってきた感じなんで、バンドに対する熱の持ち方が1か所に向かって全員で突き進むっていうより、全員ふらふら歩いてきて偶然そこに集まったっていう感じ」
 
――でも“あいつ何考えてんだ?”って気にはならないですか?
 
西田「ないですね。人のことに興味がない(笑)」
 
田中「仲はいいんですけどね。どんな音楽聴いてんのやろ? みたいなのは車移動の時とかに、(メンバーが)かけた音楽をカッコええなとかは思うんですけど、それで“こいつ今こういうのやりたいんや、じゃ俺も!”って思ったことはないです。あまりメンバーに影響を受けたくないっていうのがあるのかもしれない(笑)」
 
――珍しいタイプかもしれないですね。
 
田中「そうなんですよ。他のバンドと話した時にそう思ったんですよ。“うちはこういうバンドになりたいから、全員でここを目指してんねん!”みたいなことを言われて、スゲーなって」
 
西田「全然無理ですよ、全員で一つの所を目指すとか」
 
田中「何の信頼なん、それ? って。俺、メンバーのことなんて信頼してないですからね(笑)」
 
西田「そもそも提案とかしても、答えへん時とかあるしな。仲悪いわけじゃないんですよ。でも、しゃべってんのに何も答えへん(笑)」
 
田中「答えへんくても、それが意見として固まってる時があるからな」
 
西田「じゃ勝手にやるか! みたいな感じ。でも破たんはしないんです。付いては来てくれるし、まとまるんですよ」
 
――似たもの同士?
 
田中「どっか似てるかも」
 
西田「それぞれが一応考えて、それなりのやり方をしてるんやろうな~って」
 
田中「駆け引きを各自内々でやってるのかも。こういう話をしてると……俺ら陰湿なバンドやな(笑)」
 
(一同笑)
 
田中「いやでも、仲はいいんですよ(笑)。飲みにいったりとかするし」
 
――お互い許し合えるんですね。
 
田中「そうですね。許せるんかもな」
 
西田「許されへんかったら、即解散やで、こんなバンド。何やねん、こいつら! って(笑)」
 
田中「“嫌い!”って言って(笑)」
 
西田「2秒で解散です(笑)」
 
――めでたい10周年なのに(笑)。
 
西田「解散というワードが出ました(笑)」
 
――では話を今作に戻しましょう。テーマはなかったということですが、軸になったような曲はありますか?
 
西田「いやこれね、バランス取りたがりのところがあって……。どの曲からできたかな。『YES or NO』(M-7)とかかな。この辺からできて、今度はもっとポップさがほしいとか、キャッチーさがほしいとかで、『御乱心』(M-4)ができて『生きるについて』(M-3)ができて。で、バラードもほしいよねって『雨』(M-5)も入れてって……。だから何かが芯になって、そこから派生してできたというより、一個一個バランス取ってたらこの並びになって、最終的に11曲を通して、一貫してあるものが生きるというメッセージだったという。それで初めて芯になった感じですね。でも『生きるについて』はやっぱりできた時にハッとしたかな。リード曲かなって思ったし。だからアルバムのどこが中心になるかは、聴いた人に決めてもらったらいいと思うんですけど、僕らが芯だって言うなら『生きるについて』かな」
 
――『生きるについて』ができてハッとしたというのは?
 
西田「僕らの曲なかでも比較的ポップで、ポップなものを作ろうとしてできた曲。これは作曲がいのまた(Dr)なんですけど、“売れるものを作るつもりで作った!”って言ってて、何カッコ付けてんねんって思ったんですけど(笑)、ま、それに対して最初どう歌詞を書いたらいいかわからなくて、最後まで出て来なくて。だから1回音楽制作してるっていうのをゼロにして、書きたいこと……いや書きたいことですらないんですよね。書き写したというか写生したというか。実際に生きてて起きたこと、ありのままの事実だけを書いてみたんです。だから今までの曲のなかでも一番素直やなって思って、ハッとしましたね。曲に乗るような歌詞やないと思ったし、言葉も無理矢理詰めた気がしたし、しっくりこなくて、こんなん歌ってもうていいんかな? って。でも言葉選びは納得いってたんで、歌詞としてではなく言葉としては気に入ってはいたんです。ただ、なじむまでに時間がかかって、ライブでやる度にちょっとずつ好きになって、今はいい曲やなって思うようになりましたね」
 
――自分たちから生まれた曲でも違和感があることがあるんですね。
 
西田「それは結構ありますよ、歌詞じゃなくても。例えばメンバーが作ったフレーズを弾いて、どうなんやろうな?って思ってても、ライブでやってるとだんだん良いフレーズなんや! なってなるし、これだわ!ってなる」
 
