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前作『百円の恋』で絶賛を浴びた武監督が手がける
佐藤江梨子×瑛太 主演のファイティング・ラブコメディ
『リングサイド・ストーリー』武正晴監督インタビュー

佐藤江梨子と瑛太が主演を務める映画『リングサイド・ストーリー』が大阪ステーションシティシネマほかにて現在好評上映中。本作は、瑛太演じる大きなことばかり言いながらくすぶっている俳優と、佐藤演じる同棲10年目でそろそろなんとかしなきゃと思っている彼女に起きた出来事を映す基本はラブ・コメディだが、ただの恋愛映画ではない。格闘技団体のメンバーを巻き込んで展開されるファイト・コメディなのだ。監督は前作『百円の恋』で邦画ファンの度肝をぬいた武正晴。来阪した武監督に話を訊いた。

――企画の始まりはどういったことから?
プロデューサーの李鳳宇(り・ぼんう)さんとは、僕が助監督として参加した井筒和幸監督の『パッチギ!』(04年)以前からの知り合いで、ときどき会っては、まあ世間話の合間に映画の企画について話したりしていたのですが、昨年の4月に会ったとき格闘技の話になって、二人とも好きなので盛り上がって、そのとき格闘家の人たちが映画に出たらどうなるだろうなという話になったんです。基本的に強靭な肉体と優れた運動神経があって、ドタバタコメディもできるし、誰かが誰かをずっと追う、そんなアクションものもできるなって。それで自分たちの周りで格闘家と関わりをもっている人っていなかったかなぁと考えていったら足立紳さんのことを思い出したんです。
 
――監督の前作『百円の恋』(14年)の脚本家ですよね。
そうです。彼は、仕事もなくて働かないでいたころ、好きなプロレスが観たいものだから、奥さんにプロレス団体に就職してもらって、タダ券をもらって試合を観に行くという不届きなことをしていた奴なんです(笑)。
 
――ヒドイ人ですねぇ。でも、面白い。
李さんも面白がってくれて、格闘技団体の周囲にいるおかしなカップルの話、これでいこう! と。でも、さすがに主人公の職業を脚本家にすると、足立夫妻の実話にあまりに近くなっちゃうので(笑)、実力はあるのかないのかわからないけれど、ともかく大きいことばかり言って現状は売れていない俳優とその彼女でいこうとなったんです。
 
――クライマックスシーンで主人公がリングに上がる設定からも、主人公が俳優という方がしっくりきます。
脚本家だとなかなかね。足立さん自身も、もし自分なら絶対リングに上がらないって言ってました(笑)。あと、僕も李さんも、表に出ている人よりも裏方で働いている人や、裏側の世界、華やかな表側を裏で支えている側に興味があるんです。それで今回も、プロレスやK-1など、華やかな興行の裏側で奮闘している人たちを描きたいという思いもありました。
 
――唐沢寿明さんが主演した『イン・ザ・ヒーロー』(14年)は、派手なアクション映画を裏で支えているスタントマンのお話でしたね
前作の『百円の恋』も、働きもせずグダグダしていた女の子がボクシングを始める話でしたが、僕としては、主人公の実家を弁当屋さんにすることで、弁当屋さんの裏側を描きたいとか、アルバイト先をコンビニにして、コンビニの裏側を描きたいとかの狙いがあったんです。なんか好きなんですよ、外からは見えないお店の裏の様子を覗いたりするのが(笑)。
 
――それで今回も、佐藤江梨子さん扮する女性の主人公が格闘技団体の裏方に就職して、広報の仕事や、イベントのマネージメントを行っているわけですね。
映画のサブタイトルに「カナコとヒデオ」と付けてもいいくらい、今回の物語の主軸は、佐藤江梨子さん演じるカナコと、瑛太さん演じるヒデオのラブ・コメディなのですが、いわゆるバック・ステージものの人情喜劇としての面白さも兼ね備えている、そんな感じにしたかったんです。そういう概要が決まってからは早かったです。4月に李さんに会って話をして、そこから脚本を立ちあげて、8月には撮影に入っていましたから。企画から何年経っても製作に入れない作品も多くあるなか、順調にいくときってこういうものなんだなって思いました。
 
