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「このアルバムが最期になってもいいような生き方がしたかった」
さよなら、最終少女ひかさ
結成から『最期のゲージュツ』までのヒストリーを語る永久保存版!
メンバー全員インタビュー&動画コメント

 『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO』への出演、初の全国流通盤『グッドバイ』(‘16)はタワーレコードのプッシュアイテム“タワレコメン”に選出。北の大地からみなぎる衝動とメッセージを放ち、着々とその名と才能を知らしめてきたロックバンド、最終少女ひかさ。なのにHPはまだまだ簡易な魔法のiらんど(笑)。近年の躍進ぶりから、どうせこれから豪華にリニューアルするんでしょ、いずれメジャーデビューもするんでしょうよと、そんな未来も想像に難しくなかったきらめきと勢いを備えた彼らだったが、この春、ミニアルバム『最期のゲージュツ』をリリースした矢先に、突如として届いた衝撃の一報…。文字通りバンドにとって『最期のゲージュツ』となった今作の、ラストを飾る楽曲は『さよなら最終少女』…どこまでも見事過ぎるオチは、意図せぬものだったのか、予期したことだったのか。このインタビューはその発表前に行われたものだが、図らずしも、但野(vo&g)の音楽の原点、バンドの結成から今日に至るまでの紆余曲折のストーリーと、メンバーの愛すべきパーソナリティをふんだんに含んだ内容となっており、最終少女ひかさとは何だったのかを垣間見るような想いである。事実上の最後のツアーとなったリリースツアー『GEKOKUJO! -2017巣立ち-』に捧ぐ、永久保存版の全員インタビュー。我々は今、シーンからまた1つ大きな輝きが失われるのを見届けようとしている――。

 
 
“ヤバい、多分このままだと俺は一生言い訳をし続けるな”と思って
 
 
――元々は但野(vo&g)さんが弾き語りで活動していたということですけど、音楽を始めたきっかけ自体はいったい?
 
但野「小3ぐらいのとき、川本真琴をテレビで見た瞬間に“そうか、俺はこの人みたいに歌を歌うんだ”って子供ながらに思ったんですよ。でも、自分の気持ちをハッキリ言えなくてモジモジしてる子供だったので、親とかには言わないで。そしたらコースティックギターを持ってるおじさんの家に遊びに行くチャンスがあって、何か興味ありげに触ってね。ホントは“くれ!”って言いたいのに(笑)。“お? 何か弾いてみる?”、“どうやって弾くの? へぇ〜結構面白いね”とか言いながら、ずーっとギターを離さない。“結構興味あるの?”、“いや、まぁ”。“あげようか?”、“えっ、いいの? っしゃー!”みたいな(笑)。それが小6ぐらいですかね。もしかしたらテレビに出たいとか、有名人になりたいとか、そういう感覚だったのかもしれないけど、あのときピンときたのが歌を歌うことだったのかなって」
 
――そもそも川本真琴に出会うまでに、歌が好きだと自覚することはあったんですか?
 
但野「なかったです。むしろ歌で褒められたことがなかったですし。ふざけたりはしてた子供だったんですけど、自分の希望とか、何かが欲しいとかは、何か言えなかったんですよ。昔からいい子でいようとするのは何なのか本当に分からないんだけど。天性なのかな?(笑) 顔色を伺いまくるスタイルで、だんだん希望どころか人に嫌われるようなことは言わなくなって、徐々に徐々にゆっくりゆっくり暗い人間に(笑)。小学生の頃は学芸会があったら“主役をやります!”みたいに明るかったけど、中3の頃には大道具か照明みたいな(笑)。人との距離を置き始めた感じですね」
 
――でも、クラスの真ん中から端っこの人間になっていく中でも、音楽だけは能動的に始めようとしたわけで。
 
但野「いや、ギターを手にしてからは意外とあっさりしたもので、弾けねぇからすぐに押入れに入れて(笑)。でも、ゆずとかが流行り出した頃に、もう1回引っ張り出してきて。その後、ゆずがラジオで↑THE HIGH-LOWS↓の『千年メダル』(‘98)を流したときに、“こんな曲があるんだ…カッコいい!”と思って。そこからなんですよね、バンドに興味がいったのは。ただ、音痴だったんでギタリストとしてバンドをやろうかなと思ってたんですよ。そもそも弾き語りを始めたのも結構遅くて、24~25歳とか」
 
