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昨年よりパワーアップした三者三様の魅力で魅せる
奇跡のコラボ・ステージ! 新たに作り上げたオリジナル作に
自身の活動の原点までを、cobaにインタビュー

雅楽師の東儀秀樹、ヴァイオリニスト・古澤巌、そしてアコーディオニスト・coba。それぞれが各々の世界でトップ・アーティストとして活躍しながらも、軽やかで自由な活動を見せる革命児たち。そんな3人が初のコラボ作『TFC55』を携え、トリプルツアーを敢行することに! T=東儀、F=古澤、C= coba。そして共に55歳である彼らの、尽きることのないチャレンジに溢れたステージについてcobaにインタビュー。彼自身のアーティストとしての確固たる信念や、常にフレッシュであり続ける活動の原点も含め、たっぷりと語ってくれた。

――今回のツアーの実現に至ったそもそものきっかけをお伺いしたく思います。
 
「昨年行われた東儀さんと古澤さんのコラボ・コンサートへのゲスト参加が始まりでした。期せずして同い年の3人。しかもまったく違う楽器でありながら、革新的なサウンドをインストゥルメンタルで挑んできた者たちが集うわけですから、何か特別なことができないかなと。僕自身、とっても楽しかったですし、お二人も喜んで下さって。「今までの自分たちのコンサートでは起こり得ないようなことがたくさんあって、びっくりしてるんだ!」とまで言って頂いてね。このツアーに関しては、もう去年のうちにお話を頂いていたんです」
 
――たくさんのミラクルを感じての今ツアー開催となったんですね。その“今までは起こり得なかったこと”とはどんなことだったのでしょうか。
 
「東儀さんのお話では、これまでお客様がスタンディングなさるということはありえなかったそうなんです。静かに始まって静かに終わる。毎年、自分たちのライブではしっとりしたムードの中で、お客様にも幸せになってお帰り頂くことが多かったと。ですが、去年は最後の2,3曲目あたりからスタンディングオべーションになって。しかも自然と手拍子が起こったりもしたんですね。それを「cobaのおかげだよ」と言ってもらえてね、とっても嬉しかったです。僕の曲を彼らがプレイしてくれたこともすごくよかったですし」
 
――コラボの醍醐味ですね。
 
「各々が個性の違う、とってもキャラクターの立った人であり、楽器であるわけですよね。で、その人たちが自由に僕のメロディを、あるいはそれぞれのオリジナルやカバー曲を自分たちの個性を生かしながら参加する…そこにたくさんのスパークが生まれて、新しい文化に繋がっていくという経験をしましたので。もっとそれを積極的に突き詰めたいということで、この3人が再び結集したんだと思います。ただ本来、僕の曲は篳篥(ひちりき)やバイオリンを想定した曲ではない。例えば、去年のエンディングで披露した『to the moon ~月に向かえ~』は、ラテンのリズムにアコーディオンの自由度を生かした楽曲なので、篳篥なんかは辛いわけです。だから無理もあったと思うんですね。それもあって、改めてやらせて頂くのなら3人でしかできないことをと考えまして、今回はミニアルバムを作ることになりました」
 
――そのアルバム『TFC55』についてもお伺いできれば。
 
「それぞれがそれぞれの楽器を鑑みながらあてがきで作りました。もちろんコンサートでお披露目しますし、エンディングでみんなが思わず立ってしまう、気持ちが盛り上がる曲を…そういうことを考えましたね。それに二人ともすごいポテンシャルの持ち主。僕自身、篳篥に笙(しょう)、それから古澤さんの弾くヴァイオリンに非常に惹かれていますから、彼らを見てると自然に曲ができてしまうんです」
 
――例えばピアノに対するあてがきと、篳篥に対するそれとでは全く違ってくると思うのですが。
 
「そりゃ違います、全然(笑)。でもああいう人たちですから、とってもチャレンジしてくれましたね。こちらも最初は(各々の楽器について)わからずに書くじゃないですか。例えば音域的には出る音でも、鳴る音とと鳴らない音があったり、ここからここまでの音がいきづらいとか、そういった具体的なこともあるわけですよね。僕がオーケストラについて勉強した若き日のことですが、実際のプレイヤーが弾いてくれると違うんですよ。オーボエにしてもサックスにしても、バンドにしても。そういう経験を積みながら、だんだん理解していくものですから」
 
――逆に、古澤さんが作曲された『はじまりの風景』などは、どういった印象を受けられましたか?
 
