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劇中、どんどん痩せていく品川祐に注目!?
窪塚洋介、榊英雄監督が登壇した
映画『アリーキャット』舞台挨拶レポート

大阪、シネ・リーブルで7月22日(土)より公開が始まった榊英雄監督による映画『アリーキャット』。野良猫のように街の片隅でひっそりと生きる男が、ひょんなことからバディとなった男と一緒に一人の女性を守るために奮闘し、熱い思いを取り戻していく物語。元ボクシングチャンピオンのマル役を窪塚洋介が、マルと共にバディを組む自動車整備工場で働くリリィ役をDragon Ashの降谷建志が担い、ふたりの初タッグも話題となっている。大阪での公開前にシネ・リーブルで行われた舞台挨拶では、上映後に窪塚と榊監督が登壇。作品への思いや、見どころなどを語った。

--まずは一言、ご挨拶をお願いします。

窪塚洋介(以下、窪塚) この作品が皆さんの心に届いて、皆さんを少しでもネクストステージへ進めてくれるような作品であることを願っています。今日は集まってくださってありがとうございます。もし何か残るようなものがあれば、仲間の皆さんに伝えてください。

榊英雄(以下、榊) 本日はよろしくお願いします。

--『アリーキャット』は、最近の日本映画にはない、ごりごりのバディ・ムービー、いわゆる逃走もので、作るのも難しかったかと思うのですが、スタートから関わってこられて、企画が立ち上がった経緯などを教えてください。


 邦画のバディものは、昔はたくさんあったのですが、今はなかなかなくて。これはオリジナルなんですが、「最近はオリジナルで作ってないよね」という思いで、オリジナルの活劇を作っていかないといけない使命が僕らにもあるんじゃないかと思って作りました。企画するまでは大変でしたが、マル役の窪塚さんやリリィ役のKjさんとか決まっていって、実現できました。


--お二人はすごくはまっていましたが、お二人を起用したきっかけは何だったんですか?

 まず、マルは窪塚さんにやってほしいというのがあって、リリィ役は同じ俳優ジャンルなのか、どういうジャンルなのか、置いといて、スパッとはまる人がほしいねって考えていたときに、Dragon Ashの降谷くんはどうですか?とあって。そのあと、それぞれの事務所と交渉して実現しました。

窪塚 監督は若干嘘をついていて(笑)。僕には
建志くんが決まっていて、建志くんには窪塚くんに決まっていますと言っていて。若干詐欺師的な振り方だったんですが(笑)、結果オーライでハッピーにしていただいたので、これはペテン師だと。

 そうですね(笑)。どうしても映画プロデューサーは詐欺師的、ペテン師的。いろんな意味で妄想を持って、この方とこの方で、こういう本で、こういうことをやったらいいだろうなという妄想の塊でもあるんです。プロデューサー兼務でもあったので。そんな中で、是が非でもこのお二人で『アリーキャット』を具現化したいという思いが実現にいたりました。

--窪塚さんはそれまで、降谷さんとお会いしたことがなかったとか。

窪塚 そうなんです。この話をいただく2週間前に、たまたま知人の結婚式でばったり会いまして。隣の席だったんですけど、本当にすごく自然な感じで、いつも会っている友達みたいな感じで、「おっす~」とか言って、「ヤーマン」って横に座って、「あれ? 俺ら初対面だよね?」ってなって。「そうだね、やっと会えたね」っていうぐらい、本当、昔からのツレに会ったというような感じで。というのは、俺自身がレゲエミュージシャンをやっていて、彼もロックスターとして、ロックシーンを牽引して20年とかやってきているので、共通の友人もいっぱいいますし、最初にシェアできている、たとえばストリートのルールであったりマナーが入った上で、「あ、いる」と思っているので、最初からシェアできていることがすごくたくさんありました。ここからスタートというのではなくて、積み上げられるという感じだったので、すごく楽だったし、楽しかったです。

--役者の降谷さんはどんな印象でしたか?