――違和感を残してGOにしても良い方向に変わるんですね。
 
西田「作曲者が自分やったらGOにはしないですね。でも、軽いルールとして作曲者の意思を尊重する感じなんです」
 
――前述のバンドの人間関係みたいなものが出ていますね。
 
田中「そうかも。どっかで(メンバー同士)ストレスをちゃんと逃がしてあげられてるのかもしれないですね」
 
――さて『粋る』ですが、先ほども出たようにみなさんの尖ったイメージとは違いポップなテイストがいつもより濃いですよね。
 
田中「それはよく言われます。ま、バンド名もそうやしライブのパフォーマンスもそうやし、昔から知ってる人からしたら、そういう印象にはなるんかなと思うんですけど、でもそれこそ枠を決めてないので」
 
――今の気分はこれ!という感じですか?
 
田中「っていうのもあるし、もしからしたら、今はこれやったけど、11周年になったらほんまに、客のことぶん殴ってるかもしんないし(笑)」
 
西田「何があってん? そんな気に入らんかったんか、10周年?って(笑)」
 
田中「あかんかった~! って」
 
西田「周りが気使い出すわ!」
 
田中「ま、そこまではないと思いますが、丸くなったと言われても、丸くなってもいいじゃないって思うんですよ。丸くなったから弱くなったとか言い方をする子がいるんですよ。そういうやつはだいたいガキなんですよね、フフッ。って、こんなことインタビューで言っていいんかな(笑)」
 
――切れ味鋭いです(笑)。
 
田中「ま、丸くなったつもりはなくて……」
 
西田「ていうか、最初からそんな尖ってへん(笑)」
 
田中「尖ってないです」
 
西田「尖ってると思わせといて」
 
田中「尖ってるように見えたやろ?って。ま、そういうのが尖ってるって言われるんですけどね(笑)」
 
――ですね(笑)。さっき“こんなこと言っていいんかな”という発言がありましたが、同様の鋭い言葉は今作の端々に。
 
田中「そうですね」
 
――今作のポップさとそんな言葉が絶妙なバランスで痛快でした。
 
田中「そういうのは狙ってますね。こういう音に対してどんな言葉でアプローチしたら、おもしろいんやろ?っていうのは考えながらやってます。だからしてやったり!と言えばしてやったり(笑)」
 
――そういうバランスの取り方をしているラップって多くはないですよね。日常の風景から切り取ったシニカルな言葉とかはあるかもしれないですが。
 
田中「僕がバンドマン以外の生活をほとんどしていないんで、そういう歌詞になるのかな。例えば結婚したらまた価値観も変わるのかなって思うし、その変化はそのまま出したいなと思いますね。だから、10周年を今のバンドマン目線で出せたのはうれしい。でも、ずっと変わらずなんですけどね。みんな変わったって言うけど、昔からライブハウス嫌い、おもんないって、そういうことばっか歌ってる(笑)。それが愛情の裏返しってことにみんなやっと最近気付いてきて……。僕としてはかまってほしいんですよ! ま、声を大にして言うことでもないんですけど、気付いたんなら反応してくれ! と。ずっとSOSを出しているんですよ」
 
――10年のうちに聴く方の理解も深まっているんですね。
 
田中「でも僕自身あまり共感してほしいとは思ってなくて。ただ、この前それはそれでおもしろいと思ったのは、複雑に私なりに読み込んだって子がいたんですよ。でも、いや俺そんなこと書いてないし! ってなって(笑)。だけどそれは歌が報われたなって、すばらしいことやなって思って。だからどんどん深読みできる歌詞にはしたいですね」
 
――深読みできるのりしろは大事ですよね。歌詞だけでなくブログの全曲解説も語り過ぎず、うまいなと思いました。
 
田中「あ、俺上手なんですよね~(笑)」
 
西田「ハハハ!」
 
田中「あれをちゃんと読んでくれるのがうれしくて。最初、解説とかやりたくなかったんですよ。でも、幸輝さんの歌詞ってわけわかんなくて好きですって言われた時に、わけわかんなくて好きになるな!って、そういうのがキライって歌ってるんや! って思って、それで(解説を)書き出して。誰か1人でも傷つけばいいのにって書きましたね(笑)」
 
――愛情の裏返しですね(笑)。全曲解説、読んでもらいたいですね。
 
田中(西田に)「読んだ?」
 
西田(即答で)「いや」
 
(一同笑)
 
西田「読んでみよかなとは思ってる。てか、今思った(笑)」
 
――この距離感が最高です(笑)。さて先ほど音に対する言葉のアプローチの話が出ましたが、逆はどうですか? こんな言葉が乗るといいなと思いながら曲を作ることはありますか?
 
