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原点の風景に浜端ヨウヘイを招いた極上のレコ発ツーマン!
今村モータースが挑む
神戸を舞台に情景を切り取るライブシリーズ第5弾
『この街のライブハウスと旅の始まり』レポート

 神戸発のシンガーソングライターとして、『COMIN'KOBE』『トアロード・アコースティック・フェスティバル』など関西の様々なイベントでも、飄々とした佇まいを心地よく裏切る少年性を湛えた歌声と、いつかの情景を描き出すグッドメロディを礎に、その人を食った名前と存在感をじわじわ浸透させてきた今村モータースの“挑戦”。旧小学校となる北野工房のまち 講堂での『この街の夕暮れと僕の散歩道』、歴史的な異人館・北野サッスーン邸でのアコースティック/アンプラグドな昼夜2回公演『この街の異人館とふたつの灯り』。さらには、神戸の街を見下ろす山頂に佇む神戸布引ハーブ園 森のホールでの『この街のハーブ園と空中散歩』、世界一のつり橋を臨む映画のような風景のもと行われたシリーズ初のフリーライブ『この街に架かる橋と僕の帰り道』と、シチュエーションの妙で魅せてきた彼のコンセプトワンマンライブ、“この街”シリーズ第5弾の舞台は、彼の“ホーム”とも言えるライブハウス神戸VARIT.。久々の共演となる浜端ヨウヘイを迎え、この一連の歩みの結晶であるアルバム『この街の夕暮れと僕の散歩道』リリース記念ライブにもなった一夜、『この街のライブハウスと旅の始まり』をプレイバックレポートします!

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 静かにステージに現れ、そっとギターをつまびいて始まった『ただそれだけのうた』から、一気に歌の世界に引き込まれるオープニング。大ぶりなアコースティックギターですら小さく見える今宵のゲストは、浜端ヨウヘイだ。年月を重ねたギターが豊かに鳴るように、己の身体をしっかりと鳴らし切る深い歌声に、会場中が耳をすませ言葉の1つ1つを噛み締める。続く『むかしのはなし』では、自ずと沸き上がるクラップに寄り添うようなカッティングと重厚なリズム隊が合流し、早くもオールスタンディング状態! 勢い余って弦が切れても問題なし、場の空気を運んでそのまま『やぶれかぶれのマイライフ』へ。もはやこの後に出てくる主役が心配になるような盛り上がり(笑)。
 

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 ここで、「改めまして浜端ヨウヘイです、来たぞ~神戸!」というひと声に「おかえり~!」の声が客席から上がり、思わずヨウヘイの顔もほころぶ。6年前にも今村モータースからライブに誘われ共演したエピソードを茶目っ気たっぷりに話しつつ、急遽エレキギターに持ち替え『Taxi -真夜中の逃亡者-』を。かと思えば今度はピアノへと移動し、「膝に爆弾を抱えてる方もいらっしゃるでしょうから!」とうまいことねぎらい(笑)、お客さんを座らせるライブ巧者ぶりもニクい。ピアノが奏でる『午前0時』の優しいメロディとストーリーに、大きな拍手が巻き起こる。
 
「次は神戸の北野坂にあるハッピーローラでベロベロになって、起きたらノートに書いてあった曲です(笑)。僕の曲の主人公はいつも酔っ払ってるんですけど、その真骨頂みたいな曲を。明日は休みなので、今日は燃え尽きたろうと思ってます(笑)。一緒に燃え尽きてくれるかい!?」
 
 奄美大島出身のテッシー(サポートds)のご当地方言カウントから始まったのは、その名も『BELONG BELONG(ベロンベロン)』。思い思いに肩を揺らし手拍子するグッドヴァイブな風景は、みんな本当に酔っ払ってるんじゃないかと思ってしまうほど(笑)。
 

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 「もうちょっと一緒に歌ってほしいんですけど、どうでしょう皆さん?」と披露した『MUSIC!!』でも、その空気はもちろん継続。ラララ♪の大合唱で現場を大いに巻き込みつつ、再びエレキギターに持ち替えブルージーなビートに乗せて『Drivin' on the K』へ。そこからシームレスに『アストロボーイ』にスイッチし、VARIT.の温度をグイグイ上げていくヨウヘイ。ビートルズの『レディ・マドンナ』(‘68)のフレーズもさらりと織り込みつつ、ドライブする3ピースのバンドサウンドは、ライブをしっかりと積み上げてきたアクトの強みをまざまざと感じさせる。
 

