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“塚口の奇跡”再び?
関西のイロモン劇場・塚口サンサン劇場に、吉田大八監督が降臨!
映画『美しい星』吉田大八監督ティーチインレポート

1962年に発表された三島由紀夫の小説の映画化『美しい星』のティーチイン・イベントが 6月25日(日)、 塚口サンサン劇場(兵庫県)で行われ、吉田大八監督、朴木浩美プロデューサーが、参加者の質問に答えていった。

この特別イベントがなぜ実施されたか。それは2012年秋、吉田監督の当時の最新作『桐島、部活やめるってよ』を同劇場が上映したタイミングまで遡る。劇場スタッフの戸村文彦さんは、「『桐島』は 10人いたら 10人の見方がある。そこで、みんなで『桐島』を語り合うイベントを行ったのですが、『朝まで生テレビ』並の激論があった。それらを聞きつけた佐藤貴博プロデューサーがトークイベントに来てくださり、2時間も話していただいた。その話が頭にあった吉田監督が、今回『塚口に行きたい』と言ってくださったんです」と経緯を説明。
 
塚口サンサン劇場ではトークイベントのほか、物語のテイストにあわせて35ミリフィルムで上映、『桐島』を取り上げた雑誌「映画秘宝」持参者にポップコーンをプレゼントするなど、他劇場にはない独自サービスを実施。多くの上映作品を抱える映画館が、一つの作品にここまで熱量を傾けるのは異例のこと。しかしそれらの取り組みはSNSで話題となり、『桐島』の全国的なロングランを後押し。この現象は“塚口の奇跡”と呼ばれるようになった。塚口サンサン劇場は以降、「関西のイロモン劇場」(戸村さん談)として唯一無二の立ち位置を決定づけた。
 
吉田監督はトーク開始早々、「佐藤プロデューサーから、いかに塚口が盛り上がったかを自慢されて悔しかった」と、来館に嬉しそうな表情を浮かべた。特に今作は、吉田監督にとって「この原作を初めて読んでから30年以上『映画にしたい』と言い続けてきました。撮らずに死んでしまうのは嫌だった」という念願の企画。
 
ただ、公開から1か月以上が経ち、まだまだ思い通りの興行にはなっていないようで、吉田監督は主演のリリー・フランキーの奇妙なポーズが特徴的なポスターを指し、「リリーさんが、『このポスターは人を遠ざけるんじゃないか』と言っていました」と冗談で笑わせると、朴木プロデューサーも「なかなか広がっていかない原因は、この怪しすぎるポーズのせいなのかな(泣)?」とドッキリ発言。吉田監督が「それをここで言いますか!」とツッコミをいれると、朴木プロデューサーは「まあ、塚口なら大丈夫かなって(苦笑)」と同劇場だからこそのぶっちゃけトークで満席の会場を沸かせた。 
 
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ちなみに話題に上がった、リリー・フランキーが両手をかざしたポーズ。これは、人気のお天気キャスターでありながら、ある出来事を境に「自分は火星人だ」と言い始め、生放送中に突然キメる“火星人のポーズ”のこと。 吉田監督は「ビジュアルとして説得力を持たせようと、シナリオの段階からあのポーズを考えてましたけど、完成させたのはリリーさんです。撮影本番にいきなり変な声を出したり、指を曲げたり。『何であんな声を出したんですか』と聞くと、『ついやっちゃった』って(笑)。でも、最後にあのポーズを見せる場面では、コミカルから一転して胸を打たれます」と裏話を明かした。
 
イベントは25分間で終幕。吉田監督は話足りないのか、「佐藤プロデューサーは2時間もやったのに、僕がこれで終わるのは悔しい。また呼んで欲しい。みなさんともっと突っ込んだ話がしたい」と熱望。塚口サンサン劇場での上映は終了したが、以降は豊岡劇場、シネ・ピピアなどに上映のバトンが渡る。面白さがじわじわと広がっていくタイプの作品なので、今後『桐島』に負けない熱気が生まれれば、吉田監督の「塚口再降臨」が実現するかも!?
 
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取材/文:田辺ユウキ



(2017年7月 3日更新)


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Movie Data

©2017「美しい星」製作委員会

『美しい星』

▼8月26日(土)より、
 シネ・ピピア、豊岡劇場にて公開

監督:吉田大八
出演:リリー・フランキー/亀梨和也/橋本愛/中嶋朋子
脚本:吉田大八/甲斐聖太郎 
原作:三島由紀夫『美しい星』(新潮文庫刊)

【公式サイト】
http://gaga.ne.jp/hoshi/

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/169908/