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「音楽には人の人生を左右する力があるって、俺は本気で信じてる」
The BONEZが“誰かを救えるであろうあなたへ”贈る
渾身の一撃『To a person that may save someone』!
JESSE(vo&g)インタビュー&動画コメント

 「なんでメンバーの顔が並んでいるジャケットにしたかと言うと、例えばNAKA(g・ex.RIZE)以外の3人がNAKAを救ったし、俺以外の3人が俺を救った…っていう具合に、この4人が覚醒できたのは、お互いの存在があったから」と、The BONEZのフロントマンであるJESSE(vo&g・RIZE)は話してくれた。The BONEZ渾身の最新アルバム『To a person that may save someone』には、’16年という今の時代にこそ鳴らされるべき新しいアンセムが詰まっている。インタビューでも何度も語られているが、タイトルを直訳すると、“誰かを救えるであろうあなたへ”。水面に石を投げるとゆっくりと波紋が広がっていくように、身体の奥底から湧いてくる意思を静かに強く伝えるこのタイトル曲は、“誰もが歌える”というよりも、声を合わせ、心を合わせ、歌わずにはいられない。4人がお互いを救ったように、彼らの鳴らすこの音楽が誰かを救い、このアルバムに救われた人がまた、別の誰かを救う――そういう連鎖がきっともう始まっているに違いない。間もなく、このアルバムを携えたツアーが大阪からスタートする。アインシュタインから“おもてなし”まで、JESSEからほとばしり出た言葉の数々を、アルバム、ライブ共々楽しんでほしい。

 
 
このアルバムを自分で選んで手に取った人にとっては
“The BONEZ=僕の、私のバンド”になる
 
 
――新作『To a person that may save someone』は通常盤とDVDがセットになったデラックス盤、限定プレミアムBOX盤の3タイプありますが、『Leaf』(M-12)は通常盤には収録されていないんですね。
 
「その曲も通常盤にも入れようか、最後の最後まで悩んで。The BONEZは、家にいてもテレビで流れたり、どこにいても目に入ってくる、いわゆる“みんなのバンド”とか“みんなのグループ”という存在とは違って、今回のアルバムがリリースされていることが日本中に広まっているかと言えば、そうでもない。でも、このアルバムを選んで手に取った人にとっては、“The BONEZ=僕の、私のバンド”になるんですよね。もしクラスの中にそういうヤツが2人でもいたとしたら、お互いにすごくアガッて、いきなり友達になっちゃうような(笑)。僕らは自分たちをそういうバンドだと思っていて。あと、自分たちは“お客さん”と“ファン”を分けていて、牛丼に例えればチェーン店のそれではなく、高くてもこだわりの味だと理解してくれるのがファンだと思う。俺たちはそういうファンを大事にしたいし、“BONER”って呼んでいるんだけど、ファンの人は『Leaf』が入ってる盤をきっと買うだろうから、この曲はBONERたちへのプレゼントでもあって。歌詞にも書いているけど、俺たちは木の下で生まれ、世界中にはその葉(=Leaf)の数ぐらい命がいっぱいある。BONERの1人1人に“君もその葉の1つだから”というメッセージを込めて、この曲をボーナストラックに選びました」
 
――今回のアルバムが素敵だなぁと思ったのは、朝御飯を食べているときとか、部屋で仕事をしているときとか、そういう普通の生活の中に溶け込む音楽でもあるところで。じわじわと感情の波が押し寄せてくる『To a person that may save someone』(M-1)から、あたたかいものに包まれるような最後の『Waking up』(M-13)まで、心臓をわし掴みにされるメッセージも詰まっているし、ドラマもある。そうでありながら、毎日の暮らしのBGMにもなる。
 


