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ホーム > インタビュー&レポート > 内田吐夢監督のファンタジー時代劇『恋や恋なすな恋』 4Kデジタル復元版を日本初上映! 『バーフバリ<完全版>連続上映』の絶叫前夜祭も 《第10回 京都ヒストリカ国際映画祭》の見どころ紹介!!

内田吐夢監督のファンタジー時代劇『恋や恋なすな恋』
4Kデジタル復元版を日本初上映!
『バーフバリ<完全版>連続上映』の絶叫前夜祭も
《第10回 京都ヒストリカ国際映画祭》の見どころ紹介!!

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『恋や恋なすな恋』
(C)1962 TOEI COMPANY, LTD.
 
歴史をテーマにした世界で唯一の国際映画祭、《京都ヒストリカ国際映画祭》が、10月27日(土)から11月4日(日)まで京都文化博物館(3Fフィルムシアター/別館)で開催される。2009年にスタートして以来、カンヌ国際映画祭総代表・ティエリー・フレモー氏(第9回『リュミエール』)、トミー・リー・ジョーンズ氏(第8回『ザ・ホームズマン(原題)』)、パトリス・ルコント氏(第6回『暮れ逢い』)と世界で活躍する映画人から、時代劇映画を支えた撮影所の名スタッフまで、映画作りをとことん語り合えるゲストが毎回来場し、上映後にトークを繰り広げ、観客との交流を深めてきた。また、世界中から集まった若きフィルムメーカーたちが、京都の撮影所で、ベテランスタッフと共に時代劇を撮るワークショップ、「京都フィルムメーカーズラボ」も同時開催され、ワークショップ参加者が日本の時代劇から新たな発見をする場にもなっている。


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『バーフバリー 王の凱旋』
(C)ARKA MEDIAWORKS PROPERTY, ALL RIGHTS RESERVED.
 
第10回となる今年は、初の前夜祭として『バーフバリ<完全版>連続上映』を絶叫ナビゲーター付きの絶叫上映で開催。『バーフバリ』を日本初上映したヒストリカならではの豪華企画だ。そして、27日(土)、スペシャルゲストと共に傑作歴史映画を堪能する<ヒストリカ・スペシャル>では、内田吐夢監督のファンタジー時代劇『恋や恋なすな恋』4Kデジタル復元版を日本初上映する。ゲストには歌舞伎俳優の中村扇雀氏を迎え、ヒストリカ・ナビゲーターの飯星景子氏と上映後にトークを行う予定だ。映画祭の見どころや、第10回の特別企画を、京都ヒストリカ国際映画祭プログラムディレクターの高橋剣氏のコメントを交えながらご紹介したい。

 
【ヒストリカ・スペシャル】
『恋や恋なすな恋』(62)4Kデジタル復元版
今年のヴェネチア国際映画祭で世界初上映された4Kデジタル復元版を日本初上映。
 
<高橋氏より>
溝口健二は年を重ねるごとに作品も成熟していきましたが、同時代に活躍した内田吐夢は、どんどん新しいことを取り入れ、攻めの映画作りを行っていたことが『恋や恋なすな恋』から見て取れます。60年代の作品で、時代劇にアニメーションや仮面を使ったクロスメディアを見事に実現。時代劇とファンタジーを融合させた豪華絢爛さは、4Kデジタル映像でさらに際立ちますね。
 
 
【ヒストリカ・フォーカス】
~時代劇映画にもミュージカルコメディーがあった!
時代劇の殻を破る、名匠沢島忠&内田吐夢作品5本を上映~
 

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『ひばり・チエミの弥次喜多道中』
(C)東映
 
時代劇映画の魅力を様々な角度から切り取る<ヒストリカ・フォーカス>では、日本映画黄金期の東映時代劇を代表する沢島忠監督、内田吐夢監督の作品から、従来の時代劇には収まらないエンターテイメント性を備えた5本を英語字幕付きで上映する。今年の1月に91歳で亡くなった沢島監督作を35mmフィルムで鑑賞できる貴重な機会だ。『孤狼の血』の白石和彌監督、19年に『引っ越し大名!』が公開予定の犬童一心監督をはじめ、豪華ゲストによるトークイベントも楽しんでほしい。
 
<高橋氏より>
昨今はミュージカル流行りですが、日本の時代劇を今、世界の観客が見たらどう思うだろうかと考えたとき、沢島忠監督のミュージカルコメディー時代劇を世界に問いたい!と思いました。沢島監督の軽やかな時代劇は、1960年前後に硬直化しつつある時代劇の殻を割ってみせました。内田吐夢監督の重厚な時代劇と両極を見ていただき、時代劇の奥行きを感じてほしいです。
 
<沢島忠監督作>
『ひばり・チエミの弥次喜多道中』
美空ひばりと江利チエミ。昭和の歌姫コンビの魅力が満載の時代劇ミュージカルコメディ
『白馬城の花嫁』
美空ひばりのコメディエンヌぶりに目をみはるミュージカルコメディ
『殿さま弥次喜多』
中村錦之助、中村加津雄、美空ひばりの現代語、カタカナ言葉が満載な時代劇ドタバタコメディ