――ギター手に入れるのはめっちゃ早かったのに(笑)。
 
但野「そうなんですよ(笑)。元々曲は書いてたんで、“歌が上手かったら自分で歌うのに”ってずっと思ってたんですよね。俺は当時パンクが好きで、Hi-STANDARDが好きで、メロコアに影響を受けてて。札幌にB.B.JUNKIEっていうロックンロールバンドがいて、ミッシェルガンエレファントを好きになったのもB.B.JUNKIEがきっかけだし。初めてライブを観たときにもう、一目惚れで。今まで自分が聴いてきた音楽と、メロディの乗せ方も、声の出し方も、ファッションとか視覚的な要素も全部が違うんですよ。短パンにデカいTシャツを着てたのが、細いズボンに柄シャツにロン毛、みたいな(笑)。ギターも持たずにマイク1本で歌ってて、“この人になりたい!”って思った。すごくカッコよかったから。でもまた、“歌下手だしな”みたいにウジウジして、歌が上手くなる手術があるならすぐ受けるのにとか家で考えてて(笑)。ただそこで、“ヤバい、多分このままだと俺は一生言い訳をし続けるな”と思って、上手くなるには多分ボイトレしかないだろうと。ただ、そのときはギタリストでメロコアをやってたので、いきなり俺が歌うからみたいに話しても“いや、お前歌下手じゃん”って言われると。だから、ちょうどドラムも辞めたタイミングだったんで“バンドを辞めて、俺は歌を歌うわ。リョウジごめん!”って(笑)」
 
――リョウジって誰(笑)。
 
(一同笑)
 
但野「でも、“バンドやろうぜ”とは知り合いに言えないんだけど、見ず知らずの前でバーン!っと叩きつけたら、誰かにいいって言ってもらえる自信はあったんですよ。だから、まずは1人で弾き語りをやって、いいって言われたらその人とバンドをやろうと思って(笑)」
 
――何だかねじれてるというか、不思議ですね。でも、自分の作る曲には絶対に共感する人がいるはずだと。
 
但野「無知だからこそ、今より逆に自信があったな。同じ気持ちの人が絶対にいるはずだって」
 
 
これだったら人を楽しませられるバンドになるなと思ったんですよ
 
 
――そんな中で、このメンバーはどうやって集まっていくんですか?
 
但野「このバンドが第一段階じゃないんですよ。まずは弾き語りを1年間やって、俺の音楽がいいって言ってくれた男の子と、いいって言ってくれた主婦の人と(笑)」
 
(一同笑)
 
但野「あとは、バイト先の子でライブを観に来てくれてた子と、初心者ばっかりのバンドを結成して。お客さんがいないのに月に5本ぐらい札幌でライブをやりまくってたら、活動がやっぱり厳しくなってきて。特に主婦の人が」
 
――主婦が月に5本ライブを入れられたらね(笑)。
 
但野「さらに3人の子供がいて(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
但野「旦那さんがやたら理解がある人で、夜中にスタジオが終わって家に帰ったら、ギターの教則本がテーブルに置いてあったんですって(笑)。そんな旦那さんいるんだ!って」
 
――めっちゃ理解ある! いい話だなぁ…。
 
「今でもその人にはたまに連絡するけど、本当に幸せになってほしい(笑)」
 
――どんなメッセージ(笑)。載せるわ(笑)。
 
(一同笑)
 
但野「でも、俺の精神がどんどん疲弊していくんですよね。病み過ぎて円形脱毛症もできちゃったりして。そこで解散しちゃって、また1人ぼっちで歌ってて。そのとき、当時弾き語りをやってたシュンキ(=g・山田)に出会って。シュンキも元々はバンドでギタリストをやってたからいいなと思って誘いましたね」
 
山田「当時は何もしないよりはマシだから弾き語りをやって、またバンドに入ってを何度も繰り返してて。当時、お互いバンド同士で対バンしたときに、ピンボーカルで自分の好きな声質だったから、めっちゃカッケェと思って」
 
――残りの3人とはどうやって出会ったんですか?
 