「今回のテーマの1つとして、家で何気なく聴けるリスニングミュージックでもあり、ヒアリングミュージックにもなるアルバムにしたい、というのがあって。高速道路を飛ばしながら聴くと最高に気持ちいい音楽とか、ライブで聴いてアガる音楽はいっぱいあるけど、家で聴ける音楽はなかなかないなぁと思ったんですね。気持ちとしては、家の中で掃除しながら聴ける曲、メシを作りながら聴けるアルバムになればいいなというのはありました。『Friends』(M-11)を作ったのが去年の8月ぐらいで、それからずっと僕が家で歌詞を書いたり曲を作ってる姿をウチの娘は見ていて、このアルバムが出来ていく過程を全部知ってるんですよね。アルバムが出来上がって娘がCDを初めて手にしたときに、すごく嬉しかったらしくて、“ちゃんとした音で聴きたいからコンポを買ってくれ”って(笑)。うちは、食事のときはテレビはつけないんですよ。家族で団らんしたくて、たいてい『スタンド・バイ・ミー』(‘61)とかB.B.キングとかオールディーズを流しながらメシを食うんですけど、そういうときに聴く音楽は、いい意味でヒアリングミュージック。で、巻き煙草を1本1本巻いて一服しながら聴く音楽は、リスニングミュージック。耳に入ってくる音楽から、聴き込む音楽になってるんですね。このアルバムが出来てからは娘が食事のときにこのアルバムを聴きたがって、“9曲目(『Incledible』)が特に好き”とか言ったりしてね(笑)」
 
 
カッコいいアルバムは何枚も作れてきたけど
自分で感動したアルバムは今回が初めて
 
 
――かつてThe BONEZのライブを観たときの光景が鮮烈で、広い会場で、サークルを作ってぐるぐる回ってるお客さんもいれば、ひたすら集中して聴いてる人や、ガンガン踊ってる人もいる。ステージの4人は、そういったお客さんたちを掌握しながら“どんな風に聴いたっていい”と言っているようで、4人のタフで懐の深いところを観た気がしました。そういったライブで触れるThe BONEZとはひと味違ったよさを、今回のアルバムには感じて。
 
「今回は、アルバムとライブは全く別物に考えていて。やっぱりThe BONEZはライブバンドなんで、ライブバンドがCDを作ることが実は一番難しい。でも今回は、聴き込めるアルバムを作れたかなと思う。これまでRIZEとか自分がやってきたプロジェクトとかを全部合わせて15枚ぐらいアルバムを作ってきて、カッコいいアルバムは何枚も作れてきたけど、自分で感動したアルバムは今回が初めてですね。『To a person that may save someone』で“誰かを救えるであろうあなたへ”と歌って、浄化された状態で『Revolution』(M-2)で“革命だ!”と叫ぶ。『Paper crane』(M-3)は“千羽鶴”という意味なんだけど、1つのものを完成させるんじゃなく、1000作って1つのプレゼントにするという考え方は、日本にしかないセオリーですよね。ストーリーがつながっていく曲順になっているし、それも最初のタイトル曲が出来たことで、真ん中に筋が通った気がしました」
 
――『To a person that may save someone』『Leaf』『1905』(M-5)とかは、いわゆる従来のThe BONEZのイメージとはちょっと違った、これまでにないタイプの曲とも言えそうですね。
 
「そうかもね。例えば、“ミクスチャー”は日本で作られた言葉でアメリカにはないし、CD屋さんに行くと“ラウド”とか“スクリーモ”とか、かつてはいろいろジャンル分けされていた言葉もどんどんなくなってきていて。でも今、完全になくなったのは“オルタナティブ=グランジ”ですよね。オルタナティブとミクスチャーって背中合わせなんだけど、ミクスチャーはリンプ(・ビズキット)とかラップ寄りな感じで、オルタナティブは僕が大好きなスマッシング・パンプキンズとかに代表されるもので。スマパンの音楽って、ひと言で言っちゃうと喜怒哀楽が刻み込まれてるんですよね。怒りと優しさと愛情と、それだけじゃない何かが交差するバンドがオルタナだと俺は思っていて。一時よく言われたオルタナティブという言葉が消し去られた今、The BONEZっていうオルタナティブなバンドがこの時代に1組だけ出てきた、そういう感じかな(笑)。『Leaf』も『1905』も『To a person that may save someone』も、今はThe BONEZらしくないと受け止められるかもしれないけど、それもだんだんなくなって、“どんなことをやってもThe BONEZだね”になっていくんじゃないかな。RIZEはサーカス団というかカーニバル小屋というかフリークショウみたいなバンドだけど(笑)、2つと似た音楽はないし、The BONEZは90年代を生きた人たちで、みんなスマパンやヘルメットの初来日を観に行ってたり、アリス・イン・チェインズが好きだったりする人たちなんで」
 