「古澤さんは、本当にクラシックな人なんだなと再認識しましたね。アルバムの中でもこちらはちょっと毛色が違うんですが、本当にクラシックなイメージできれいな曲ですし」
 
――さらに、お三方ともとっても多忙な中だったと思いますが、レコーディングはいかがでしたか。
 
「大変でしたね(笑)。でも僕のスタジオがあるので、そこにいらして頂いて。何日かに分けてレコーディングしました。そもそも、今までいろいろなミュージシャンのプレイを録りましたけど、やっぱり格段に上手いですよね、ふたりとも。ヴァイオリニストに関しては、みなさんご存知のビックネームも含めて100人を超える人たちを録りましたけど、古澤さんはダントツですね。あそこまで上手い人はなかなかいない」
 
――なるほど。それはプレイヤーとしての、cobaさんの演奏意欲も掻き立てられますよね。
 
「そうですね」
 
――3人でやる意義といいますか、いろんなコラボの意味を感じさせられるお話だなと感じました。
 
「ありがとうございます。音楽業界がとっても不景気で馴れ合いのようなお得感満載のコラボレーション企画が蔓延している中で、そうあってはいけない、やっぱり新しいものを生み出し続けることがアーティストの使命である。我々は単なるプレイヤーではなく、アーティストでなければいけない。それが僕のポリシーですから。今回参加させて頂く上で、その部分が僕にとって大事な部分でした。今年もやるなら新しいものを、世界のどこにもないものを作りましょう、そういうご提案をさせて頂いて、アルバムの話が実現したんです」
 
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――ちなみに東儀さん、古澤さんの魅力もお伺いできたらと思います。
 
「まず、お二人ともとても個性的だしいい人たちですよね。何かひとつのものを極めた人格というのは、何かにつけて通づるところがあるし。一言発すると、そのことでいくつもいろいろなことが返ってきますから。単なる同い年というようなことだけではなく、皆さんそれぞれ苦労されて“自分の一国”をお築きになった方々ですから。そういった意味でもとてもクリエイティブだし、話していても楽しいです。そもそも音楽は生き物ですからね。人格が乗り移って反映されます。ライブではもちろんリアルタイムで出ますし、どのくらいお互いの音がちゃんと聴き合えているか、ここは攻めないといけない、引かなければいけない、またあるところは馴染ませなければいけない。これはもう計算じゃない、多分右脳の仕事だと思うんですね。空気のように吸ったりはいたりして一体になりながら作っていく関係というんですかね」
 
――同い年、インスト、それぞれの楽器の革命家。いろんな共通点を持った3人だからこそですね。
 
「それに、みんなものすごく苦労してきたわけです。僕は18歳でイタリアに行き、何のツテもないところで4年間、本当に辛く苦しい思いをたくさんして、今日まで辿り着きました。古澤さんも同様にアメリカに行かれて、そういう思いをされてるわけです。東儀さんは、非常に閉ざされた世界の中から脱するため自分ひとりでとっても大変な思いをされた。そういう3人が、若い時期ではなく55歳という今、ある程度人生を経験してきて、それぞれに活躍してきたそういう今、一緒にやるということに意味合いを感じますね」
 
――これまでの経験にも共鳴する部分が多かったわけですね。
 
「人は長く生きるようになり、高齢化社会へ突入したと言われますよね。じゃあどういう50代を生きるのか、というのはとっても大きな命題だと思うんです。55歳にもなると、あと何年音楽をやるんだ?という考えもわきますし。僕はアコーディオニストですから非常に腰へ負担がかかる中、どうするんだと(笑)。もちろん60代、70代、それ以降もあります。でも僕らは“TFC55”。“GO!GO!”なわけです。“行こう!行こう!”なんですよね。夢を捨てずやり続けることだったり、いつも飽くなき挑戦を続けること、その中で実った果実たちを慈しみ楽しむこと。そこからまた新しい可能性を見出し、次の世界に恐れることなく足を踏み入れることであり。これは音楽の話に聞こえますが、実は人生の話なんですね。僕は『Bellows Lovers Night』という蛇腹楽器の仲間を集めたフェスティバルを毎年やっているのですが、そういう企画をはじめこの楽器を通して、たくさんの出会いや実りがあったんです。今日こうやってお目にかかれているのも“たまたま起こった必然”。すべての因果関係が絡み合って絡み合って、今日に導かれている。“TFC55”も今だからこそなんですよね。多分若い頃に一緒にやろうと言っても、大喧嘩になったんじゃないかな(笑)。そして、こうやってまた新しいフルーツが実り、結果を得ることができているんじゃないかという気がします」
 
――年を重ねることが楽しくなるお話です。
 
「そうじゃないとね。どんどん時間も早回しになりますし、いろんなことが見えますよ。僕は、20年以上前にテレビで観た新藤兼人監督のインタビューが脳裏に焼きついて離れない。「老いるということは、もっと枯れていくもんだと思っていた」と。ところが当時80歳くらいだったのかな、「もう、ギラギラです! 私は映画を撮りたくて、作りたくてしょうがない」と。「こんなギラギラな老人になるとは、自分自身思ってもみなかった」。その話を聞いて、お手本にしたい人だなぁと思って。松尾芭蕉も言ってますよね、「…夢は枯野をかけ廻(めぐ)る」と。体はもう旅に出られないことはわかっているんだけど、夢自体は芭蕉の心に宿り続けている…僕はそう解釈しています。それこそが、夢の昇華された究極の形じゃないかと。僕もそういう風になりたいわけですよ」
 
――cobaさんのこれまでの常にフレッシュな活動を見ても、その道を邁進されているのがわかります。音楽の作り方においても、表現の仕方においても。キャリアを重ねることを良くも悪くもと、捉えておられるところもありますか?
 