但野「それぞれ界隈で存在は知っていた人たちで。でも、仲がよかったとかじゃないんだけど。各々のバンドが解散したのを聞きつけ、やろうかって誘って」
 
イワノ(ds)「ただ、一番最初に誘われたときはそんなに乗り気じゃなかったですね。でも、但野さんからのメールに返事をしてない状態で観に行った他のバンドのライブで但野さんと会っちゃって(笑)。その後にスタジオに入ったんですけど…あっという間に加入してましたね」
 
小野寺(b)「俺は結構乗り気でしたね。但野さんがやってた主婦がいたバンドを(笑)、カッコいいなと思ってたんで。ちょうど俺がやってたバンドが解散するタイミングで最終少女ひかさのベースが脱退してて、やりたいなぁと思ってたら電話が来ました」
 


――小野寺さんのエピソードで面白かったのは、ベースの弦を換えずにベース自体を買い換えてたっていう(笑)。完全にセレブリティやん(笑)。
 
但野「嘘でしょ?」
 
小野寺「いや、本当なんだ…だから最初はベースを8本とか買ってたんですよ(笑)」
 
(一同爆笑)
 
小野寺「自分で簡単に交換できるものじゃないと思ってて。何か難しそうだから、もうベースを買った方がいいかなって(笑)。最初は1万円ぐらいの初心者用を3本ぐらい買って、その後は4万円ぐらいのやつとか」
 
――じゃあ弦がヘタってきたときは、“あぁ、また4万かかるんだ…”みたいな?
 
小野寺「そうっすね(笑)」
 
但野「ヤバいなぁ~それ。よく親に止められなかったね。どれだけ金が掛かるのよ」
 
――すごいね。だって、めんどくささが4万に勝ってるからね(笑)。俺が近くに住んでたら“3万で弦を換えてあげるよ?”って言ってるわ(笑)。ラモネスさんは?
 
ラモネス(key)「私は元々その主婦バンドでベーシストだったんですよ。ただ、彼が傷付いていく状況を見ながら何もできなかったのもあって、このバンドに入るときはまたハゲさせてしまうのではないかと思いつつも(笑)、まぁ違うパートだったんで。ピアノはお母さんが元々ピアノの先生だったんでやらされてて。しかも娘だからかちゃんと弾けなかったら散々怒られて、一時はピアノが嫌いになっちゃってたんですけどね」
 
――で、このメンバーが揃ったと。
 
但野「組む前に、今のメインとなっている4つ打ちでちょっと言葉を詰め込んでみたいなノリの曲ができて、これだったら人を楽しませられるバンドになるなと思ったんですよ。だから、ずっと札幌でしかやってこなかったけど、’13年に組んだらすぐに道外にも行きましたし。それまでにやってきた活動の仕方を全部変えましたね」
 
――今までの音楽人生の中でも、スタートの段階から全然違いますね。
 
但野「そうですね。素人じゃないし、主婦じゃないし(笑)」
 
――音楽に限らず、“俺はまだ本気出してないだけ”じゃないですけど、だいたいエンジンをかけられずに終わる人生の方が多い。やりたいことはあっても本気になるのって結構難しいと思うんで、よくギアを入れられましたね。
 
但野「多分それが、ロックンロールとの出会いなんじゃないかと思ってて。言い訳ばかりの自分に嫌気がさしてたのはあったんだけど、保険をかける性格だったから、“本気で音楽やってるの?”って聞かれたら“いや、別に遊びだし”みたいにはぐらかして…傷付くのが怖かったんですよね。ただ、B.B.JUNKIEはホントに衝撃的な出会いだったので、俺はやらなきゃいけないんだって思ったし、そのときに無理やり変えましたもん。音楽に変えられましたね」
 
 
それがいい/悪いじゃなくて、そうするしかないというか
そうじゃなきゃいけないと思った
 
 
――前作『グッドバイ』(‘16)は、最終少女ひかさを知ってもらうきっかけになったと思うんですけど、自分たちにとってどんな作品だったと思います?
 
