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永遠の孤独、永遠の輝き
満たされない心と諦めの先にある絶景を目指せ
妄想女子Neat’sのポップでドリーミンな3rdアルバム
『MOA』インタビュー&動画コメント (2/2)

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私は不死鳥になろうと決めました(笑)
 
 
――だからなのか、今作は『MOA』(=絶滅した飛べない巨鳥)というタイトルもそうですけど、相変わらずドリーミーでファンタジックな部分はあって、よりコンセプチュアルなのに、よりパーソナルというか。多分今までは、“私は妄想を爆発させて、それを具現化するんです”とは言ってたけど、どこかブレーキがかかっている気がして。
 
「あぁ~確かに!」
 
――今回はそれがないなって思ったんです。『グレイテスト・エデン』(M-9)の歌詞にしても、“クロールしてーるエレファント!!”とか、“予想外UFO衝突”とか(笑)。
 
「言われてみると。よりポップになったはずなのに、制作過程は1人遊びをもっと極めたみたいな感じですよね(笑)。制作はやっぱりチーム化しているんだけど、そういう人たちと一緒にやるときも、私がヘンな知識を付けようとしなくなったというか。エンジニアの人にミックスを頼むときも、前は自分の知ってる知識で“何とかのベースの感じ”とか、“コンプをこうして”とか会話してたんです。今回はそれが一切なくて、“物語”を送ったんです。“ここで砂嵐が来て、イントロはその疾走感で”とか。“あ、もっとザラザラとしてる砂の感じです”とか、そういうやりとり(笑)」
 
――それってすごく感覚的なものですよね。
 
「チームの妄想係ですから(笑)」
 
――逆に、私だからこそ、そういう伝え方をしなきゃいけないんだって思ったのかも。
 
「そうなんですよね。これは誰にも出来ないところだなと思えたのかも。今回の『MOA』のテーマは“永遠”なんですけど、“永遠なんてあるわけないじゃん”ってずっと思ってたんです。でも、それは同時にすごい恐怖だった。永遠がホントは欲しいから。永遠っていうものを信じるピュアな心でいたいけど、大人になってあるわけないじゃんっていう自分がドバッと出て来て、それがものすごい悲しかったし、コンプレックスだったんですよね」
 
――だって昔はそれをずっと信じて、周りとズレていたのに…。
 
「うんうん。みんなと一緒になった(笑)。で、何かもう、ちょっとやさぐれたんですよ。“私も所詮こんなもんだ!”みたいな感じで。でも、やっぱりそうなると、楽しくなかったんですよね。音楽もヘンにカッコつけたものになっちゃって。そのときにモアっていう絶滅した鳥を知ったんです。ビジュアルは全然かわいくないんですよ、鷲に食われたりするぐらいどんくさいし、太り過ぎちゃって重くて飛べないし(笑)。でも、全部が上手くいかなくて切ないけど、生き物らしくていいなと思ったんですよね。モアは絶滅しちゃったけど、もし生きているときに永遠に焦がれていたとしたら、絶滅なんてしないって信じながら生きていたとしたら、何てキラキラしてるんだろうと思って、私は不死鳥になろうと決めました(笑)」
 
――アハハハハ!(笑)
 
「不死鳥って、ある意味ずーっと永遠を信じ続けなきゃいけないじゃないですか? その憧れている感じが、キラキラしてるというか。現実はそうじゃないかもしれないけど、憧れていたいし、夢を見ていたい。元々はやっぱりファンタジックな気質だから、“もう嘘でもホントでも関係ない、とにかくこうなったらいいなって思い続けて死にたい”って思ったら、生きていてすごく楽しくなってきたし、日々のいろんなものがキラキラしてきたんですよね。だから、自分の人生において“焦がれて生きる”っていうのはすごい大事なことで。全部が現実になると、全部辞めたくなるんで(笑)。この間公開された映画『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン監督が大好きで、彼の作る映画は人間の毒とか影というかシュールなところを、色合いとか衣装とか見せる出口がポップで。私も歌詞は“暗いね”って言われるけど(笑)、ジャケットとかMVとかライブの雰囲気は、やっぱり人に夢で見せるものでありたい。けど言ってることは、“分かるそれ!”みたいな」
 