――なるほど。
 
「4人の中でもZAX(ds・Pay money To my Pain)が一番人間っぽくて、嘘をつけない人間で、つまらないときは楽しそうには出来ないし、どんなに悲しい場面でも自分が楽しければ周りを楽しくさせてくれるヤツなんだけど、そいつがどうにも行き詰まっちゃって、“俺、The BONEZをやっていけるのかな”ってときがあって。そのときに出来たのが『Friends』なんですね。俺は、脱落とか恐怖とか寂しさのような影の部分がないと、希望(=光)は生まれないと思うんですよ。例えば“影”を辞書で引くと、“日、月によって出来る光”って書いてある。だから影も光の1つなんですよね。光がないと影も出来ないし、影があるってことは光もある。うちらにとってこのアルバムは、身体を切り刻まれて茨の道を歩いて得た気持ちや、“希望”というものの大事さを思い出させてくれたアルバムで。希望ってタダだし、お金はかからない。でも今の時代、希望を抱くことがそんなに難しいのかな。俺はただ、それをみんなに抱いてほしいなって思う。“誰かを救えるであろうあなた”っていう言葉自体が希望ですよね」
 
――そう思います。
 
「例えば、“死にたい”って言うヤツがいて、そいつの家に行って冷蔵庫に何も入っていなかったら、“こいつ、マジで死ぬ気かもしれない”って思うけど、そいつの家の机の上に宝くじが1枚あったら、“こいつは当選日を待つんだな”って思う。その日までは、生きる希望があるわけですよね。それと一緒で、“誰かを救えるであろうあなた”と言われて、“なんで? 俺が誰かを救えるの?”と思った人が、このアルバムを聴いたときに、こんなに美しい世界もあるんだって思ってもらえたらいい。音楽には、そうやって人の人生を左右する力があるって、俺はいまだに本気で信じていて。ただ恋をしたいからラブソングを聴くとか、出会いと別れのシーズンだから卒業の歌を書くとかじゃなくて。何月だろうが出会いと別れはあるし、異性に対してじゃなくても恋心はあるし、現に俺はギターにずっと恋心を抱いていて、いつでもギターを“She”って言っているし(笑)。俺自身も人生を左右された曲がいくつもあって、そういう曲が作れないと、自分の職業上やっている意味がないと思っている。今回は特に頑張ってそういう曲を作りました」
 
――『Friends』のMVに歌詞のテロップが出ていましたが、“僕らの代わりなんてどこにもいない”という言葉が、『To a person that may save someone』のメッセージとリンクして響きました。
 


「うちらはゼロから何かを作って人に新しいひらめきや考えを与えて、その新しい考えがまた違うものを生む。その手助けをする立場だから。あと、『1905』は、アインシュタインが相対性理論と他に2つ、全部で3つの重要な法則を提示した“奇跡の年”なんですね。アインシュタインが100年前に提言していた重力波が去年の秋に世界で初めて検出されてニュースにもなったけど、この曲の歌詞は“重力って何だろう?”ってところから書き始めていて。俺、すごい天文オタクなんで(笑)」
 