但野「良くも悪くもライブのまんま、みたいな。アレンジもそうだし、テンションもそう。ライブしかやってこなかったのでそれが正解というか、それしか方法がなかったというか。ライブのためにずっと曲を書いてたし、結成してから活動していく中で溜まっていた2年半分の曲をCDに入れるのが目的だったんで、当時の自分からしたら、まずは成功だと思うんですけど」
 
――じゃあそれをやっちゃった後にどうするんだ?っていうのが今回の『最期のゲージュツ』ですもんね。
 
但野「それまでもデモCDは作ったことがあったし、初めてちゃんとしたエンジニアがいるレコーディングをしたシングルの『関係者でてこい』(‘14)のときはもういっぱいいっぱいだったし、その次のシングル『いぎありわっしょい』(‘15)でも結構そういう状態で消化できてなかったんだけど、『グッドバイ』で“レコーディングってこういうものなのか”って初めて知って。ただ、レコーディング中にそう思ったから、事前に準備ができないまま終わっちゃって。レコーディングの前に、まずプリプロをやるじゃないですか。そのときに何の準備もしてなかったんですよ。それまでは自分が作った曲だから、音を外しててもリズムが合ってなくても、どんな状態でもかわいいんですよ。けど、そのプリプロを何回も繰り返し聴いてたら、だんだん“こんなの世に出しちゃダメだ”って思えてきちゃって…。そこで自分の意識と耳が結構変わって、音源だからできるアレンジを考え始めたりして…でも、そこからだとやっぱり限界があるというか。だから『グッドバイ』のレコーディングが終わる頃には、“次は音源のための曲を書こう”と思った。『グッドバイ』っていうタイトルにしたのも、ここまでの空気感とはここで全部お別れしたいっていう意味なんですよ。勢いや真っ直ぐさだけじゃなくて、次のアルバムでは新しい最終少女ひかさを見せたい。本当は半年後ぐらいに次の音源を出したかったけど、そこから曲作りも悩んでいたというか…って何の話をしてるんでしたっけ?(笑)」
 
イワノ&ラモネス「(笑)」
 
但野「だから今回は、ライブで演奏できるかどうかは問題じゃなかった。俺がデモを作って、みんなに聴かせて、それが音源として仕上がっていくかどうかが重要だった。そういうチャレンジをしていく必要があったんですよね」
 
ラモネス「確かに、曲自体もちょっと難易度が上がったように感じましたね」
 
――あと、歌詞に関しても絞り出す作業で、今回は相当本音も出てると。
 
但野「はい。『グッドバイ』のときは正直、のんきなままだったし、曲数的にもまだ作ってなかったから、いくらでも言いたいことはあって。その上っ面だけすくっちゃえば歌詞として十分な言葉数になってたんですよ。けど、そういうふうに出てきた言葉は、もう使い切ってしまった。また2~3年経ったら、自然と言葉が出てくるかもしれないけど、もう待てなかったんで。俺は半年後に作りたいと思ってたぐらいだから、自分の中に取りにいかなきゃいけない。それがいい/悪いじゃなくて、そうするしかないというか、そうじゃなきゃいけないと思ったし。『グッドバイ』のときは“上手いこと言ってやった”とか思ったけど、今回の歌詞を書いてるときはもう無我夢中で、いいか悪いかも全然分からなかったですね。出来上がった作品で歌詞を見てやっと、“大丈夫だったんだ”っていう感じ。聴かれるの怖っ!みたいな。自分の歌詞を客観視できてないというか」
 
 
ブレ続けていたいなって思ってます
ブレなくなったらおしまいなんだ俺は
 
 
――今作のタイトル曲と言ってもいい『Rolling Lonely review』(M-4)なんかは宣戦布告とも取れるし、強いメッセージのある曲で。
 
但野「これは思いっ切り歌詞が先なんですよね。俺の弾き語りは、言ってしまえばメロディのないポエトリーリーディング的なものも結構多くて。この曲は俺が弾き語りでしてきたようなことを、バンドサウンドで退屈しない曲調まで持ってけないかなと思って作ったので、本当に『グッドバイ』と『最期のゲージュツ』のつなぎ目というか。『最期のゲージュツ:エピソード0』みたいな曲ですね」
 
――この曲でもそうですけど、孤独を肯定することが但野さんの1つのテーマというか。今ってフェスとかも含めて“みんなで”っていう行為がすごく多いし、バンドも仲間意識とそれに伴う戦略やアピールが強い中で、“個”であることを訴え掛ける意図はあります?
 
