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リバイバルとアップデートが錯綜する“これから続いていくはじまり”
匿名性を解除する生身のネクストステップ
『(not)NUCLEAR LOVE(or affection)』=“かくれんぼ”を語る!
印象派インタビュー&動画コメント (1/2)

 昨年、シーンに投げかけられた驚異の1stミニアルバム『Nietzsche(ニーチェ)』、そして、作詞に迎えたANATAKIKOUのキレキレのリリックが冴え渡るシングル『MABATAKIしないDOLLのような私』という波紋は、足かけ1年の歳月をかけジワジワと感度良好なリスナーとクリエイターに伝播。次の一手に大きな注目が集まっていたガールズデュオ印象派が、2ndミニアルバム『(not)NUCLEAR LOVE(or affection)』=“かくれんぼ”をリリースした。前作で提示した人力トランス、アンビエントでエレクトロ、ハードでサイケ、ダウナーでオルタナティヴというめくるめくアウトプットから、エグみを残しながらもよりフィジカルにポップに突き進む2人は、謎多きその匿名性からもふんわり解き放たれ(笑)、生身の現場=ライブへも果敢に挑戦を開始。検索ではたどり着かない2人の真実を記したどこよりも詳しいアルバム制作秘話を、mica(vo)とmiu(vo&g)、そして印象派のブレーンである前田栄達も交えてたっぷり語ってもらった。

 
 
もうすごいものが出来たんで、それで印象派はちょっと終わって
 
 
――前作の『Nietzsche』(‘13)は、miuさんが“ここで人生が終わっても悔いはない”と言うくらいのアルバムでしたけど。以降の印象派はどうなったんやという。
 
mica(vo)「何かが大きく変わったっていうのは正直あんまりなかったので、売れてない(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
mica前のインタビューを読み直して、“めっちゃ大口叩いてる! 恥ずかしい~!!”って(笑)」
 
――いやでも、あの作品はこれで即ハネてもおかしくないというような内容やったし、確実に印象派を一段上に上げてくれた作品で。
 
miu(vo&g)「もうすごいものが出来たんで、それで印象派はちょっと終わって…」
 
(一同爆笑)
 
――まだ終わったらアカン! 始まるとこ(笑)。
 
miu「はぁ~みたいになって、OL生活を忙しくやってました。ライブもそんなにしてなかったんで」
 
mica「活動のタイム感みたいなものは、特に前の年と変わりがなかったかな。ただ、評価の声がすごくいただいたのが嬉しかったなって」
 
miu「奥ボウイさん(=筆者)が『音エモン』(深夜の音楽番組)で紹介してくださってるのを、何十回も観ました」
 
(一同笑)
 
miu「micaちゃんの家にはTVがないんで、写メとムービーを録って送って(笑)」
 
mica「お母さんからも“奥さんによろしく”って(笑)」
 
――この春には1年2ヵ月ぶりにライブしたということでしたけど、それはどうだった?
 
mica「ちょっとまだ傷が痛んで…(笑)」
 
(一同爆笑)
 
mica「あの事実を飲み込むのにちょっと時間がかかる。何かビックリするぐらい、嘘でも“よかったよ”っていう声がなかったんで(笑)」
 
前田「関係者も40人ぐらい来てたのに、挨拶に残ったの1人だけやってん」
 
(一同爆笑)
 
――いきなり重い話(笑)。でも、そう考えたらライブもしない、姿も現さない、どこのどいつかも分からないというところから、印象派のスタンスがちょっと変わってきましたよね。
 
 
ラップとmicaちゃんの声のステキな感じを融合させたい
 
 
――今作『(not)NUCLEAR LOVE(or affection)』に向けてのビジョンは何かあった?
 
miu「『Nietzsche』で超カッコいい最高!って思えるものが出来て、私の中では結構ゴールしちゃったんで、次はどうしようかなぁってぼぉ~っとしてたときに、映画を観たり昔好きだった音楽を聴き直したりして。昔クラブに通い詰めてた時期があって(笑)、その頃の音楽を聴いて“ラップやりたいなぁ”って(笑)。2パック( feat.ノトーリアス・B.I.G)の『ランニン』が好きで、合間に女性の美しいメロディがあって、ラップとmicaちゃんの声のステキな感じを融合させたいなぁって。そんなときにmicaちゃんが、“マーキーさん(松浦正樹=ANATAKIKOU)のラップがおもしろい! 好きやぁ”みたいに言ってて」
 