西田「それはないですね。どうでもいいってわけでもないですけど、全然そんなことは思ったことはない」
 
田中「そこが分かれてるから安心。信頼なのかなって思う」
 
――領域に侵入して来ないという安心?
 
田中「そうそう。歌い方とかで“ちょっと乗りきれてないよ”とか……」
 
西田「そんなんはある」
 
田中「でも歌詞についてはめったに何も言わないですね」
 
西田「単純に“良いと思わないけど”とかは言うけど」
 
田中「そういう時は、後で読み返すと本当に良くないんですよね。だからちゃんと読んでくれてるんやって思います」
 
西田「いやいや~、私、歌詞は結構ちゃんと読みますよ~。ブログもちょいちょい読んでますよ~(笑)。文章がうまいな~って。言葉を巧みに繰り出しますよね!」
 
――こうやって持ち上げてやる気にさせるんですね(笑)。
 
田中「それ言っちゃいます(笑)?」
 
西田「でも褒める時は褒めますよ。ちゃんと」
 
田中「そうですね。僕も常に褒めますから」
 
西田「この2人は特に傷のなめ合いというか」
 
田中「飲みに行ってまで言いますからね(笑)」
 
西田「“いい歌詞やと思うで~” (笑)」
 
田中「“やろ~?”って(笑)。何なら昔のアルバムとか引っ張り出して“あの曲良かったよな~”って」
 
西田「“あそこのギターがガーッて来る時テンション上がるねん。やっぱそうやんな~”って」
 
――仲良し(笑)。ではツアーの話も。バラエティ豊かで豪華な面々との対バンです。
 
田中「今作を聴いてもらった感触の対バンになるかなと思うんですよ。誰とでもやれるねんで感があるかなって(笑)。逆に、誰が合うねん?というか」
 
西田「ベストマッチ、おらん(笑)」
 
――同色という意味でのマッチ。
 
田中「でも、対バンってそれでいいんかなって。ばっちり合ってしまったら“対”にならない」
 
西田「でも、世の中ベストマッチで成り立ってるけどね(笑)」
 
田中「……ま、それはお客さんが決めることや(笑)! ま、どんな日になんねん?って楽しみですね。自信ありますよ!」
 
――全公演違うでしょうね。
 
田中「対バンのステージによって僕らが同じセットリストでも違った景色が見えてくると思うんですよ。GOING UNDER GROUNDの後の俺らと、ザ50回転ズの後の俺らは絶対違いますからね。いろんな会場に来る方がいたらその感じも楽しんでほしいですね」
 
――では最後に読者にメッセージを!
 
田中「これをご覧になっている方はライブに興味がある方だと思うので、既にわかっておられると思いますが、ライブは楽しいものなので、その楽しいということを……ちょっと乗り越えてみないか?」
 
(一同笑)
 
田中「楽しいの向こう側!」
 
西田「難しくなってきた!」
 
田中「そろそろ普通のライブに飽きてきただろう? それを越えてみたくないか!」
 
西田「俺らは何をやるねん! もうこの後、何言うたらええねん。え~っとアルバムを聴いて……ライブに……来るといいよ~」
 
田中「フツー(笑)」
 
西田「よろしくお願いしますっ(笑)!」

Text by 服田昌子



(2017年6月 2日更新)


Check

Movie Comment

Release

『粋る』
発売中 2500円(税別)
apple of my eye
AOME-0016

<収録曲>
01. どーも
02. fashion
03. 生きるについて
04. 御乱心
05. 雨
06. キョとムー
07. YES or NO
08. FLOW
09. 黒に赤
10. グル
11. 心の唄

Live

『空きっ腹に酒 結成10周年
6th Full album Release tour
粋なり対バンツアー』

【北海道公演】
チケット発売中 Pコード324-069
▼6月10日(土)19:00
mole
オールスタンディング3000円
(ドリンク代別途必要)
[共演]ザ50回転ズ
マウントアライブ■011(623)5555

【広島公演】
チケット発売中 Pコード325-197
▼6月16日(金)19:00
HIROSHIMA BACK BEAT
オールスタンディング3000円
(ドリンク代別途必要)
[共演]ザ50回転ズ
夢番地広島■082(249)3571

【福岡公演】
チケット発売中 Pコード325-088
▼6月17日(土)18:30
graf
スタンディング3000円
(要1ドリンクオーダー)
[共演]アカシック
BEA■092(712)4221

Pick Up!!

ツアーファイナル
【大阪公演】

チケット発売中 Pコード321-260
▼6月25日(日)18:00
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング3000円
(ドリンク代別途必要)
[共演]忘れらんねえよ
GREENS■06(6882)1224

チケット情報はこちら


空きっ腹に酒 オフィシャルサイト