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「ただひたすらに感謝をお伝えする1年です」
2月にリリースした「夕月おけさ」も大好評!
デビュー45周年を迎えた天童よしみ
その軌跡をたどるコンサートも開催間近!

デビュー45周年を迎えた天童よしみが、新曲「夕月おけさ」をリリース。じっくり聴かせるマイナー調の楽曲は演歌の真髄とも言える作風だが、天童にとっては新たな扉を開く一作になったとのこと。2月に発売されたカバーアルバム「歌魂-うたごころ-」の制作エピソード、4月26日に行われるコンサート「響き~新たなる出発~」への想いと併せて、節目の年を全力疾走する今にスポットを当てた。

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■マイナー調の真髄!新曲「夕月おけさ」

--新曲「夕月おけさ」は8年ぶりとなる水森英夫先生の作品ですね。

水森先生と最初にご一緒したのは、もう何十年も前になります。「酔ごころ」「酒きずな」「旅まくら」といった楽曲を書いていただいていますが、平成18年の「命のかぎり」からご無沙汰していて。今回、45周年ということで、ぜひ書いていただこうと思ってお願いしました。

--周年の節目を飾る楽曲ということもあり、水森先生も気合いが入られていたのでは。

そうですね。いろいろなパターンの曲を5作ほど書いてくださって。その中で私がすごく気に入ったのが「夕月おけさ」でした。ところが水森先生は、私が「夕月おけさ」を選んだことが不思議だったようで(笑)。私といえばメジャー調なのに、どうしてマイナー調に?と思われたようです。

--前作「女のあかり」リリース時にもマイナー調の楽曲で勝負したいとおっしゃっていましたが、今回もその気持ちが続いて?

メジャー調ももちろん良いし好きなんですけど、ちょっと長く続きすぎたかなって。そう思っているところに去年、「女のあかり」が演歌ファンの方に広がっている感じを受けまして。それで「次の作品では、スケール感のあるマイナー調を歌いたい」と思い、生まれたのが「夕月おけさ」なんです。

--前作でマイナー調を強調されたことでファンのみなさんの反応はいかがでしたか?

カラオケで歌われる方がね、メジャー調も好きだけど、マイナー調の哀感を歌うのが好きという方がいっぱいいらっしゃって。それを見るとマイナー調を選んだのは正解だったのかなって。特に今回の「夕月おけさ」は最後の部分が非常に歌いごたえがありますので。

--天童さんにとってマイナー調の演歌を歌う魅力とは?

やっぱり演歌の名曲と言われるものにはマイナー調の楽曲が多いんですよね。たとえば美空ひばりさんの「みだれ髪」とか。マイナー調演歌には、胸にぐっとくるような独特の哀愁感があると思います。深いし、何回聴いても飽きないんですよね。これまたひばりさんですけど、「悲しい酒」なんかは古賀政男先生による、マイナー調の究極ですよね。

--「夕月おけさ」も、聴くほどにどんどん曲の世界観に引き込まれる印象を受けました。

本当に今回は大好評で。1月の発売からペースを落とさず売れ続けています。コンサートやテレビで歌っても、すごく反応が早いんです。即売も今までの倍売れていますね。

--水森先生が意外と思われたのとは裏腹に、みなさんこういう曲を待っていたということでしょうね。

スタッフみんな、ギリギリまでメインは「夕月おけさ」か「十勝川」かで迷っていました。「十勝川」はメジャー調で、水森先生も「ずばり、これでいくでしょ!」って感じで書いてくださったもので。だからレコーディングの時も「本当に『夕月おけさ』でいくの?」って何回も聞かれました(笑)。私も迷ったけど、最終的には「夕月おけさ」がメインでご了解いただいて。

--作詞の水木れいじ先生とは、歌詞についてのお話は?

水木先生からは、「これまでの天童さんとは違ったイメージで書きました」と言われて、どんな歌詞ができたのかと思いましたが、実際に私になかった世界観だと思いました。意外と日本の原風景の美しさや日本情緒を打ち出した歌がなかったんですよね。酒場でお酒を飲んで……とかネオン街とか、故郷を思うとか、そういうのは多いんですけど。最後の「夕月おけさ」には佐渡おけさのフレーズが盛り込まれていて、直接的ではないけど曲の舞台が佐渡ヶ島であるようなニュアンスを漂わせています。ここはとても特徴的で、みなさんの耳にも印象強く残るのではないかと思います。

--歌詞の世界観にはどのように入っていきましたか?