 
想像することが現実につながる最初の1ページなんだって思い知らされた
 
 
――The BONEZでもRIZEでも、これまでの日々の中で時には無鉄砲なまでの勢いで突っ走ってきた時期もあったでしょうし、どんなときでもJESSEの言葉は変わらず強かったように思います。ただ、『To a person that may save someone』がこれほど深く胸に迫るのは、ただ強いだけじゃなくて、重さや悲しみと一緒にあたたかさも内包した強さが言葉や歌、楽曲全体にあるからじゃないかなと。
 
「『To a person that may save someone』で“約束したんだ”(=I've made a promise)って歌ってるんですけど、これね、実際は誰とも約束していないんですよ。例えば“明日の朝仕事に行く前に朝マックを食おうかな”と想像する。そうすると、逆算して朝起きる時間が決まる。じゃあそれをどこで食うのか。だったら公園の池のほとりのベンチがいいな…って、どんどん設定されていく。これを何も設定しないと、朝起きて、まだ眠いからってまた寝て、結局ギリギリの時間になってバターも塗らないままのトーストを口に放り込んで仕事に行くことになる。その違いって、“想像するかしないか”の違いなんですよね。それがここで歌っている“約束”なんですよ。約束したか、していないかという比喩であり、自分が救えるであろう人に届くといいなと想像しようという意味でもあって。でも、そのまま書いちゃうと、ダイレクトにとらえられちゃって想像できなくなっちゃう(笑)。“二回目のチャレンジが怖いのは分かるよ”っていうところは、1回想像して、でもそれが出来なかったとき、“あぁ、俺はダメだ”って諦める気持ちが沸いてくる。でも、何回想像したっていいし、想像することが約束になるんですよね。この曲を作ったときに、そういう目に見えない言霊をもう1回信じよう、想像することが現実につながる最初の1ページなんだって思い知らされたんで。アインシュタインが発表した相対性理論だって、彼が探求心を抱いて想像し続けて、発見できて、それが今でも文字(式)になって残っているわけだから」
 
――約束=自分との約束ですよね。
 
「そう。『Revolution』にフィーチャリングしてるHiro Fujitaは俺の大親友の1人で、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を患ってる。5年ぐらい前は一緒にガンガンに飲んで朝まで遊んでたヤツが、ある日いきなり“最近、ペンとかよく落とすんだよね”って言い出して。“酒の呑み過ぎじゃん?”って言っていたのが、それから半年もしたら車イスで生活するようになり、1年後には喉に人工呼吸器を付けることになった。日本の法律では、一度付けた人工呼吸器を自分で外すと自殺になるし、他人が外すと殺人になる。今はまぶたしか開かないんだけど、視線の動きでパソコンを操作するアイトラッキング(視線伝達機器)システムでやりとりも出来るし、脳は全く異常がないどころか、前より健康になっているぐらいで。ただ、この先病気が進行してまぶたが閉じちゃうと、自力で目を開くことは出来ない。脳は起きているけど、自分では何も言えないし何も見えない真っ暗闇の中で、ずっとトラップされている状態になっちゃう。ALS患者の寿命は7~9年って言われているんだけど、そうやって生きる気力が失われていくことが人を死に追い込むんですよね。ただ、人間の感覚で聴覚が一番最後まで動いているらしくて、自分が話したり見たり出来なくても、聴くことは出来る。だったら、ここで音楽の力を使わないと。Hiroに“どういう感情を歌ってほしい?”って聞いたら、最初の頃は“どうしてあいつじゃなくて俺がこうなったんだ?って最低なことを思った”って。でも、それを受け入れて、“希望を抱いて生きるしかないけど、クソくらえ!っていう気持ちは自分で表現したくても出来ない”と。じゃあ俺がそれを出してやるぜって作ったのが、『Revolution』なんですね」
 