mica「多分酔ってたときにハマったんでしょうね(笑)。でも、最初にラップをやりたいって言われたときは、イヤだったんで却下しましたけどね」
 
――でも意外なルーツというか、かつてはヒップホップとかも結構好きやったんやね。
 
miu「中高生のとき、自分なりにこだわりを持って好きな曲を入れた1~15までのCDがあったんですけど、R&Bとかヒップホップばっかりで(笑)」
 
――リバイバルというか、自分の原点をちょっと掘り下げるじゃないけど。
 
miu「ヒップホップとかのトラックって同じことの繰り返し=ループって感じなんですけど、印象派の周りには生音でカッコいいおじさんたちがいるんで、その方たちにやってもらったら、印象派っぽい曲が出来るんじゃないかなぁと思ったのと、私のラップのあまりのダサさを見兼ねたmicaちゃんが、“マーキーさんに書いてもらったら?”って」
 
――先行シングルにもなった『MABATAKIしないDOLLのような私』(M-5)の松浦さんのリリックのこのキレキレな感じ(笑)。“おかっぱあたまで缶チュウハイ 飲めば飲むほど泣けるよ最終回”のくだりとか、すげぇなぁと(笑)。
 
miu「でもそれもmicaちゃんの日常とすごいリンクしてて」
 
(一同爆笑)
 
mica「ドラマを夜な夜な朝までずっと見てるんで(笑)。そういう話を覚えてて入れてくれて」
 
miu「前作『Nietzsche』の代表曲として『SWAP』(‘12)があって、『SWAP』は天真爛漫な女の子のイメージで書いたんですけど、そんな女の子でも夜はちょっと寂しい孤独感とか…何かそういうものがラップに乗ってカッコよく切なさが出たらいいな、みたいな。“都会の女の子の夜”みたいなイメージで。仮タイトルも初めは『SWAP Ver.B』だったんで、歌詞の中にも“SWAP”っていう言葉が多用されてるんですけど」
 
――松浦さんのリリックが上がってきたとき、どう思いました?
 
mica「いや、もう…震えましたね(笑)」
 
――震えるよね、これが来たら(笑)。“ゴリラサイズのコアラ手なずけた”やからね(笑)。
 
前田「これ、最初は角川映画みたいやってん。“昭和やん!”って」
 
miu「でもそれはそれでカッコいい!と思ったんですけど、これじゃあダメだと前田プロデューサーは仰って、ずっとケンカしてて」
 
――関西が誇る二大変態が(笑)。
 
miu「いや、すごかった! こんなに大親友なのに、この曲のせいでケンカ別れするんちゃうか?っていうくらいガチンコに戦ってて」
 
mica「それでだいぶ発売が遅れた気が。最初は『SWAP Ver.B』として出すからには、あんまり離れ過ぎたら…」
 
前田「最初は1ヵ月しか離れてなかった。しかも『Nietzsche』の前に出る予定やったんで」
 
――えぇ〜! マジで!?
 
mica「フフフフ(笑)。あの話なくなったんかな?ぐらいの」
 
 
『Nietzsche』のときって“こういう曲だからこういう歌詞”とか
結構真面目に考えてたんですけど、もっと遊んでいいんだなぁって
 
 
――この詞はやっぱり松浦さんにしか書けない詞で、完全にキャリアもアプローチも違って、しかも異性でっていう表現を自分のモノにしていく作業はどうやったんですか?
 
mica「松浦さんのデモが恐ろしくカッコよくて、そのイメージが強過ぎて、歌い方をマネしてみたんですけど上手くいかなくて。全然掴めないままレコーディングを迎えて、松浦さんにレクチャーしてもらいながら、“これホンマに大丈夫かなぁ…”みたいな感じで私の中では終わったんですよ。でも、次の日かな? miuちゃんが歌ってみることになったとき、現場のテンションが結構上がってて。それを聴いて、“めっちゃカッコいい! これで大丈夫や”って」
 
前田「僕らは影でmicaのラップ=朗読って言ってるんで」
 
(一同爆笑)
 
mica「やってて反応が分かるじゃないですか。何か焦ってんなぁ~って(笑)」
 
miu「micaちゃんの歌唱力には絶大な信頼を置いてたんですけど、これはヤバいと(笑)。これはダサイと」
 
mica「ダサイって言われました。実はダサイと思ってたみたいです(笑)」
 
(一同爆笑)
 
miu「そんなことないよ! そんなことないよ!(笑)」
 
mica「これもうリリースしてしまってるから!(笑)」
 
miu「多分micaちゃんは尻上がりのタイプで、後半はすごいアガってきて、それこそさっきの“おかっぱあたまで缶チュウハイ”辺りから」
 
mica「そこはちょっとイキッてやれたんで(笑)」
 
miu「後半にかけてノリノリやったんで、そこは残して。別に私のラップが上手いわけじゃないんですけど、このままでは二の舞になってしまうと思って(笑)。Perfumeのラップしてる曲とか、泉まくらさんのラップとかが好きなんで聴いたりして」
 