但野「“孤独でもいいんだ”という気持ちはハッキリとありますね。このメッセージだけは、聴き飽きたと言われても言い続けるべきだと思ってるぐらい。今この瞬間に聴く人がいるかもしれないから。今さら音楽でそんなこと言われてもって感じかもしれないけど、散々歌われてきたことかもしれないけど、俺にとっては異常に重要で」
 
――何なんですかね、その執着みたいなものは。
 
但野「(メンバーを見て)我々みたいな人間は、孤独を武器にするじゃん? 友達がいないことをむしろネタにするというか、ポジティブに捉える。でも、そうじゃない人も絶対にいるじゃないですか? 確かに俺も高校生のときとかは、もう暗くなりまくってパンクに出会えたけど、学校では孤独な自分がすごい怖かった。そこを笑い飛ばせるのがロックンロールなのかなぁって思うし」
 
――あと、『ロリータ』(M-6)とかもそうですけど、ボーカルスタイルがちょっと歌謡曲っぽいというか、ハイボルテージで言葉数が多いだけじゃない表現もありますね。
 
但野「それは俺がブレる人間だからですね。B.B.JUNKIEを観る前はHi-STANDARDになりたいと思ったし、川本真琴になりたいと思ったし、ゆずになりたいと思ったし、甲本ヒロトになりたいと思った。めっちゃ欲しがりなんですよね。他人のできることが自分もできるようになりたい。だからいまだに、対バンとかを観てカッコいいなって素直に思うんですよ。そのギターの弾き方を俺もできるようになりたいと思うし、そういう歌い方ができるようになりたいと思う。自分ができるようになりたいと思ったことに対して努力するのが苦痛じゃないというか、嫌いじゃない」
 
――メンバーから見たら、“今はあいつに影響受けてるな~”とかは分かるんですか?
 
ラモネス「もう対バンを超えてお笑いとかもね。いろんなサブカルチャーを吸収して影響されてるなって」
 
但野「すごく影響されやすい。だからブレ続けていたいなって思ってます。ブレなくなったらおしまいなんだ俺は」
 
イワノ「ちょっと前は、MCの喋り方がめっちゃMy Hair is Badで」
 
――アハハハハ!(笑)
 
但野「あれはもう素直にアッパレ!と思ったんで、ちょっと武器にしたいなと思って(笑)」
 
――素直だな~(笑)。人と同じがイヤだから避けて避けてどんどん狭まっていく場合もあるのに、むしろそれを取りにいってデカくなっていく。
 
但野「俺が絶対に言わないことを言ってるのが大事なんですよね。そして、中身は俺のままで、その“やり方”だけをいただく。昨日とか、SIX LOUNGEのMVとかめっちゃ見てたもん。歌声とか弾き方がカッコいいな~って」
 
ラモネス「ちょっと前はnever young beachの」
 
但野「あぁ~ネバヤンのファッションね(笑)」
 
――アハハ!(笑) お前もう、音楽ビッチじゃねぇか!(笑)
 
但野「音楽ビッチ、音楽ヤリマンっすよ(笑)。髪をめっちゃ長くして毛先だけ染めてたのは、ネバヤンのボーカルの人の影響です(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
ラモネス「急にニットキャップとか被りだしてね(笑)」
 
――それはもう終わったんだ?
 
但野「うん。髪を切っちゃったからニット帽が似合わなくなっちゃって(笑)」
 
――でも、中身は俺のままであることが大事ってことは、それを取り込んでも取り込まれてないってことですもんね。持っているものが濃いというか、それが最終少女ひかさの得体の知れない感というか、ミクスチャー感になってるのかもしれないですね。
 
但野「でも逆に、音楽をたくさんは聴いてこなかったんですよね。古い洋楽とかは知らないし、俺が言うロックンロールって超限定的だし。カッコ悪いものはロックンロールじゃないし、声がしゃがれてて、ビートも超タイトで、みたいなものが俺の中ではロックンロールだから。全部が限定的だし、音楽は本当に詳しくない。だから最近の若手とかを観ても、“カッコいい。マネしよう!”みたいな(笑)」
 
 
本当は応援してくれる人に元気とか希望を与えなきゃいけないのに
むしろもらってばっかりで
 
 
――今作には、ラモネスさんの初ボーカル曲『さよなら最終少女』(M-7)も収録されています。せっかくバンドに紅一点がいるんだから、もっと機能させようと?
 
