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「今作ができてやっと迷いが晴れた」
盛り上げるバンドではなく、圧倒するバンドを目指して
asobiusのロマンとピュアネスを詰め込んだ美しき宝箱
『parade of life』インタビュー&動画コメント

 ‘11年のバンド結成から、ゲームや映画音楽からの影響を伺わせるファンタジックでドラマティックな雰囲気に、ロックのダイナミズムを併せ持つ美しく壮大な世界観。ライブでは観客を前に指揮棒を振るようなスタイルで歌うボーカルが独自性を発揮するasobius。ミューズやシガー・ロスといったUK/北欧系のロックバンドにも通じる音楽性は洋楽的にも思えるが、4月13日にリリースされた2ndミニアルバム『parade of life』では、リード曲として初の全編日本語詞となる『big love lovers』(M-3)を打ち出し、日本の夏をテーマにした『fire flower』(M-4)では和的な旋律を奏でているのが印象的だ。リリースツアーの最後を飾る東名阪ワンマンシリーズを前に、そのバンドの成り立ちから新作での新たな挑戦についてまでを訊いた。

 
 
もしかしたらこれが最後のバンドになるかもしれない
 
 
――まず、バンドの成り立ちから教えてください。
 
甲斐(vo)「僕はバンドをしばらくやってなかった時期があったんですけど、そろそろまたやりたいなっていうときに、元々友達だった(海北)真(b)くんに声をかけたんです」
 
海北「自分もちょうど前のバンドを解散して、どうしようかなと思ってた時期だったので」
 
甲斐「髙橋(g)くんは、インターネット上で募集したら見事に引っかかったんですけど、初めてスタジオに入るときに大遅刻して、髙橋自らが土下座しました(笑)」
 
髙橋「前日にバカ飲みしてて、デロデロの状態だったので(笑)」
 
甲斐「彼の紹介で連れてきてもらったのが前のドラムとギターで。そろそろライブをやりたいというときに、髙橋くんの紹介で杉本(g)くんが入って一旦メンバーが揃ったんですけど、去年の3月にドラムが脱退したので、その後、(石川)直吉(ds)くんが加入して」
 
――甲斐さんは、最初はどのようなビジョンでこのバンドを?
 
甲斐「自分がやるとこうなるというか…何となく、世の中で流行ってる音楽とは違うなと意識してたので、それを楽しくやりたいなと思って、このバンドを始めたんです」
 
海北「僕自身はasobiusでやっているような音楽は実は全然通ってなくて、元々はモトリー・クルーが大好きだし、ボン・ジョヴィとか、グリーン・デイとか…だから、デモを渡されたとき、最初は全く理解できなくて(笑)。でも、いい意味で型にハマらない音楽ができるんじゃないかなって。ちょうど23~24ぐらいの頃に声をかけてもらったんで、もしかしたらこれが最後のバンドになるかもしれないから、今までやったことがない音楽でも、自分が培ってきたもので対応できるんじゃないかなという想いで挑戦しましたね」
 
髙橋「ネットでメンバー募集してたときに、“コールドプレイ、シガー・ロスみたいなイメージ”とは書いてたと思うんですけど、僕はこのバンドに入るときに、音楽性は重要視してなかったんです。それよりも、バンドを黒字経営で活動することについてもたくさん書かれていたので、それに興味を持って、一度会ってみようと思ったんですよ」
 
海北「みんなバンドを高校生からずっとやってきて、ライブハウスに出るために自分でお金を払っているような状態に、ちょうど疑問を感じるようになってたんで」
 
髙橋「デモと一緒に、そういう風に日々疑問に感じていたこととは別の方法論が書いてあって。みんなが何となく考えることでも、それを行動に移すのは意外と難しい。(甲斐は)何でもすぐに調べてきて、お金の計算もして、提案してくるんです。今までノルマで払ってたような額で代わりにCDが作れるんだったら、そっちの方がいいじゃんって」
 
石川「僕は前任のドラマーが脱退したタイミングで、(髙橋)真作さんから、お誘いがあったんです。元々asobiusがすごく好きでライブもよく観に行っていて、すごいカッコいいバンドだなと思っていたので、やります!と」
 
 
CD-Rでもらっても聴かないけど、しっかり装丁されたものだと、
思い出を受け止める器になる
 
 
――甲斐さんがそういう風に考えるようになったきっかけはあるんですか?
 
