インタビュー&レポート

ホーム > インタビュー&レポート > ぼくらが旅に出る理由、東京は夜の七時、月の裏で会いましょうetc “野宮真貴《渋谷系》スタンダード化計画”が今年も発動! 実況録音盤『野宮真貴、渋谷系を歌う。』と 東阪ビルボードライブ公演を語るインタビュー&動画コメント


ぼくらが旅に出る理由、東京は夜の七時、月の裏で会いましょうetc
“野宮真貴《渋谷系》スタンダード化計画”が今年も発動!
実況録音盤『野宮真貴、渋谷系を歌う。』と
東阪ビルボードライブ公演を語るインタビュー&動画コメント

 ピチカート・ファイヴのボーカリストとして90年代の渋谷系ムーブメントのアイコン的存在として活躍し、一昨年にはそのキャリアを総括するようなデビュー30周年記念アルバムを発表し、華やかな話題を集めてきた野宮真貴。昨年からは“《渋谷系》スタンダード化計画”と銘打って新旧の渋谷系を象徴する楽曲を取り上げたライブをスタートさせた彼女が、そのビルボードライブ東京での昨年の第1回公演の模様を収録した実況録音盤『野宮真貴、渋谷系を歌う。~Miss Maki Nomiya sings Shibuya-kei Standards~』を発表すると共に、“野宮真貴、渋谷系を歌う。”の第2回目となるライブを東阪のビルボードライブで再び開催する。単なる安直なカバー企画などとは一線を画するその内容について語ってもらった。

 
 
“渋谷系と呼ばれていたものをスタンダード・ナンバーにする”
と宣言してやっていくのはどうだろう?
 
 
――まずは、昨年からスタートした渋谷系の名曲をスタンダードとして歌うというライブを始めることになったキッカケから聞かせてください。
 
「ちょうど30周年の年(’12)にビルボードライブ東京にバート・バカラックが来日したのを観に行ったときに、“《渋谷系》スタンダード化計画”のプロデュースをしてくださっていて、バカラック研究家でもある坂口修さんに久々にお会いしたんですよね。坂口さんとは付き合いが古くて、私がデビューして2年後くらいからのライブをほとんど観てくれていたり、ピチカート・ファイヴのワールドツアーにも一緒に付いてきてくれた貴重な方なんですけど。最近はしばらくお会いしていなくて、でも、バカラック研究家だから来ているはずだと連絡してみたらもちろんいて。終演後にお会いしていろいろお話ししている内に、“30周年の後はどうするの?”という話になったんです。そこで、私は80年代のニューウェイヴも90年代の渋谷系も歌ってきたけど、当時のいい曲もたくさんあるし、渋谷系を通して60~70年代の過去の自分たちが好きな音楽も紹介していく役割もあったから、そういうルーツ的なモノも含めて、渋谷系をスタンダードなものにして歌い継いでいくのが使命なのでは?と考えました。そこから始まって、定期的に続けていければなということで、今年が2回目になるんですけど」
 
――その第1回目を収録したライブ盤を聴くと、コーネリアスなどはもちろんのこと、越路吹雪さんが’62年にバート・バカラックの初期曲を日本語詞で取り上げた『チャンスが欲しいの』(M-3)なども取り上げられていて、かなり掘り下げた内容だなと思いました。
 
「そうですね。会場では、それがどのように渋谷系とつながっているのかを坂口さんが詳しく書いた解説も配られていて、ライブの前に読んでもいいし、サプライズがお好きな方は後から読んでくださいという形でやっています」
 
 ――(その解説を読みつつ)さすがに詳細ですね。
 
「選曲も坂口さんと一緒に進めていったんですけど、いつも膨大な量の候補を持ってきてくれて大変でした(笑)。だから、私が知らなかった曲もあるし、私が歌いたいと持っていったものも入っています」
 
――渋谷系というのは少し軽薄で軟弱なイメージで語られがちですけど、そこをもう一度深くひっくり返してみようみたいな意図もあったのでしょうか?
 
「そもそも渋谷系って何だったのかということもあるんですけど、当時に渋谷系と呼ばれていた人たちも音楽性は意外とバラバラだったりもしたんですが、共通点はみんな本当の音楽好きで。古い音楽や埋もれている名曲を探してきては、元ネタも教えてしまうというスタンスでやっていたのが1つの特徴だと思います。あとは、DJやサンプリングという新しい手法も出てきて、その人が何を選んでどう組み合わせるかでセンスが問われるような時代でした。当時ピチカート・ファイヴで海外に行ったときに面白いと感じたのは、同じ時期に同じようなセンスを持ったミュージシャンが海外の各地にいたこと。そこに集まるファンも、ファッションセンスも、共通するものがありましたね」
 
 
やっぱりシンガーとしてはいい曲が歌いたい
 
 
――今回に取り上げた曲の中で、改めて歌ってみて特に印象深かったものについていくつか聞かせてください。
 
「まずは、小沢健二くんの『ぼくらが旅に出る理由』(M-11)が、最初のテーマみたいな感じであったんですね。というのも、ファッションデザイナーの丸山敬太さんが、’13年の秋冬コレクションをショートムービーとして発表することになったときに、そのコレクションが『ぼくらが旅に出る理由』にインスパイアされてデザインされたものだったこともあって、私に歌って欲しいと依頼されたんです。思いがけず小沢くんの曲を歌うことになって、歌詞も当時とはまた違った意味を持って聴こえてきたし、アレンジを変えて私が歌うことで、また新曲のように聴いてもらえる感じもありました。ルーツを探っていくといい曲は無限にあるし、やっぱりシンガーとしては常にいい曲を歌いたいので、私が歌うことでまた多くの人に伝えていけたらと思うきっかけになりましたね」
 
――なるほど、そうだったんですね。他には何かありますか?
 
