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「私、いつも歌に気付かされるんですよ
 自分が何を考えているのか、何を言いたいのか」
関取花の核も可能性も詰め込んだ、いつか観た11編の人生
『君によく似た人がいる』インタビュー&動画コメント

 関取花、バズる!(笑)  昨年秋、日本テレビ系『行列のできる法律相談所』にて“ひがみソングの女王”として取り上げられた頃からじわじわ熱を帯びていた予感が、最新アルバム『君によく似た人がいる』のリリース前日、同系列の『今夜くらべてみました』への出演で、もう大爆発!! 表参道の美容師から吉祥寺のおしゃれカフェ、下北沢のバンドマンまで、めったやたらと切りまくるトークスキルで、今話題の芸人・ブルゾンちえみとタメを張る、いや時に凌駕する強烈なインパクトを残して(笑)、SNSを大いに賑わせた関取花。とは言え、彼女の本業はシンガーソングライター。それもこれも、自身にとって会心の作品となった、『君によく似た人がいる』を世に広めるため。“嫌いになった人がいる”(『この海を越えて行け』)、“昨日は風呂にも入らず 化粧も落とさず寝てしまった”(『また今日もダメでした』)、“母親が寝ているうちに 金を盗んでいた”(『平凡な毎日』)etcと、朗らかな歌声とは裏腹に曲の冒頭から瞬時に物語に引きずり込む言葉の数々は、彼女の音楽家としての核と可能性を見事に証明して見せている。数年後、彼女のキャリアを振り返ることがあったなら、この分岐点がきっと運命を変える。そんな『君によく似た人がいる』にたどり着くまでの紆余曲折のドラマを語る、関取花インタビュー。このアルバムに込められた彼女の11編の人生は、あなたがかつて観た風景でもある――。

 
 
今回は曲が出揃った段階から“絶対にこれだ!”と思った
 
 
――もうね、芸能人やんっていう(笑)。
 
「いや、今でもめっちゃバイトしてますから!(笑) でも、お陰様で反響が大きかったみたいですね。ありがたい」
 
――関取花でエゴサーチしてみたら、“関取花のフォロワーものの5分で1000人増えとるwww”とか書いてあって。
 
「えぇ~! そんなのありました!? 普段はライブの感想とかが知りたいんで普通にエゴサーチする方なんですけど、あのときは小心者なんで怖くてすぐにできなくて…。これをきっかけに歌を聴いてくれたらと思ってるのに、人柄で嫌われて歌にたどり着いてないツイートとかがバンバン出てきたら、ウワァ~ッ!ってなっちゃうから。でも、私以上に友達がエゴサーチしてくれて、LINEで“速報! おおむね好評!!”とか、めっちゃスクショして送ってくれたり(笑)。そんなに悪い反応じゃないのかな?と思って、一晩明けたぐらいでエゴサーチして。“友達になりたい”とか“呑みにいきたい”とかは(笑)、すごく嬉しかったですね」
 
――いや~バズったね。あと、面白かったのが、“関取花さんってシンガー、あご上げ気味でのキメ顔が南海キャンディーズの山里さんに似ている。いい感じだ”って(笑)。
 
「アハハハハ!(笑) あと、“関取花、よく見るとハライチの澤部さんに似てる”ってめっちゃ出てきて(笑)」
 
――もう芸人扱い(笑)。しかもオンエアもこれ以上ないタイミングでね。
 
「発売日前日のフライングゲット日で、いや~ありがたいっす。ちょうどラジオでもパワープレイになってたり、そういうことが全部相まってYouTubeの再生数もドンドン増えていって。本当にみんなの力を借りた感じですね。しかも今回は、自分のそういうキャラとか思ってることをストレートに出してる歌詞が多いし、それを知った上でCDを聴いてくれるのが一番嬉しいので、いい動線になってるなと」
 