但野「その気持ちは思いっ切りありましたね。曲ができてラモネスに歌わせるんじゃなくて、初めからラモネスに歌わせる曲が作りたいと思って。ラモネス人気にあやかってじゃないけど(笑)、純粋にやってみたかったんですよね。あと、ここまでアルバムを聴いてきて、最後にラモネスが歌う曲がきたらビックリさせられるなと思ったんですよ。作詞作曲が違う人なのかな? みたいに思ってくれたらとか、そういう狙いが初めからあったというか」
 
ラモネス「ただ、私も歌を歌ってたわけではないし、大丈夫かな?って思いながら。思いながらも、レコーディング当日に歌詞が全部できてなかったんですけど(笑)。もういろいろと不安で。でも、結局、自分の実力を超えた仕上がりになったんで。この曲は、さっき言ってたようなライブで演奏できる曲から一番遠い曲だなって」
 
――この曲の歌詞は本当にダイジェストのような、『最期のゲージュツ』のトレーラーじゃないですけど。
 
ラモネス「そうですね。探していただけるといろいろ面白いかと」
 
――ちなみに、『A.N.Z.N』(M-1)って何なんですか?
 
但野「『A.N.Z.N』=“安全”っていう意味と、あとは俺らは音楽を産んでるじゃないですか? 今回の制作が相当苦しかったのと掛けて“安産”っていう意味もあります。初めはただアルファベットが並んでれば何でもいいと思ってたんですよね。『PPAP』(‘16)みたいに(笑)」
 
――そこも取り入れる?(笑) そして、今作には『半分人間』(M-5)の歌詞の中にも出てくる『最期のゲージュツ』というタイトルが付けられてます。
 
但野「これは『グッドバイ』の“ここまでの空気感とはここで全部お別れしたい”とは違って、このアルバムが最期になってもいいような生き方がしたかった。常に俺は遺言を書き続けたいというか、明日死ぬんだったら、最新版の今日言いたいことを残しておきたいんですよ。だからと言って、日記を付けてるわけでもないし、無意識に明日は死なないと思っちゃってる。ただ、明日死んでもいいように生きるなんてどう頑張っても無理だけど、タイトルを付けてしまえば相当プレッシャーになる。『最期のゲージュツ』にすることで、やり残しのないアルバムができるかなって。『最期のゲージュツ』っていう言葉自体は、いつか使おうとずっと思ってたんですよね」
 
――ツアーも控えてますが、ワンマンができる箇所も増えてますよね。
 
但野「“できる”というよりは“挑戦してみる”感じですね。多分無理じゃない?って周りには言われたけど、それでもやりたい。せっかくだからワンマンで観せたいなって」
 
――各地で自分たちを知ってくれる人も増えて、ライブ自体は変わってきました?
 
山田「基本的には変わらないですね。お客さんが全くいないときもいるときも、“舐めんなよ!”って思いながらやってる部分があるんで。でも、ちょっと変わったことは、嬉しいときに笑っちゃうようになっちゃいましたね。何かステージで笑っちゃいけないのかなって今までは思ってたから」
 
ラモネス「過去のライブ映像を観たら自分が結構オラついてて、今では観たくないぐらい大人になりました(笑)。やっぱり応援してくれてる人の力が大きいのかなって思います。本当は応援してくれる人に元気とか希望を与えなきゃいけないのに、むしろもらってばっかりで。私もいいバンドを見付けたら応援しようかなって、応援してくれる人を見て思います!」
 
――最後にフロントマンに締めていただきたいなと。
 
但野「もうストックもないし、次の作品がどうとかもない。『グッドバイ』を作り終わったときみたいな感じはなくて、今は何も考えてないですね。ワンマンに向けてやるべきことをやらないとって。そもそもワンマンって簡単にやっていいことじゃないと思うんですよね。来た人を1バンドで満足させなくちゃいけないことだから、それに見合うチケット代、時間に見合う努力をしていかなくちゃいけない。6月のファイナルまでどうしよう?って感じですね。前回のワンマンで結構アイディアを使っちゃったので、またそれかって思われたくないし」
 
――それはライブに行ってのお楽しみということで。あとは、ツアーまでにまた誰に影響を受けてるかですね(笑)。
 
但野「はい(笑)。それをライブでも探してほしいです(笑)」
 
――本日はありがとうございました!
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
 




(2017年5月12日更新)


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Movie Comment

想いと人柄伝わる…ぜひ見てほしい!
最終少女ひかさからの動画コメント

Release

ハイエナジーで多彩なアウトプットに
心地よく翻弄される全7曲!