甲斐「僕は1年ぐらいライブハウスのスタッフをやってたことがあるんですよ。そこで、ライブをしながらお客さんを増やすのはすごく難しいと知って。それならライブより先にお客さんを増やすことを何かやって、そこからライブに来てもらうことを考えた方がいいんじゃないかと思って。まずは音源を作って、ライブハウスに足を運んで自分たちのファンになってくれそうな人たちに無料で配ったんですよ。それもCD-Rではなくデジパックという形で」
 
――簡易なものじゃなくて、ちゃんと作品として実感できるものを無料でもらえるなんて、すごく嬉しいですよね。
 
甲斐「CD-Rでもらっても聴かないけど、しっかり装丁されたものだと、思い出を受け止める器になると思うんです。その辺の感覚には自信がありましたね。基本的に僕、ロマンチストなんです。CDを作って手配りしたのも、ロマンチックだからゆえなんですよ。(バンドの宣伝のために)MVを作ってネットに上げればいいじゃんっていう発想もあるけど、それじゃあ気持ちは伝わらなくない?って。そんな感じで最初は曲を書いてCDを作るという制作をやっていて、本格的にライブ活動がスタートしたのは’12年ですね」
 
髙橋「なのにいきなりクアトロに出させていただいて、自分たちの実力のなさを痛感するっていう(笑)」
 
海北「そのときはKANA-BOONとか、シナリオアート、Kidori Kidoriと一緒にやったんですけど、ソールドアウトでパンパンで。俺らが全然知らない景色がそこに…(笑)」
 
杉本「最初は(制作中心で)ライブをしなさ過ぎたんですよね」
 
甲斐「その遅れを取り戻すために、ライブをたくさんやる癖がついたんで、そこからは多くなったけどね。“音源バンド”って言われるのはめちゃくちゃ悔しいんで!」
 
海北「“紅茶を飲みながら、楽屋で小説読んでそう”って言われたことも(笑)。全然違いますから!」
 
――甲斐さんの歌声は、フレディ・マーキュリーやミーカを思わせるような、ちょっとオペラチックな迫力がありますね。何かイメージしているボーカルスタイルはあります?
 
甲斐「僕は憧れのボーカリストとかは別にいなくて、元々のルーツが『ファイナルファンタジー』のようなゲーム音楽や映画音楽なんです。映画音楽ではティム・バートン監督の映画音楽を作曲しているダニー・エルフマンの世界観がすごく好きですね。ちょっとグロさもありつつキレイなところもあって、歌はそういう中で(知らず知らずに)影響受けてたんじゃないかな」
 
――今の日本のシーンにはあまりいないタイプのバンドだと思いますが、一石を投じたいという想いがある?
 
甲斐「出来上がった曲がちょっと異質だから、勝手に一石投じた感じになっちゃう(笑)。自分の特殊性みたいなことは人からよく言われるんですけど、あんまり分からないんですよね。どっちかと言うと、自信がない。“本当に僕、大丈夫なのかな?”って。でも、“好きだ”と言ってくれてる人もいるし、自分も歌うのがすごく好きなので。そういうところで楽しんでいる感じですかね」
 
 
自分の音楽は、宝箱に隠してる好きなものを見せるような感覚
 
 
――4月にリリースされたミニアルバム『parade of life』を聴いても、その特殊性は思う存分発揮されていますが、作品自体のコンセプトはどういうところから?
 
甲斐「コンセプトは“ロックの精神”でしたね。自分の音楽は、宝箱に隠してる好きなものを見せるような感覚なので、例えそれがくだらない小石のようなものだったとしても、自分にとってはすごくキラキラしてて、宝石のようなものなんです。その宝石めいたところからロックの精神につながって」
 
――何だかおもしろい発想ですね。具体的にはどんなことがやりたかったんですか?
 



甲斐「やっぱり、流行りのことはやりたくないなと思ったんですよ。このミニアルバムをリリースするまで、もっと周りのシーンに音楽的に迎合するべきなのかと…すごく悩んでたんですけど、今回のリード曲『big love lovers』(M-3)ができたとき、自分の中で1つ答えが出たなと思ったんです。この曲は三拍子なんですけど、今までに聴いたことがないノリがあって。展開も、サビとイントロ、アウトロ以外は同じセクションが二度と来なくて、ミュージカル調にスーッと流れていく。その中で自分が大事にしている宝物を、いたずらっぽくパッと出すような感じなんです」
 