――自分の表現では使わなかったスタンス/アプローチじゃないですか。それはやってみてどうだったんですか?
 
miu「『Nietzsche』のときって“こういう曲だからこういう歌詞”とか、結構真面目に考えてたんですけど、もっと遊んでいいんだなぁって。こんなシュールでポップで、だけどこんなにもカッコいいんだなって。『温泉』(M-7)もトラックが結構ロックな感じで、多分前の私やったらもっと真面目にカッコいい歌詞を考えてたんですけど、そこにちょっとギャップというか、“カモン脱衣所”とか言ってみて。逆に印象派っぽいかなぁっていうのは、松浦さんからめっちゃ影響を受けたところですね」
 
――残りの曲はどうやって進めていったんですか?
 
miu「『BEAM!』(M-1)は、少女時代の『THE GREAT ESCAPE』(‘11)っていう曲が好きで、そういうちょっと韓流なサウンドと、井上陽水さんの『アジアの純真』(‘96)みたいな、ちょっとゆるくてバブリーな、いろんな地名が出て来たりするイメージで。『アジアの純真』って時代的にも華やかだったと思うんですけど、『BEAM!』はシリアスというか、日本の閉塞感とか、ちょっと逆な感じで作り始めて」
 
前田「僕がたまたま当時『あまちゃん』をめっちゃ見てて、2人がもう潮騒のメモリーズにしか見えなくなって(笑)。酔っぱらったときに“いやいや、お前らこれからは『あまちゃん』やで”って言ったのを取り込んでしまって、“漁師町”っていう言葉が歌詞にも反映されてしまったっていう。結果、より複雑な世界観が組み込めたんじゃないかな」
 
――前作は、政治的なメッセージとかシニカルさがもうちょっと明確に出ていたというか。今作は一見して分かる感じじゃなく塗り込んであるというか、毒を含ませてある印象で。
 
miu「やっぱり、普通じゃないことがしたいっていうのがすごいあって。歌詞とかも“愛してる”って直接言うんじゃなくて、何かちょっとおもしろく言えないかな?っていうのは常に考えてるんで。そこは結構意識はしてますね」
 
――あと、さっきのmicaちゃんのラップダサい事件から(笑)、今作ではmiuちゃんのボーカルの比重のデカさを感じるなと。今まではサビのmicaちゃんの爆発力っていうセオリーがあったけど、今回は割と同等というか、miuちゃんの存在感が歌声に関しても出てきてるなぁと思ったんですけど。
 
miu「そうです。ちょっと出しゃばっちゃった感じ(笑)」
 
mica「miuが今回のアルバムで初めてサビを歌ったんですよ。私的には生徒が育っていったみたいな嬉しさがあったんですけど、本人は何か納得いってないっぽいですけどね(笑)」
 
miu「そうですね。ちょっと早かったかなぁ(笑)」
 
――アハハハハ!(笑) 『BEAM!』はMVもめっちゃおもろいですね。
 
mica「でも、全然曲が入ってこないんですよ!(笑) 映像がすご過ぎて」
 
miu「幼少期から始まって、生き別れて、敵対して…」
 
mica「サイボーグにされて戦うっていう(笑)」
 
 

 


(2014年10月10日更新)


Check

Movie Comment

去年はNGの動画がさらりと解禁(笑)
印象派からのゆるふわ動画コメント!

動画を再生するには、videoタグをサポートしたブラウザが必要です。


Release

シェイプされた表現と広がる可能性
1年ぶりとなる2ndミニアルバム!

Album
『(not)NUCLEAR LOVE(or affection)』
発売中 1667円(税別)
eninal
PECF-3090

<収録曲>
01. BEAM!
02, アフレル
03. ライ!ライ!ライ!
04. フェアリーはご機嫌ななめ
05. MABATAKIしないDOLLのような私
06. (I FEEL)pitiless
07. 温泉