ロケで佐渡ヶ島に行ったことがあるんですけど、夕暮れになると夕焼けが海に写って、その画が曲のイメージとして湧いてきました。何十年も前のことですけど、その時の思い出を当てはめることで、情景をはっきり描くことが出来ました。佐渡ヶ島には、「佐渡情話」という悲しい別れの話があって、お光という女性が岩場に佇んで吾作という相手を待つんですけど、彼は島を渡り、お光さんを置いて結婚してしまうです。それで島にずっと取り残されて……。そんな情景も思い起こされます。

--最後の歌いまわしですが、おけさ節を取り入れるという試みは天童さんにとっても刺激があったのでは?

私自身、この部分をちゃんと歌えるかなと思って水森先生にご相談しました。先生も「たしかに難しいけど、ここがあるからこそ、みなさん聴いて覚えようと思ってくれるのでは。簡単な歌ばかりだとつまらないじゃない?」と言ってくださって。それで私も最後の「夕月おけさ」は思い切り歌わせていただきました(笑)。

--これからカラオケで歌う人へのアドバイスをお願いします。

歌い出しの「波のしぶきか」は畳み掛けるように。言葉の縮め方を強くすると、より印象的になります。ここはダラッと歌うと決まらないので強くいってください。あとは哀感を込めて優しい気持ちで歌っていただくと、最後の「夕月おけさ」がバシッと決まると思います。頭と最後をしっかりマスターしていただけると結構、歌えると思います。

--歌いたい気持ちをそそる曲調ですよね。

長く残っていく歌だと思います。今回、45周年なのでスケール感を出して難しい曲にしようとか、演歌を離れてポップスっぽい曲にしようとか、周りの方もいろいろな曲を考えてくださいました。でも私は、オーソドックスで日本人の心に潜んでいる情感を蘇らせたいという思いがあるので、あえてこの「夕月おけさ」を、今このタイミングで歌いたいと思いました。おけさなんて今、なかなか聞かないでしょ。若い人にはおけさ節はわからないかもしれないけど、伝統ある佐渡おけさの一小節で日本情緒を感じていただきたいですね。

--今、演歌が苦境に立たされていると言われますが、こういう楽曲があることで、まだまだその火が消えることはないと思います。

そうですね。私は、これは演歌だからって区別するんじゃなくて、みんなで手拍子しながら歌ってもらった方が楽しいと思うんです。最近、コンサートでも子どもさんが結構見に来てくれるんですよ。おばあちゃんと来ました、みたいな。そんな世代の方々が演歌を歌ってくれることを私は期待しています。

■よしみの青春をのぞき見? アルバム「歌魂-うたごころ-」

--2月に発売されたアルバム「歌魂-うたごころ-」のお話も。ポップスを中心としたカバーアルバムになっていますが、どのような経緯で制作されたのでしょうか。

今回は、12曲すべて私の好きな歌をやらせて欲しいと提案させていただきました。それが通りまして。アルバムのライナーノーツにも、どうして私がこの曲を選んだのかという想いを書かせてくださいということで、どんな思いで青春時代にその曲を聴いていたかということを書かせていただきました。近年の楽曲ではドリカムの「Love Love Love」も入っていますが、この曲は豊川悦司さんと常盤貴子さんが出演されていた「愛していると言ってくれ」というドラマの主題歌だったんですよね。私、あんなすごいドラマは他にないと思っているほど大好きな作品なんです。それ以降、他のドラマをまともに見られないぐらいで(笑)。そんなドラマの主題歌ということで、思い入れもひとしおです。

--ファンのみなさんにも天童さんの音楽性の幅広さを知っていただける一枚になりますね。

こないだね、コンサートに80代後半のおばあちゃんが最前列に2人座っていらしたんです。その時、「Love Love Love」「恋のバカンス」「ラブ・イズ・オーヴァー」を歌うというメニューだったんですけど、舞台監督に、「おばあちゃん座ってるけど、『Love Love Love』やめて『宗右衛門町ブルース』にしたほうがええかな?」って聞いたら、それやと内容が変わってしまいますって言われて(笑)。結局、「Love Love Love」をやることになって、イントロが流れたら「これ、ドラマの主題歌でCMでも使ってる曲や」って話されていて。ちゃんとご存知なんだなって。世代的に離れているから……と思ったのは私の勘違いなんです。演歌ファンのみなさんは、そういう歌ごころを多様に持ってらっしゃるなと。だからアルバムタイトルを「歌魂-うたごころ-」にしたのも正解だなと思いました。

--三橋美智也さんの「達者でな」や「竹田の子守唄」のような演歌ファンにも馴染み深い楽曲も入っていますね。

この2曲はスタッフから入れてほしいと言われて。ほかの曲調とかけ離れているので最初はどうしようかと思いましたが、せっかくならということで、アレンジをダイナミックに、超カッコよくしてもらって違和感なく曲目に収まりました。

--三橋さんのすぐ後にドリカムが来るのは天童さんならではですね。

みなさん、そのギャップで大笑いされますけどね(笑)。

--アルバムを通して天童さんの青春時代に触れることが出来るという。

「想い出通り」なんかは、私が17歳ぐらいのときかな。ポップコーンを頬張りながら街を歩くのがオシャレだと思っていた時代でね。アイビールックが流行っていて、男の子が着こなしているのが素敵なんですよ。ちょっと小さなネクタイとカッターシャツで、ブレザーにコートなんかを着て、女の子も同じ感じのペアルックで歩いて。そんな時代に南沙織さんが歌われてヒットした曲で、私にとっては最高の思い出ですね。

--コンサートでも、このアルバムを受けての選曲がなされるのでしょうか?