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 ラストの『スーパーマン』でも、フィンガー5の『学園天国』(‘74)でおなじみコーラスを巧みに取り込み緩急自在に魅せていく。「この後は今村モータースが最高のライブをして楽しませてくれると思うんで待っててね!」と、エールともプレッシャーとも言える(笑)言葉と熱気をステージに残した、浜端ヨウヘイだった。
 

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 「アルバム出たぞ~!」といきなり喜びを爆発させたのは、もちろん本日の主宰である今村モータース! ここまで足かけ1年半かけて神戸の様々な情景の中でその歌声を響かせてきた彼だが、全てアコースティックセットでのライブであり、アルバムの世界観そのままにバンドセットで、気心知れたライブハウスで鳴らされるそれは、楽曲の魅力を再確認できる高解像度で伝わってくる。しょっぱなの『踊るランドリー』から総立ちのフロアに、早くもダメ押しするかのような『空想クラッシュ』の躍動感溢れるバンドサウンドと歌声がぐんぐん広がっていく。
 

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 そして、うつむきギターを奏でる自分に「ちょっと髪の毛多いな」と自虐的に投げかけながら(笑)、ミドルテンポの名曲『プリン』を。アコースティックとはまた異なる肌触りで、“この街”シリーズのシチュエーションとはまた違う雰囲気で、今まで何度も各地で歌われてきた楽曲が生まれ変わるよう。
 
 「『この街のライブハウスと旅の始まり』、ご来場いただきましてありがとうございます! はじめましての人ははじめまして、久しぶりの人はお久しぶり、しょっちゅう会う人はホンマしょっちゅう会うよね~」なんてしょっぱなからマップちゃん節も絶好調(笑)。「ヨウヘイの圧にやられっぱなしなんで(笑)」と笑いつつ、「普段は弾き語りですけど、今日は入れ替わり立ち替わりいろんな人が出てきます。だからここにヨウヘイがいても僕は驚きません、タンバリンとかも置いてるんで(笑)」と場をほぐす。
 

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 続いて「ここでちょっとゆったりした歌を」と始まった『帰り道』でノスタルジックな風景を切々と歌い上げ、『home waltz』では夕景のようなオレンジの照明に染まりながら、切ないメロディを1つ1つ紡いでいく。一転MCでは、「今日は自由席なんで個々の縄張り意識が存分に発揮されると思うんですけど、ちょっとトイレに行ったら座られてたり、じゃあ2Fに上がってバーカンに行こうとかもできるんで(笑)」と軽妙にアテンド。チューニングタイムに「バンドおるっていいなぁ」としみじみ噛み締めつつ始まった『ユニバース』では、フロアにミラーボールの光が弧を描いていく。ギター、ベース、ドラム、鍵盤、アコースティックギターと5人のメンバーに支えられ、ドライブしていくサウンドが心地いい。
 

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「大切な曲がたくさんあります。今回のアルバムには入ってないんですけど、この曲を」
 
 そう言って披露された『点と点』は、彼が“この街”シリーズをスタートさせた基点の1つとも言える1曲。これまで様々な点=風景がフラッシュバックするような楽曲が、ライブに1本の芯を貫き通すように響き渡る。
 
 「ヨウヘイと初めて会ったのは心斎橋の焼酎バーで、大胆かつ繊細というか、すごい優しいし。今日も楽屋に入ったら肉まんがあって、食べてくださいって。これ、絶対自分がせなあかんやつやった(笑)。そんなに共演する機会はないんですけど、僕は彼の姿をずっと見てるんで、追いかけて行けるかなと。またヨウヘイとツーマン、やっていいですか?」という声には、会場も思わず拍手喝采! そして、「上手く言えないと思ったので、すでにポスターが会場のそこら中に貼ってあって、チラシも折り込まれてますけど…」とツアーファイナルにして過去最大の挑戦、神戸朝日ホールでのワンマンをさらりと発表する辺りが、何とも彼らしい。「ずっと前を走っているヨウヘイとかバンドマンに向けて作った」という『アコガレ』では、メランコリックなメロディと楽曲に込められた想いが、しんしんと胸に降り積もる。
 

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「本当にいい日になりました。たくさん廻って、また帰ってきます」
 
 ラストはこの曲しかないでしょう。『この街の夕暮れと僕の散歩道』では、さらにギターが加わった最大編成で、包み込まれるようなサウンドとコーラスに満たされまくる大団円。メンバーを1人1人紹介しつつ、このスペシャルな一夜を総まとめするような幸せな光景だった。
 