――前作『黄金の海であの子に逢えたなら』(‘15)』もすごく大事なアルバムだと言ってたけど、今回はそれ以降の“変われた”関取花を投影したアルバムやもんね。
 
「今回は曲が出揃った段階から“絶対にこれだ!”と思って。シングルの『君の住む街』(‘16)のプロデューサーの野村陽一郎さんに、“上手く歌おうじゃなくて、マイクの向こう側にお客さんがいると思って、もっとののびのび歌ったら?”ってアドバイスをもらった上で他の曲も歌えたし、実際、前作と同じ環境でレコーディングしたんですけど…」
 
――あのめっちゃ狭い倉庫みたいなところね(笑)。
 
「相変わらず廊下で歌を録ってね(笑)。だけど、自分で聴き比べても全然声が違って。何かに怯えてる感じもなくなって、“今は本当に楽しいんだなぁ。本当に歌が好きなんだなぁ”って。自分の成長が分かる1枚になりましたね」
 
 
自分のやりたいことがこの曲でやっと分かった気がした
 
 
――そんな中でも、前作のレコーディングぐらいからイップス(=精神的な原因などにより動作に支障をきたす運動障害)になっていたと。
 
「右手の親指と人差し指がグググ~ッと寄ってきちゃう症状で、神戸女子大学のCMで流れてた『彩光』(‘15)なんかは、もう本当にレコーディング前日まで弾けてたのに当日は全然指が動かなくて。テンポキープができなくなって何とかギリギリ録ったり、『流れ星』(‘15)のアルペジオがレコーディング中は弾けたのに1~2ヵ月後には全く弾けなくなったり…。前作のレコーディングの最終日ぐらいからもう如実に出始めて、その後のツアーでも満足に弾けなくて。でも、“すごくいいメンバーとバンドセットでライブがやれて楽しいのに、何で上手く動かないんだろう?”って思いながら家でゆで卵を食べてたとき(笑)、卵を指に挟んだ状態でちょっとギターを弾いてみたら、これはいけるかも!?って。いろいろ試して最終的にはペットボトルのキャップがちょうどいいことに気付いて、それを挟んだ状態でライブをやったら全然弾けて。まだ完璧に治ったわけじゃないんですけどね」
 
――すごく朗らかに話してるけど、裏側ではそんなことが起きてたんやね。
 
「せっかくいろんな人の力を借りて『黄金の海であの子に逢えたなら』でちょっと開けた感じになったから、リリースしたときにその話をするのが何となく…“花ちゃんって結構大変なのに頑張ってるんだ”って思われたくなくて。でも、『君によく似た人がいる』はどんなことがあっても全部笑い話にしようぜっていう歌詞が核になってるし、悲壮感はもう出ないと思ったんで、言ってもいいかなって」
 
――それを話せるぐらいの今のスタンスだったり、楽曲だったり、作品ができたってことやもんね。ライブでも、“次のアルバムは自信作です。今までで一番いいものができました”って言い切ってたのが印象的で。この作品を世に広めたいんだっていう気持ちが、リリース前にこんなに伝わってくることは今までになかったなと。
 
「今の時代ってみんなが発信できるからこそ、自分でいくらでも言えるからこそ、臆病になっちゃうところもあるんですよ。でも、音楽に関しては勘違いされても、“これを聴いてダメだったら、次はそんなあなたにも響く歌を書きます”っていうだけなので。あと、私は自分には自信がないんですけど、スタッフさんとかバンドメンバーとかは、本当に世界一だと思ってる人たちと一緒にやれてるんで、弱気なことは言ってられないなと。大船に乗っかったつもりで、かつ舵を取るつもりでやらねばと」
 
