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「2人が火をつけたというか、スイッチが入った感じ」
中尾憲太郎(b)と小林瞳(ds)を迎えた新体制で挑んだ
剥き出しのロックンロールアルバム『METEO』!
浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSインタビュー&動画コメント

 「次はソロを出すよ」と宣言していた通り、浅井健一からソロアルバム『METEO』が届いた。しかも今回は、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSという、元NUMBER GIRLで現在Crypt Cityでも知られるベースの中尾憲太郎と、海外での活動経験を持ち、若手ながらも確かなプレイとセンスはMVなどでも十分に伝わるドラマーの小林瞳を迎えた新バンドによる、とびきりにバキバキのロックンロールアルバム。近年は、’14年夏にソロ作『Nancy』があり、その後は’15年、’16年とSHERBETSでのシングル&アルバムリリース、そしてツアーと、常にフルスロットルで音を鳴らし続けている。繊細さや抒情性が色濃く映し出されていた前作『Nancy』とは打って変わり、生々しく剝き出しの音で彩られた『METEO』について、今の浅井健一のムードについて、話を聞いた。タイトルの『METEO』には流星や彗星という意味があり、本人曰く「彗星のように現れたバンドだから合ってるかなと思って」と。’17年1月6日(金)より始まる全国ツアー。一瞬で消えてしまう前に、ギラギラに強い輝きを放つ彗星を捕まえに行きたい。

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憲太郎のベースはピックで弾きまくる感じが大好きかな
瞳ちゃんは、ちょっとすごいと思うよ。これから有名になると思う
 
 
――ソロとしては『Nancy』(‘14)以来になりますが、その後にSHERBETSでリリースがあった際、“次はソロだよ”と言われていましたが、その頃から今作のアイディアはあったんですか?
 
「全然。そのときはメンバーが決まってなくて、’16年の3月ぐらいに紹介されて2人と出会えて、この2人とやりたいなって決めたのが4月ぐらいかな。それから3人で音を作り始めて、6月ぐらいにレコーディングをして」
 
――これまで中尾憲太郎さんと接点がなかったのは意外ですね。
 
「フェスとかですれ違ってたことはあるけど、話したこともなかったし、遠目に眺めるぐらいで(笑)。(小林)瞳ちゃんは海外でバンドをやってて、4~5年前に日本に帰ってきたんだけど、“すごいドラムの人がいるよ”って紹介してもらって、1回合わせたらすごくグルーヴがよかったんだわ。だから速攻、“一緒にやろう”って言いましたね」
 
――憲太郎さんや瞳さんの、“ここがカッコいい”と思うのはどんなところでしょう? 
 


「憲太郎のベースはピックで弾きまくる感じが大好きかな。彼の人間性が気持ちいいからベースも気持ちいいんだと思う。瞳ちゃんはちょっとすごいと思うよ。これから有名になると思う。あちこちから引っ張りだこになると思う」
 
――世代的には離れていますよね? 聴いてきた音楽が近かったりするんでしょうか?
 
「瞳ちゃんとは20歳ぐらい離れてるかな。何を聴いてきたかとかいう話はほとんどしなくて。ていうか、そういう話で盛り上がるのは俺は好きじゃないから、“『マッドマックス』観た?”とかそんな感じ(笑)。2人もアルバムの出来は気に入ってると思うよ。ラジオとかでもあんまり喋りたがらないけど、そういうところもすげぇカッコいいと思う」

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一緒にやるメンバーによって自分の中から出てくるものも
世界観も違ってくる
 
 
――今回の『METEO』は『Nancy』の真逆と言えるぐらい激情的なものになっていますね。音も生々しいというか。
 
「そうなったね。生々しいのは、キーボードが入ってないからじゃないかな。それだけでも雰囲気は変わってくるよね。一緒にやるメンバーによって自分の中から出てくるものも、世界観も違ってくるのがよく表れてると思うけどね。この2人とやることで、自分の中から激しいものが出てきたがったんだろうね」
 
――MVも公開されていた『細い杖』(M-3)は、実際にあったことを綴られているんですか?
 