――歌詞はピュアなラブソングのようにも聴こえますね。
 
甲斐「全編日本語詞の曲をリード曲にするのは初めてだったんですけど、サウンドから、キラキラしたフレッシュなものを描きたいなって。『big love lovers』っていうタイトルも、サビの“君の為なら 僕は馬鹿になる”っていう歌詞もそうなんですけど、そういう頭の悪さというか(笑)、“純粋さ”をすごく大事にしてます。今作もそういうところから作っていきました」
 
――『sanctuarize』(M-1)は、作品のオープニングにふさわしい華やかさがありますね。
 
甲斐「『sanctuarize』は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(‘03)のサントラでよく聴いていたリズムを、バンドサウンドに落とし込むとどうなるのかと思ってやってみたんです。Aメロの後に、ダサカッコいい楽器のセクションがあるんですけど、『インディ・ジョーンズ』(‘84)とか『ロビン・フッド』(‘91)みたいな昔のアクション映画にありそうな感じ。特にドラムに無茶振りしまくりましたね(笑)。ヤバかったでしょ?」
 
石川「楽しかったです(笑)」
 
――『fire flower』(M-4)には、ちょっと和な要素が入っているように感じましたが。
 
甲斐「『fire flower』は日本の夏をテーマに作りました。自分たちの曲は洋楽っぽいとずっと言われてたし、北欧とかイギリスの冷たい国の音楽が好きな傾向があったので、夏よりは冬が似合いそうな曲ばかり作ってたんですけど。夏の曲とは言っても、パッとハジけた感じじゃなくて、物悲しい郷愁感が漂ってくるようなイメージで。“あの頃は何にも知らなかったね”というような、ちょっと切なさの残る日本の夏を書いてみたんです。『good night』(M-5)は、割と初期のasobiusに近い音楽性を日本語で消化するようなコンセプトで作りましたね。基本的に1曲の中で1つは新しいことにチャレンジしたいなと思って作っていきました」
 
――まだまだ自由自在に発展していきそうなポテンシャルがあって、今後の活動も楽しみです。
 
甲斐「今の状態で、もっといい作品をしっかり固めていきたいですね。楽曲だけじゃなくて、それをライブで表現できるように。もっとサウンドを色彩豊かにしていきたいです」
 
 
やっとやるべきことと、やりたい音楽が一致した
 
 
――このアルバムを引っ提げてのリリースツアー『asobi parade』もスタートしていますが、クライマックスの東名阪はワンマンで。大阪では初ワンマンになりますが、どんなステージにしたいですか?
 
甲斐「今までいろいろと悩んで曲を作ってきたけれど、今作ができてやっと迷いが晴れたところがあって。やっとやるべきことと、やりたい音楽が一致したので。ライブでも自分たちが作った楽曲をきちっと表現したいなと思います。そのためにも、演出面にももっと踏み込んで、自分たちの世界観を出していきたいですね」
 
――まだasobiusのライブを体験したことがない人にアピールするとしたら?
 
甲斐「自分たちの音楽は、“ディズニーっぽい”と言われることもあるので、そういうファンタジックで美しい音楽が好きな人もいかがでしょう?」
 
海北「“スピリチュアルなパワースポット感があって、明日からまた頑張れます!”ってお客さんに言われたことも」
 
甲斐「それ、確かに言われるね(笑)。asobiusのライブに来て、ぜひ元気になってください!」
 
 
Text by エイミー野中



(2016年6月30日更新)


Check

Movie Comment

大阪のバンドに間違えられる!?
asobiusからの動画コメント!

Release

ファンタジックで美しい独壇場
唯一無二のロックミュージカル!

Mini Album
『parade of life』
発売中 1800円(税別)
RX-RECORDS/UK.PROJECT
RX-119

<収録曲>
01. sanctuarize
02. future
03. big love lovers
04. fire flower
05. good night
06. song for you