――すごい意識改革やね。それは大きな出来事があったのか、じわじわそうなったのか。
 


「何だろう…? でも、その確信は『もしも僕に』(M-5)が書けたからかもしれないですね。自分のやりたいことがこの曲でやっと分かった気がした。“今はシティポップブームです!”とか“女性シンガーソングライターブームです!”とかいう中で、“私のCDはどの棚に並ぶんだろう?”とか考えたり、“今はフェスも多いし踊れる方がいいんだ。みんな歌詞なんてあんまり聴かないのかな?”とか思ったりする中で、奥さん(=筆者)もそうですけど、キャラも込み込みで曲を聴いて面白がってくれる人が増えてきて…そんなにブーたれてても仕方ないなって。私は音楽的背景がすごいわけでもないし、ルックスも憧れられるようなタイプでもないし、音楽を聴くよりお笑いのDVDを見てる時間の方が長い(笑)。でも、そういうヤツだからこそ書ける歌に、“あるある! 分かる! こんなヤツいるよなぁ。私に似てるなぁ”とかいう声が増えることが、Instagramをオシャレにしたりいくらでも自己プロデュースして見せられる中で、何も飾らずそのまんまでいることが、自分の強みなのかなって」
 
――それに曲で気付かされたというか、関取花のセオリーに、ちゃんと自分で気付けたんやね。
 
 
 自分の大嫌いな自分を隠したまま、
『もしも僕に』みたいな曲だけを出すことはできない
 
 
――『もしも僕に』が書けたときのことは覚えてますか?
 
「メロディは昔からあったんですけど、歌詞がずっと乗らなかったんですよね。1回書いてみたんですけど、その頃は大人を信頼してなかったからちょっとふてくされてて、“『めんどくさいのうた』(ライブ会場限定音源『関取花のデモ』収録、次回ツアーにて廃盤)のトゲがない版”みたいな、めっちゃつまんねぇ歌になって(笑)。たまたまボイスメモか何かを整理してたときに耳について、何の気なしにメロディを口ずさんでたら、サビの“努力は大抵報われない/願いはそんなに叶わない”のブロックがふと出てきて。“何だ? これはすごくいいぞ、自分らしいぞ”って。私、いつも歌に気付かされるんですよ。自分が何を考えているのか、何を言いたいのか。普段は何も考えてないんで(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「でも、これってよく考えたら親にずっと言われてたことだったんですよね。それがちょうど、“自分には才能がないと分かってても音楽をやっていきたいのは何なんだろう?”とか考えてるときで、とりあえずスタジオに入って大きな声で歌ってみようと思ったんですよ。そうしたら、“もしも僕に子供ができたら”っていう1行目が出てきて…。ただ、最後の最後にどう落とせばいいのかが分からないまま、富山でSaigenjiさんと2マンがあって。楽屋でSaigenjiさんのギターを聴きながら、iPhoneのメモでずっと歌詞を書いてたんです。Saigenjiさんがやっぱりカッコいいから焦ったり、“今日のライブ大丈夫かな?”とかいろんなことを考えてたんですけど、この気持ちのままステージに立ったら、ちゃんと人への感謝と楽しむ姿勢を忘れずに、失敗しても次の曲で持ち直そうと思えるなって。この曲にすごい元気付けられたんですよね。そのライブが終わった後に、最後の“だからそれまで自分に言い聞かす/とりあえず自分に言い聞かす”が出てきたのを、すごく覚えてます。これは“自分に言いたいことだったんだ”って」
 
――ちょっとゾクッとするね。
 
「だから本当に歌に、ライブに救われて」
 
――そして、『平凡な毎日』(M-10)も同じように大事な曲だと。“母親が寝ているうちに 金を盗んでいた”っていう強烈なパンチラインから始まる曲だけど、思春期の胸がチクッとする1つの出来事というか。
 
「みんな言ってないだけで、クソダサい黒歴史が絶対にあると思うんですよ。でも、自分の大嫌いな自分を隠したまま、『もしも僕に』みたいな曲だけを出すことはできない。『もしも僕に』があったからこそ、『平凡な毎日』が書けたんです。『むすめ』(‘12)とかもそうですけど、何で『むすめ』が書けたかと言うと、私がすごくイヤなヤツだったから。人よりも反省しなきゃいけないことや、今になって分かった親のありがたみとかがいっぱいあるから書けたんだって、ちゃんとここで言っておきたくて。『平凡な毎日』ではそれを全部書きましたね」
 