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 とは言え、鳴り止まない“モータース”コールにメンバー全員が再登場! 万感の想いでマップちゃんも思わず「よし、頑張ろ」と漏らしつつのトーク中に、袖で観ていたヨウヘイがしびれを切らして乱入!!(笑) マップちゃんも「いけんのか神戸!?」とらしくない煽りをかましつつ(笑)、最後の最後は『feel』。ステージもフロアも一体となった“この街”シリーズ随一ホーム感漂う一夜。出演者全員の最後のご挨拶からヨウヘイとのアツい抱擁まで(笑)、最高にハッピーな空気の中幕を閉じたライブとなった。
 
 そんな旅の終着点『この街の夕暮れと僕の散歩道~初めてのホールワンマン~』は、5月28日(日)神戸朝日ホールにて。足掛け2年の時間と想いを束ねた感動のフィナーレに、ぜひあなたも立ち会ってほしい!
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史
Photo by おはな

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(2017年5月26日更新)


Check

Set List

原点回帰のライブハウス公演
“この街”シリーズ第5弾!

『この街のライブハウスと旅の始まり』
11月18日(金) at 神戸VARIT.

浜端ヨウヘイ
01. ただそれだけのうた
02. むかしのはなし
03. やぶれかぶれのマイライフ
04. Taxi -真夜中の逃亡者-
05. 午前0時
06. BELONG BELONG
07. MUSIC!!
08. Drivin' on the K
09. アストロボーイ
10. スーパーマン

今村モータース
01. 踊るランドリー
02. 空想クラッシュ
03. プリン
04. 帰り道
05. home waltz
06. ユニバース
07. 点と点
08. アコガレ
09. この街の夕暮れと僕の散歩道
~ENCORE~
10. feel

Release

“この街”シリーズの1年半が歌となった
待望の3rdアルバムが遂にリリース!

Album
『この街の夕暮れと僕の散歩道』
発売中 2000円(税別)
アームテックパブリシャーズ /
スペースシャワーミュージック
DDCZ-2128

<収録曲>
01. 踊るランドリー
02. プリン
03. ユニバース
04. 空想クラッシュ
05. home waltz
06. 帰り道
07. アコガレ
08. この街の夕暮れと僕の散歩道

Profile

いまむら・モータース…地元神戸を中心に活動。ライブハウス、カフェ等、幅広い場所で歌いつつ、『COMIN'KOBE』等関西主要イベントにも毎年出演。’13年にリリースした1st アルバム『夢見gachi商店街』が、各地CDショップにてオススメアーティストとして展開され好調なセールスを記録。翌’14年9月には2ndアルバム『おかわりのかわり』を発売。収録曲の『点と点』が、地元Kiss FM KOBEの同月の推薦曲“HOTRAXX ”に選ばれ、さらには9月26日付ウィークリーチャートでは1位を獲得。そして、'15年3月には北野工房のまち 講堂にて『この街の夕暮れと僕の散歩道』、同年7月には神戸北野サッスーン邸にて『この街の異人館とふたつの灯り』、同年12月には神戸布引ハーブ園 森のホールにて『この街のハーブ園と空中散歩』と“この街”ワンマンシリーズを重ね、 '16年11月9日にはその集大成的3rdアルバム『この街の夕暮れと僕の散歩道』をリリース。同月には神戸VARIT.に浜端ヨウヘイを迎えたレコ発ツーマン、『この街のライブハウスと旅の始まり』を開催した。

今村モータース オフィシャルサイト
http://i-motors.info/
 

Live

“この街”シリーズの1つの到達点へ
初のホールワンマンがついに開催へ!

 
『この街の夕暮れと僕の散歩道
~初めてのホールワンマン~』
チケット発売中
▼5月28日(日)16:00
神戸朝日ホール
全席自由3800円(当日指定)
小学生チケット1000円(当日指定)
アームテックパブリシャーズ■078(335)8877
※未就学児童は大人1名につき1名まで膝上可。但し、お席が必要な場合は有料。


Column1

頬をなでる爽風と世界一のつり橋
を臨む映画のような風景
今村モータースが挑む
神戸を舞台に情景を切り取る
ライブシリーズ第4弾
『この街に架かる橋と僕の帰り道』
をレポート!

Column2

森のホールが誘う
山頂の絶景と木のぬくもり
今村モータースの大いなる挑戦
神戸を舞台に情景を切り取る
ライブシリーズ第3弾
『この街のハーブ園と空中散歩』
をレポート!

Column3

北野サッスーン邸が
昼夜で劇的に景色を変えた
今村モータースの大いなる挑戦
神戸を舞台に情景を切り取る
ライブシリーズ第2弾
『この街の異人館とふたつの灯り』
をレポート!

Column4

変わらないでいるために、
変わり続ける。ルーツ、震災
ギター職人の道、dozens
そして神戸――ひらめきという
羅針盤を手に点と点を線にする
今村モータースの流浪の音楽人生
を語る撮り下ろしインタビュー