――そして『MOA』では、MVも自分で監督して編集するなど、遂にその領域にも足を踏み入れ(笑)。
 



「フフフフ(笑)」
 
――この装飾の電球とか幾らぐらいすんのかな?と思ったり。
 
「アハハハ!(笑) 100円です(笑)」
 
――マジで(笑)。さすが工夫と創作のNeat’s。
 
「人手があるように見えて、それぞれのプロが集まって少人数体制でっていうのは、理想的ですね、私にとって」
 
 
ホントにもう『MOA』に救われました
生き返らせてもらったと思ってるくらい
 
 
――そういうファンタジーにもより介入して行きながら、『黄昏れに雨』(M-4)とかは、これが一番Neat'sだなって思いますね。他の曲に対して、ファンタジーの中に潜む素のNeat'sが、すごく垣間見えるなぁと思いました。
 
「あぁ~まさに“私”ですね。そのときは、ものすごい感情の揺れがあったんですよ。もう夜中に眠れなくて、喋るみたいな感じでハァ~って溜め息と一緒に出て来たメロディをiPhoneに録音していたのを掘り起こしたんですよ。やっぱね、悲しいし寂しいんですよ、基本的には。“人生に歓びを”とは言ってるけど、“やっぱり1人かぁ”っていう感情があるのはもうしょうがない。それが一番ドロッと出たのはそれですね」
 
――かと思えば一転、『砂漠のスコルピオン』(M-8)はポップソングの極みで、ちょっとタイアップとかいけるんじゃねぇか?っていう(笑)。『クライマーズ』(M-11)のリップノイズの切り貼りをビートにしたのもおもしろいし、そもそも何でそんなことしようと思ったんだろう?とか(笑)。
 
「ププププププって(リップノイズを再現)(笑)。やっぱりアレンジはね、メロディがしっかりした分やりたいことやってみようっていう幅が出来たのはあるし、宅録の強みでもありますよね。今回は9割が宅録ベースで、そうやってちょっとずつブラッシュアップして。あと、今はもうティンパニが大好きで、今回も使い過ぎで怒られるぐらい入ってる(笑)。この間、ライブでも使いたくなって買おうとしたんですけど、オークションで2回負けて(笑)。ただ、割と大きいみたいなんですよ。まぁ自宅には置きたくないじゃないですか?(笑) で、事務所も拒否られて(笑)」
 
スタッフ「そもそも部屋のドアを通らないですから。そこまで考えてないんですよ」
 
(一同笑)
 
――スペースを取るどころか、そもそも部屋に入らないんだ。すごいね(笑)。あと、前作でもチームは出来始めていたと思うんですけど、そのときはNeat'sが真ん中にいてみんなが支えてくれるというか、Neat'sの世界をみんなで具現化しよう、世に広めようという感じだったのが、今回はNeat’s自身がちゃんと先頭に立っている感じがして。
 
「そうですね。その修業をするために、スランプがあったような気がします。今もね、ちゃんと“次はこれ!”っていう計画が頭の中にはあって」
 
――働くねぇ。
 
「じゃないと死ぬのです(笑)。絶滅するのです(笑)」
 
(一同笑)
 
――Neat'sも絶滅危惧種でもうヤバいと。創作しないと生きていけない生物。
 
「ホントにもう『MOA』に救われました。生き返らせてもらったと思ってるくらい。小さい頃もそうだったけど、やっぱり“作る”ことに何度も命を救われてる。やっぱりそこは憧れていたいですねぇ」
 
――うんうん。憧れるものって自ずと減っていくもんね。
 
「そうみたい。大人ってそういことかなぁ…」
 
――例えば、学生の頃から好きだったミュージシャンとかに取材で会うと、やっぱり嬉しい。でも、会えて嬉しいというよりは、“俺にもまだこの気持ちが残ってる”という嬉しさみたいなところはありますね。
 
「うんうん! ありますよね。それってもう生理的な感覚じゃないですか。そういうものを音楽でやりたいって、今回はすごく思ったんですよ」
 
 
やっぱりネットも1対1だから
 
 
――冒頭でも触れましたが、1stアルバム『wonders』(‘12)のリリース時に泣きじゃくった、それこそ気が重くなるようなインタビューがあって(笑)、前作の2ndアルバム『MODERN TIMES』のときに、それを踏まえて“あの頃と変わりました?”と聞いたら、とは言え“同じだと思う、変わりたいけど”と言っていて。じゃあ今Neat'sに改めて問いますが、“あの頃と変わりましたか?”。
 
「変わったと思う。ただ、何かが死んだとは思う。けど、やっぱりクロワッサンっていうのは変わらない(笑)。作りたいものとか、ドリーミーへの憧れとか、自分がワクワクするものはきっと変わってないんだけど、自分の壁が少しずつ壊されていってるのは明確で。バリアがドンドンなくなっている気がします」
 