――『もしも僕に』が、今までの自分じゃいられなくしたんやね。この曲は切実な中にもちゃんとそれをほぐす緩和があって。だからこそ、シリアス一辺倒で来られるよりもすごく胸に響きました。
 
 
自分の知らない自分を教えてもらった感じがしましたね
音楽に教えてもらうことばっかりです、本当に
 
 
――この2曲にはハマ・オカモト(OKAMOTO’S)とReiが参加してますが、実際に一緒にやってみてどうでした?
 
「Reiちゃんは対バンしたり、何人か共通の知人がいたのがきっかけで仲良くさせてもらってて。スケジュールの関係もあって、出来上がったオケにReiちゃんのギターを乗せるという状態だったんですけど、言ってしまえば遊びが少ないというか、最後のひとさじというのもあって結構苦戦してて。私が“お任せするよ!”って言っちゃったのもあるんですけど(笑)。でも、ひと通り録り終わった後に、記録用ムービーとして当て振りでもいいから楽しそうに弾いてる絵面が欲しいみたいなとき、Reiちゃんが“せっかくだから弾きます”って弾いたテイクが、もうべらぼうによくて。『もしも僕に』のラストのソロとかはそれですね。ちょっとした悔しさとか、リラックスしてる気持ちのバランスがよくて、あのときの彼女は神懸かってたというか」
 
――ハマくんは10代限定のコンテスト『閃光ライオット2009』で出会って以来の仲ですがどうでした?
 
「ハマくんはそれこそ星野源さんとかでも弾いてるので、彼のやっているお仕事の中ではかなりインディーな現場だったと思うんですよ。“ヤバッ!”って驚いてましたから本当に(笑)。『平凡な毎日』は後半の歌詞がちょっと熱くなるんですけど、“ベースはそこにいかないで、独り言っぽい感じでずーっと微熱でいる方が伝わる気がする”みたいな話をしてくれて。私の根暗なところとかも10代の頃から知ってるので、彼じゃないと気付けない人柄と、音楽的な美しさと、歌詞とのバランスを全部汲み取ってくれて、自分の知らない自分を教えてもらった感じがしましたね。音楽に教えてもらうことばっかりです、本当に」
 
――音楽をやってなかったらどうなってたんやろね?
 
「私、本当にヤバいと思うんですよね。めっちゃ夢見てロト6とか買いまくってる気がする(笑)。安定したお給料が入るお仕事に就いたら、“残高が0になっても来月には入るから大丈夫っしょ!”みたいな」
 
――確かに、給湯室にいるところが目に浮かぶわ~(笑)。
 
「アハハ!(笑) 多分いますね。うん」
 
 
とにかく歌詞に入り込んでもらえるような1行目を意識しましたね
 
 
――そして、このアルバムは曲順も恐ろしくて。神戸女子大学の一連のシリーズを彷彿とさせる鉄板の『この海を越えて行け』(M-1)で始まるけど、聴こえてくる歌詞は“嫌いになった人がいる”という凄まじい1行で、でもそのすぐ後に過去最高にポップな『君の住む街』(M-2)で掴んでおいて、今度はすごく爽やかに“昨日は風呂にも入らず/化粧も落とさずに寝てしまった”と始まるギャップが強烈な『また今日もダメでした』(M-3)を聴かせたり。かと思えば、大人びた『僕らの口癖』(M-6)でドキッとさせた後に、シニカルでコミカルな『べつに(Album Edit)』(M-7)をブッ込んだり(笑)。にしてもまぁ、今回は1行目でロックオンされる曲が多い。
 