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『妖刀物語 花の吉原百人斬り』
(C)東映
 
<内田吐夢監督作>
『血槍富士』
内田吐夢監督戦後復帰第一作。封建制の理不尽さが胸をつく
『妖刀物語 花の吉原百人斬り』
片岡千恵蔵×水谷良重の黄金コンビによる江戸吉原のバロック悲劇

 
【ヒストリカ・ワールド】
~フランスの官能系ラブストーリー2本をはじめ、ヨーロッパの秀作5本を日本初上映~

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『乙女たちの秘めごと』画像
(C) Les Films du Worso-Versus Production-2017
 
世界の最新歴史映画を紹介する<ヒストリカ・ワールド>では、『欲望にさそわれて』、『乙女たちの秘めごと』とフランス映画2本が選出され、いずれもゲストトーク付きで上映される。聞き手は、映画批評家でIndie Tokyo主催の大寺眞輔氏。フランスの新鋭フィルムメーカーと、フランス映画に造詣の深い大寺氏のトークショーは必見だ。
 

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『アイスマン』
 
他にもハンガリーのロードムービー『旅芸人』、氷の中で見つかった5000年前のミイラ男を題材に、彼の人生を古代語を交えて描いた『アイスマン』、そしてエストニアからはモノクロのダークファンタジー『ノベンバー』と、いずれもヒストリカらしい一癖のある秀作映画がラインナップされている。

 
【ヴェネチア国際映画祭連携企画】
~ヴェネチアの若手映画作家育成プロジェクト製作作品を日本初上映!~

historica8.jpg『Beautiful things』

今回初となる京都フィルムメーカーズラボとヴェネチア国際映画祭若手映画作家育成プロジェクトの提携企画では、ヴェネチア国際映画祭のビエンナーレ カレッジ シネマに選ばれ、制作された『Beautiful things』と、VR短編『Chromatica』(無料試写、当日受付)を日本初上映する。監督も来場予定で、ヴェネチアが発掘した新しい才能にぜひ出会って欲しい。
 
<高橋氏より>
ヴェネチア国際映画祭は、映画回帰志向のカンヌ映画祭とは逆に、映画のいろいろな表現を取り入れようとしています。今回、ビエンナーレ カレッジ シネマでVR作品を制作しているのも、アートとしてのVRの物差しを作る意図があるのです。
 
 
【京都フィルムメーカーズラボ スクリーニング】
~カムバックサーモン・プロジェクト~
 
historica9.jpg『十年 Ten Years Japan』
(C) 2018 “Ten Years Japan” Film Partners
 
京都フィルムメーカーズラボ経験者の最新長編映画を上映する「カムバックサーモン・プロジェクト」。今年は木下雄介監督が参加したオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』(11月3日より全国順次公開)を日本初上映する。木下雄介監督、プロデューサー高松美由紀氏によるトークショーも開催予定だ。
 
 
■10周年記念プログラム
【京都映画巨匠生誕120年記念上映~内田吐夢・溝口健二・伊藤大輔~】
~重要文化財の会場で一挙7本!名匠のサイレント映画まつり!~

historica10.jpg京都文化博物館別館

京都映画の基礎を作った三巨匠、内田吐夢・溝口健二・伊藤大輔の生誕120年を記念した特別企画として、サイレント期の中で現存している貴重な巨匠たちの作品を長編、短編合わせて7作品一挙にカツベン付きで上映する。会場は重要文化財(旧日本銀行京都支店)の京都文化博物館別館。クラシックな空間でピアノ演奏も合わせての上映、少しオシャレをしてコンサート気分で楽しんでほしい特別上映だ。他にも11月3日に京都文化博物館3Fフィルムセンターで、溝口健二監督のサイレント期の傑作『折鶴お千』デジタルリマスター版がプレミア上映される。

 
【ヒストリカ・ディケイド】
~10年分の名作を一挙上映!~

 
historica11.jpg『チョン・ウチ 時空道士』
(C)2009 CJ ENTERTAINMENT,UNITED PICTURES & ZIP CINEMA.ALL RIGHTS RESERVED
 
過去10年間で紹介した作品から選りすぐりの6本を上映。『チョン・ウチ 時空道士』(第2回)、『黄山ケ原』(第3回)、『アイアンクラッド』(第4回)、『ソード・アーチャー 瞬殺の射法』(第5回)、『黄金』(第6回)、『彷徨える河』(第7回)と、アジア映画3本がラインナップされている。
 
 
最後に高橋氏は、「時代劇を呪縛するものから、呪縛を解き放ち、想像力を羽ばたかせたい」と第10回を迎えるに当たっての意気込みを語ってくれた。見たことのない歴史映画に触れ、映画人と触れ合う映画祭の楽しみを、ぜひ、この秋京都で味わって欲しい。



(2018年10月 4日更新)


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Event Data

《第10回 京都ヒストリカ国際映画祭》

●10月27日(土)~11月4日(日)
 ※10月26日(金)前夜祭
京都文化博物館(3Fフィルムシアター/別館)

【公式サイト】
http://www.historica-kyoto.com/