――そうだったんですね…。
 
「病気の患者さんたちは体力的にも強くは言えないから、俺が“お前ら、聴けよ!”っていうつもりで書きました。国が何か出来るならやってほしいし、国が何も出来ないなら、人の力でどこまでやれるか試してみたい。iPS細胞で再生医療が可能になったり、新薬の開発が進む可能性は見えているけど、それが実際に患者さんに適用されるには、何年も何十年も待たなきゃならない。でも、命のカウントダウンを待っている人の中には、新薬を人体実験されてもいいって言う人だっている。でも、それは法に触れることなんですよね。歌詞の中で何度も“Legalize”(=合法)って歌っているけど、臨床試験を待ち続けて死んでいく患者さんが大勢いる一方で、一日に5億円もプールしている株主がいる。企業やお金やいろんなものが絡む問題でもあるけど、実際はいつどこで誰が病気になっても全然不思議じゃないし、俺が明日、同じ病気になる可能性だってある。だからもう、革命を起こすしかない。“革命を起こすぜ!”って言って回ったところでそれは簡単には起きないけど、たった1つの理由があればよくて。ALSが1つのきっかけになって、いろんな病気と闘っている人、パッと見は元気に見えるけど、重い病気を抱えている人だっている。そういうところにも広がっていけばいいと思っていて」
 
 
俺の夢はグラミー賞を獲ること
 
 
――あと、『Begining』(‘15)はJESSEの歌が前面に出ていたように思いますが、今作はラップと歌が混在する楽曲が何曲もありますね。
 
「俺は別にシンガーになりたいわけじゃないし、ラップが好きで、ラップを譲れない理由の1つは、ラップは歌詞を3Dに出来るんですよ。例えば、“あの寒かった冬、君と分かち合った1つの缶コーヒー”っていう歌詞は、俺に言わせれば“写真”なんですよ。けど、“あの冬、君にフラれて俺は公園を 缶コーヒーを開けないまま ずっとぐるぐる歩き回ってた 気が付いたら数時間も歩いていて 開いていないコーヒーの缶はボコボコになっていた”――みたいなストーリーをラップにした場合、いろいろと想像できるじゃない? どのぐらいのスピードで歩き回っていたのかなとか、硬いコーヒーの缶がボコボコになるぐらい握りしめてるってどういう感情なんだろうとか。俺は子供の頃にラップを聴いたときにそれが想像が出来て、“うわ、今の歌詞を絵に描ける”と思ったんですね。ただ、メロディは人の心を引っ張ることが出来るし、ちゃんとしたメロディがあるとそこにハーモニーが生まれる。そうするとグワッと感情移入できる。耳になじみやすいメロディだったり、切なくさせるメロディだったり、人の心を動かせるメロディに、ラップが入ることで3Dの世界を作れたらって」
 
――なるほど。
 
「今はまだラップと歌のギアを自分の中で分けちゃっているんだけど、次のアルバムぐらいには、それが1つになっているものを作れるかなと思う。俺がすごいラッパーとして帰ってくると思いますよ(笑)。かつて2000年代の初めには、UZUMAKIとか麻波25、Missile Girl Scoot、smorgas、山嵐、Scratch 4 Jaggerとか、そのシーンを作り上げた仲間たちがいて。今はラップをやっているバンドってあんまりいないですよね。あと、『Stranger』(M-6)みたいな四つ打ちの曲はあんまり慣れていないけど、例えばフェスとかでやったら、The BONEZを知らない人や初めて聴きに来たお客さんでもノレるような曲だし、『Louder』(M-4)はラップと歌の境界がいい感じで崩せているかな。『Incledible』『Wasted dreams』(M-10)『Waking up』も、すごくチャレンジしたところですね」
 
――RIZEの作品ですが、東日本大震災の後に発売された『Local Defense Organization』(‘12)を最近また聴いていて。収録されているライブテイクやJESSEのMC、どこを切っても“諦めない”ということを、RIZEでもThe BONEZでも一貫して強く言われていますね。
 