窪塚 すごくストイックで、ピュアで、センスもあるし。お父さんが役者さんの古谷一行さんで、奥さんもMEGUMIさんで、元々タレントで今は女優の活動もされているので、役者に近いところにいるというか。俺なんかより遥かに役者の友達が多いんです。俺の方がドギマギしちゃうくらい、役者仲間がいっぱいいる人なので、役者のこともよく分かっているのだと思うし、興味があるから前のめりで参加してくれたというか。彼の存在のおかげで、俺も、監督をはじめ、みんなそうだと思うんですけど、温度も純度も上げてくれて、現場がすごく盛り上がったなと思います。

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--バディ・ムービーということで、降谷さんと窪塚さんと二人で主役なんですが、窪塚さんは最近、あんまりないような役だったんじゃないかと思うんです。


 初めてじゃないですか? 自発的にあまりやらない役ですよね?

窪塚 そうですね…。結構はっちゃけていたりとか、バカだったり、エキセントリックな役が多かったんですけど(笑)。品川さんの監督作品でもそういう感じだったので、「ああ、こうやって思われてんだろうな」っていうのはあったんですけど、今、皆さんが思っていくれているように割と普通なんですよ、僕は(笑)。なので、こういう役もできるよというのも、そろそろお伝えしたかったっていうのも正直あるし、ずっとああいう役をやっていると、そういう役しか来なくなるし、どんどん自分から狭い方に入って行くという、つまらないことになっちゃうので、もっとフラットに。分かりやすく言ったら、王様の役もやるし、乞食の役もやりますっていうくらいの気持ちで、ナチュラルに、ニュートラルなところにいられることが役者として一番、自由にやっていけるいい場所だと思うので、そこを獲りにかかっているっていうところですね。


 今までであれば、マルとリリィは逆です。リリィを窪塚さんにやってもらって、マルを降谷さんにやってもらって。僕の周りでもそうするかなと思っていたんですけど、やっぱりマルに挑戦していただいて。監督って自分が愛する一面を撮りたいという癖があるので。逆に僕は、じゃあどう撮ろうかっていうところで、マルをやっていただいたので、すごく嬉しいですね。

--共演者には品川祐さん、火野正平さんなどいらっしゃって、その中で窪塚さんは受けの演技をされて、あまり前に出ようとしていませんでしたよね。

窪塚 出なくて済んだというか、出なくてよかったというか。皆さんがほんとに良かった。品川さん、5キロ痩せてるんですよ。冒頭から順撮りしているので。品川さんの役だけですかね? ちゃんと順撮りできたのは。最後の最後に5キロ痩せているんです。気がついた方いますか? 

(会場 ……)

窪塚 5キログラム、完全に無駄だったことを伝えておきます(笑)。


 すごく頑張っていたんですよね。すごく熱心に、誠実に。

窪塚 市川由衣ちゃんもそうですし、安心して、そっち側に委ねられる役者さんがいっぱいいたので、それはもう、自分を押さえて、削ってっていうことを全うすれば、自分自身の役が生きるっていう、そういう関係性の中でやっていたので。それは感謝できることだし、楽しかったです。


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--監督の演出や現場の雰囲気など、どうでしたか?

窪塚 映画『沈黙-サイレンス-』(2016年/監督:マーティン・スコセッシ)や舞台『怪獣の教え』(2016年)/演出:豊田利晃)の後に、この作品の撮影だったのですが、『沈黙-サイレンス-』をやれたことによって、自分の中で1回、リセットされたんです、あらゆることが。僕が今、着ているTシャツのようなに真っ白な気分になれてこの作品に入れたので、そういう意味では新しいシーズンの1本目の作品という感じで臨めました。変な先入観とか、現場に要らない感覚、他と比べる感覚とか、そういうものが一切なく、フラットに入れたし、この現場やこの作品を本当に楽しもうと思わせてくれるセッティングがいっぱいあったんです。監督はすごく自由に、いろいろやらせてくれるし、特に今回、他の現場と違ったなと思うのは、僕とリリィと冴子(市川由衣)と、玉木(品川祐)という4人の役は、みんなで作っていったんですよ。普通だったらおこがましいかなって思うようなことまで--「リリィ、こうしたら?」とか「品川さん、こっちの方がいいんじゃないですか?」とか、「最後こうして」とか、そういうことがすごく言い易かったので、4人で4人の役をみんなでやって、最後に監督がジャッジメントするっていう感じだったんです。