「そうなんですよ! そこはすごく意識して書きました。昔のフォークソングとかをちょいちょい聴いてたら、何も恐れずに社会的なことを歌ってる曲もあれば、ハードな恋愛を歌ってる曲もある。何で私はそういう曲が好きなんだろう?って思ったら、奇をてらってないのにヤバい1行目の強さで。なので、とにかく歌詞に入り込んでもらえるような1行目を意識しましたね。あと、タクシーか何かに乗っていたときにラジオが掛かっていて、音は今どきのギターロックだったんですけど、いきなり“ブラジャーのホックを…”って聴こえてきて、“これはいい!”と思って。売れてて悔しいのもあるから普段はあんまりバンドを聴かないんですけど、調べてみたらそれがMy Hair is Badで。女の子に夢を持たせるバンドマンが、この1行目ってすごいなと思って」
 
――個人的に今作で一番好きな曲は『僕らの口癖』でした。多くを語らずとも関係性が何となく伝わってくるのがグッとくるし、歌い方も女性ならではというか。
 
「おぉ~嬉しいです! この曲も結構ターニングポイントじゃないですけど、イップスのときにギターが弾けなくなってしまったので、ピアノでもやってみるかって。一応、昔習ってたんですけどまともに弾けなかったんですよ。でも、ギターをやってるおかげかちょっと弾けるようになって。でも、ちょうどそのときって、ものすごく落ちてるタイミングだったんです。開いた曲をたくさん作ろうっていう時期でもあったし、ライブでも楽しませようというかちょっと道化になる癖もあったので、10代の頃に書いた『花』(’11)とか『THE』(‘11)っていう最初のアルバムのヒリヒリ感を、ちょっと忘れてた部分があって。『僕らの口癖』はそんな中でもあの頃を唯一思い出せた曲だから、聴いてて自分でもドキッとするというか、歌詞にも確実にナイフがある曲ですね」
 
――こういう曲も書けるんや、こういう歌い方もできるんやって。素晴らしい曲ですね。
 
「ありがとうございます。歌ってても楽しいというか、多分いい顔して歌ってた気がする(笑)。あの状態でいたら今より多少モテると思う(笑)。物憂げな感じでしたね」
 
――ちなみに『ベントリー・ワルツ』(M-4)は、『愛のローレンス』(‘15)とか『レイミー』(‘16)の一連の、名前にそこまで意味はないシリーズ?(笑)
 
「今回は『ベントリー・ビーバーのものがたり』(‘93)っていうすごく好きな絵本があってそこから取ったんですけど、そのシリーズです(笑)。サウンド的にはまた1つの核の部分ですね」
 
 
後ろを振り返ったときにクネクネの道があったからこその楽しさ
 
 
――あと、『黄金の海で逢えたなら』(M-8)という曲がこのタイミングで入ってますが、紛らわしいわ!(笑)
 
「『黄金の海であの子に逢えたなら』を作り終わった後にできちゃったからしょうがないっていう(笑)。でも、その前作があって、いい仲間に恵まれて、ライブも楽しくなってきて、改めてビールって美味いなっていうところからこの明るさが出た感じですね(笑)。今回は、“何か制作で苦労した点は?”って聞かれてもなくて、ずっと楽しくて。しかも、後ろを振り返ったときにクネクネの道があったからこその楽しさというか、初めてギターのFコードが弾けたときの喜びとか、初めてバンドで音を合わせたときの興奮とか、そういう気持ちが詰まってる。ただ、もし聴いてくれる人がこのアルバムでもっともっと増えたら、悔しい想いもどんどん増えていくし、プラスの意見も、マイナスの意見も増える。でも、そういうことがあった方がいい曲が書けるから、そういうタームに入りたいなと」
 
――たくましいね。落ちるのは自分でも予想できるけど、それによって曲が生まれることも分かってる。でも、悪い意見でめっちゃ落ちそうやけど(笑)。
 
「だからエゴサーチできないですからね(笑)。でも、だいたいすっごく落ち込んだ後にいつも曲が書けるんで」
 
――今作ができたときは何か思いました?
 