「それから、由紀さおりさんの『生きがい』(M-8)ですね。この曲は私が子供の頃からとても好きな曲で、カラオケでもよく歌っているんですけど(笑)。歌の内容はちょっとディープですけど、メロディラインは洗練されていて、渋谷系に通じるものを感じるというか。この曲は私が好きで歌いたいと選曲しました」
 
――『生きがい』は曲目を見て最も意外に思いましたが、クレジットを見るとジャズピアニストの渋谷毅さん作曲で、納得しました。違う人が歌うことで新しい印象や意味を帯びるというのは、まさに“スタンダード”ですよね。
 
「最近はいろいろな方がカバーアルバムを出されていますけど、これはちょっと視点が違っていて必然性を大事にしようと考えています。渋谷系と呼ばれた自分が歌うからこそ意味が出てくるのではないかと」
 
 ――コンボの演奏によるインスト曲が中盤に挟まれていますが、こちらはTVドラマも多く手掛けている三木聡監督作品のサントラのメドレーで、埋もれているサントラに光を当てるという渋谷系流儀を感じました。
 
「坂口さんはシティボーイズの大竹まことさんのマネージャーを15年ほどやっていた方で、そのシティボーイズの公演の演出を三木さんがやっていた頃、音楽を’92年から10年ほど小西(康晴)くんに頼んでいたんですよね。だから、単なる劇伴でというわけではなくてCDも出していたし、渋谷系のファンがその公演に足を運ぶという広がりもありましたね。その後にも坂口さんは三木さんの作品で音楽を担当しています。またNHKドラマ『あまちゃん』の大ヒットもあって、その劇伴コンサートに一般の人が大勢足を運ぶという現象もあったので、劇伴の曲をライブでやってみたいというのもありましたね」
 
――そして、その“《渋谷系》スタンダード化計画”の第2回目となるライブが、大阪は11月1日(土)、続いて東京が7日(金)に、いずれもビルボードライブで行われます。
 
「また新たに選曲もし直して、今回はデュエットものやブラジルのワールドカップがあった影響で、ちょっとラテン・テイストも入れようかなと思っています。ゲストとして“最後の渋谷系”とも呼ばれるカジ ヒデキくんに参加してもらうので、何の曲をデュエットするかは敢えて伏せておきますけれど、楽しみにしていてください」
 
 
Text by 吉本秀純
 

nomiyamaki2_kajihideki.jpg

カジヒデキ



(2014年10月22日更新)


Check

Movie Comment

話し声もすこぶる心地よい
野宮真貴からの動画コメント!

動画を再生するには、videoタグをサポートしたブラウザが必要です。


Release

渋谷系とルーツを歌い上げた
極上の一夜を収めたライブ盤!

Live Album
実況録音盤!『野宮真貴、渋谷系を歌う。
~Miss Maki Nomiya sings
 Shibuya-kei Standards~』
11月12日(水)発売
2800円(税別)
SPACE SHOWER MUSIC
DDCB-12961

<収録曲>
01. 東京は夜の七時
02. THE LOVE PARADE
03. チャンスが欲しいの
04. Our day will come
05. マイ・ピュア・レディ
06. 監督:三木聡MEDLEY
(時効警察のテーマ、熱海の捜査官のテーマ、インスタント沼のテーマ)
07. Hong Kong Night Sight
08. 生きがい
09. 或る日突然
10. 月の裏で会いましょう
11. ぼくらが旅に出る理由
12. PIZZICATO FIVE MEDLEY
(トゥイギー・トゥイギー、ハッピー・サッド、万事快調、ベイビィ・ポータブル・ロック、恋のルール・新しいルール、プレイボーイ・プレイガール、トゥイギー・トゥイギー)

Profile

のみや・まき…’81年に『ピンクの心』でデビュー。その後に80年代ニューウェイヴ時代のポータブル・ロックを経て、90年代にピチカート・ファイヴに加入。渋谷系カルチャーのアイコン的な存在として、日本のみならず海外でも熱狂的な支持を集めてきた。近年はシンガーとしての活動と並行して、カルチャーやアート、ファッション方面などでも多彩に活躍を続けている。

野宮真貴 オフィシャルサイト
http://www.missmakinomiya.com/


Live

会場ではアルバムの先行販売も!
カジヒデキを迎える渋谷系の宴

Pick Up!!

【大阪公演】

『野宮真貴、渋谷系を歌う -2014-。
~Miss Maki Nomiya sings
“Shibuya-kei Standards 2014”~』
チケット発売中 Pコード242-314
▼11月1日(土)16:30/19:30
ビルボードライブ大阪
自由席8500円
ビルボードライブ大阪■06(6342)7722
※カジュアル エリアは取り扱いなし。未就学児童及び高校生同士の入場不可。18歳未満は成人の同伴が必要。

チケットの購入はコチラ!
チケット情報はこちら

 
【東京公演】
Thank you, Sold Out!!
▼11月7日(金)19:00/21:30
ビルボードライブ東京
自由席8500円
ビルボードライブ東京■03(3405)1133
※未就学児童入店不可。18歳未満・高校生は成人の同伴にて入店可。
 

Column

デビュー30周年イヤーを彩る
セルフカバー集『30』!
ピチカート・ファイヴ最後のツアー
以来の大阪での本格的なライブを
行う野宮真貴にインタビュー