Mini Album
『最期のゲージュツ』
発売中 1836円
LUCKY HELL
Lucky-1002

<収録>
01. A.N.Z.N
02. ハルシオン
03. レイラ
04. Rolling Lonely review
05. 半分人間
06. ロリータ
07. さよなら最終少女

Profile

さいしゅうしょうじょひかさ…写真左より、小野寺宏太(b)、ラモネス(key)、但野正和(vo&g)、イワノユウ(ds)、山田駿旗(g)。’13年、晩春に北海道札幌市にて結成。’14年、札幌タワーレコード ピヴォ店のみで発売された限定シングル『関係者でてこい』が話題になり、’15年3月に全国タワーレコード限定シングル『いぎありわっしょい』をリリース。同時にオリコンインディーズチャート9位にランクイン。 同年8月には『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO』に出演を果たすなど、札幌を拠点に全国へその名を広める。‘16年4月に初の全国流通1stアルバム『グッドバイ』を発売し、同アルバムは4月度のタワーレコード“タワレコメン”に選ばれ、オリコン週間インディーズアルバムランキング11位を獲得。そして、’17年3月22日には1stミニアルバム『最期のゲージュツ』をリリースするものの、同作に伴うリリースツアー『GEKOKUJO! -2017巣立ち-』のファイナル、6月23日(金)札幌moleでのワンマンライブをもって解散。同ツアーにて会場限定シングル『ディアマイフレンド』を急遽発売することが決定した。なお、バンド名は但野が声優の日笠陽子のファンであることに由来。

最終少女ひかさ オフィシャルサイト
http://s.maho.jp/homepage/5305a8hd60143afb/

Live

解散ツアーでは会場限定音源も販売
+関西では野外イベントにも出演!

 
『GEKOKUJO! -2017巣立ち-』

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード319-715
▼5月14日(日)18:00
Shangri-La
オールスタンディング2800円
GREENS■06(6882)1224
※3歳以上は有料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【香川公演】
▼5月16日(火)TOONICE
[共演]ペロペロしてやりたいわズ。
【広島公演】
▼5月17日(水)広島Cave-Be
[共演]ペロペロしてやりたいわズ。/
南風とクジラ
【福岡公演】
Thank you, Sold Out!!
▼5月19日(金)Public Space 四次元
 

Pick Up!!

【大阪公演】

『GREENSPARK!!』
チケット発売中 Pコード328-977
▼6月3日(土)昼12:30
服部緑地野外音楽堂
全自由1000円
[出演]ドラマチックアラスカ/
ピアノゾンビ/フィッシュライフ/
The Floor/アーバンギャルド/
最終少女ひかさ/FINLANDS/
ハンブレッダーズ
GREENS■06(6882)1224
※雨天決行、荒天中止。小学生以上は有料。出演者の変更・キャンセルに伴う払戻しは不可。

チケットの購入はコチラ!
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【東京公演】
▼6月9日(金)UNIT
【愛知公演】
▼6月11日(日)CLUB ROCK'N'ROLL
【北海道公演】
▼6月23日(金)mole


Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「結果的に、最初で最後の取材となってしまった最終少女ひかさ。インタビューを読み返してみると深読みできるところもありますが、それよりも北海道在住である同郷のメンバーならではの空気感や、初登場×初取材ということで原点からたどっていった中から出てきた数々のエピソードや発想には、“これから”を大いに期待させるものがありました。しかし、ベースの弦のくだりは面白過ぎたな~天才か!(笑) 何ともまぁ複雑な気持ちですが、バンドがなくなっても、彼らの音楽は残ります。そして、ラストツアーで各地を巡る5人に、ぜひ出会ってください。ありがたいことに関西はワンマンに加えイベントでも彼らの有終の美を観ることができるので、僕もしっかりこの目に焼き付けます! 伝説の予感!!」