「マスタリングの前に、『もしも僕に』を聴きながら散歩してて、すごく泣きましたね。あと、昔は親をライブに呼べなかったり、アルバムも渡す前に買ってくれてたりして…。でも今回は、一番醜いときの私のこととか、いろんな意味で親が一番分かるし気付くアルバムだと思うんで早く聴いてほしくて、歌詞カードに“あなたたちのお陰で、これだけ自分をさらけ出せたすごくいいアルバムができました。ご心配を掛けてばかりですが、もうちょっとだけ夢を見させてください”ってメッセージを書いて送って。やっと素直になれたのかなぁ。でも、このアルバムで、自分のことが少し好きになりました。今でも嫌いなところはいっぱいありますけど、嫌いな自分がいたからこそこういう曲ができたなって、やっとちょっと肯定できて」
 
――ご両親は聴いた感想を何か言ってた?
 
「本当に大事に聴いてくれてるっぽくて、1日1曲ぐらいのペースで感想が来たんですけど、“すごく自分が出ていてたくましい。ただ、さらけ出し過ぎて昔あったはずの神秘的な要素が薄れちゃう。女の子なんだし少しベールに包まれてた方が…”って(笑)」
 
――極めて真っ当なコメント!(笑)
 
「自分としては今の方が楽だし、そういうミュージシャンがいてもいいんじゃないかって思ってるんですけど、周りの方がハラハラしてるみたい(笑)」
 
 
音楽を始めたときの気持ちに戻った感じがします
 
 
――ライブに関してはどうですか?
 
「もう今が一番楽しいですね。それこそライブは誤解を全部解ける場所というか、自分を全部出せるから。ライブ中の表情1つでお客さんが何かを感じてくれるかもしれないし、そういう細かいところも最近はいい意味で気にするというか、次からは気にしようって。前回のツアーで喋り過ぎたんで(笑)」
 
――面白かったけど、MCの尺は相当長い(笑)。
 
「フフフ(笑)。今回は好きな曲が、聴いてほしい曲がたくさんある分、いい意味でセットリストに迷う×悩むみたいな。ただ、絶対にいいライブにする!っていうのはあるんですけど、いかんせん歌が好きなだけでやってきたんで、見え方とかセットとか衣装とかに無頓着過ぎるんですよ。ライブも含めて、さらに自分の世界に引き込めるような力を、次のアルバムに向けて作らなきゃなぁと思いますね」
 
――大事なアルバムができましたけど、現時点での関取花の展望や野望を聞きたいなと。
 
「このアルバムができて、ちょっと燃え尽き症候群みたいになっちゃってるんですよ(笑)。でも、たまたま去年観に行った演劇で“自叙伝は誰でも書ける”っていうセリフがあって、そりゃそうだよなって。自叙伝をちゃんと書かなきゃってどこかで思いながら曲を作ってきましたけど、自分の経験則だけで何100曲と書けるわけがないから。例え他人の話だったり架空の話でも、そこにちゃんと自分の言葉とか人生観を投影できるような曲を、たくさん書いていかなきゃなぁって今は思いますね」
 
――まだまだやることはいっぱいありますね。改めてスタートラインに立ったというか。
 
「そんな感じです。何だか音楽を始めたときの気持ちに戻った感じがしますね、うん」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2017年3月 9日更新)


Check

Movie Comment

新譜とライブとダイエットを語る(笑)
関取花からの動画コメント!