 それはすごく面白かったですね。普通の現場だったら、窪塚さんの役に対して「こうしたら」とか、なかなか言えない。距離もあるし、先輩、後輩もあるんですけど、『アリーキャット』の現場はそれが全くなくて。「こうやったらどうかな?」っていう意見交換もできたし、4人でやりつつ、「こう思うんだけど、どうですか? 監督」って聞かれて、「じゃあ」って。だから、9割は4人で、1割は僕です。

窪塚 そんなことはない(笑)。ちなみに、今話したこと、俺、さっき話しましたよね(笑)。なぞってきたな~って(笑)。何か新しいこと入ってくるかな?って待ってたんですけど(笑)。


 いや……なぞってしまったね(笑)。

--ラストはいろんな捉え方ができるかなと思ったんですが、監督、続編については…?


 それはもう、窪塚くんが「うん、OK、やるよ」って言わないと決まらない。

窪塚 やるよ! やりましょうよ!


 ラストはいろんな取り方ができるので、お客さんがどうにでも思えるような…。マルが元々飼っていた猫がいなくなり、探している最中にKjが扮するリリィと呼ばれる男と出会う。今度は人間のリリィがいなくなって、最後に自分が飼ってた猫が戻ってくる。あの猫がKjになり、また戻ってきたんじゃないかという、そういう旅なんだという意味で僕は撮ったんですけど、いろんな見方があるのはいいと思うので。いろんな捉え方がありますよね。

窪塚 スピンオフとか、続きとか、何だったらシリーズものとかあったら嬉しいんですけど、玉木がね…(笑)。品川さんはゾンビ映画が大好きだから、次はゾンビになって出たいって。

 どうやって考えましょうかね。ゾンビになるとこの映画の世界観が…。ただ、Kjと洋介くんとで真剣に話していたのは、上海とか、香港編でやりたいねって。そこの路地裏とか、変な場所でできたらなって。

窪塚 それもこれも、皆さんに観てもらわないと始まらない話なので、ぜひ力を貸してください!

--では、最後に一言、お願いします!


 本日は本当にありがとうございました。洋介くん、Kj含め、素敵な役者さんのおかげでいい映画になったと思います。いろんな感想があると思いますが、ぜひぜひ応援してください。

窪塚 日常生活が何かどんどんどんどん、鬱屈とした感じになってきかねない時代だなと思ってますけど、この映画だったりとか、もちろん、この映画じゃなくてもいいですけども、自分の「こんなもんじゃねえ、こっからだ俺は」とか、「私はまだ何も始まってないのよ!」とか、そういう気持ちを持って、一つ前に進むきっかけを作って、そのきかっけがこの映画だったら本当に嬉しいです。皆さんの踏み出した未来の、その向こう側で、また元気に笑顔で会いましょう! 今日はありがとうございました!



(2017年7月21日更新)


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Movie Data


©2017「アリーキャット」製作委員会

『アリーキャット』

▼7月22日(土)より、シネ・リーブル梅田
 7月29日(土)より、元町映画館
 8月12日(土)より、京都みなみ会館
 にて公開

監督:榊英雄
脚本:清水匡
音楽:榊いずみ
出演:窪塚洋介 降谷建志
   市川由衣
   品川祐
   三浦誠己
   高川裕也
   火野正平
   柳英里紗
   川瀬陽太
   森岡豊
   馬場良馬

【公式サイト】
http://alleycat-movie.com

【ぴあ映画生活サイト】
http://cinema.pia.co.jp/title/172206/