「そうだよ。大昔の、俺が25歳ぐらいのときのことだね」
 
――曲の終盤で“25年前”と聴こえてきてビックリしました。歌詞の通り、ふと思い出したんですか?
 
「そう。急に思い出してそのまんまを書いただけなんだけど、書いてる途中で“俺はいい人ですよ”って自慢してるみたいに聴こえるかなぁと思って、歌詞にも“自慢したいわけじゃないよ”って断っといた(笑)。素直に書いただけだよ。でも、自慢したいんかな?(笑)」
 
――『何あせってんの』(M-7)には“新しい伝染病が広がりきったね”とあります。
 
「それは携帯、iPhoneだね。電車とかでもさ、世界中の人が下向いてやってるじゃん? 伝染病だよ」
 
――『マス釣り』(M-10)という曲もありますが、とても静かな曲で、歌詞にエメラルドグリーンやピンクというフレーズが登場するからかもしれませんが、色彩的な美しさもあって。浅井さん自身が絵を描かれていることもこういう歌詞に関係あるのかなって。
 
「音楽を作ることとか歌詞を書くこと、絵を描くこと、全部が密接なのかもね」
 
――『マス釣り』という静かなタイトルなのにガツンとくる音で、そういう音楽にこういった日常的な風景を描いた言葉を乗せるのは、浅井さんでしかないですよね。
 
「本当? それだったら売れるかもね(笑)。聴いてる人にも楽しくなって欲しいからね」
 
――他にも、今作では今まで以上に浅井さんを身近に感じる歌詞が多かったように思います。『朝の4時』(M-2)の“アロマテラピー”とか。
 
「アハハ!(笑) でも、昔からそうだよ。昔から歌詞には生活臭が出てる。今回は2人とやることでリズムがバチバチきてるから、いつもと聴こえ方も違うのかな」

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今回のソロは、激しくお茶目であるって感じかな
 
 
――以前、曲とか作品には自分のその時々の心情みたいなものが反映されると言われていましたが、“強い心を持たなくちゃ”(『朝の4時』)とか、“メサイアは来ない すでにみんなの中にいる”(『魔術師』M-8)とか、自分が揺らがなければいいと歌われているようにも感じました。世界中にギスギスしたムードが溢れているように思いますが、そこに抗っていく空気がアルバム全体にあるようにも感じて。
 
「それはもちろんあるよ。2人もアグレッシブだし、久しぶりに激しさ100%のアルバムを作ったろうっていう気持ちはあったね。2人が火をつけたというか、スイッチが入った感じで。だから今回のソロは、激しくお茶目であるって感じかなぁ。激しい感じだし、楽しい感じもあるしね」
 
――THE INTERCHANGE KILLSというバンド名は、浅井さんがつけたんですよね?
 
「そうだよ。心の中を、内面を切り替えてネガティブな考えをやっつけようっていうこと。俺自身は全然ネガティブじゃないんだけど、たまに暗い気持ちになったり、イヤな考え方がやってくることがあるじゃん? そういうふうな感じには負けるなよって思うし、そういうのに負けない音楽だね」
 
――この曲たちを、演奏を生で聴いたら相当カッコいでしょうね。
 
「ライブはすごくいいよ。まだ東京で3回しかやってないけど、すごくいい。アルバムに入ってるコーラスは全部俺がやってるけど、ライブでは瞳さんがやるしね」
 
――ところで、ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞はどう思われました?
 