「仰る通りです。日常への埋没ということが一番恐ろしいですね。昨日の経験を今日に生かす、これは大事なことです。それが日数分だけ重なってくるわけですから。しかし、逆にものすごく危険をはらんでいることでもある。例えばテレビCMなどは、だいたい(使う映像を)観た瞬間に正解が見えるんですよね。経験上、こうすればクライアントが求めていることに近いといったことはわかるんです。しかしそれを信じた瞬間に、もう新しい今日の僕じゃないんですよね、今まで生きてきた過去の遺物なんです。そんなものを作っても、それはアートじゃない、予定調和ですから。予定調和に陥ると、コラボレーションもだめ、アルバムもだめ、すべてだめです。コラボというのは好きだからこそ、好きなもの同士だからこそリスペクトし合いながら本気で闘う。それがなければ予定調和。すなわちビジネスです。アーティストがビジネスをやり始めたらビジネスマンだから。そうなりたくはないといつも思ってます」
 
――ビジネスに徹することも道のひとつかもしれませんが、cobaさんたちお三方の見せてくれるステージはまさに夢そのものですね、本当に。
 
「いやいや、でも何かよくないですか。55歳にもなって“GO!GO!”と言ってるバカっぽさも。でも僕らだとちょっと真剣さが見えちゃう。そこが悔しいところでもあるんですが(笑)」
 
――響きは少年の心を感じます。
 
「素敵な言葉ですよね。少年でいたい。肉体は無理でもね(笑)」
 
――では、いよいよ9月20日(土)に迫ったNHK大阪ホール公演についてもお伺いしたく思います。
 
「大阪は日本のローマですよ。本質的であるし、実(じつ)を取るというんでしょうか。見栄よりも見てくれよりも、実を取る。人との付き合い方が本当に上手くて、ローマに似てるんですよね。だから、大阪のコンサートは盛り上がる。逆にそれって少しでもいい加減なところを見せてしまうと、きちっとリアクションで返ってくると思うんです。そこがドキドキしますしときめきますし、楽しめますよね」
 
――日本のローマ、何と素敵な例えでしょうか! 最後に意気込みをお伺いできれば。
 
「今回も全国ツアーですけれど、とにかく日々、新しく生まれ変わった自分たちでいたいと思っています。大阪でしか起こせないことを作り上げたいな、やりたいなと思っています」
 
――当日が本当に楽しみです、ありがとうございました!

取材・文:後藤愛



(2014年9月 9日更新)


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Movie Comment

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Release

東儀秀樹×古澤巌×coba
全国ツアーに合わせ
待望の初コラボアルバムをリリース!

Album
『TFC55』
9月10日(水)発売 1620円(税込)
UCCY-1042
演奏者:東儀秀樹(篳篥・笙 ほか)、古澤巌(ヴァイオリン)、coba(アコーディオン)

<収録曲>
01. Love Hat Trick
02. TFC(Treasure Finding Cruise)
03. はじまりの風景
04. Liberportango~タンゴ自由の扉~
05. Highland Nostalgia

Profile

コバ…アコーディオニスト。数々の国際コンクールで優勝。以来、ヨーロッパ各国でのCDリリース、チャート1位獲得など、“coba”の名前と音楽は国境を越え世界の音楽シーンに影響を与え続け、15年以上にわたり恒例化しているヨーロッパツアー、更にはアイスランド出身の歌姫ビョークのオファーによるワールドツアー参加など、今や日本を代表するアーティストとしてその名を世界に轟かせている。常にハイクオリティなサウンドを追究したその作品は国内外に高い評価を獲得。アコーディオンのイメージをポップミュージックの世界で大きく変えたその音楽は今や“coba”という1つの音楽ジャンルになったとも言われる。また映画、舞台、テレビ、CM音楽をプロデュース、演奏家やオーケストラへの委嘱作品を手がけるなど、作曲家としても多くの作品を生み出している。現在はヨーロッパ、東京を拠点に国際的な音楽活動を繰り広げている。'13年11月6日には初のアコーディオン独奏アルバム『coba pure accordion』をリリースし全国ソロツアーを開催した。

coba オフィシャルサイト
http://www.coba-net.com/

Live

東儀秀樹×古澤巌×coba
全国ツアー2014

▼9月12日(金) 18:00
神戸文化ホール 大ホール
全席指定-7000円
※未就学児童は入場不可。
グリークス■06-6966-6555

Pick Up!!

発売中 Pコード:233-594
▼9月20日(土) 15:00
NHK大阪ホール
S席-6800円 A席-6300円
※未就学児童は入場不可。
キョードーインフォメーション
■06-7732-8888

チケット情報はこちら


東儀秀樹×古澤巌×coba
全国ツアーオフィシャルサイト

Column

東儀秀樹、古澤巌、cobaが
繰り広げる超絶コラボレーション
奇跡のプロジェクトについて
東儀秀樹に聞いた

Column

cobaをゲストに迎えて行われた
昨年の全国ツアー
東儀秀樹×古澤巌がその醍醐味を
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