――主演の佐藤江梨子さんと瑛太さんがいいですね。
お二人とも脚本を読んで出演を即決してくれて、うれしかったですね。特に今回の主人公は、男女とも誰が演じるかで印象が全然変わってしまう役だったので、二人に演じてもらってほんとによかったです。
 
――佐藤江梨子さんの良さは?
表情の変化が素晴らしかった。ほんとにいつもヒデオのことを純粋に素直に心配して見つめ続けているんだなというのが伝わってくる表情をするんです。カメラ越しに彼女を見ていて、あっいま気持ちが動いたなってわかる、いい表情だなあて思うショットがいくつかありました。それはもうシナリオでも台詞でも文章では書けない、表情でしか表せない気持ちの動きなんです。それを俳優が表してくれると、こっちは「やった!」と思いますよね。
 
――瑛太さんの良さはどういうところに感じられましたか?
説得力ですね。瑛太さんが演じたヒデオというのは、僕らから言わせると、映画や演劇の世界に普通にいる、それもどちらかというとよく頑張っている、応援したくなるような人なんですけど、世間から見るとやっぱりクズとかダメ男とか言われる人ですよね。これを最終的にはなんとかお客さんから応援してもらえるような人としてつくりあげなきゃいけない。瑛太さんにはそうできる説得力がありました。
 
――確かにいま思い出しても、あそこがそうだなっていうところがいくつかありました。
また、今回は男女二人が主人公なので、彼を良く見せるには彼女がどうにかしなきゃいけないし、彼女を良く見せるには彼がどうにかしなきゃいけないという関係なんですが、そういう意味でも、佐藤江梨子さんと瑛太さんの組み合わせは最高でした。
 
――あと、二人の周囲にいる俳優さんたち、これが凄い。佐藤さんのお母さん役の余貴美子さんや、瑛太さんのマネージャー役の近藤芳正さん、プロレス団体の社長の峯村リエさんはいいですが、角替和枝さんや高橋和也さん、有薗芳記さんなどはもっと大きな役でもいいんじゃないかって思える役で出ています。そういう意味で贅沢な映画です(笑)。
みなさん、僕がお芝居を観に行かせてもらって、飲み会に参加して、そこで親しくなった方とか、前にお仕事した人と久しぶりに道で偶然すれ違って思いつくなど。峯村さんがそうだったんです。そんな感じです。キャスティングを考えているときにふと思い出すんです。
 
――さらに秘密兵器的に、岩井俊二監督まで登場します。
あれはねぇ、プロデューサーの李さんが電話してくれたんですよ(笑)。僕は岩井監督とは面識がなかったので。映画監督の役で、どうせなら本物に出てもらおうと。でも、いまの監督で、誰もが監督ってわかる人は誰なんだとなって、そうか岩井監督かと。そうしたら李さんが連絡してくれたんですよ。現場でも面白かったですよ。スタッフも「あれ、岩井監督が来てる」って驚いて(笑)。映画でも俳優たちがシーンの後半「監督の作品のファンです」って言ってますけど、あれはもうアドリブっていうか、俳優たちが本音で言ってますから。
 

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――岩井監督は現場でどんな感じでした?
やっぱり優秀な監督は芝居もうまいですよね。岩井さんも「こういうの、飲みに行った先であるあるですよね」って笑ってました。
 
――前作の『百円の恋』に続いて、リングに上がる人間たちのドラマになりましたが、それについてはどう考えているのですか?
たまたまそうなっただけで、こだわってやっているなんてことはないです。こだわりとしてはむしろ、さきほどもお話ししたバックステージものに興味があるぐらいで。映画監督というのは、たとえどんな題材でも、スタッフ・俳優の力を借りて面白く仕上げて観客に届けるのが仕事ですから。そして、映画というのは、最後に、観てくれたお客さんの反応があって完成するものだと思っています。この映画も、多くのお客さんの反応で完成させてもらえたらうれしいです。
 
 
取材・文/春岡勇二



(2017年10月16日更新)


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Movie Data

©Ring Side Partner’s

『リングサイド・ストーリー』

▼大阪ステーションシティシネマほかにて上映中

監督:武正晴
出演:佐藤江梨子 瑛太

【公式サイト】
http://www.ringside.jp/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/172532/


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