「めでたいことだと思うよ。一流ミュージシャンの中で、“俺も、私も欲しい”っていう人がたくさん出てくるだろうね。俺も欲しいよ。くれんかなぁ?(笑) 単純に嬉しいじゃん? そういうところで意地を張ってもしょうがないとも思うしね。ただ、ボブ・ディランは音だけじゃなくて歌詞がキーポイントになってくる人だから、英語が分からんと本当のよさは分からんと思う。ジャケットとか雰囲気は好きだけどね」

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このバンドのサウンドは最高に気に入ってるんで、しばらくは続くと思う
 
 
――今回のアルバムを店頭で買えるのは3月ですが、ライブ会場や通信販売ではもう購入できるんですよね。付属のステッカーやピックが選べたりと、いろいろ選択肢があっていいですね。
 
「みんな今はいろんなやり方をしてるよね。今回のアルバムの初回限定盤に付いてるDVDには、初ライブとその後にフェスに出たときの演奏が入ってるんだけど、それはぜひ見てほしいね。そのときに小雨が降ってて、偶然の産物なんだけどすごくいい映像になって。演奏ももちろんいいしね。ステッカーとかピックとかも入ってる。今ってみんなダウンロードとか、YouTubeで聴いて済ませたりするもんね」
 
――歌詞カードやジャケットの質感や、アナログレコードのように盤面に“LONG PLAYING”と入っていたりするデザインは、手に取ってこそ分かるものでもありますよね。
 
「そういうふうに感じてくれてる人がいるから出し続けてられてるよね。音楽を聴いてもらえるならどんな方法でもいいかとも思うけど、昔ながらの聴き方というか、CDを手に取って聴いてもらいたいかな。ただ、SHERBETSでもJUDEもアナログ盤を出してたけど、最近は出してないね。レコード人気が復活し始めてるみたいなことをたまに聞くけど、どうなのかな? 人間って、便利さには勝てないんだよね(笑)。レコードよりCDの方が聴きやすいと思うし、今だとそれさえも煩わしく感じる人も多いよね」
 
――’17年1月6日(金)からツアーが始まりますが、今度はどんな音が聴けるのか、楽しみにしているオーディエンスにメッセージをお願いします。
 
「SHERBETSは一旦深く潜ってからガーッといく感じだけど、今度は始めから最後まで激しいよ。ソロとかブランキーの曲もやるし、毎回その時々に“これが最高だ”って思うものをやってるので、ぜひライブに来てください」
 
――気が早いですが、ツアー後の予定はどんなふうに考えています? 
 
「もう1枚、もしくはそれ以上、KILLSでアルバムを出したいかな。でも、それはみんなの盛り上がり次第かな(笑)。ツアーがいいものになって、盛り上がってきたら続くだろうし。でも、このバンドのサウンドは最高に気に入ってるんで、しばらくは続くと思う。SHERBETSもいいけど、激しいのを待っとる人もおるからね。俺は両方好きなんだけど、今は激しいのでガーッといきたいかな」
 
 
Text by 梶原有紀子
Photo by 宮家秀明(フレイム36)

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(2016年12月28日更新)


Check

Movie Comment

ベンジーのメッセージにシビれる!
浅井健一からの動画コメントはコチラ

Release

待ってました!のバンドサウンド
3ピースで送る磐石のロックアルバム!

Album
『METEO』
【初回限定盤DVD付】
通信販売&ライブ会場にて発売中
4500円
SEXY STONES RECORDS
SSR-051~052
※16Pブックレット+
 浅井健一デザインステッカー封入

<収録曲>
01. Messenger Boy
02. 朝の4時
03. 細い杖
04. Cosmic Wonder Bowler
05. LA
06. Fried Bird
07. 何あせってんの
08. 魔術師
09. フルサト
10 .マス釣り
11. Finish Field