Release

ハマ・オカモト、Reiも参加!
言葉とメロディ極まる2ndアルバム

Album
『君によく似た人がいる』
発売中 2130円(税別)
dosukoi records
DSKI-1001

<収録曲>
01. この海を越えて行け
02. 君の住む街
03. また今日もダメでした
04. ベントリー・ワルツ
05. もしも僕に
06. 僕らの口癖
07. べつに (Album Edit) 
08. 黄金の海で逢えたなら
09. カッコー
10. 平凡な毎日
11. それでもいいならくれてやる

Profile

せきとり・はな…’90年12月18日生まれ。寝ること食べること飲むことが大好きな26歳。幼少期をドイツでのびのびと過ごし、積み木崩しのような思春期の後、音楽活動を始める。’12年、『むすめ』が神戸女子大学のTVCMソングに起用され、以降3年間TVCMソングを担当。’14年、米映画『ショート・ターム』のイメージソング『dawn』を書き下ろし提供。3枚のミニアルバムのリリースを経て、 ’15月には初のフルアルバム『黄金の海であの子に逢えたなら』を発表。'16年10月には初のシングル『君の住む街』を、そして、今年2月15日には2ndフルアルバム『君によく似た人がいる』をリリースした。

関取花 オフィシャルサイト
https://www.sekitorihana.com/

Live

東名阪リリースワンマンに続き
関西でイベント出演も続々と!

 
『関取花 “君によく似た人がいる” ツアー』

【愛知公演】
▼3月10日(金)CLUB ROCK'N'ROLL
 

Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード321-635
▼3月11日(土)18:30
梅田クラブクアトロ
全自由3500円
サウンドクリエーター■06(6357)4400
※小学生以上は有料、未就学児童は無料
(大人1名につき、子供1名まで同時入場可)。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼3月25日(土)Shibuya WWW

【大阪公演】
『Live Sparkling vol.2
 supported by ピーチケMusic』
一般発売4月1日(土)
Pコード322-951
▼4月28日(金)19:00
心斎橋JANUS
スタンディング3500円
[出演]関取花/カノエラナ/他
サウンドクリエーター■06(6357)4400
※小学生以上は有料、未就学児童は無料
(大人1名につき子供1名まで同時入場可)。

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チケット情報はこちら

 

Column1

過去最大級のポップネスから
“ひがみソングの女王”の真髄まで
様々なベクトルで関取花を表現した
初シングル『君の住む街』への
自分探しの1年を語るインタビュー

Column2

神戸女子大学のCMソングでも
おなじみの関取花が
めくるめく変化を遂げた自信作から
黒歴史までを語る(笑)
『黄金の海であの子に逢えたなら』
インタビュー&動画コメント

Comment!!

ぴあ関西版WEB音楽担当
奥“ボウイ”昌史からのオススメ!

「デフォルト終電で帰宅中、対面に座ってる人が、あの娘にちょっと似ている。何だか見られてる気がする。疲れた身体を引きずって、“終電の車内でふてくされた関取花みたいな人に見られてるなう”とつぶやく。でも、もしかしたら奇跡的な確率でフォロワーの人かもしれない。その人に知られるかもしれない。そんな万が一の可能性が怖くなって(じゃあつぶやくなよ)、念のため関取花でエゴサしてみる。あれ? 今つぶやいたのに出てこない。それどころか、“関取花めちゃんこ面白い。言ってることがツボ。友達になりたい”とか、“関取花って人やたらおもろい。なんなんこの人。芸人かよ!!”とか(笑)、“関取花さんすごく素敵な声。CD欲しい”とか、凄まじい数の関取花が俺のTwitterを占拠する。そこでようやく思い出しました。そうか、『今夜くらべてみました』が放送されたのかと。ただ、チャンスを生かすも殺すも、結局は歌そのもの。そんな出会いを受け止める最初の一歩が『君によく似た人がいる』なら、きっと彼女とは長い付き合いになることでしょう。それにしても、こんなに澄んだ声で“昨日は風呂にも入らず~♪”って聴こえてきたら、普通耳を疑うよね?(笑) そんな歌詞の素晴らしさもそうですが、みんなにもっと知ってほしいんです、関取花のことを。言いたいことは全部インタビューに書きましたが、それでも伝え切れてない気がするくらい彼女は魅力的で、信頼している音楽家なので」