「自分でも改めて考えたことがあるんですけど、きっとRIZEの1枚目の『ROOKEY』(‘00)から、言っていることは何も変わらないんですよね。『Why I’m Me』(‘00)で友達や地元、おじいちゃんおばあちゃんを大事に思う気持ちを歌っているときからずっと。中には“JESSEが歌っていることって同じじゃね?”って思う人もいるかもしれないけど、約20年ずっと歌い続けてもまだ、時代も、世界も、人の心も変わらないんですよ。だから俺は本当に革命が起きるまで、ずっと同じことを歌い続けると思います。同じことを、違う言葉で、違うニュアンスで、歌い続ける。人の感情を表す喜怒哀楽は4つだけど、その中には寂しい怒りもあれば、嬉しい怒りもある。当たり前のことを歌う気はないし、当たり前のことを歌わなきゃいけないときもある。『Remember』(M-7)だってそう。また思い出そうとしてるし、“またやってしまった”と歌っているけど、本当にその繰り返しだし」
 
――確かにそうですね。
 
「俺の夢は、昔からずっとグラミー賞を獲ることで。それは唯一、親父(=Char)が獲っていないから。あとはノーベル平和賞とか国民栄誉賞(笑)。日本語の曲でグラミーを獲りたいけど、もしも英語の曲でグラミーを獲れても、そのときに世界中の人に素晴らしい日本語の歌詞の曲を俺らが覚えさせたい。俺らが洋楽の歌詞を聴いて覚えたように、海外の人も日本語の意味は分からなくても覚えると思うんだ。何を言っているのか意味はよく分からないけど、実はすごくいい言葉を口ずさんでる――そんな世界にしたいよね。スヌープ(・ドッグ)みたいなヤツがさ、“カミダノミ(神頼み)だよね”とか言っていたらおもしろいじゃん(笑)。あとは“おもてなし”ね」
 
――『Paper crane』には“KAMIDANOMI”、“OMOTENASHI”と出てきますが、“おもてなし”っていい言葉ですね。
 
「そうなんだよね。“おもてなし”の意味は、相手を喜ばせるとか思いやるとか、人によっていろんなとらえ方があると思うんだけど、もしも俺がカーディーラー・ショップの店員だったとしたら、“もてなせ”と言われたらどうするか。例えば、洗車機や自動ドアをなくして、お客さんが来るたびに1回1回扉を開けて、1台1台自分の手で車を洗う。その人も気付いていないぐらい心の奥で望んでいることに、どこまで配慮できるのか。初めて出会った相手だろうが、よく知っているヤツだろうが、歌詞にも書いているけど、相手の心の縦、横、奥行きにどこまで図面を引けるのか? それが“おもてなし”だと思うんですよ。だから俺にとってラップは大事なんですよ」
 
――なるほど。さっき言われてた“ラップ=3D”に通じますね。そして、5月6日(金)の梅田クラブクアトロからツアーが始まります。今回は大阪が初日で楽しみです。
 
「俺もツアーが楽しみで。今回のアルバムの限定プレミアムBOX盤には、ペンダントヘッドやポスターと一緒に腕章が入っていて。500個限定なんだけど、ツアーの各会場でこの腕章を付けている子が何人かいると思うんだけど、そいつらがまず、誰かを救えるであろう人たちになれているはずなんだよね。それがどんどん伝染して広がっていくのを見るのが楽しみ。いい演奏をすること、いいライブをすることは俺らの仕事だから、頑張って必死こいて準備をする。そうしていった先で、その日その日に出会う奇跡にめちゃくちゃ期待しています。音楽で人生を変えられると本気で信じている人間が、これだけの感情を込めてライブをやったら、聴く人の中に昨日まではなかったものが、ライブを観た後には確実に生まれるはずだから。それをすごく楽しみにしています」
 
 
Text by 梶原有紀子



(2016年5月 2日更新)


Check

Movie Comment

もう最高! 動画でも熱い想いを語る
JESSE(vo&g)からの動画コメント

Release

RIZE+P.T.P.の猛者どもが繰り出す
オルナタティブな最新アルバム!