今まで応援してもらった代表作は前半で聴いてもらって、休憩を挟んで後半に私の青春時代に好きだった曲を3曲ほど聴いてもらう時間を設けています。特に「ラブ・イズ・オーヴァー」は、マレーシアでコンサートをした時にすごい歓声をいただいた思い出深い曲なんですよ。実は他に入れたい曲もあったのですが、それは次回の機会にできればと思います。

■45年を振り返る記念コンサート

--4月26日に梅田芸術劇場で行われる45周年記念コンサートですが、「響~新たなる出発」ということで、これは今、行っているコンサートツアーとは趣きも変えて?

全然、変わりますね。この日はデビュー曲も歌います。その次の次の曲ぐらいまでは、みなさんご存じないかと思いますので、そのへんも初めて歌いますね。今回、45周年のために自分で作詞させていただいた曲なども披露する予定で。本当に盛り沢山な内容になっています。映像とマッピングで45年を振り返るという。

--作詞された楽曲は、どのような思いを込めて書かれたものなのでしょうか?

ある番組の企画で、「作文みたいな感じで歌詞を書かれてはどうですか」と言われて書いたもので、45年ともに歩んでくれた母への感謝の思いを綴っています。まだ音源化されていませんが、大事にしている曲なので、ぜひ楽しみにしていてください!

--バックバンドには天童さんと親しい有名ミュージシャンが集結されるとのことで、演奏を見る楽しみもありますね。

ドラムはそうる透さんがずっと担当してくださっていて、そうるさんが叩く「道頓堀人情」は私のコンサートでしか見られないと思います(笑)。サックスを担当されている庵原良司さんは、お友達であるaikoさんのライブを観に行った時に初めて演奏を見たんですけど、すごく良かったんですよ。その後にひばりさんの歌を歌うお仕事をいただいて、そこでもサックスを担当されていたんです。演歌の勉強もされているということで、もし、ご一緒できたら嬉しいな~と思って聞いたら快諾してくださって。バックのみなさんは本当にすごいので、ぜひ注目してください!

--コンサートタイトルにちなんで、今後、新たに挑戦したいことなどは?

まずは、「夕月おけさ」がじわじわと広がってきているので、みなさんのご期待を裏切らず、今の形を保ちたいというのが、一つ。新しいことにも取り組まないといけないなと思っていまして、今、通常のコンサートとは別で「演歌なゆうべ」という小編成のコンサートをやっているんですけど、ここでは私のアルバムの中でも普段あまり披露する機会がない、ポップな楽曲も聴いてもらえたらと思っています。それに加えてライブハウスなどでの公演など、さまざまな形の公演を積極的にやっていきたいですね。この45周年は、ひたすらみなさんへの感謝をお伝えする1年で、46年目からは、また一つスイッチを切り替えて走っていこうと思っています。

 

取材・文・構成/伊東タカアキ(クエストルーム)




(2017年4月18日更新)


Check

●Release

天童よしみ「夕月おけさ」(DVD付)

<収録曲>
01.夕月おけさ
02.十勝川
03.夕月おけさ(オリジナル・カラオケ)
04.夕月おけさ(メロ入りカラオケ)
05.十勝川(オリジナル・カラオケ)

<DVD収録内容>
01.夕月おけさ ミュージックビデオ
02.十勝川 ミュージックビデオ

天童よしみ

発売中 Pコード:315-372

▼4月26日(水) 17:00
梅田芸術劇場メインホール
S席-7200円
A席-5700円
※未就学児童は入場不可。車椅子の方はチケット購入前にお問合せ先まで要問合せ。
[問]共栄プロダクション
[TEL]06-6360-4126

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発売中 Pコード:323-293

▼6月19日(月) 14:00/18:00
神戸国際会館こくさいホール
▼6月20日(火) 14:00/18:00
枚方市市民会館 大ホール
S席-7500円
※A席は取り扱いなし。未就学児童は入場不可。
[問]グリークス
[TEL]06-6966-6555
タニガワ企画
[TEL]073-436-4468

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