Profile

いんしょうは…写真左より、mica(vo)、miu(vo&g)。大阪在住、白馬の王子さまを待ち望むOL2人組デュオ。’10年結成。タワーレコード限定発売CD『ENDLESS SWIMMER/HIGH VISION』(‘11)『SWAP』(‘12)の2作品をリリースし、みうらじゅんとクチロロ、モーモールルギャバン、ハンサムケンヤ、tricot等と共演。耳の早いリスナーの間で話題を呼ぶ中、’13年6月に待望の1stミニアルバム『Nietzsche』をリリース。同年11月にはシングル『MABATAKIしないDOLLのような私』をリリース。今年の6月25日には、2ndミニアルバム『(not)NUCLEAR LOVE(or affection)』を発表。ユニット名は、ある時期の絵画のムーブメントの総称からきているが、その呼称が当時としては理解不能な作風の一部のアーティスト達に対する、差別用語、蔑称として使用されていたというエピソードに、2人が感銘を受け自らのグループネームに冠した。

印象派 オフィシャルサイト
http://inshow-ha.com/

Live

大阪では久々のライブ!
ミナミホイールの2日目に出演

 
【大阪公演】
『MINAMI WHEEL 2014』
チケット発売中 Pコード239-990
▼10月12日(日)14:00
ミナミ・ライブハウス各所
日曜日券3500円
[出演]愛はズボーン/アイボリック/赤色のグリッター/アサミサエ/アダチケンゴ/Another Story/或る感覚/the unknown forecast/the equal lights/伊東歌詞太郎/伊禮恵/印象派/植田真梨恵/打首獄門同好会/宇宙まお/Age Factory/Any/ENTHRALLS/OGRE YOU ASSHOLE/オカダユータ/小川エリ/オトワラシ/Official髭男dism/限りなく透明な果実/カラスは真っ白/河内REDS/感覚ピエロ/神田莉緒香/KIDS/CURIO/KING BROTHERS/GIMMICK_SCULT/ギャーギャーズ/Qaijff/CHROTO/CROMARTY/GOODWARP/GOOD BYE APRIL/グッバイフジヤマ/grass bird/GRIKO/Keseran Pasaran. /激団モンゴイカ/恋する円盤/コロボックルズ/最悪な少年/Sound Schedule/sacra/笹木ヘンドリクス/佐々木萌/The Somedays/The Curling/The Cheserasera/THE GAME SHOP/ザ・チャレンジ/THE TEENAGE KISSERS/The fin./The Flickers/ザ・マスミサイル/The LaQ/Sea Child/She Her Her Hers/志磨参兄弟/chouchou merged syrups./Schroeder-Headz/シンガロンパレード/THE ORAL CIGARETTES/Jump the Lights/ZILcoNIA/スーダラ少年/水上カルビ/Swimy/水曜日のカンパネラ/Scars Borough/sleepyhead jaimie/セックスマシーン/石鹸屋/Cettia/soulkids/そこに鳴る/ソライロシマウマ/TAMTAM/tayuta/chip chaplin/TINK’U/テクマクマヤーンズ/テジナ/テレビーズ/DAISY LOO/toconoma/トレモノ/Dr.DOWNER/Drop’s/Natural place/nano an aperture/鳴ル銅鑼/2gMONKEYZ/にこいち/nicoten/日食なつこ/NEKO PUNCH/NOWEARMAN/harmonic hammock/howlsend/ハグレヤギ/HAPPY/葉山久瑠実/ButterFlyKIss/バックドロップシンデレラ/パレードパレード/平井大/ビレッジマンズストア/First impression/ファジーロジック/フィッシュライフ/fifi/FOLKS/fula/FREE SQUARES/BUGY CRAXONE/Brian the Sun/BLUE ENCOUNT/プププランド/本棚のモヨコ/Bob is Sick/まちぶせ/MILKBAR/陸奥守JAPAN/メロウデュ/moccobond/momo/mol-74/もるつオーケストラ/MONSTER大陸/ゆれる/吉田Q/READ ALOUD/ЯeaL/Little Glee Monster/LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN/Rails-Tereo/LEGO BIG MORL/レジオキング/LOTH/The Wisely Brothers/惑星アブノーマル/wacci
【お問合せ】FM802 リスナーセンター info@funky802.com
※6歳以上は有料。出演者、会場、開演時間は変更となる場合があります。

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アルバムにも参加したANATAKIKOU
のワンマンにゲスト出演が決定!

 
【大阪公演】New!
『メロディーに乗っ盗られた男
-“ANATAKIKOU UNIT”
 ワンマンライブ 2014!!-』
チケット発売中 Pコード243-870
▼11月1日(土)19:30
心斎橋JANUS
オールスタンディング3000円
[メンバー]松浦正樹(vo&g)/杉村美奈(b)/
藤井学(key)/山口実紗(ds)/
クマノツヨシ(prog)
[ゲスト]森寺啓介(g)/mica(vo)/miu(vo)
JANUS■06(6214)7255

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