Album
『To a person that may save someone』
【デラックス盤DVD付】
発売中 2800円(税別)
TENSAIBAKA RECORDS / Village Again
TBRCD-2800

【通常盤】
発売中 2300円(税別)
TBRCD-2300

<収録曲>
01. To a person that may save someone
02. Revolution feat. Hiro Fujita
03. Paper crane
04. Louder
05. 1905
06. Stranger
07. Remember
08. Cosmic strings
09. Incredible
10. Wasted dreams
11. Friends
12. Leaf ※通常盤未収録
13. Waking up

<DVD収録内容>
『Blood in Blood Out Tour』

Profile

ザ・ボーンズ…写真左より、ZAX(ds)、JESSE(vo&g)、T$UYO$HI(b)、NAKA(g)。オーディションを通じて出逢ったZUZU(g)と共に、JESSEのソロプロジェクトとしてJESSE and The BONEZがスタート。’12年11月に1stアルバム『Stand Up』を発売。’13年1月に行ったライブにPay money To my PainのTSUYOSHIとZAXがサポートメンバーとして参加。同年9月より、The BONEZとして活動を開始。’14年1月発売の2ndアルバム『Astronaut』をもってZUZUが脱退。同作のツアーにNAKA(g)が参加し、現在の布陣となる。’15年3月にミニアルバム『Beginning』を発売。’16年3月23日に3rdアルバム『To a person that may save someone』を発売。5月6日(金)の梅田クラブクアトロを皮切りに全国ツアーを開催する。

The BONEZ オフィシャルサイト
http://thebonez.com/

Live

初日は大阪公演!
リリースツアーがいよいよ開幕へ

 
『The BONEZ TOUR 2016
「TO A PERSON
 THAT MAY SAVE SOMEONE」』

Pick Up!!

【大阪公演】

Thank you, Sold Out!!
▼5月6日(金)19:30
梅田クラブクアトロ
オールスタンディング3500円
GREENS■06(6882)1224
※未就学児童は入場不可。

【岡山公演】
▼5月7日(土)IMAGE
【広島公演】
▼5月12日(木)広島Cave-Be
【福岡公演】
▼5月13日(金)DRUM Be-1
【香川公演】
▼5月15日(日)DIME
【新潟公演】
Thank you, Sold Out!!
▼5月20日(金)新潟CLUB RIVERST
【宮城公演】
▼6月3日(金)仙台 darwin
【札幌公演】
▼6月5日(日)BESSIE HALL
【愛知公演】
▼6月10日(金)エレクトリック・レディ・ランド
【東京公演】
▼7月15日(金)TSUTAYA O-EAST

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チケット情報はこちら


Comment!!

ライター梶原有紀子さんからの
オススメコメントはこちら!

「『To a person that may save someone』のデラックス盤のDVDには、昨年のツアー『Blood In Blood Out Tour』のドキュメントが収録されている。ライブ後、汗だくのままバックステージの階段に座り込み、曲の演奏の仕方について、あれこれ修正するやり取りをしているメンバーの姿。川崎でのライブの裏側で見せたNAKAの繊細な表情。ファイナルの福岡では、対バンのKjのバンドにP.T.PのPABLO(g)がいた。楽屋で口々に“バンドっていいね”、“何とも言えないよ”と言っているときの、本当に何とも言えない充実した表情は、多分取材の場では見ることは出来ない気がする。ライブは、バンドはもちろん全国のスタッフや、何より各地で待っているファンやお客さんたちと1ヵ所1ヵ所作っていくかけがえのないものだってことを、DVDを観ながら改めて実感する。JESSEが“3回泣きそうになった(笑)”と話していたけれど、確かにガッと涙がこみ上げてくる場面が何ヵ所もあった。ツアーのMCでJESSEが“俺たちは何十万とバンドがいる中の1つだから、また次のツアーの初日を迎えられるよう頑張ります”と話していた新たなツアーがいよいよ始まる。今度はさらにすごいものになる。絶対に」