<DVD収録内容>
METEO MOVIE
初ライブ映像と野外イベント出演時のライブ映像などを収録

【通常盤】
3月8日(水)発売
2916円
SEXY STONES RECORDS
VKCA-10062
※浅井健一仕様ピック封入

<収録曲>
同上

Profile

あさい・けんいち…’64年、愛知県名古屋市生まれ。’91年にBLANKEY JET CITYのボーカル&ギターとして、シングル『不良少年のうた』とアルバム『Red Guitar and The Truth』を同時発売しメジャーデビュー。精力的に活動を続けながら、’98年には福士久美子(key)らとSHERBETSを結成。惜しまれながらも’00年にBLANKEY JET CITYは解散。その後はSHERBETSとして活動を始め、自身のレーベルSEXY STONES RECORDSを設立。’01年にはUAとAJICOを結成し、短期間ながらそれまでとは違った音楽世界を展開。’02年に池畑潤二(ds・ルースターズ)や渡辺圭一(b・HEATWAVE)らとJUDEを結成(現在は活動休止中)。’06年より浅井健一名義での活動を開始し、同年にシングル『危険すぎる』、アルバム『Johnny Hell』をリリース。’10年にはBLANKEY JET CITYでともに活動した照井利幸(b)、BACK DROP BOMBの有松益男(ds)らとPONTIACSを、’14年には有松、THE NOVEMBERSの小林祐介(vo&g)らとROMEO’S Bloodを結成。繊細なタッチで描かれる絵も評価が高く、これまでに画集や絵本も発売し、個展も開催している。2年ぶりとなる今回のソロ作品は、中尾憲太郎(b)、小林瞳(ds)という強力なメンバーを迎え、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSという新体制で発信。’16年10月にシングル『Messenger Boy』をリリース。ニューアルバム『METEO』は現在、オフィシャルサイトのWEB SHPやライブ会場では購入可能で、’17年3月8日より全国CDショップにて販売。’17年1月6日(金)より『浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS METEO TOUR 2017』がスタート。

浅井健一 オフィシャルサイト
http://www.sexystones.com/

Live

年明け早々からツアーがスタート!
関西は大阪、京都、和歌山に登場

 
『浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS
 METEO TOUR 2017』

【愛知公演】
▼1月6日(金)ボトムライン

Pick Up!!

【大阪公演】

Thank you, Sold Out!!
▼1月7日(土)18:30
Shangri-La
オールスタンディング4860円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は大人1名につき1名まで無料。

【宮城公演】
▼1月14日(土)仙台MACANA
【福島公演】
▼1月15日(日)CLUB ♯9
【北海道公演】
▼1月21日(土)cube garden
【福岡公演】
▼1月28日(土)DRUM Be-1
【大分公演】
▼1月29日(日)別府COPPER RAVENS
【岡山公演】
▼2月3日(金)IMAGE
【広島公演】
▼2月4日(土)セカンド・クラッチ

Pick Up!!

【京都/和歌山公演】

チケット発売中 Pコード309-796
▼2月9日(木)19:00
磔磔
▼2月10日(金)19:00
和歌山 GATE
オールスタンディング4860円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、未就学児童は大人1名につき1名まで無料。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

【静岡公演】
▼2月19日(日)静岡UMBER
【東京公演】
▼2月23日(木)LIQUIDROOM

Column

「毎回みんなの心にいつまでも
 残るような音楽を目指してる」
クールなビートと平熱のグルーヴ
渦巻くソロアルバム『Nancy』
'14年の撮り下ろしインタビュー

Comment!!

ライター梶原有紀子さんからの
オススメコメントはこちら!

「ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したときに、ベンジーの書く歌詞を思い出した。それで、インタビューでもそのことを聞いてみました。ベンジーの書く歌詞は映像的であり物語的でもあり、散文でもあって、今作の中でもっとも散文的な印象の強い『Fried Bird』(M-6)の歌詞を目で追っているときに感じるのは、“諦念”に近い感覚。それが音楽として鳴り響いたときに、怒りや皮肉みたいなものは全部邪魔くさいものとしてどこかに吹き飛んでしまう。どこまでもえぐられそうに深くて、ズシッと太いアンサンブル。ひらりと軽やかな歌声。これでこそ、浅井健一なのだな、と。『細い杖』(M-3)の行間にある胸がザワつく気配や、『Finish Field』(M-11)の穏やかな幸福感のどれもが唯一無二。常に想像力を掻き立てる音楽と、掘れば掘るだけ出会えるもののある歌詞や言葉に巡り合える機会はそれほどない」