Profile

アソビウス…写真左より、海北真(b)、髙橋真作(g)、甲斐一斗(vo)、石川直吉(ds)、杉本広太(g)。'11年10月頃結成。'12年7月、初ライブ&自主無料1stシングルを発表。自主音源ながらクオリティの高さが話題となり、2000枚を配り切る。'13年5月、デビューミニアルバム『Rainbow』をリリース。透明感溢れる甲斐の歌声と激しくも美しく緻密に構築されたサウンド、独特で叙情的なメロディセンスと世界観が多方面から注目を浴び、デビュー作ながら“タワレコメン”、“HMV激押しインディーズPICKUP”に選ばれる。また、収録曲『I’m in the love』が関西テレビ『音エモン』6月度エンディングテーマ、関西テレビ『ミュージャック』6月度パワープッシュに選ばれる。9月にはタワーレコード限定ワンコインシングル『starlight』をリリース。力強くかつ叙情的なメロディにダンサブルなリズムが話題の楽曲『starlight』が、ニッポン放送優秀新人9月度、TOKYO FM『RADIO DRAGON』・FM GUNMA『KAMINARI RECORDS』9月度エンディングテーマ、MRT宮崎放送・FM nagasaki 9月度パワープレイなどに選ばれ、瞬く間に全国に知れ渡り品切れ店が続出。12月には初の自主企画ライブ『Rave LOVE-to-LOVE』ツアーを東名阪で開催し、大成功を収める。'14年3月、世界的にも異例となる英語詞版と日本語詞版を同時収録した1st アルバム『pray&grow』をリリース。6月に代官山UNITにてリリースライブ『life is growing』を開催。CDを再現すべく曲順通りに演奏、また、ゲストボーカルを招いた『waltz』を初披露。12月にはバンド史上初となるワンマンライブ『little revolution』を開催。“小さな革命”と銘打った全18曲の新旧織り交ぜた表情豊かなライブで、次々と吸収し、異例の速さで進化を遂げるasobiusの新たな一面を表現し、どちらも大盛況に終わる。'15年2月に発売した3rdシングル『window』が“い・ろ・は・す~ビッグドロップ篇~”のCMタイアップに決定。'15年4月、石川が加入。2ndアルバム『ultralium』をリリース。収録曲『moments』が“ムラサキスポーツ MIZUGI collection 2015 CMソング”に、『love of blue』が同“PVソング”に決定。 '16年4月13日、日本の音楽シーンに新たな革命を起こすべく、2ndミニアルバム『parade of life』を発売。6月8日より、『parade of life release tour “asobi parade”』がスタート。なお、同ツアーと夏のイベントを最後に杉本が脱退することが先日発表された。

asobius オフィシャルサイト
http://asobius.com/

Live

ツーマンシリーズを終え残すは東名阪
大阪初ワンマンが間もなく!

 
『parade of life release tour
“asobi parade” ~two man series~』

【千葉公演】
▼6月8日(水)千葉 LOOK
[共演]LILI LIMIT
【新潟公演】
▼6月10日(金)GOLDEN PIGS BLACK STAGE
[共演]Kidori Kidori
【宮城公演】
▼6月12日(日)LIVE HOUSE enn 2nd
[共演]テスラは泣かない。
【福岡公演】
▼6月25日(土)graf
[共演]uchuu,
【広島公演】
▼6月26日(日)HIROSHIMA BACK BEAT
[共演]acobius (asobius acoustic ver.)



『parade of life release tour
“asobi parade” ~one man series~』

【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード293-727
▼7月2日(土)18:00
ell.SIZE
オールスタンディング2800円
サンデーフォークプロモーション■052(320)9100
※小学生以上有料。未就学児童は入場不可。

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Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード296-176
▼7月3日(日)18:00
LIVE HOUSE Pangea
オールスタンディング2800円
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は入場不可。
小学生以上は有料。

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【東京公演】
チケット発売中 Pコード293-526
▼7月9日(土)18:00
TSUTAYA O-Crest
スタンディング2800円
Livemasters Inc.■03(6379)4744
※未就学児童は入場不可。
小学生以上はチケット必要。

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Pick Up!!

【京都公演】

『ミタケオアシン×青春応歌』
チケット発売中 Pコード301-958
▼7月3日(日)18:00
LIVE HOUSE GATTACA
オールスタンディング2800円
[出演]asobius/climbgrow/nim/
ONE BUCK TUNER/惑星アブノーマル
LIVE HOUSE GATTACA■050(1225)6613

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Comment!!

ライター・エイミー野中さんからの
オススメコメントはこちら!

「asobiusの楽曲は流れてきた瞬間に別世界に連れ出されるような、何ともマジカルな感覚を体験させてくれます。緻密で遊び心ある音作りの妙については、作り手の甲斐自身がインタビュー中でも触れています。彼はクリエイターとしての非凡な才能だけでなく、ボーカリストとしても並外れたパワーを発揮! さらにバンド全体の演出面まで統括してしまう手腕は相当なもの。そんな甲斐が提示する明確な指針に共鳴して加入したというメンバーの発言も納得です。まだまだ進化していきそうな彼らの今後に注目していきたいと思います」