――そやね。だってバリアだらけやったもんね。
 
「だらけでした! 最近出来た友達に昔のことを話すと、“えっ!? そんなだったの?”って驚かれたりするぐらい」
 
――ライブも変わってきました? 何か違うもんですか、フィジカルな表現は。
 
「バンドでやる意味と、独奏でやる意味が全く逆のところにあるのがおもしろくて。それを肉付けして、ちゃんと2本の軸を持ちたいなっていうのがライブの目標ですね。独奏に関しては、さっきの『黄昏れに雨』を作ったときの話じゃないけど、もう“夜中の私とあなた”っていう感じ。曲が出来るときに“あっ!”て思ったその感覚を、みんなと共有出来たらいいなぁっていう場ですね。バンドはもう、“この瞬間を生きてる!”っていう生命力みたいなキラキラを、みんなとワーワー浴びれられたらいいなぁって。基本的にライブは苦手なタイプだから、そこもね、鍵が外せると。みんなの前でも扉をバッて開いて、裸になってライブがしたい」
 
――まぁでも、“クロールしてーるエレファント!!”の『グレイテスト・エデン』が書けたんだったら、出来るんじゃねぇかっていう気もします(笑)。
 
「フフフ(笑)。出来るかな? もう何でも見せる(笑)。楽しみですね」
 
――何だかんだ、Neat’sが少しずつ広がってる感じはしますよね。リリースもHPと会場のみでやり方は変えてないのに、すごいことですよ。“アナログのやり方をデジタルの速度で”とか言ってたけど、まさにだなって。
 
「それは実感としてもあります。やっぱりネットも1対1だから。ファンは大事にしたいし、それこそライブもね、そうやってみんなと作っていけたらホントに最高。だって、ホントにみんなに支えられてるから。もう眠れない夜とかはTwitter、Twitterですよ(笑)。みんなの“おやすみ~”とかいう何気ない言葉で、“おぉ~みんなもまだ起きてんだぁ”みたいな。そういうのがね、すごく励みになってますから」
 
――それではまた、リリースツアーで。
 
「ハイ! ありがとうございました!」
 
 
Text by 奥“ボウイ”昌史



(2014年8月 8日更新)


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Release

覚悟と諦めが生んだファンタジー
原点&質感アップの3rdアルバム!

Album
『MOA』
発売中 3000円
dada-10
※デジパック仕様
※オフィシャルHPでのweb販売のみ。

<収録曲>
01. MOA
02. グレイの森
03. 夕暮れレコード
04. 黄昏れに雨
05. よるのいろ
06. 新世界
07. 海
08. 砂漠のスコルピオン
09. グレイテスト・エデン
10. wonderland
11. クライマーズ
bonus track
12. よるのいろ
~electro circus by 砂原良徳~

Profile

ニーツ…’85年8月17日生まれ、神奈川県出身。’03年にRYTHEMのピアノ&ボーカルとしてデビュー。’11年に解散。以降、新津由衣によるソロプロジェクトとしてNeat'sを始動。作詞作曲編曲の全てを自ら手がけ、web販売なども自らで行うD.I.Y.スタイルで活動中。ライブでは、ART-SCHOOL/Ropesの戸高賢史らを迎え、よりラウドなパフォーマンスを披露。単独ライブ『Bedroom Orchestra』も並行して行っており、ループマシーンやサンプラーを駆使した独自の独奏ライブのスタイルも精力的に展開している。’11年6月より毎日更新し続けたYouTube“Neat’s TV”も1000回に到達。また、’12年に1stアルバム『Wonders』、’13年に2ndアルバム『MODERN TIMES』とリリースを重ね、今年6月22日には3rdアルバム『MOA』を発表。音源はオフィシャルHPとライブ会場のみで販売されている。

Neat's オフィシャルサイト
http://www.neatsyui.com/


Live

東名阪仙4公演のバンドツアー
レコ発大阪公演が間もなく開催へ!

 
『Neat's Dream Band Tour「MOA」』

【仙台公演】
▼8月3日(日)18:00
PARK SQUARE
全席自由3000円
G・I・P■022(222)9999


【名古屋公演】
チケット発売中 Pコード232-820
▼8月9日(土)18:00
アポロベイス
前売3000円
ジェイルハウス■052(936)6041

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Pick Up!!

【大阪公演】

チケット発売中 Pコード232-847
▼8月10日(日)17:30
LIVE HOUSE Pangea
オールスタンディング3000円
清水音泉■06(6357)3666
※小学生以上は有料、
未就学児童は入場不可。

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【東京公演】
チケット発売中 Pコード233-658
▼8月30日(土)17:30
LIVE HOUSE FEVER
立見3000円
ホットスタッフ・プロモーション■03(5720)9999

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Column

音楽実験を繰り返す飽くなき探求心
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ポップでアートな2ndアルバム
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